妖怪・幽霊が登場する少女漫画!名作おすすめランキングベスト5!

更新:2021.12.15

古来から妖怪や幽霊という存在は、暗闇の中から見つめ恐怖を与えるものとして描かれてきましたが、中には人に寄り添う存在として登場し、ほっこりとさせてくれる作品も。日本人には身近な存在、妖怪・幽霊が登場する少女漫画をランキングでご紹介します。

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5位:見えない「カノジョ」と同棲?和み系幽霊おすすめ漫画

一般的に、幽霊は人間には見えないものです。霊感がある人には見えると言いますが、見たことがないという人の方が多いのではないでしょうか。漫画では、幽霊を見えるものとして描きます。足の先が透けている、白装束を纏っているなどその描き方は様々ですが、人の姿をしていても人ではない存在だと、一見して理解できるようになっているのです。

著者
モリコロス
出版日
2013-01-19

激安賃貸の部屋に住み始めたら、記憶を失った幽霊が住んでいました。モリコロス『のぼさんとカノジョ?』は、主人公で大学生の野保康久と、部屋に居ついている、いわゆる地縛霊のカノジョとの同棲生活が描かれています。カノジョは料理洗濯が得意で世話焼き体質。のぼさんのことも、かいがいしく世話を焼くのです。

しかし、ちょっと嫉妬深いところがあり、イケメンながら世間ズレしていて穏やかな性格のためにモテるのぼさんに、やきもちを焼くこともしばしば。のぼさんに想いを寄せる金城さんが強引に部屋に上がり込んだ時も、見えない姿を利用して強引に追い出し、「わたしいがいのおんなのこへやにいれないで」(『のぼさんとカノジョ?』より引用)と怒った顔文字付きで伝えてくる、可愛らしい行動を起こしたりもします。

そんなのぼさんの彼女は目に見えず、なんと作中でも透明なままで描かれています。意思疎通はホワイトボードを使用していますが、カノジョの存在を感じないわけでも、感情が伝わらないわけでもありません。

宙に浮かんだホワイトボードは、見えないカノジョの動きに合わせてくるくると動き回ります。また、ホワイトボードをぐるぐると黒く塗りつぶし、不満に思っているという意志を伝えるのです。他にも顔文字で笑顔や不機嫌さを、細い文字で不安や悲しみを伝えるカノジョの感情表現は、制限されているはずなのにとても豊かなのです。

癇癪さえ起こさなければ、と言いながら同居しているのぼさんも、なんだかんだで2人暮らしを楽しんでいることが作中からは伝わってきます。人間と地縛霊という間柄ながら、お互いに対しごく自然に接するのぼさんとカノジョの姿に、胸がほっこりすることでしょう。

カノジョと同棲しているものの、あくまでも「一緒に生活している」状態だったのぼさんは遂に恋心を自覚します。しかしカノジョは見えない存在、幽霊です。幽霊に恋をすることで、のぼさんは悩み、苦しみます。記憶がないカノジョには謎が多く、物語が進んでいくごとにその真相に迫っていきます。

2人がずっと一緒にいるという物語の終わりは、見られないかもしれません。けれど、あの小さなアパートの一室で、ずっと一緒に暮らしていてほしい。そう願ってしまう温かさにあふれた作品です。

『のぼさんとカノジョ?』については<『のぼさんとカノジョ?』見所を最終回まで全巻ネタバレ紹介!面白い【無料】>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

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4位::妖怪と人間が織りなす幻想的な世界を描いた少女漫画

妖怪や幽霊というものは、目には見えないものです。しかし、見えるが故に彼らに好かれ、トラブルに巻き込まれるという人もいるのでしょう。今市子『百鬼夜行抄』には、強い霊感を持っていたという幻想作家、飯嶋蝸牛の血を継ぐ者たちを中心に、常人の目には映らない妖たちの世界との交わりを、幻想的なタッチで描きます。

著者
今市子
出版日
2013-10-03


妖怪や幽霊というものは、目には見えないものです。しかし、見えるが故に彼らに好かれ、トラブルに巻き込まれるという人もいるのでしょう。今市子『百鬼夜行抄』には、強い霊感を持っていたという幻想作家、飯嶋蝸牛の血を継ぐ者たちを中心に、常人の目には映らない妖たちの世界との交わりを、幻想的なタッチで描きます。

飯嶋律は、飯嶋蝸牛の孫であり、祖父譲りの強大な霊感を持っています。律は常日頃から妖魔や霊、妖怪と言った類のものと意思の疎通を図れますが、身を守る術を持っていません。律を守るのは、妖魔の青嵐と、庭の木を住処にしている酒好きの使い魔、双子の兄妹である尾白と尾黒。

尾白と尾黒は山伏のような装束を纏った鳥で、サイズもしぐさも文鳥を彷彿とさせます。青嵐は尾白と尾黒とは違い、蝸牛と契約した妖魔です。蝸牛の命により律の命を守っていますが、その行動は律の意に沿ったものではありません。

いつもお腹を空かせ、妖怪を食べようと画策している青嵐は、律の父親、孝弘の身体を住処にしている龍です。孝弘は心筋梗塞で亡くなっているのですが、その原因の大本は、飯嶋家に連綿と流れる強い霊感に起因します。強すぎる力は、厄災を招くのです。

設定や各々のエピソードに伏線が貼られている場合もありますが、基本的に1話完結で、1つ1つの物語をじっくり楽しみことができる『百鬼夜行抄』。妖が登場する作品にはほのぼのしたものも増えていますが、本作では、一貫して妖は人とは違った理で生きている存在だと表現されています。それは律の父親の身体に住まう青嵐も例外でなく、気が向けば律などもパクりと食べられてしまうのでしょう。

箱庭から出てきた人食い鬼が生贄を求めて彷徨う「人食いの庭」は、人間が食べられる恐怖を描いた作品です。ぼんやりとともる街灯に照らされた夜道に、ひたひたと近づいてくる人食い鬼の姿は、トラウマになりそうなほどの不気味さがあります。

魔は不可思議で、恐ろしいもの。『百鬼夜行抄』は、不思議だからこそ惹きつけられ、恐ろしいからこそ、美しい世界が表現されています。少女漫画という言葉から連想される柔らかさや甘やかな空気はありませんが、繊細で美しい画面に引き込まれます。

物語は妖たちとの巡り会いや騒動を重ね、蝸牛の血族である晶や司、開といったキャラクター達が絡みながら進んでいきます。不意にページを捲る手を止めたとき、背後に別の世界が広がっているのではないか。そんな幻想を抱いてしまうほど、どっぷりと世界観にのめり込んでしまう作品です。
 

3位:女子高校生神様と、ひねくれ神使の胸キュン妖怪漫画!

賭け事好きの父親が家出し、ホームレスになってしまった高校2年生の桃園奈々生は、途方に暮れていたところに家を譲るという怪しい男と出会います。男に言われた住所に行ってみると、あったのは荒れた廃神社でした。怪しい男の正体は土地神をしているミカゲで、神社を譲る代わりに神様の仕事を任されるようになります。

著者
鈴木 ジュリエッタ
出版日
2008-09-19


女子高校生が神様になるという設定が目を引く鈴木ジュリエッタ『神様はじめました』は、2度にわたりアニメ化された人気作品です。快活で前向き、へこたれない性格の奈々生が、神様として成長していく姿を描きながら、恋の物語を織り込んでいきます。

奈々生が譲られたミカゲ社には、社を守る神使、巴衛とミカゲ社に憑いている鬼火童子の鬼切と虎徹がいました。巴衛はミカゲが不在の間もミカゲ社を守っていたという神使。元々は野孤という妖怪で、白髪に狐耳を生やした、人とは少し異なる姿をしています。口が悪く、天邪鬼でつっけんどん。最初は奈々生が土地神になることを認めませんでした。しかし正式に土地神になり、日々新米神様として奮闘する奈々生を支えるようになります。

巴衛はいわゆるドSツンデレキャラクター。喧嘩腰で奈々生にキツい言葉を吐いたかと思えば、気が付かないような些細な優しさを見せます。「お前以上に優先すべきものなどない」(『神様はじめました』より引用)と口にして奈々生の世話を焼くのですが、普段のツンSな姿とのギャップにドキドキが止まりません。

巴衛の隠されたやさしさに触れ、惹かれていく奈々生ですが、巴衛への恋心と好意に溺れきってしまうことはなく、自身の役割を全うしようと努力を続けます。恋と役割を混同せず、自分の頭で考え前へ進む力を持っている。そんな奈々生の魅力に、巴衛も読者も惹かれていくのです。

奈々生と巴衛の恋には、巴衛の過去という障害が立ちはだかります。巴衛がためらっても奈々生は諦めず、手を伸ばし続け、離すことはありません。キャラ萌えだけではなく、ストーリーでもしっかり読ませてくれる本作は、幸せな異種婚姻譚的な要素が楽しめる貴重な作品です。真っすぐでパワフルな女子高生神様の成長と、ツンデレ野孤との恋物語に胸をきゅんきゅんさせてみませんか?

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2位:天狗の娘の「普通」の生活を描いたおすすめ妖怪漫画!

岩本ナオ『町でうわさの天狗の子』の舞台は、天狗を信仰する緑峰町。人間の母と緑峰町を守護する康徳神社の僧正天狗、康徳坊との間に生まれた刑部秋姫は、緑峰山太郎坊秋姫という名前を持つ天狗の子です。

著者
岩本 ナオ
出版日
2007-12-21


秋姫は見た目は人間の少女ですが、脱輪した2トントラックを軽々と持ち上げてしまうほどの力持ち。しかし彼女は、潜在的に強大な力を持っていながら天狗の修行をせず、普通の少女として生活することを望んでいたのでした。

現代日本でありながら、天狗が存在している緑峰町は山に囲まれた田舎町。天狗は高い鼻に赤い顔、山伏の装束を纏い、翼で空中を自由に飛翔するものです。妖怪として扱われることもありますが、山岳信仰においては山の神とされています。

康徳坊は緑峰町を守護する存在、つまりは神様になるので、ハーフとはいえ秋姫の力は強大です。しかし、秋姫は修行をして力をつけることで、天狗のような風貌になってしまうことを嫌い、天狗の修行を受けようとはしません。天狗の修行をしている幼馴染の榎本瞬や、康徳坊の眷属たちが秋姫を守りますが、強い力を持つがゆえに、秋姫はトラブルを引き寄せてしまうのです。

本作で描かれる、異類婚姻で生まれた子である秋姫の年頃の少女らしい生活。流行りのものに目を奪われ、友人関係に悩み、恋に胸をときめかせる。そこにいるのは天狗の子という特別な境遇を持った秋姫ではなく、どこにでもいる10代の少女です。

作中では、ほのぼのとした秋姫と友人たちと瞬の日常が中心となっているため、不意に登場する天狗の話を箸休めか何かのようにとらえがちです。天狗の力なんてものは、実は関係なかったのではないか。そんな風に考えてしまいます。それは秋姫も同じで、「自分が秋姫ではない何か」になってしまう不安が頭をもたげるものの、先延ばしにしてトラブルを引き寄せてしまいます。

前に進むことをためらう秋姫を導くのは、幼馴染の瞬であったり、友人の緑であったり、恋をしたタケルであったりと様々です。秋姫が緑に天狗の子である自分の不安を吐露したときに、緑は「そのへんでいきなり会っても仲良くなれるよ」(『町でうわさの天狗の子』より引用)と、言葉をかけました。その短い言葉の中には、天狗の子である特別な存在としてではなく、秋姫というただ1人の少女を肯定する気持ちが込められています。

瞬とタケル、2人の少年との微妙な恋の関係が描かれるのも少女漫画の醍醐味です。田舎町で繰り広げられる、愛すべき日常の物語をお楽しみください。

1位:妖怪と人をつなぐ温かい怪異譚

夏目貴志には人ならざる者が見えます。それは妖と呼ばれる類のもの。その力に振り回され、薄気味悪い子と言われ続けてきた夏目は、不遇な幼少期を過ごしてきました。高校生になり、父方の遠縁の親戚である藤原夫妻に引き取られた夏目は、ようやく落ち着いた日々を送れるようになります。

著者
緑川 ゆき
出版日
2005-10-05


ある日、夏目は妖怪たちから逃げ回っている最中、祠の封印を解いてしまいます。中から出てきた妖怪、斑は夏目を「レイコ」と呼びました。「レイコ」とは、母方の祖母で、風変わりだといわれていた女性。夏目同様、妖が見えていたレイコは妖怪たちと勝負をし、負かした証として名前を奪い、1冊の契約書にまとめていました。名前を握るということは、妖にとっては命を握る事にも等しい行為です。「友人帳」に書かれた妖の名前を返すために、用心棒となった斑こと、猫の依代を得たニャンコ先生と夏目の友人帳をめぐる日々が始まります。

緑川ゆき『夏目友人帳』で描かれる、祖母の遺品である「友人帳」がつなぐ、夏目と妖たちの物語。夏目は妖が見えるせいで友達も出来ず、家にもなじめず、親戚の間をたらいまわしにされてきました。その過去から、妖に良い感情を持っているとは言えません。しかし、「友人帳」から名前を返すことができるのは、レイコの血族である夏目だけ。名を返すときに垣間見える妖たちの想いには、人の子を愛おしく想い、記憶を大切にしているものもありました。

「最近、わかって来たんだ。人だろうとあやかしだろうと、触れ合わすのが心であるなら、同じだと。一人でいるのが寂しくなるのも、最初の一歩が怖いのも」(『夏目友人帳』より引用)

そう考えた夏目は、少しずつ妖たちに歩み寄るようになります。

夏目と妖の交流と、夏目の人間的な成長という2つの側面がある本作。夏目は幼少期の体験から人間ともうまく関係を築くことができずにいました。しかし、藤原夫妻や友人となった西村や北村、妖が見えることを知っている田沼や多岐といった存在に救われます。彼らを大切に想うと同時に、自分が大切にされているということに気が付くのです。

優しい人たちを大切に思い、失うことを恐れるあまり、何事も自分ひとりで抱え込みすぎる夏目でしたが、物語が進むにつれ、徐々に周囲に甘える様子も見せていきます。それは妖に対しても同じで、人と同じように心がある彼らと言葉を交わし、心を開いていきました。影を纏っていた夏目が、徐々に柔らかな笑顔と空気を纏うようになり、本来の優しい性格をのぞかせるのです。

お参りに来ていた少女との思い出を大切にしていた露神、たった一度、恩人にお礼を言うために水底から出てきて消えた燕、名前を奪った友達、レイコを心配し続けるひしぎ。夏目とニャンコ先生は、人と妖、妖同士の絆に触れ、結んでいきます。

命を狙ってくる強力な妖に遭遇したり、祓い屋である名取、的場といった存在と相対することもあります。それでも「友人帳」を守り、名前を返し続ける夏目の日々は続いていきます。温かく、優しい妖怪と人との絆に心が洗われる作品です。

妖怪や幽霊は、見えないけれど日本では身近な存在です。怪しく、優しく、愛おしい。様々な形の人ならざる者との物語をご堪能ください。

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