「好きな小説は何ですか?」ミステリー、恋愛、ジャンルはいろいろありますが、ファンタジーと答える方も多いはず。昔からファンタジーは世界中で愛されてきました。そこで今回は海外ファンタジー小説から厳選した作品を紹介いたします。
まずは海外ファンタジーの王道ともいえる「ハリー・ポッター」シリーズをご紹介します。
イギリスのJ・K・ローリングによるファンタジー小説です。無名の新人だったにも関わらず、ベストセラーとなったこの作品。全8巻からなる長編ファンタジー小説です。読んだことはなくても、映画で見た方もいらっしゃるのではないでしょうか。
舞台は1990年代のイギリス。11歳の誕生日に自分が魔法使いであることを知ったハリーは、ホグワーツ魔法学校へと入学し、友人や新たな力を得て成長していきます。そして最大の敵・ヴォルデモートと、仲間と力を合わせ幾度となく対決します。最初は叔父、叔母たちにいじめられひとりぼっちだったハリーが、物語が進むにつれ友達、仲間に恵まれていく姿も見どころです。
- 著者
- J.K.ローリング
- 出版日
- 2014-03-05
巻を追うごとに出てくる魅力的なキャラクター、複雑に張られた伏線など、最後まで飽きません。また王道ファンタジーらしく、魔法やドラゴン、様々な魔法道具や珍しい食べ物がたくさん出てきます。これらを想像しながら読むとまた一味違った世界が楽しめます。
2016年には正式な続編にあたる『ハリー・ポッターと呪いの子』が日本で発売されました。これは最終巻の7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』の19年後を描いたもので、ハリーの次男アルバスが活躍する物語となっています。アルバスが過去へ飛び、歴史が変わってしまいます。その舞台はハリーの魔法学校時代に移り……。ハリーの成長を見守ってきた読者が二度しめるストーリーとなっているのも最大の魅力です。
次にご紹介するのは、宮崎駿監督が映画化したことで話題になった『ハウルの動く城』を書いたダイアナ・ウィン・ジョーンズが執筆したファンタジー小説『九年目の魔法』です。ダイアナ・ウィン・ジョーンズはファンタジーの名手ですが、彼女が紡ぐ物語はまるでミステリーのように入り組んでおり、あっと驚く仕掛けが施されたものが多いです。この『九年目の魔法』は特にその傾向にあります。
19歳の女の子ポーリィは大学の休暇を利用し祖母の家に滞在しています。そのとき自分の15歳以前の記憶が二重になっていることに気づきます。そして部屋にかけられていた「火と毒人参」という写真を見ていると、10歳の頃のハロウィーンの記憶が蘇ってきます……ポーリィの過去に何が起こったのか、現在と過去が入り混じりながら物語は進みます。
- 著者
- ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
- 出版日
- 2004-11-06
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品らしく、主人公の女の子がとってもパワフルです。
思春期の多感な時期に母親から育児放棄されつつも、まっすぐ育ったポーリィ。その一生懸命な姿は思わず応援したくなります。誰かに手を差し伸べてもらうのではなく、自分から運命を切り開いていく力強さを見ていると、とっても元気が出ますよ。
シルク・ド・フリークという、世にも奇妙なサーカスが街にやってくるのを聞きつけたダレンは、親友スティーブと共に見に行きます。これがダレンの運命の分かれ道。毒蜘蛛に噛まれた親友スティーブを救うためバンパイアと取引し、半バンパイアになり闇の世界に足を踏み入れたダレン。
想像を絶する過酷な宿命に立ち向かうダーク・ファンタジーです。半分バンパイアで半分人間であることへの葛藤、新たな友情や大事な人との別れがダレンを待ち受けています。最初はバンパイアを毛嫌いし、闇の世界の住人のことを批判ばかりしていたダレンが、徐々に自分の運命を受け入れ、さらにはバンパイアたちの救世主になっていく様子は、ダレンの成長を一緒に見守っているような気分になります。
- 著者
- ダレン・シャン
- 出版日
- 2006-07-15
また、ダレンは「これは物語ではない」「現実は物語のように上手くいかない」と何度も読者に語りかけてきます。あくまでもこの作品は、ダレンが経験したことを綴った手記なのです。その真相は最終巻の12巻で明かされます。子供向けと侮るなかれ。なるほどそうきたか、と思わず唸ってしまいますよ。
小人のアリエッティとその家族は人間たちから借りたもので暮らす借りぐらしをしていますが、ある日人間たちに見つかってしまいます。煙で燻されて追い出されてしまったアリエッティたちは、新しい住処を求めて旅に出ます。
2010年にジブリ映画にもなったので、記憶に新しい方も多そうですね。原作の舞台はイギリスですが、映画では舞台が日本に変更されていました。続編に「野に出た小人たち」、「川をくだる小人たち」、「空をとぶ小人たち」、「小人たちの新しい家」があります。
- 著者
- メアリー ノートン
- 出版日
- 2000-09-18
冒頭のシーンで、編み棒がどこを探してもないと訴えるケイトにメイおばさんはこう言います。
「おやまあ、まさかこのうちにもいるんじゃないだろうね!」
「なにが?」と、ケイトがききました。
「借り暮らしの人たちがさ。」
(『床下の小人たち』から引用)
そしてメイおばさんはケイトに、自分が小さい頃に出会った借りぐらしの小人たちの話を聞かせます。この本を読むと、どんなに探しても見つからないものがあったら、小人たちが借りていったのかも、と思えそうです。
小人たちはむやみに人から物を借りません。人に姿を見られるのは危険な行為だからです。だから彼らが物を借りるのは、本当に足りないものがあるとき。物が自由に手に入る今の時代だからこそ、借りぐらしをする小人たちのような応用力のある暮らしに憧れを抱いてしまいます。鷹揚に構える姿、見習いたいですね。
最後にご紹介する海外ファンタジー小説は、『クロニクル千古の闇・オオカミ族の少年』です。この作品は舞台が6千年前、太古の時代の物語です。
万物の魂があると信じられている太古の世界。主人公のトラクはオオカミ族の少年ですが、ある日トラクの父親が大きなクマに襲われ命を落としてしまいます。死の間際、父親は自分を襲ったクマには悪霊が宿っている、精霊が宿る山を目指し北へ向かえ、と言い残します。オオカミ族に災厄が降りかからぬよう、父親の遺言通り精霊の住む山に向かおうとするトラクに、様々な試練が訪れます。
- 著者
- ミシェル ペイヴァー
- 出版日
- 2005-06-23
この作品の魅力は「魔法」や「伝説の生き物」が出てこないのに、とってもファンタジックな世界になっていることです。6千年も前の太古の森を旅するトラクたち。現代では解明された物事も、昔は精霊や神様の仕業で想像もつかない出来事だったのです。魔法や伝承の生き物がいなくても、精霊たちと共存していた時代は、ある意味全く違う世界が舞台といえるでしょう。まさに、ありそうでなかった海外ファンタジー小説です。
また作者が実際にアメリカの森を歩いて回り、緻密な時代考証を重ねて書かれているため、まるでトラクと共に旅をしているかのような臨場感も感じられます。北米の先住民やイヌイット、日本のアイヌたちを参考にしているので、どこか懐かしい気持ちになれそうです。
全米であの「ハリー・ポッター」シリーズを抜く人気を博したという、ファンタジー小説「ドラゴンライダー」シリーズの第1弾!息をつく暇もない展開に、ワクワクしながら一気に最後まで読み進めてしまいます。
物語の舞台は帝国アラゲイジア。かつてその国はドラゴンライダーという特別な種族の力により繁栄し、邪悪な勢力を退け、平穏な時代が続いていました。ドラゴンライダーはドラゴンと心を通わせることができる、剣と魔法の使い手のこと。善なるドラゴンライダーによって保たれていたアラゲイジアでは、人間、エルフ族、ドワーフ族など異なる種族が共存して暮らしていました。
しかし何事も移り変わるのが世の常であり、その平和も永遠ではありませんでした。ある時種族の者の裏切りによりのっとられたアラゲイジア。邪悪で抑圧的な王が支配するようになり、苦しい時代が始まります。
そんなある日、主人公の15歳の少年エラゴンは森の中で光る青い石を見つけます。石だと思って持ち帰ったそれは何と、ドラゴンの卵でした。やがて卵からかえったドラゴンを”サフィラ”と呼び、エラゴンは大切に育て始めます。やがて、自分自身が国の運命を背負った選ばれしドラゴンライダーなのだと気づく彼。そこからは息もつく暇もないようなスピード感溢れる展開が待ち受けています。
- 著者
- クリストファー・パオリーニ
- 出版日
- 2011-11-08
ダイナミックでスピーディーな展開の中でも特出するのは、主人公エラゴンの内面の葛藤が実によく描かれていること。何が正義で悪なのか思い悩み、自身の弱さとも向き合いながら進んでいく彼の姿に、励まされる読者も多いのではないでしょうか。
なんと著者は15歳でこのファンタジー小説を執筆し、自費出版。それが出版社の目に止まりメジャーデビューにこぎつけたそうです。本書を読めば、その語彙と表現の豊かさに驚くでしょう。ファンタジー小説の基本をしっかり押さえながらもオリジナリティあふれる発想で、読者をその世界にぐいぐいと引き込みます。
幾ら何でも『ハリー・ポッター』や『指輪物語』には勝てないでしょ……と思ったあなた、一度騙されたと思って本書のページをめくってみてください!他ではできないスペシャルな読書の旅が、あなたを待っています。
『指輪物語』はイギリス人作家J.R.R.トールキンによる、全10巻に及ぶファンタジー小説の超大作。物語に基づいて制作された映画も大成功を収めました。きっと何度も読み返したくなり、そのたびに新しい発見があなたを待っているはず。
きっとこの記事を読んでいる多くの人がこのファンタジー小説について知っているか、実際に読んだ経験があるでしょう。映画版を先に知ったという人も多いかも知れません。
『指輪物語』は、神話、宗教、言語学など広きに渡る観点から、トールキンの深い洞察力で描かれており、その内容の深さから現代のファンタジー小説に与えた影響は計り知れないくらい大きなものです。
- 著者
- J.R.R. トールキン
- 出版日
物語の舞台はMiddle-earth(中つ国)。そこには人間、ホビット、トロル、ドワーフ、ゴブリンなど多種族が共存しています。話の中心となるのはサウロンの作った指輪。その指輪を破壊するため、ホビット族のフロドは旅に出ます。彼の仲間になるのは、人間、ドワーフ族、エルフ族、魔法使いの8人。行く手には様々な困難が待ち受けています。フロドははたして目的を果たすことが出来るのでしょうか……。
指輪物語の優れた点は、単なるファンタジー小説ではなく、人生の指南書とも言えるような素晴らしいメッセージを読者に届けてくれることにあります。例えば、物語中に登場するゴラム。元々はホビットでしたが、指輪への執着心から醜い姿になってしまいます。邪悪な面と純粋な面、双方の性格を持っており、その姿は物に執着し大切なものを忘れかけている私たち人間の姿にも重なります。
全10巻にもわたる壮大なストーリーなので、読み始めるのに覚悟がいると思うかも知れません。しかし一旦読み始めればたちまち引き込まれ、夢中になるあまり長さなど忘れてしまうはず。一生心の中できらきらと光る、宝石のような存在となるに違いありません。
本書は世界中で有名なヒュー・ロフティング著「ドリトル先生」シリーズ(全12巻、番外編2冊)の第1作目。1920年にアメリカで発表され、1922年にはイギリスで出版。その後全世界にその評判が広がりました。
主人公のドリトル先生は、「沼のほとりのパドルピー」に住む町の名医。動物好きが高じて獣医も兼ねることになり、ペットのポリネシア(オウム)から動物語を習得します。その評判は更に拡大し、ある時遠いアフリカにあるサルの国から「流行している疫病を治して欲しい」との依頼を受けます。
ドリトル先生はこの訴えを快く承諾。愛犬のジップたちを連れて、アフリカへ航海の旅に出発。その道中で原住民やどう猛な動物に襲われ、海賊船に遭遇したり、大嵐に見舞われるなど様々な場面に遭遇したりすることになります。しかしその度にドリトル先生は勇敢に立ち向かい、様々なピンチを乗り越えていくのです。
- 著者
- ヒュー・ロフティング
- 出版日
- 2000-06-16
ロフティングは少年文学に向けた自身の思いを、次のように本書に記しています。
「子供の読み物はまず面白くなくてはならない。しかし子どもに媚びたものではなく心ある子供が真に喜ぶものである。また子供にとって上乗なものは大人にとっても上乗なものでなくてはならない。」(『ドリトル先生アフリカ行き』より引用)
1冊のみでも十分読み応えのある内容になっていますが、本書はその大人気ファンタジー小説シリーズの1作目!ここからまだまだ長い物語が、花びらが開くように進んで行くのです。
子供への読み聞かせ用に購入したけれど、自分もいつの間にか物語に引き込まれていた!と驚く大人も多いはず。井伏鱒二によるすっきりとした日本語訳も、この作品のオリジナルの魅力を一層引き立てています。
本書は、アメリカのSF作家・ファンタジー作家であるル=グウィンによって長年にわたり手がけられた、壮大なファンタジー小説の第1作。幅広い読者層にわたって広く読み継がれている作品です。
ゲド戦記は全6巻の構成になっており、今回ご紹介するのはその第1巻目の『影との戦い』です。本書で語られるのは主人公ハイタカ(後のゲド)の少年期から青年期にかけての物語。
ハイタカは、大魔法使いオジオンに才能を見出され、自分に特別な魔法の力が備わっていることを知ります。得意になった彼はある日、魔法の学院で他の学生に自分の力を誇示しようと、使用を禁じられている呪文を唱えてしまいます。呼び起こしてしまったのは自らの「影」。そこから、「影」の存在に常に悩まされ逃げ続ける、ハイタカの苦しみの旅が始まります。
魔法の世界では全てのものに「真の名」があるとされていますが、この「影」には名前が存在しません。すなわち魔法が通用しないため、正面から向き合って対決しなければならないのです。
「肉を持たず、命を持たず、心を持たず、名を持たず、つまりはものとしてこの世になく、ただあるものといえば、ゲドが与えたこの世の外の恐ろしい力。」(『影との戦いーゲド戦記⑴』より引用)
- 著者
- アーシュラ・K. ル=グウィン
- 出版日
- 2009-01-16
本書にはハイタカに懐きペットのような存在になるオタク(ヘグ)が登場するのですが、滅多に人に懐かないこのオタクがハイタカに付いて行ったのは、彼が真の名である「ヘグ」を知っていたから。ヘグはハイタカが旅の途中ピンチに陥った時も助け、彼を支えます。
やがてハイタカはこの「影」と自身の関係の本質について考えるようになり、恩師オジオンとの再会をきっかけに、とうとう「影」と向き合う決心をします。そのときオジオンはハイタカに次のことを伝えます。
「人は自分の行き着くところをできるものなら知りたいと思う。だがな、一度はふり返り、向きなおって、源までさかのぼり、それを自分の中にとりこまなくては、人は自分の行きつくところを知ることはできんのじゃ。 川にもてあそばれ、その流れにたゆとう棒切れになりたくなかったら、人は自ら川にならねばならぬ。その源から流れ下って海に到達するまで、その全てを自分のものとせねばならぬ。」(『影との戦いーゲド戦記⑴』より引用)
ハイタカはその若さゆえに過ちを犯しますが、恐ろしい「影」から逃げず立ち向かっていきます。ハイタカの旅は、自分自身を見つめ受け入れる、内省の旅だったと言えるでしょう。オジオンの言葉は、ハイタカだけでなく読者に対しても、過去を振り返り自分の「影」をも受け入れることで前に進めるのだと示唆してくれています。
人生の節目で迷った時折に触れて読み返したい、ファンタジー小説永遠の名作です。
母国イギリスでロングセラーを記録している、「龍の家」シリーズ。本書はその第一弾。現代のイギリスが舞台で世界に入り込みやすく、親近感のわくファンタジー小説となっています。自分のとっておきとして秘密にしておきたくなる、魅力的な作品です。
「龍のすむ家」シリーズは2017年現在5冊まで発表されており、番外編も3冊あります。すでに世界で200万部を売り上げており、ファンタジー小説の傑作の一つとして後世に残る作品となるでしょう。
- 著者
- クリス・ダレーシー
- 出版日
- 2013-03-21
主人公のデービットはある日、奇妙な張り紙を目にします。そこには「下宿人募集ーただし、子どもとネコと龍の好きな方。」との募集要項が。その一軒家を訪れたデービットは、不思議な陶芸家の女主人リズと出会います。彼女はそこで娘のルーシーとともに暮らしていました。家は彼女が作った龍の置物であふれていて、2階には“龍のほら穴”という名前の部屋までありました。
下宿を決めたデービットにリズは、引越しのお祝いとして新しい龍をプレゼントします。それは片方の手にノートを持ち、鉛筆をかじっている陶器の龍でした。デービットはその龍にガズークスと名付け、リズに「一生大事にすること、決して泣かせたりしないこと」を約束します。
ガズークスがデービットの元にやって来てから間も無く、デービットの周りでは段々と不可思議なことが起こり始めます。突然動き、鉛筆で文字を書き始めたガズークス。デービットはガズークスと共に物語を書くことになります。ルーシーの誕生日祝いとして書き始めた物語でしたが、やがてその内容が次々と現実になり……。
龍が登場するファンタジー小説というと、壮大なスケールの物語を想像しがちですが、本書の世界観は丁度良い規模にまとまっており、全体的にほのぼのとした、親近感あふれるストーリーになっています。
児童文学としても秀作なので、お子様のいる家庭では親子揃って読書の旅を楽しむのも良いですね。
ある日、父に見捨てられた母親と2人の娘は、引っ越すはずだった家に3週間待たないと入居できないことを知り、途方に暮れます。しかし、楽天家の母はとんでもないアイデアを思いつきました。毎日閉店間際にデパートに来て隠れ、デパートが閉まっている間そこを住処にしようというのです。
「世界で一番素敵なデパート」といわれる豪華で巨大な「スコットレーズ」では、欲しいものが何でも揃っています。18時の閉店時間が近付くと親子はスコットレーズに向かい、ベッド売り場で寝たり、期限の切れた食べ物を失敬したりして隠れ住んでいました。
デパートに住むというのはもちろん悪いことなのですが、彼女たちは「万引きはしない」というポリシーだけは固く守り、デパート生活を謳歌していたのです。
- 著者
- ["アレックス・シアラー", "野津 智子"]
- 出版日
- 2005-11-02
しかしある日、親子に事件が起こります。宝石売り場に忍び込んだ泥棒と鉢合わせしてしまったのです。もちろん、泥棒を撃退すれば自分たちがデパートに住んでいることがバレてしまいます。3人は泥棒を相手にどう立ち回るのでしょうか?ハラハラドキドキの夜のデパートでの冒険が始まります。
ありえないストーリー、ありえない展開、なのに目が離せず一気に読んでしまう、ファンタジーの中でも異彩を放つ作品です。デパートに住むといっても、食べるものは?お風呂は?寝る場所は?など、様々な疑問がわいてきますが、3人の母娘はいろいろな工夫を凝らして生活していきます。
少しだけシュールで荒唐無稽な物語は、心配性で現実主義の長女・リビーの視点から主に語られていきます。楽天家の母との対比も見どころです。
子どもの頃に誰もが一度は妄想する出来事を、そのまま描いたようは本作は、楽しい夢のような作品です。終始ドキドキが止まらず、しかし家族の絆についても考えさせられる部分があります。ぜひ親子で読んでみてください。
「本日五時以降チョコレートは禁止する」
舞台はイギリス。選挙で選ばれたその名も「健全健康党」は、国民の健康を掲げてこう宣言しました。この政策に異議を唱える少年・スマッジャーとハントリーは、自由にチョコレートが食べられる世の中を取り戻すために立ち上がります。本作は元々イギリスのBBC放送がドラマとして作ったもので、これが評判となって後に小説化されました。
「チョコレート禁止法」を発表した健全健康党は、甘いものを国中から次々と処分していきます。法令に背くと逮捕され、「再教育」と称して恐ろしい洗脳を受けることになるのです。そこで、スマッジャーとハントリーが計画したのは「地下チョコバー」でした。ここでチョコレートを密輸しようというのです。
しかしそれが警察にばれ、スマッジャーは逮捕されてしまいます。出所したスマッジャーに会いに行ったハントリー。しかし、せっかく会えたスマッジャーの口からは、驚くべき言葉が発せられるのでした。
「チョコなんていらない」
- 著者
- アレックス シアラー
- 出版日
「もし甘いものが法令で禁止されてしまったら?」という非常に興味深いコンセプトで描かれる物語です。甘いものが大好きな大人と子どもが国に反旗を翻して戦うというストーリーは、反骨精神と情熱を感じることができます。
スマッジャーとハントリーが計画したチョコレートの密造は、やがて国家を揺るがす革命へと発展していくことになるのです。
会話が中心でテンポよく進み、時にはチクリとくる社会風刺も混ぜ込まれています。思想を押し付ける人間と、それに反発する人間、自由を奪われた人々が、それを取り返すまでのジュブナイル作品です。読み終わればスカッとして、思わず自由を噛みしめながらチョコレートを食べたくなります。
「自由を手に入れるには、ただ勇気があればいい」と教えてくれる作品です。今まで当然だと思っていたことが突然禁止されたら、あなたならどうしますか?
『モモ』で有名なドイツの作家、ミヒャエル・エンデが描いたファンタジー小説で、『ネバーエンディング・ストーリー』として映画化もされた有名作品です。デブでのろま、いつもいじめに遭っている冴えない主人公・バスチアンは、いじめっ子から逃れるために入った古書店で『はてしない物語』という一冊の本を見つけます。
夢中になって読んでいるうちに、「ファンタージエン」という本の中の異世界へ導かれたバスチアンは、滅亡寸前のファンタージエンを救って英雄となり、何でも願いが叶う力を手に入れます。しかし、その代わりに現実世界での記憶がひとつずつ失うことに。
ファンタージエンで友人になったアトレーユは、元の世界に戻るよう彼を説得しますが、バスチアンはだんだんと帰る気をなくしてしまうのでした。
- 著者
- ミヒャエル・エンデ
- 出版日
- 2000-06-16
勉強はできない・運動音痴、けれど想像力は人一倍のバスチアン。母親はすでに他界し、父親は彼に無関心でした。
バスチアンが古書店で手にした『はてしない物語』は、「幼ごころの君」という女王が統治する異世界、ファンタージエンの物語です。そのファンタージエンを今は「虚無」が支配していました。そんな世界を救うため、アトレーユという少年が旅に出る、というストーリーです。そして、バスチアンも本の中へ。
本の世界に入ったバスチアンは、現実世界と違って見目麗しく強い少年となっており、魔法の剣を装備していました。望んだことは全て叶い、周りからもちやほやされたことで、バスチアンは少しずつ増長していきます。やがては友人だったはずのアトレーユや、幸いの白い竜フッフールとも対立、彼らを追放したバスチアンは、自分がファンタージエンの王になろうと立ち上がるのです。
ただの異世界冒険譚というだけではなく、これまで否定されてきた少年が力を手にすることで落ちていく様子も、この作品には描かれています。大きな世界と国を意のままにできてしまったことで道を踏み外すバスチアンは、とても人間くさくてリアルに映ります。
彼はこの色彩豊かなファンタジー世界をどのようにしてしまうのでしょうか。映画とはまた違った展開にも注目です。
ナルニア国物語は、イギリス人作家C.S.ルイスによって描かれた、全7巻に及ぶ名作ファンタジー小説。映画化もされているので耳にした方も多いでしょう。読み進めるうち、いつの間にかその世界観の虜になってしまっている自分に気づくはず。
ナルニア国物語には全7巻を通して様々な出来事が描かれています。巻によっては登場人物や設定がかなり変わってくるので、「第1作目は好きだけど2作目はそこまで……」というように、それぞれ好みが分かれてくるかもしれません。しかしそこが逆に読者を飽きさせず、新たな読者層を獲得し続けている秘訣とも言えるでしょう。
まず第1巻『ライオンと魔女』。始まりは第二次世界大戦中のイギリスが舞台。ある4人兄弟がロンドンから田舎町へと疎開してきます。その町に住む老教授のもとでお世話になることになった4人は、ある日教授の古いお屋敷へ探検に入ります。そこで見つけたのが、ナルニア王国への入り口でした。白い魔女に支配された、雪一面のナルニア国。兄弟は正義のライオン、アスランと出会い、ナルニア国を救うための闘いに繰り出すのです。
- 著者
- C.S.ルイス
- 出版日
- 2000-06-16
第1巻から第4巻までが一つの話の区切りとなっており、第5巻からは前述した4人兄弟がかつて王や女王としてナルニア国を統治していた頃の、ナルニア国黄金時代について描かれます。その後の第6巻はナルニア国誕生の物語を描いており、それまでの様々な謎や話の流れが整理され、読者としてある種の達成感が味わえる作品になっています。
そして最後を締めくくるのは第7巻『最後の戦い』。ナルニア国崩壊の危機が訪れ、正義のライオン、アスランも苦戦します。やがて最後の謎が解けたとき、物語は終了します。最後の結末には人によって様々な意見・感想があることでしょう。
全7巻をまとめて表現するなら、最初の4巻はどちらかというと冒険のような物語。そして残り3作は著者の心情が強く現れた教訓的な物語となっています。
元々は子供向けファンタジー小説として執筆された本作。しかし間違いなく大人も、どんな年代の方でも楽しんでいただけること間違いなしの「1度は読んでおきたい名作たち」のひとつです。
いかがでしたか?どれも人気のある海外ファンタジー小説です。面白そうだな、と思ったときが読みどきですよ。どれも完結しており、一気読みできるものばかり。この機会に読んでみませんか?