オシャレ作品と見せかけて女子心理の痛いところを突き、ハイテンションなギャグをかましてきたと思えば、ドシリアスな場面を描く。変幻自在の漫画家東村アキコの魅力をご紹介いたします。
東村アキコは、1975年10月15日生まれ、宮崎県の出身です。宮崎県の高校を卒業後、金沢美術工芸大学美術科油絵専攻に進学。大学卒業後は会社員として働きながら漫画を描き、1999年「フルーツこうもり」でデビューしました。
以後はオシャレながら女子の本質を突いた作品を発表し、女性を中心に人気を集めています。少女誌を中心に活動していますがジャンルは幅広く、自身の育児の様子を描いた『ママはテンパリスト』は、子育てをする女性のみならず、男性からの支持も集めました。
トーク力に定評があり、美人漫画家としても知られています。
過去を思い起こし、あの時こうだったら、あの時もしもああしてくれれば、そんな風に考え、現実逃避をし、根拠のない仮定を積み続けて独身街道をまっしぐらに突き進む、鎌田倫子、33歳。同じくアラサー独身女子である山川香、鳥居小雪とともに居酒屋で女子会を開催してくだをまいていたところ、突然金髪のイケメンからぐっさりささる一言を貰います。
「30代は自分で立ち上がれ もう女の子じゃないんだよ?おたくら」(『東京タラレバ娘』より引用)
イケメンモデルKEY(キー)の一言ですが、痛い、痛すぎる。30代は女の子じゃない。この現実はアラサーの心にかなりのダメージを与えます。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2014-09-12
吉高由里子主演のドラマ原作としても話題の『東京タラレバ娘』は、「○○だったら」、「○○してれば」と言い続けて独身のままでいる30代女性3人が主人公です。東村アキコの友人たちの話が元になっており、いつまでもイイ男待ちしてどうする、という愛のツッコミがぎっしりと詰め込まれています。
愛のムチは作中にタラとレバーというキャラクターになって登場。「タラレBar」というお悩み相談コーナーも担当しており、可愛い顔をしていますが、アラサー女子に現実を突きつけ、突き放してくるところが東村アキコ作品らしい切れ味に繋がっています。
倫子は過去に交際を申し込まれたことのある早坂と過去に複雑な事情を抱えたKEYとの間で揺れ、香は元カレでセフレでもあるミュージシャンの涼との関係に悩み、小雪は不倫と知りながらハマっていってしまいます。
不毛な恋から抜け出そうともがき、また沼に落ちることを繰り返す香と小雪に対し、倫子の恋は様々な難題と現実が降りかかるものの、常に真っすぐ。痛々しさもありますが、その必死さが逆に清々しくもあります。
前に進めない女子は、東村アキコ流の愛のムチとエールで背中を押してもらえますよ。
『東京タラレバ娘』について紹介した<大人恋愛漫画『東京タラレバ娘』がリアル!【8巻ネタバレ注意】>の記事もあわせてご覧ください。
どうせだったら美人に生まれたい、というのが世の多くの女性の本音でしょう。しかし同時に、多くの人から一方的に好意を持たれる要因にもなり、美人だからといって、それだけで幸せとは限らないのかもしれません。
美人であったためしはないので美人の味わう苦労を想像することしかできませんが、あまりにも絶世の美女であるが故に薄幸な人生を歩む女性を描いたコメディ漫画が本作『主に泣いてます』。ドシリアスではありません。あくまでもコメディというのが東村アキコ作品の良いところ。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2010-08-23
『主に泣いてます』は、人気画家青山仁の愛人兼モデルである絶世の美女、紺野泉が、幸せを求めて非モテ道を極めんとする姿を描きます。美人なら美人でええじゃないか、と思わないであげてください。誰もが一目ぼれするほどの美貌を誇りながら、頭は少し弱くて人付き合いが苦手。そんな泉が唯一望んでいることは、好きな人とずっと一緒にいること。それすら難しいとなると、同情したくなるのではないでしょうか。
泉は男性にモテなくなるために、変なコスプレをしたり、変装したりするなど、斜め上の努力を惜しみません。美人であるが故に家族にも絶縁され、働く場所も見つけられないというのは、やはり大きな不幸でしかないのです。
「生まれ変わったらブスになりたい 明るくて 面白くて 誰からも愛される素敵なブスに」(『主に泣いてます』より引用)
美人であるが故に薄幸である泉の、真に迫る言葉ですが、彼女はひとりではありません。面倒を見てくれる女子中学生緑川つねや、泉を意識しながらもゲイと嘘をついてまで協力してくれる赤松啓介、泉の住むアパートの大家トキの存在が生きづらい泉を支えています。
いき過ぎた美は不幸の元である。笑いながらも、少し背中がうすら寒くなる。そんなリアリティのある作品です。
物心がついてきて、大人ってもしかしてバカなんじゃないか、と思う時。反抗期の始まりでもあるわけですが、自由を謳歌するが故に怖いもの知らずの10代に、大人たちは手を焼きつつ、振り回されないように踏ん張るしかないのです。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
『きせかえユカちゃん』は、おしゃれが大好きな小学生、湯川ユカを主人公としたコメディ漫画です。身長163㎝、ランドセルを背負っていなければ小学生には見えないという、大人っぽい容姿をしています。将来の夢はスーパーモデルというユカですが、公式設定で「精神年齢が6歳」という、正真正銘のアホの子です。自分に関わる恋愛感情には鈍いものの、他人の恋に首を突っ込むのは大好き。
姉のユミの片想い相手に自由研究と称して近づき、好きな女性のタイプを探るというエピソードは、同じことされたら大迷惑だなぁと思いつつ、ドレスやチアガール、浴衣など様々な格好で登場するユカの姿が愉快。友達のみどりちゃんが小柄であるため、ふたりのデコボココンビっぷりも可愛らしいのです。
ユカには一切邪気が感じられません。見た目は大人のようですが、子どもの無邪気さで行動し、騒動を巻き起こします。結局は上手くまとまってしまう部分もあるので誰もユカを怒れず、まぁしょうがないかな、と許してしまうところは人徳なのでしょう。純粋に、無邪気に子どもの時間を謳歌するユカが、どんな大人になるのか見てみたい。そんな風にも思ってしまう、気軽に楽しめるラブコメ作品です。
上杉謙信は、長らく内乱の合った越後の国を統一し軍神と称され、織田信長からも恐れられる力と仁義に篤い人柄を兼ね備えた、現代でも人気のある武将のひとりです。生涯妻をもたない妻禁制を貫き、子は全員養子だったこともあってか女性説が唱えられている人物でもあります。
その女性説を題材に、長尾景虎(ながおかげとら 幼名は虎千代)、のちの上杉謙信を描いた作品が『雪花の虎』です。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2015-09-11
長尾家の次女として生まれたものの、母の夢枕に毘沙門天が立ったことから、姫武将として育てられることになった景虎。毘沙門天の化身という予言の通り、戦の才覚を表していきます。
兄の晴景(はるかげ)は身体が弱く、大将とするには少々頼りない存在。晴景自身は才覚ある妹を将とすることに賛成している風でもあり、母の紺の悩みの種でもありました。景虎の転機は、春日山林泉寺に戦の勉強のために預けられた5年間でしょう。愛情をもって接してくれた宗謙(しゅうけん)の存在が、景虎が成長していくうえで、大きな影響力をあえていくのです。
越後はとかく内乱が多い土地でしたが、それらを平定しながら、景虎は将として成長していきます。巻を重ねるごとに後に武田信玄となる武田晴信や、織田信長といった武将も登場。景虎と晴景、宗謙との関係を絡めながら、物語は歴史を追っていきます。
姉のように自分も嫁に行くのか、と問いかけた景虎に、宗謙が語り掛ける言葉が、運命の始まりのように思えて、鳥肌が立ちました。
「女子のままでいい 女子のままで強くなればいい 賢くなればいい そしていつかこの越後をお護りくだされ あなたにしかできないやり方で」(『雪花の虎』より引用)
ギャグテイストのものが多い東村アキコ作品の中でも、少々テイストが違ってくるのが本作。世を席巻するグルメ漫画の中でも、異色作と言って間違いないでしょう。昭和レトロな雰囲気漂う中で、美食と謎を描きます。
明智五郎は、表参道に「江戸川偵事務所」を構える探偵。「東京美食倶楽部」なる会を主宰するほどの美食家で、美味しいものをこよなく愛しています。ある日女性から夫の浮気調査の依頼を受けますが、調査結果を報告したその夜、浮気をしていた夫が刺殺されているのを発見。犯人は妻だと推理した明智は、行きつけのレストランに依頼主である女性を招待しました。
最後の晩餐を楽しんだ女性でしたが、その後明智の目の前で崖から飛び降りてしまいます。亡くなったと思いきや、明智の元に「マグダラノマリア」と書かれた一通のエアメールが届き……。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2016-02-25
単純に美食と推理が合体しただけではないというところが、この作品の面白いところ。
五郎の美食へのこだわりは随所に見られ、食事のたびに写真を撮る女性に対する辛口な意見を言うこともあります。弁当屋兼明智の助手でもある小林苺や、マナーに問題があるものの美食家である刑事の上遠野も加わり、物語は東村アキコらしいコミカルな展開に。
怪しい雰囲気漂う美食と推理の共演をお楽しみください。
好きなものに熱中しているときは、誰しも楽しいもの。しかし、熱が入りすぎるとドン引きされ、趣味以外見えなくなって実生活がおろそかになってしまうこともあります。オタクはそのあり余る情熱が故に、世間から遠ざけられてしまう存在。だからこそ少しだけ卑屈で、前に踏み出す勇気を持てずにいるのです。
オタクというと、2次元好きを想像される方も多いかもしれませんが、『海月姫』に登場する女子たちは、一つの物に対して異常に熱中しているオタクです。
主人公の倉下月海(くらしたつきみ)はクラゲオタク。タコクラゲのクララを溺愛しています。長身のまややは三国志オタク。身の回りの物や人を三国志の登場人物に当てはめるトークを始めると止まらなくなります。ばんばは鉄道マニア、ジジは枯れ専と、女子力は底辺であるものの、自分の好きなものに対する情熱は誰にも負けない女子が集う場所、それが昭和レトロなアパート「天水館」なのです。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2009-03-13
土地再開発により取壊しの危機が訪れた天水館を守るため、女装男子鯉渕蔵之介の力を借り、オタク女子たちが一致団結。対極にあるようなファッションの分野でお金を稼ごうと奮闘する姿を描いています。
眼鏡をとったらイケメン、前髪切ったら美女、というのはフィクションの世界だけのはなしですが、本作は、中身は奇声を上げる女子と知っているため、逆にちょっと残念な空気になってしまうのが、嫌味がなく良いところでもあります。
クラゲオタクだった月海は、クラゲをモチーフにしたファッションブランドでデザインを描きますが、中身はオタクのまま。自信が無くてクラゲに情熱を注ぐ、変わらない月海の姿に、何故かほっとしたりもするのです。
「鎧を身に纏え!!!!」(『海月姫』より引用)と蔵之介は檄を飛ばしますが、尻を叩かれてようやく立ち上がるオタク女子たちの、仲間意識と連帯感は胸打たれるものがあります。世のオタク女子のたくましさと頼もしさを感じる、笑って楽しめるエンタメ作品に仕上がっています。
東村アキコは速筆な漫画家です。1日の作業時間は約8時間程度。1ヵ月に作成するページ数は3桁に上り、一度に連載を3~4本も抱える漫画家は東村アキコくらいなものでしょう。『かくかくしかじか』は、藤子不二雄Aの自伝的漫画『まんが道』に着想を得て、女性漫画家版『まんが道』を作ろうと、自身がいかにして漫画家になったのかを描いていきます。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2012-07-25
美大出身の東村アキコ。美大受験にはデッサンなどの実技が必須となっており、美大を志す人は、大概絵画教室に通っています。美大時代よりも美大に合格するまで通っていた絵画教室でのデッサン量が凄まじかった、と語る東村アキコ。恩師の日高健三は、本作において抜群の濃いキャラクターを誇っています。
日高先生の特徴は、とにかく絵の事しか考えておらず、超スパルタというところ。デッサンに対するダメ出しは、絵を竹刀で叩く、スランプに陥ってもキャンバスに顔を押し付けさせてでも描かせる、逃亡すれば地の果てでも追いかけてくるという、かなりインパクトのある人物です。美大志望者ではなく、絵を習いに来る老人や子供にも同じ態度というから驚きですが、それだけ誰に対しても飾らず、分け隔てない人物なのだろうと思わせられます。
あくまでもメインは東村アキコが漫画家になるまでのあれこれなのですが、その中でも強烈に心に残った人として日高先生は登場します。
過ぎ去った時間を振り返ったときに、不意に思い出されてしまう。日高先生はそんな人物であるように思います。女性漫画家東村アキコの辿ってきた道を、感じてください。
『かくかくしかじか』については<『かくかくしかじか』の名言全巻ネタバレ紹介!東村アキコと日高先生の絆とは>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
東村アキコは、今でこそオシャレでちょっと痛い大人女子を描いた作品や、コメディ色が強い作風で知られていますが、デビュー作は正統派な少女漫画でした。絵柄も随分と違く、線が柔らかくて少女漫画的。ファッションセンスは当時から抜群で、限られた色で表現された表紙は、決して派手ではないのに自然と人目を惹きます。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2004-11-15
デビュー作「フルーツこうもり」を含む4編が収録されているのが短編集『白い約束』です。置いて行かれた猫とともに一目ぼれした相手を待つ女子大生の物語、表題作の「白い約束」、フラれたOLが、元カレにちょっとした復讐を企てる「フルーツこうもり」、大好きなアイドルの結婚と、自作のポエムを家族に読まれたショックで、ヒッチハイクで家出を実行する女子高生の物語「ヒッチハイク」、東村アキコが猫派になったエピソードを描くコミックエッセイ「私がネコ派になったわけ」。
キャラクターのツッコみ方やどこか行動的であるところに、現在の東村に通じる部分も感じ取ることができます。
正統派少女漫画ではあるものの、全体的にほろ苦くビターテイストであるところが特徴の本作。正統派な少女漫画の中に含まれた、ピリリとしびれる東村アキコテイストをお楽しみください。
日本の芸能人に憧れ、グリーゼ581のイプシロン星人からはるばるやってきたメロポンは、とあるビルの屋上に不時着します。そこにいたのは、イケメンな便利屋の青年、若様。母が宇宙を信仰する新興宗教で教祖をしているため、実家にはあまり帰っていません。宇宙人であるメロポンの登場に、事態はややこしいことになっていきます。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2013-10-23
全体的なノリは子供向け教育番組的なのが『メロポンだし!』の特徴です。連載時はモノクロでしたがコミックスではフルカラーになっており、よりポップな雰囲気に仕上がっています。
メロポンのモデルは、東村アキコの愛息、ごっちゃん。人気育児漫画『ママはテンパリスト』以来の登場であり、待ってました、と思わず声に出してしまった方も多いでしょう。メロポンの行動がごっちゃんと重なり、成長を感じてほっこりできます。
芸能界が隅々まで腐っていることを嘆き、小劇団を立ち上げようと奮闘するメロポンと若様のやり取りも可愛い本作。子どもの目線から見た、ハチャメチャで予測不可能な芸能界への道のりが展開されます。
退屈な日曜を壊すような、強い刺激を求めているランジェリーショップの店員、和子。近所で発砲事件が発生したと聞いて、非日常の気配を感じてそわそわしています。そんな中出会った中学教師、瀬戸は、大のメグ・ライアンファン。担当する生徒にメグ・ライアンの出演する映画を見せて呆れられている彼の憧れの女性は、ずばりメグ・ライアンを日本の女性にした感じの人。
そんな瀬戸の前に理想の女性和子が現れます。スリルを求める和子と、どうにかして和子と会いたい瀬戸の奮闘がコミカルでつい笑ってしまうのが「恋のスリサス」です。正統派の少女漫画というよりは、路線はコメディ寄り。冷静にツッコミを入れ、恋に迷走する瀬戸のために授業抜け出しの許可もしてくれる生徒の、協力体制が笑えます。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
青春のほろ苦さが心に響く「永遠のスクリーン」、父の過去を清算するため温泉場を訪ね歩いている青年が登場する「卒業旅行」など、少女漫画的な短編集ではなく、より幅の広い作品を描いていこうという意欲が見られます。
漫画家として油の乗った年代に差し掛かり、怒涛のリズムでヒット作を生み出し続ける東村アキコは、叙情派ギャグ漫画の天才・西原理恵子に「おそろしいこアキコっ」と言わしめる時代の寵児的逸材に成長しつつあります。
そんなヒットメーカーは、どんな成分でできているのか? 読み取るための入門書としておすすめなのが『東村アキコ解体新書』です。
- 著者
- 出版日
- 2014-12-12
『海月姫』、『ママはテンパリスト』、『主に泣いてます』、『かくかくしかじか』、『きせかえユカちゃん』、『ひまわりっ~健一レジェンド~』、『東京タラレバ娘』と選りすぐりの人気作に著者の解説が……。さらにアシスタントのみならず『ひまわりっ~健一レジェンド~』のモデルとなった実の父親のインタビューまで収録されています。
コアなファンの好奇心を満たすと同時に、漫画好きには少女漫画のヒットメーカーの特徴を読み解く手がかりになる興味深い1作でもあります。「東村アキコの7つの魅了」からは、漫画家のみならず、今求められる旬なクリエイターに共通するスキルを読み取ることができます。
美容雑誌の体験漫画といえば、スピード感とキレのある笑い、圧倒的な画力が東村アキコと共通している安野モヨコ。彼女もまたオシャレな作風で一世を風靡したオシャレ少女漫画界の女帝です。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2016-09-13
本作品は同じく漫画家が美容体験する内容ながら、その作風は正反対。質の高い美容法を求め「いい女」になるために試行錯誤をする姿を描いていた『美人画報』に対し、「なんでもいいから最新美容で急いでキレイに!」という、即物的な勢いがあるのが本作です。
同世代には非常に参考になるビフォーアフターの写真付きで、美容医療の威力に感心しつつも、実は、東村アキコという人物像にも思いを馳せることもできる内容です。彼女は美容方法を試しながらも変化してしまった自分に愕然とし、動揺するのです。
美容ひとつで「おばさん」にも「綺麗なお姉さん」にも振れる微妙な年頃の女性には、リアルな「揺らぎ」を感じて恐怖し、実際にお店に行って見たくなること請け合いです。
勢いのある新人漫画家だった東村アキコを一気に超売れっ子に押し上げたのが本作。題名の通り、主母親目線がリアルに描かれた育児ギャグマンガです。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2008-10-17
愛息の「ごっちゃん」のシュールながら愛らしい言動の数々もさることながら、「泣く息子より大声で泣いてみる」などなど、子育てのストレスを思いもよらない方向からガス抜きする東村アキコの行動が痛快な作品です。
実際、東村アキコが体験した子育てがベースになっているだけあってリアリティに溢れ、突拍子もない個性を振りまきながら成長する「ごっちゃん」の姿は、子育て中の母親にとっては共感しつつ息抜きになる漫画なのではないでしょうか。また、子育て中ではない人々にも、東村アキコの我流子育てとごっちゃんが面白くてサクサク読めてしまうものとなっています。
実の父親をモデルにした「健一」という人物を中心に据えて、作者の美大卒業後の会社員時代から漫画家になるまでの経緯を描いた、東村アキコ得意の自伝的漫画です。
- 著者
- 東村 アキコ
- 出版日
- 2015-09-11
一言で表すなら、とにかく登場人物のキャラが立っています。そして、ショートコントのような彼女特有の疾走感あるギャグセンスがフルスロットル。特に、主役級の父親・健一の天然で型やぶりながら憎めないキャラクターが秀逸です。
父親を主軸に置いた少女漫画史に残るギャグマンガと言えば、発表から30年以上たっても根強いファンを持つ伝説の岡田あーみんの作品『お父さんは心配性』を思い出します。疾走感を超えてアウトな暴走特急と化していた『お父さんは心配性』へのオマージュ的なセリフも登場します。
現実に存在したらアウトすぎる『お父さんは心配性』のパピーと比べると、健一はかなりマイルドかと思うでしょうか?しかし「父、健一に関するエピソードはほぼ実話です」
との作中の言葉に驚かされます。東村アキコの原点を読んでみましょう。
作品によって多彩なカラーを魅せる東村アキコ作品。変幻自在の東村ワールドに、ぜひ浸ってください。