永井豪の隠れた名作ギャグ漫画おすすめランキングベスト5!

更新:2021.12.16

『デビルマン』という漫画は知っている人も多いと思いますが、作者である永井豪の他の作品は知っていますか? 実は永井は知る人ぞ知るギャグ漫画の名手。そこでこの記事では、永井豪の隠れた名作ギャグ漫画をランキング形式にて紹介します。

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『デビルマン』など名作を多数描いてきた漫画家界の巨匠、永井豪

永井 豪(ながい ごう)は1945年石川県生まれの漫画家です。石ノ森章太郎のアシスタントを務めていた経験があります。漫画家デビューは1967年で、掲載された作品は『目明しポリ吉』でした。

『デビルマン』や『キューティーハニー』など、アニメ化された作品も多数あります。2018年1月には、漫画家人生50周年を記念して、『デビルマン』にオリジナルの物語もまじえた「DEVILMAN crybaby」がnetflixでアニメ放送されました。

『デビルマン』の原作の詳細については<名作漫画『デビルマン』5分でわかるヤバさ!最終巻でヒロインが……!【全巻ネタバレあり】>の記事でご確認ください。

性やバイオレンスを要素として描きこんだ作品は、多くの漫画家に影響を与えたことでしょう。

今回は、永井豪のギャグ漫画のなかから、おすすめの作品を5作紹介していきます。愛読していた方も、馴染みのない若い方も、ぜひ手にとってみてください。

5位 明るい乞食のポジティブギャグ漫画 『オモライくん』

世の中の数ある漫画の中でも選りすぐりに不潔な漫画、それが『オモライくん』です。

オモライくんとおこもちゃん、そしてオモライくんの育ての親コジじいの3人が主な登場人物。なんとこの3人、全員乞食なんです。と、言っても卑屈な乞食の物語などではなく、常に笑顔でポジティブに乞食ライフを堪能する姿が描かれています。食べ物はゴミ捨て場から見つけ出し、たくましく生きているのです。

しかし乞食であるにも関わらず、オモライくんは小学校に通っています。周囲に迷惑がかかるほど汚く、教師の中にはその不潔さに発狂してしまう者も。乞食の小学生が主人公だなんて、今の社会だったら受け入れられないような内容ですよね。そんな3人の登場人物たちは、誰が見たって不潔なんですが、本人たちにそんな自覚は全くないんです。だから明るく元気に生きていけるんでしょうね。
 

著者
永井豪とダイナミックプロ
出版日

オモライくんは太っているように見えますが実は痩せていて、脂肪のように見える部分は全て垢。乞食なため、体中に垢が溜まっているんです。常軌を逸していますよね。

そんなオモライくんには、垢を使ってなんでも作れるという特技があります。垢で顔を変えることだってできるのです。……こんなことは普通考えられませんが、ギャグ漫画なのでなんでもありなようです。さらに、どんなものでも腐らせることができるという特技も。「信じられんがこの氷腐ってる」(『オモライくん』より)と、氷まで腐らせてしまう驚愕の不潔度を誇っています。

人間の暗部をブラックユーモアとして描いたこの作品。なぜここまで不潔というものを極めた作品を作ったのか疑問に思うほどですが、その中には哲学や神聖さすら感じます。

壮絶な人生を明るく生き抜いたオモライくん。そんな姿にどこか寂しさを感じ、そして勇気を貰うこともできる漫画となっています。ギャグ漫画でありながら闇が深すぎるため、悲しくなってしまうかもしれませんが、おすすめの一作です。
 

4位 男の娘の元祖?女として編入されされた男の学園生活 『おいら女蛮』

男子中学生・女蛮子は新しく編入することになった女尊学園。喧嘩っ早い蛮子はなんども退学の憂き目にあっており、女尊学園も退学させられたあとに編入した学校でした。

しかしその女のような名前のせいで女子として学校に通うことになった蛮子は、開き直ってセーラー服をまとい女子生徒として学園生活を送ることを決めます。そして女番グループ・パンス党の番長を倒し、別の女番グループに狙われることになり、体育部からは勧誘を受けることになるのです。

著者
永井 豪
出版日

もし女として女子校に通うことができたら……という妄想を具現化したような作品とも言えますね。そして随所にお色気シーンが設けてあり、いかにも昔のギャグ漫画だなといった作品になっています。

しかしながら漫画の絵を見る限り女蛮子はどう見ても男であり、名前だけで女と間違われるなんでおかしなものです。それでも男の娘というキャラ設定の先駆けか的立ち位置にある作品なのかもしれませんね。

クラスにのマドンナ的な女の子・男男子のことを女蛮は好きなんですが、女の子なのに男男子だなんて、変な名前過ぎますよね。作者・永井豪の異端さが際立っています。

永井豪作品のネタや、ほか作者の漫画のパロディ出てきたり、昔ながらの漫画をよく知っている人にとっては二度おいしい作品となっているのではないでしょうか。
 

3位 ゲゲゲの鬼太郎のパクり!?でも面白い妖怪マンガ 『ドロロンえん魔くん』

地獄界の権力者・閻魔大王の甥であるえん魔くんは、かなり強気で過剰な自信家。その破天荒すぎる行動の末に、閻魔大王直々追い出されるように人間界の日本へと向かうよう命ぜられます。妖怪から人間を守るように言われていたえん魔くんは、そこで出会うツトムくんと共に周囲で巻き起こる妖怪が関係した事件を解決していくという物語。

読んだ人は、「え、水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』に似てない?」と思うことでしょう。むしろ、似すぎているのですが。たとえば鬼太郎は髪の毛で妖怪を探知し、目玉親父が付き添いほかの仲間とともに妖怪と戦います。一方、えん魔くんはというと、眉毛で妖怪を探知し、博識のシャポーが付き添いほかの仲間とともに妖怪と戦う。 設定がほぼ一緒なんですよね。

それもそのはず、テレビ局のプロデューサーからの依頼で永井豪が原案を考えた作品とのことで、そもそも依頼の時点で下敷きに『鬼太郎』があったわけです。それでも『鬼太郎』の劣化版にはならず、1つの作品として確立していったのは、永井豪という実力ある漫画家の手腕のなせる技。

水木しげるとは全く違った作風であることと、敢えて西洋的な服装を主人公たちに着させた点など、『鬼太郎』との違いや似ている点を探しながらながら読んでみるのもおもしろいでしょう。ちなみに、アニメにおけるえん魔くんの声優は、なんと野沢雅子。これまた、初代鬼太郎と同じなんですよね。

物語上、さりげない社会への批判などを交えつつも、暗いシリアスキャラがほとんど出てこず、明るくギャグ漫画らしいキャラクターが私たちを楽しませてくれます。
 

著者
ダイナミックプロダクション
出版日
2011-06-04

アニメ化は1973年にされましたが、2011年4月からは『Dororonえん魔くん メ〜ラめら』という、『ドロロンえん魔くん』を原作としたリメイクアニメ作品も製作されています。時代設定は原作当時の1970年代という昭和となっています。

原作と同じように永井豪作品らしくお色気描写もありますが、現代の地上波放送ということもあり「健全なお色気」として描かれることになっています。初代えんまくんとは違って萌えアニメ的な立ち位置の漫画となっているので、リメイクアニメをまず観てみて気になったら原作を手にとってみることもいいかもしれませんね。
 

2位 お馬鹿が行き過ぎたお色気ギャグ漫画 『けっこう仮面』

顔を隠して体を隠さない怪人少女「けっこう仮面」が活躍する物語。進学率100%の全寮制のスパルタ学園では、「お仕置き」という名の過剰な体罰を行われていました。

そんな今だとPTAが黙っていない学園に、けっこう仮面はやってきたのでした。ほぼ全裸で現れ、男にとって魅惑的な技の数々で倒されるお仕置き役の教師は「けっこう!」と叫び倒れていきます。学園長であるサタンの足の爪は学園内にけっこう仮面がいると考え、生徒らを身体検査にかけるなどしてあぶり出しにかかります。

しかし学園長は失敗に失敗を重ね、ついにけっこう仮面自体誰だか明かされずに、最終話までその正体が明かされることはありませんでした。
 

著者
永井 豪
出版日
2004-04-27

けっこう仮面はいつもマスクを被っており、そのほか手袋とマフラー、ブーツ以外の着用物はなく、つまりほぼ全裸で颯爽と現れます。その赤一色で統一された少ない着用物にヌンチャクを装備し、妙な格闘技を使い戦うのです。必殺技は、 敵の顔面めがけて大股開きで飛びついて呼吸困難させるという「おっぴろげジャンプ」。しかしながら、そんな必殺技なんていらないほど、魅力的な体が一番の武器でもあります。そんな変態なのに女子生徒からは「けっこうのおねえさま」と慕われているのが不思議なところです。

「どこの誰かは知らないけれど カラダはみんな知っている」というのがこの作品のキャッチフレーズで、けっこう仮面は誰なのかを考えるのがこの作品のテーマであり楽しみの1つでもあります。作中で様々なヒントが散りばめられているものの、けっこう仮面の正体は読者にも知らされませんでした。作者である永井豪は途中まで何も考えていなかったと明かしており、つまり初期段階では誰にもその正体はわかっていなかったということなんですよね。

最初は読み切り漫画として掲載されたものだったんですが、けっこう仮面の正体が一向に明かされないため何度かの読み切りを終えた末に連載化しました。

この作品は出てくる女がだいたい裸にされるなど、はっきり言って昔ながらのエロ漫画で、今では描いてはいけない体のギリギリ部分まで描かれていたりもします。一応実写化もされていますがここでは詳細は省いておきますね(理由があります)。
 

1位 謎の少年・南友の周りで起こるへんてこな日常 『イヤハヤ南友』。

いやはて県という架空の県を舞台に家早家と果扨家という実業家財閥の対立をを描いた漫画です。

家早家は親戚の子供である家早南友を預かることになります。が、預かったはずの家早南友は実は偽物であることが判明。偽物である家早南友の口癖が「いやはや……なんとも……」だったがために間違えてしまったのですね。家早家の体面を守るためにもこの見ず知らずの少年を10年間も預かることになってしまいました。同い年だった家早家の家早さよこは、変わり者な南友と権金学園に通うことになりましたが、そこでは対立財閥である果扨家と冷戦状態あって……という話。
 

著者
["永井 豪", "ダイナミック・プロ"]
出版日

家早家の南友とさよこには、イヤハヤ十人衆という部下を従えており、敵対関係にある果扨家に従属するハテサテ十人衆と対立することになります。イヤハヤ十人衆は美女揃いでありそのメンバーがお色気要員として物語を彩ります。権金学園で行われた保健体育試合では美女が乱舞し、なんともムフフな場面が多く描かれています。

なんとこの作品5位の『オモライくん』がゲストキャラクターとして出ているんです。相変わらず汚いオモライくんですが「あんがとー」で終わった作品からの再出演は感動ものですね。

途中まではギャグ漫画なのに最後にかけてはシリアス展開となり、両家の全面戦争から最終戦争へと向かっていきます。そしてなんと南友は新世界のアダムとなり、さよこと十人衆は11人のイブとなっていくのです……。

家早家の人間は変な名前の人ばかりです。南友(なんとも)から始まり、勿友(もっとも)、吐鉄面(とてつも)、獰猛(どうも)、松卓(まったく)だどなど。果扨家も、動摺(どうする)、紅蛇(こうじゃ)、胴下(どうした)などなど、へんてこりんな名前が数多く登場します。永井豪の名付けのセンスは独特のものがありますよね。

ボロボロのコートをまとってたり、家早家の前で犬の餌を食ってたりとよくわからない少年だった南友。オモライくんとキャラ設定が少し似ている南友ですが、最初からの謎であった南友の正体とは何なのか。それは漫画を見て確認してみてください。
 

いかがだったでしょうか。『デビルマン』で有名ですが、ギャグ漫画家としても優秀だったんですよね。今では考えられないようなエロティックな漫画もあり、規制が緩い時代に描かれたなんともおかしな世界を一度読んでみてはいかがでしょうか?

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