『デビルマン』は、『キューティーハニー』など数々の名作を世に生み出した漫画家・永井豪の作品。連載がスタートした1972年は冷戦真っただ中。当時の閉塞感と、世界が終わるのではないかという恐怖が根底にある作品です。全世界での単行本発行部数は累計5000万部を記録し、世界中で人気のある作品です。
本作は漫画だけでなく、様々なメディアミックスがされていますが、なかでも有名なのはアニメ版の『デビルマン』ではないでしょうか。
アニメ版では、事故により死亡した主人公・不動明と合体したアモンという悪魔(デーモン)が、牧村美樹を愛するようになり、美樹ひいては人間を守るべく地球の先住人類「デーモン」と敵対するという話で、オーソドックスなヒーローものに近い作品でした。
しかし、原作漫画は違います。主人公の明は生きている内にデーモンであるアモンと合体します。そして、合体する際アモンの精神に打ち勝ちデビルマンとなった明が、己の意思で人間を守るためにデーモンたちと戦うのですが、デーモンたちは様々な手段で明を追い詰めます。
居候先の牧村家を襲撃して殺そうとしたり、殺した人間を使って明に精神的なダメージを与えたり……。極めつけは大量のデーモンが復活した際、デビルマンと同じように人間と合体し、核戦争を起こし、人間たちが自発的に滅びの道へと歩むように策略するなど、ありとあらゆる手で人間を絶滅させようとしています。
漫画『デビルマン』の根底には当時の流行だった「終末論」があるためか、暗く、人間の業をこれでもかと詰め込まれた怪作と言えるでしょう。
- 著者
- 永井 豪 ダイナミックプロ
- 出版日
- 2009-11-11
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主人公の不動明は、居候先の娘・牧村美樹と共に名門学院に通う普通の高校生です。ある日、不良に絡まれていた2人を、明の親友の飛鳥了が助ける場面から物語ははじまります。
明は了に屋敷の地下へと招かれ、悪魔の模造品を見せられ、さらにそれにまつわる「デーモンの復活」の話、そして自らデーモンと合体しようとした了の父親の末路について聞かされます。
了はデーモンの魔の手から人類を守りたいと言うのですが、自分ひとりでは抱えきれないため、親友の明も一緒に戦ってほしいと懇願しました。明もまた、親友と人類のために立ち上がることを決意します。そして「デーモンに対抗するためのデーモンの力」を手に入れるべく、サバト(悪魔を呼ぶ儀式)を開き、了と共にデーモンを呼び寄せるのでした。
- 著者
- ["永井 豪", "ダイナミックプロ"]
- 出版日
- 2009-11-11
サバトにより、明と了はデーモンの召喚に成功します。しかしなぜか了には取り憑かず、明にだけ襲いかかりました。人間とデーモンの合体は互いの理性のせめぎ合いで、負けた方は勝った方に意識を奪われてしまいます。明は、自分に乗り移ろうとしたアモンというデーモンになんとか打ち勝ち、デーモンの力と人間の心を併せ持つ「デビルマン」となることができました。
デビルマンとなった明は了の指示のもと、次々によみがえるデーモンたちと死闘をくり広げていきます。
デーモンは残虐で非道、そして特殊な力を持っており、時にはデーモン同士で合体したり、殺した人間を取り込んだりすることができます。
やがてデーモンはデビルマンの存在そのものに目をつけはじめ、大量のデーモンが人間たちと合体し、人間社会を狂わせはじめるなど、狡猾にデビルマンを追い詰めはじめました。人間になりすましたデーモンたちは、国の中枢人物となり、戦争を起こしていくのです。
人間たちもまた、誤った考えや情報をもとにデーモン狩りをはじめ、人間同士で争い、殺し合いをはじめてしまいます。
これらすべては了が最初から危惧していたことで、人間世界は破滅への道を歩みはじめてしいました。浮き彫りになった人間の闇と、数々の愚行を目の当たりにした明は「人間は本当に守る価値があるのか」と悩みはじめてしまいます。
しかし、人間に守る価値がなくとも、明には大切な美樹がいるのです。美樹さえいるのなら守る価値はあるのだと明は確信し、再び人類を守るべくデーモンと戦う決意を固めたのでした。
第1話から、読者は目を疑うでしょう。「おぬし」「拙者」などといった妙に時代錯誤な言葉を使うヒロインに、改造した猟銃を持ち歩いている親友など、ぶっとんだ人物ばかりが出てくるのです。唯一普通なのは、弱気で頼りない性格の主人公の明くらいと言えます。
不良たちに絡まれていた明と美樹を了が助けるシーンでも、改造された猟銃を不良に向けて脅すだけのかと思えば、容赦なく彼らに向かってぶっ放しています。どう見ても危険人物です。
そんな了に言われるがまま訪れた屋敷では、亡き父の遺産だという悪魔を模した像のようなものを見せられます。そして、先住人類である「デーモン」の話まで聞かされますが、当然明は信じません。了のために、病院に電話してあげようかと考えるほどに常軌を逸していました。
しかし明は、了の父が残したデーモンの記録により、血と暴力の権化であるデーモンの歴史を目の当たりにします。やっとデーモンが「存在していた」ことを信じた明は、デーモンが滅んでよかったと、息をつきました。
ところが了はそれを否定します。「滅んでいるのなら、悪魔の存在を人間が知っているはずがない」と言うのです。そして、彼らは氷河期に長い眠りについたのだと続けます。
どうにかしてデーモンから人間を守らなくてはと使命感にかられる了と明。しかし、すでによみがえったデーモンたちが2人を抹殺しようと狙ってきて、ジェットコースターのようにすさまじいスピードで物語が展開していきます。
- 著者
- ["永井 豪", "ダイナミックプロ"]
- 出版日
- 2009-12-11
デーモンたちはより強い身体を得るために、別の生物を取り込み続ける生命体です。そのせいで彼らの姿はいろいろなものが混じりあい、すごくキモい!人間の胴体から蛇が出ているものや、タコのようなデーモン……こんなビジュアルは序の口です。
腹にデカい口がある女のデーモンや、両胸に顔がある女、極めつけは、殺した人間の泣き顔や悲鳴をそのまま顔に写し取った「ジンメン」。このジンメンは読者にとってトラウマもので、甲羅の拮抗模様がすべて人の顔でできており、中央には殺して取り込んだ幼い少女がいるなど、非常に卑劣なデーモンでした。
他にも、テレパシーを操る「サイコジェニー」は、人間のような胴体に不自然なほど巨大な顔がついている姿をしています。顔は不気味なほど見開いた大きな目が特徴的で、見ていて不安になるような異形のデーモンです。
しかし、デーモンたちの親玉である「大魔神サタン」は、神に反逆した元神という立場からか、唯一神々しい姿をしています。両性具有で天使のような姿をしていたサタンは、明らかに今までのデーモンとは一線を画していました。
- 著者
- ["永井 豪", "ダイナミックプロ"]
- 出版日
- 2009-12-11
終盤に差し掛かると、人間社会は崩壊の一途をたどります。デーモンが各国の首脳陣を乗っ取って核戦争を起こしたり、誤った情報からデーモンに乗っ取られた人間狩りを始めたりと、もはやその様子は地獄そのものです。
さらには親友の了までもが裏切り、明が悪魔だとテレビで公表されて四面楚歌に。明の味方は、自分を信じてくれる美樹だけでした。
明が了に、なぜ人類を裏切ったのかと問い詰めますが、彼は「初めから裏切ってなどいなかった」と言います。なんと、了の正体は大魔神サタンという、デーモンの親玉だったのです。明をデビルマンにしたのも人類を助けるためではなく、ただ、親友の明を殺したくない一心での行動でした。
しかし、それでも明は人間のために戦うことを決め、了とは決別します。親友の裏切りにも挫けず、人間を守るために必死に戦ってきた明でしたが、人間が人間を拷問にかける様を見せられたことで、ついには「人間はケダモノ以下だ」と考えるようになってしまいます。
もはやデーモンが手を下すまでもなく人間は滅びるだろうと確信し、人間を守る意味があるのかと悩む明でしたが、彼はたったひとり、美樹という守るべき愛する存在を思い出します。
そして決意を新たに固め、美樹の元へと走っていくのでした……。
- 著者
- ["永井 豪", "ダイナミックプロ"]
- 出版日
- 1997-06-04
明が最後の希望を見出してたどり着いた、牧村家。そこで待っていたのは、殺された美樹の生首でした……。牧村家の人間はすべて殺され、美樹たちを殺した人間たちは、彼女らの首を槍などに突き刺して掲げ、狂乱騒ぎの真っただ中だったのです。
ついに絶望した明は、牧村家を襲った人間たちを皆殺しにしました。もはや彼には希望も幸福も、生きる意味さえも残されていないのです。しかし、ここで明は決意します。人間を守るためではなく、自分たちデビルマンが地球に生き残るためにデーモンたちと戦うと。
そして20年後、地球に残ったデーモンたちを率いる大魔神サタンと、デーモンと合体しながらも人間の心を失わなかった多くのデビルマンたちを率いる明の、一大決戦がくり広げられることになったのです。
地は崩壊し、空は荒れ、世界が亡びるような戦いの末に勝ったのは……?
今なお怪しげな魅力を放ち続ける名作『デビルマン』。そのファンの多さからもわかるように、いつの時代でも面白く読めること間違いなしです。