塩田武士のおすすめ作品6選!『罪の声』が本屋大賞ノミネート!

更新:2021.12.16

新聞記者として活躍していた経験を活かし、傑作エンターテインメント小説を幾つも生み出している作家・塩田武士。2016年に発表された『罪の声』が絶賛され、ますます注目が高まっています。ここでは、そんな塩田武士のおすすめ作品を6つ選んでご紹介!

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苦節12年!新聞記者を経て作家デビューを果たした作家・塩田武士

塩田武士は、1979年、兵庫県生まれ。人を楽しませたい、という思いが常にあったという塩田は、劇団に入ったり、漫才コンビを組んでネタを考えたりと、学生の頃から様々なことに挑戦してきたようです。

大学1年生の頃に読んだ、藤原伊織の『テロリストのパラソル』に深く感銘を受け、その日から小説の執筆を開始。作家としてのスキルを身につけるため新聞社へ入社し、記者としての仕事と並行して、小説の執筆を続けてきたのだそう。

新人賞に応募しては落選するという苦況が12年間続きますが、2010年『盤上のアルファ』が小説現代長編新人賞を受賞し、翌年ついに作家デビューを果たします。その後新聞社を退社し、作家として様々な作品を発表。2016年発表した『罪の声』で、山田風太郎賞を受賞すると、同作で2017年の本屋大賞などの賞で更に注目を浴び、今後の活躍がますます期待されています。
 

圧倒的なリアリティー!塩田武士が描くグリコ・森永事件

昭和史に残る、日本中を震撼させた未解決事件「グリコ・森永事件」を題材に、加害者家族のその後を描く『罪の声』。犯行に使用されたという子供の声に着目した本作は、可能な限り史実に基づいた事件内容を描くとともに、大人の都合によって犯行に巻き込まれてしまった子供の視点に寄り添う、塩田武士渾身の一作となっています。

事件から31年後……。ある日、京都でテーラーを営んでいる曽根俊也は、父の遺品の中から古いカセットテープと手帳を見つけます。手帳には「ギンガ」「萬堂」の文字が見てとれ、カセットテープには、子供の声で現金受け渡しについての指示が録音されていました。

その声が、幼い頃の自分の声だと気付いた曽根は驚愕します。自分はいつこんなものをテープに吹き込んだのか、父はギン萬事件に関与していたのだろうか……。曽根は真実を知るため、事件を調べ始めます。

一方、大日新聞社文化部の阿久津英士は、昭和の未解決事件を記事にするため、ギン萬事件の調査をすることになりました。
 

著者
塩田 武士
出版日
2016-08-03


曽根と阿久津の両面から描かれ、徐々に真実に近づいていく様子が克明に綴られています。グリコ=「ギンガ」、森永=「萬堂」として描かれていますが、その内容には圧倒的なリアリティーがあり、フィクションだということを忘れてしまいそうになるほど。加害者やその家族の、事件後の人生には胸が痛みます。

終盤で展開される、壮大な人間ドラマは読み応え充分。二転三転するストーリーから目が離せなくなり、読むのをやめられなくなることでしょう。訪れる結末には胸がいっぱいになってしまいます。

元新聞記者としての見聞が遺憾無く発揮されている、塩田武士が描く「グリコ・森永事件」。当時の出来事を知らない方も、これを読めば事件について詳しく知ることができます。ぜひ多くの方に読んでいただきたい、おすすめの大作です。
 

イメージとの完全同期!活字で読む大泉洋

塩田武士が、俳優大泉洋を主人公のイメージとして作り上げた作品です。塩田曰く、主人公の速水と大泉の「完全同期化」を目指し、大泉の出演作品は映画からドラマ、バラエティまで細かくチェックし、分析。まさに「活字になった大泉洋」の誕生です。

大手出版社に勤める主人公・速水輝也が、自身が編集長を務める雑誌の休刊を告げられ、それをきっかけに出版業界を相手に牙をむくというストーリー。表紙に使われているのはもちろん大泉洋のグラビアで、読者は意識せずとも速水=大泉として作品を読み進めてしまいます。

著者
塩田 武士
出版日
2017-08-31

 

俳優をイメージして登場人物を書く作家も多いですが、この作品ははじめから大泉洋ありきで書かれており、そこが今までにないスタイルでとても新鮮。そして読みながら頭の中で映像化されて、動き出すようなリアリティがあります。

企画ものなのか?と思いきやさすが社会派の塩田武士。対企業の物語を社会派ならではの手法で、重厚に仕上げています。話題性から手に取ったとしても、内容は期待を裏切りません。大泉洋のファンでなくても読む価値あり、ファンならなおさら楽しめる一冊になっています。


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塩田武士の笑えて泣ける感動作

存続の危ぶまれる弱小オーケストラが、1人の女性との出会いをきっかけに再生していく『女神のタクト』。コミカルでスピーディな展開がとても読みやすい、塩田武士の魅力的な1冊です。

主人公・矢吹明菜は、30歳にして失業と失恋を同時に体験。傷心のまま旅に出ると、旅先で偶然出会った白石という老人と意気投合し、ある人物を神戸のオーケストラへ連れてきてほしいと頼まれます。その人物とは一宮拓斗。かつて世界的な指揮者として活躍し人気を博していましたが、突然音楽の世界から身を引き、若くして隠居生活を送っていました。

明菜は嫌がる拓斗を恫喝し、ハイヒールで叩きながら半ば拉致するように、どうにか連れ出します。内気な拓斗は、おどおどと流され「オルケストラ神戸」の音楽監督となり、明菜も定期演奏会へ向けて、オーケストラの手伝いをすることになったのです。
 

著者
塩田 武士
出版日
2011-10-27


物語には個性豊かな登場人物たちが揃い、軽快でテンポの良い関西弁での会話が魅力。パワフルな明菜と内気な拓斗だけでなく、それぞれの人生に劇的なドラマがあり、どの登場人物も皆魅力溢れるキャラクターに仕上がっています。勢いのあるストーリーを、感情移入しながら楽しむことができるでしょう。

オーケストラの裏事情なども知ることができ、なんと厳しい世界かと驚かされます。演奏シーンでは、情景が浮かび上がり、まるで音楽が聞こえてきそうなほど鮮やかに綴られ、感動の一言。笑いに満ちた中にも、ホロリと泣ける素敵な作品です。
 

将棋に人生をかける男の熱い物語

小説現代長編新人賞を受賞した、塩田武士のデビュー作『盤上のアルファ』。プロ棋士を目指す男と、新聞社の将棋担当記者との交流を描いた本作は、将棋ペンクラブ大賞にも輝き、刊行前からたいへん注目を浴びていました。

神戸の新聞社に勤める秋葉隼介は、新聞記者の花形である県警担当記者から、文化部の将棋担当記者へと左遷されてしまいます。将棋の知識などまるでない秋葉は、初めての取材に四苦八苦。失意の中、美人女将のいる行きつけの小料理屋を訪れます。

そこで出会ったのが、坊主頭にタンクトップ姿の真田信繁。アマチュア棋士の真田は、33歳という年齢もあり、一旦はプロになる道をあきらめますが、他に道はなく、再度プロ棋士を目指し奨励会の編入試験を受けようとしていました。
 

著者
塩田 武士
出版日
2014-02-14


家賃滞納で部屋を追い出された真田が、秋葉の部屋へと転がり込み、奇妙な同居生活をすることになる様子が、コミカルに描かれていきます。個性の強いふたりの男が繰り出す、関西弁の小気味良い会話は絶妙に面白く、そこに小料理屋の美人女将も加わり、不思議な三角関係が築かれていくストーリーがとても魅力的です。

明かされる真田の過去に、涙腺の緩む場面もあり、将棋シーンでは手に汗握るドラマが待っています。将棋のルールを知らない方でも、充分楽しめる本作。男が挑む、人生をかけた大勝負に、酔いしれてみてはいかがでしょうか。
 

一途な想いに心打たれる塩田武士の純愛ミステリー

京都の美しい街並みを舞台に、男女の切ない純愛を描く『雪の香り』。塩田武士が、「書き終えたくないと思った」と語るほど没頭して執筆されたこの作品は、ミステリー要素をふんだんに織り交ぜた、著者初のラブストーリーとなっています。

主人公は、新聞記者として働く風間恭平。知人の刑事から提供された、ある事件に関する捜査情報の中に、北瀬雪乃の名前を見つけ驚愕します。恭平がまだ大学生だった頃、ふたりは偶然出会い、ひょんなことから同居生活を送ることになりました。次第に恋に落ち、楽しい毎日を過ごしていたのですが、ある日突然、雪乃は姿を消してしまったのです。

あれから12年。雪乃は再び恭平の前に姿を現し、一緒に暮らすようになっていました。雪乃は何者なのか、なぜ突然失踪したのか。恭平は、密かに調査を始めます。
 

著者
塩田 武士
出版日
2014-06-09


鮮明に描かれる四季折々の京都の風景がとても印象的な本作。街の様子や、そこに住む人々の姿も丁寧に描かれ、つい京都へ足を運びたくなってしまいます。そしてやはりこの作品でも、登場人物たちの関西弁での会話がとても心地よく、恭平と雪乃のやりとりは、微笑ましくて頬が緩んでしまうでしょう。

雪のようにはかなく美しい容姿に、破天荒な性格を併せ持った雪乃のキャラクターもとても魅力的で、2人の過去と現在を行き来するストーリー展開にどんどん引き込まれてしまいます。変わらぬまっすぐな想いに心を打たれる、塩田武士の純愛ミステリー。切なさと暖かさに溢れた作品です。
 

バブルに翻弄された家族の崩壊

ある殺人事件の真相を追う刑事の姿を綴る、塩田武士による重厚な警察小説『崩壊』。地道な捜査によって徐々に真相に近づいていく2人の刑事を描くとともに、事件をきっかけに崩壊していく家族の姿を濃密に綴った作品です。

ある日、関西にある地方都市・波山市の市議会議員が殺害されました。波山署のベテラン刑事である本宮が事件を担当することになりましたが、そのパートナーとなったのが、若い美人刑事・平原優子。初めはなんともやりづらさを感じる本宮でしたが、徐々に打ち解け、2人は捜査を進めていくことになります。

ところが、捜査が進み浮上してきた容疑者は、本宮と過去に関わりのあった人物の身内だったのです。本宮は否応なしに、過去の苦い思い出と向き合うことになり……。
 

著者
塩田 武士
出版日
2015-08-06


なんの手がかりもない中、少しずつ捜査が進展してく様子は、とても読み応えがあります。登場人物たちの過去が絡み合い、それぞれの隠された闇が切々と丁寧に綴られていくのです。

バブル経済に翻弄され、人生を狂わせた者たち。そしてそんな大人を間近で見てきた子供たち。心に傷を負った人々の姿が、悲しく胸を打ちます。当時の時代背景もとても細かく描かれ、興味深く読むことができるでしょう。人と人とのつながりに重点を置いた、しみじみ読むことのできる感動作です。
 

塩田武士のおすすめ作品をご紹介しました。どの作品も、元新聞記者ならではの、斬新な視点で描かれた傑作です。気になる作品があれば、ぜひ1度読んでみてくださいね。

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