素敵なエッセイのススメ。恋、仕事、家族。いくつになっても人には悩みは尽きないものです。そんな時、こんなエッセイはいかがですか?まるで親友のように貴方に語りかけてくれる素敵な一冊が見つかるはずです。
まずは、直木賞作家の西加奈子のエッセイ。要所、要所で関西弁を交えながらの軽快なエッセイには、思わず「あるある!」と声に出してしまうこと間違いなし。飾りっ気がなくて、等身大、そんな西加奈子は真っ正直だからこそ損もするタイプ。なぜだか「私のカプチーノだけ泡が少ない!」そんな彼女の自虐ネタ満載のエッセイは、日常の嫌なことも忘れさせてくれそうです。
根が明るい女性というのは、実は人間観察の巧みな内省的なタイプの人が多いのではないでしょうか。優しさゆえのボヤキ。真面目さゆえの不器用さ。西加奈子の世の中へのツッコミには、感受性豊かな、繊細かつ真面目で冷静な視線を感じます。
- 著者
- 西 加奈子
- 出版日
- 2015-09-11
彼女の人柄を知るエピソードが、「下の名前で名乗れない」というもの。第一章の「かなこです」という文章です。自分の下の名前を名乗るのが、どうも気恥ずかしく、ついつい照れてしまって「西です」と名乗ってしまうというのです。なんて繊細で奥ゆかしい人なのでしょうか。西加奈子の小説から読むもよし、先にこのエッセイを読んで人となりを知ってから他作品を楽しむもよし。おすすめですよ!
著作が次々と映画化やアニメ化している人気女性作家三浦しをん。どこからそんな発想が生まれてくるの?と私たち常人には考えつかないような想像力から繰り出される痛快イメージが展開していきます。『まほろ駅前多田便利軒』と『舟を編む』で一躍脚光を浴びた作家ですが、そのエッセイも実に機知に富んでいて、一度読むと癖になってしまう引力をもつのです。ガンダムオタク、漫画オタクであるという三浦しをんの人となりも垣間見えます。
- 著者
- 三浦 しをん
- 出版日
- 2005-10-28
エッセイ『しをんのしおり』では、京都の町中を歩きながら、または、友人との会話から、様々なオモシロ話が派生していくのです。高倉健さんについて、漫画について、戦隊ものについて、道すがら目にはいった厨房のシェフたちを元にBL物語を創作してしまうなど、どの文章にもアイデア満載で読むものを一向に飽きさせません。このエッセイを読んだら、他の三浦しをん作品もきっと読みたくなることでしょう。
指先からソーダ、山崎ナオコーラ。リズム感のよさについつい口ずさんでしまうようなタイトルのエッセイ集です。『人のセックスを笑うな』でデビューした山崎ナオコーラが、旅先で感じたことや日常の些細な出来事を等身大に描いていきます。
老若男女、どんな世代にも、自然と好かれてしまうタイプ。彼女のエッセイにはどこかしら、幸せなオーラが漂っているのです。ただ、幸せだけじゃない。時にはどうしようもなく寂しさや虚しさが訪れる。そういった感情も、着飾っていないのに、どこか美しい言葉の連なりを生み出す。そこが山崎ナオコーラの凄みでしょう。
- 著者
- 山崎 ナオコーラ
- 出版日
- 2010-08-04
「見た目を変えるのは簡単」というエッセイの中ではこう語っています。「知性の素晴らしさ、心の温かさを知っていると、その情報が目に及んで、相手をキラキラにして見せてくれる。」これが美人になる、見た目をよくする秘策だというのです。
山崎ナオコーラのエッセイには、書評から、アウトドアから、美術から、本当に様々な話題が豊富に取り入れられているのです。そんなポジティブなライフスタイルこそが彼女を輝かせて、美しくしてくれる秘訣なのでしょう。
恋愛小説を得意とする作家・江國香織。これはそんな彼女が描いた日常のエッセイです。私生活をのぞき見しているかのようなドキドキ感。どうしてドラマチックな恋愛小説をいくつも書けるのだろうか。そんな彼女の素顔に迫ることができます。
印象深いのは「男ともだち」についてのエッセイ。江國香織の小説からくるイメージとは裏腹に「男ともだち」に対しては意外にサバサバとした大人のイイ女で対応しているようなのです。
- 著者
- 江國 香織
- 出版日
繊細さと併せ持った強さ。とてもロマンチストで繊細な、少女のような魂を持った彼女。童話作家としての一面もあるからでしょうか、エッセイの文章の一言、一言がとても詩的で透明感に満ちているのです。「雨」という犬についての文章は、それ自体が絵本の一冊にでもなりそうなほどの美しさです。純粋さを忘れないで大人になるのはとても難しい。しかしその繊細さゆえに傷つくこともまた多い。江國香織のエッセイは、そんな純粋な気持ちを思い出させてくれます。
モンゴル、ネパール、モロッコ。『幾千の夜、昨日の月』には角田光代が旅した様々な異国の風景が広がります。「ああ、どこかへ旅行でも行きたいな」そんな非日常の素敵な世界の話。このエッセイで語られる女性の異国への一人旅には、一度は誰もが憧れるものです。でもちょっとばかりの勇気が出ない。まずは手始めに、このエッセイで予習をしてから行くというのはいかがでしょうか。
- 著者
- 角田 光代
- 出版日
- 2015-01-24
「かつて私に夜はなかった」冒頭で角田光代はそう語り始めます。子供の頃には夜を所有していなかった。しかし大人になってからは夜を持っている。幾千の夜、昨日の月、彼女は様々な国の夜を経験し、大人になってしか味わえない世界の裏側を発見していく。異国の地での心細さを感じて、ひとりぼっちであることを感じるために、また彼女は旅に出るというのです。知らない場所に、旅しているような、そんな気持ちになれるおすすめのエッセイですよ。
2008年に出版された『大人になるヒント』。これから世界と出会ってゆく10代に向けた、生き方を考えるヒント集です。
『大人になるヒント』では大学の文学部で教鞭をとる中沢けいが、自身のゼミ生たちに中学時代を振り返ってもらい、そこで出た意見にコメントをしていく部分があり、学生たちの大人ぶらず素直に表現された感覚や感情とそれへのコメントは、自分が著者と対話しているような気持ちになることが出来ます。
- 著者
- 中沢 けい
- 出版日
10代におとずれる、自分と友達、そして大人とは何かと言う問いと葛藤。これらについて一人きりで考えていると行き詰ってしまうことがあります。
そんなときに突破口を示し、ときに別の視点から考えるヒントを出すのがこの『大人になるヒント』です。
また、そもそも考えることすらしないまま大人になってしまう「魂」や「名誉」といったテーマにも触れられ、自分や周りの世界を考えることで再構築する本となっています。
モヤモヤする気持ちや、激しいけれど言語化できない感情。この本では、そういったものを自分のものとして糧とするには、言葉の訓練が必要だとあります。言葉にすることではっきりさせることができ、次へ進むことが出来るのでしょう。
その作業は孤独で、ときに見過ごされがちですが、自分として、大人として生きてゆくために必要なのだと優しく語りかけてきます。10代に読めば大人である先生からのヒントを、大人になってから読めば癒しと肩の力を抜く方法を得ることができる一冊です。
10代だった中沢けいが60代となってゆく途中でうまれてきた作品は、それぞれ作風が異なります。しかし強さを感じる作品ばかりです。著者が自分と同じ年齢であったときに出された作品を読んで自分の感覚と比較するのも楽しいかもしれません。
女性作家のエッセイが手元にあると、なんだか気の合う親友と一緒にいるような心強い気持ちにさせてくれます。日常の悩みを共有してくれる一冊、悩みを忘れさせてくれる一冊、様々なエッセイを、贅沢なスイーツを少しずつ味わうみたいに、あなたの側においてみませんか?