来る日も来る日も口が酸っぱくなるほど言っているのに、全く改善されない我が子の生活態度。うちの子もしかして、発達障害では……!?そんな疑問や不安を持つママ、パパにぜひとも読んでもらいたい本を集めました。
友達とのトラブルが絶えない、いつも忘れ物ばかりしている、じっと座っていられない……。「育て方が悪いのかな?」と悩み、子育て本を読みあさってみたけれど、どれも効果がなくて途方に暮れているママは思いのほか多いものです。
でも、ちょっと待って!もしかすると、それは発達障害からくるその子の特性なのかもしれません。
メディアや書籍でも取りあげられることが多くなった発達障害。発達障害支援法によると、発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの脳機能障害のことを指します。チックとして知られるトゥレット症候群や吃音症、発達性協調運動障害などもこれに含まれると考えられる症状です。
発達障害を持つ子どもは、通常の関わり方の原因はや育て方では、なかなかうまく毎日の生活習慣やルール、勉強を理解できないことが多くあります。どれだけ言っても言うことを聞かない「困った子」と思われていた子どもが、実は、誰よりも一番「困っている子」だったのです。
また、自身の子育て、しつけの仕方や愛情の注ぎ方に問題があるのかと悩むお母さんも多いですが、それが原因ではないということが徐々に明らかになってきています。遺伝的に発達障害になりやすい体質や、母親の胎内にいる時、出生後の環境要因が原因としている研究がほとんど。現時点では原因がはっきりと明らかにはなっていませんが、母親としての自分の行動などを責める必要は無いようです。
そんな発達障害の子どもたちにとっては、早期療育をしてあげることが何よりも大切なこと。「困った子」だと思いつつそのまま放置したり、自分の力ではどうしようもないことであるのに叱り続けていたりすると、自己肯定感が低くなり、うつ病などの二次障害を引き起こすことにもなりかねません。
なので過去をいたずらに責めるよりも彼らのことを理解し、どう付き合っていくかを前向きに考えることこそが「困っている子」を救う最も良い方法となるのです。そこで今回は、我が子の成長に少しでも疑問を感じたときにぜひとも読んでもらいたい発達障害の入門書をご紹介していきます。
幼稚園や学校から、子どもの起こしたトラブルについて電話がかかってきて、先生や同級生の親に謝ってばかり。「ヘンな行動」はなくなるばかりか、増えてきているような気がするし……。そんなママ、パパは、ぜひとも一度この本を手に取ってみてください。
- 著者
- ["鈴木 陽子", "金澤 治"]
- 出版日
- 2009-03-13
今や、発達障害の子どもは、クラスに数人、グレーゾーンの子どもも含めるともっと多くの数に上るといわれています。本書を数ページ読みすすめていくと、「あっ、これうちの子に当てはまる!」という発達障害の特性がいくつも目に入ってくることでしょう。
本書の著者は、海外での留学経験を活かし、日本の障害者教育の礎を築いたといわれる鈴木陽子氏と小児科の専門医、金澤治氏。少し難しい表現もあるものの、「うちの子、ちょっとヘン?」と思ったときに相談する機関や診断基準をとても丁寧に説明してくれています。
特筆すべきは、医療機関で初めて診察を受けるときの詳細な流れを書いた箇所です。受診の際に聞かれることや、用意しておいた方がよい生育歴の情報などをあらかじめ知ることができる本書。「ちょっとヘンかも……」と思いながらも、敷居が高くなかなか専門科にかかる決断ができない親たちの背中を優しく押してくれることでしょう。
確かに、我が子を連れて専門病院に行くことは勇気のいることです。けれども、その「ヘンな行動」が発達障害の特性によるものだったとしたら、子どもたちはその特性を理解されずに「普通に振る舞う」ことを無理矢理強いられ、毎日苦しんでいるのかもしれません。
まずは本書を読み、教育学と医学の両面から発達障害の全貌をつかみ、子どもと真剣に向き合う初めの一歩を踏みだしましょう。
発達障害の中でも、とりわけ周囲から誤解を受けやすいといわれるのが、自閉症スペクトラムの子どもたちです。メディアでもよく耳にするようになったアスペルガー症候群や広汎性発達障害。こういった自閉症スペクトラムの子どもたちは独特の世界観を持っているとも考えられています。そんな発達障害の世界を丁寧に説明した一冊がこちらです。
- 著者
- 石川道子
- 出版日
- 2015-07-09
自閉症スペクトラムの世界を知るために、少し例え話をしてみましょう。私たち日本人は家に入るとき、当然のように靴を脱ぎ、その靴を揃えて上がるのがマナーとされています。もし、結婚の挨拶をするためにやってきた子どもの相手が、靴を揃えずに家の中に入ってきたら、「この子は常識があるのだろうか……」と不安に思ってしまうのではないでしょうか。さらに、靴を脱がずに土足で家の中に上がってきたら!?もしかするとあなたは、この結婚に大反対してしまうかもしれません。
でも、もしその結婚相手が日本人の文化を知らない外国人だったとしたらどうでしょう?もちろん「結婚するからには、日本の文化をもう少し知っておいてもらいたい」と思うかもしれませんが、頭ごなしに怒るということは考えられないのではないでしょうか。
自閉症スペクトラムの子どもたちは、この例え話の結婚相手と似ています。見えている世界が違うため、悪気がないのに誤解を生む行動を取ってしまったり、周囲を怒らせてしまったりするのです。
この本では、発達障害の中でも、特にそんな自閉症スペクトラムの子どもたちの世界を非常に細かく、わかりやすく解説しています。
本書の筆者は小児科の専門医ですが、彼女は「発達障害の子を発達障害でない」と診断するより、「発達障害でない子を発達障害である」と診断する方が子どもにとってメリットがある、という一貫した判断基準の持ち主です。これは、まさにユニバーサルデザインに通じる考え方。定型発達の子(発達障害のない子)にもよりその子に合わせた手厚い支援を与えることで、さらに人格者として育て上げることができるというのです。
子どもの障害の有無にかかわらず、子育てに悩むママやパパが知りたい子育て支援策が本書の後半部分には豊富に記述されています。我が子に発達障害があってもなくても、私たち親にとって、子どもはかけがえのない存在に違いありません。「何だか子どもとやりとりがしづらいな」と感じたら、ぜひともユニバーサルデザインの観点で書かれた本書を日々の子育ての参考にしてみてください。
過去の偉人の中には、発達障害を持っていたと考えられる人がたくさんいます。芸術、自然科学などあらゆる分野で功績を残したレオナルド・ダ・ヴィンチもその一人。彼の遺したメモの中には、学習障害(LD)の特性の一つ「鏡文字」が多く使われているともいわれます。
- 著者
- 上野 一彦
- 出版日
- 2009-08-11
学習障害の子どもは、よく「怠け者」に間違えられてしまいます。たとえば、上手に思ったことを話すことができるのに、漢字が覚えられなかったり、将棋などの論理的思考力を必要とするゲームが得意なのに、簡単な計算ができなかったりするからです。
もしかすると、この瞬間も、親や先生から「真面目にやりなさい!」「努力が足りない!」などと叱られて、小さな心を痛めている子がいるのかもしれません。本書は、そんな子どもたちを一人でもなくすため、図やイラストを使いながら、学習障害の基礎知識について、非常にわかりやすく解説しています。
この学習障害を含め、発達障害の特性は一人一人の子どもによって様々な表れ方をします。本書では、家庭と学校が足並みを揃え、個性的な学習方法が必要な子どもたちをサポートするやり方を一から説明しているため、初めて「学習障害」、「発達障害」という言葉を聞くママたちにも読みやすい内容になっているのです。
この本の冒頭では学習障害だけでなく、アスペルガー症候群や注意欠陥多動性障害(ADHD)についてもしっかりと記述されています。学習障害の子どもは、成長の過程で診断名が変わることや、ADHDを併発することも多いため、保護者は混乱しがち。その点で本書は、その辺りもしっかりとフォローされた良書であるといえるでしょう。
「専門家の書いた本は正しいのだろうけれど、堅苦しくてどうしても読みにくい」という人のために、発達障害の「あるある」を集めたような実録4コママンガを紹介しましょう。
- 著者
- 斗希 典裟
- 出版日
- 2011-06-30
タイトルからもわかるように、本書は『そうだったのか!発達障害 わざとじゃないモン』に続く続編です。もちろん1作目も発達障害ならではの特性がよく理解できる一冊なのですが、残念ながら解決方法や関わり方について、少し物足りなさを感じるものでした。そんな読者の声に応え書かれた連載コラムをまとめたのが2作目の本書。「さすが!」と言わざるを得ない圧巻の一冊ができあがりました。
本書に載っている子どもとの関わり方は、発達障害かどうかにかかわらず、日常生活に「困っている子」であればどの子にでも使える、とっておきの技ばかり。毎日子育てに奮闘しているすべての現役ママ、パパたちをガッチリとサポートしてくれることでしょう。
例えば、毎日子どもがパジャマを脱ぎっぱなしだと「困っている」ママ。それなら、脱いだパジャマの定位置は決まっていますか?本当に「困っている」のはママだけではなく、脱いだものをどこに置いたらいいのかわからないのに、毎日朝から小言を言われてしまう子どもたちなのかもかもしれません。
そんな見落としがちなことに気づかせてくれる本書は、発達障害だけでなく、子育てというものの本質を知る上で大いに役立つ一冊となることでしょう。
発達障害と聞くと、何か恐ろしいイメージを持ってしまうというのも、子育て中のママやパパの本音かもしれません。「もし自分の子どもが発達障害だったらどうしよう……」毎日全く言うことを聞かない我が子を前に絶望的な思いを抱いている人もいるのではないでしょうか?
けれども、発達障害と診断されることは、決して絶望的なことではありません。「障害」という漢字のイメージから負の連想が広がってしまいがちですが、発達障害は子どもの「大切な特性」。そして、それは「誇れるべき特性」でもあるのです!
- 著者
- 青空 静香
- 出版日
発達障害と診断された男の子の誕生から中学生までの成長が書かれた本書には、主人公の母親である著者の、溢れんばかりの愛情が詰めこまれています。
本書の主人公、亮太が生まれたのは1991年。発達障害者支援法が制定されたのが2004年のことですから、筆者の子育てはどれほど大変だったか、想像に難くありません。それでも筆者は我が子の可能性を信じ、周りの協力、理解を得て、亮太を大切に育て上げます。
『だいじょうぶ、きっと伸びる』、本書のタイトルが訴える通り、発達障害の有無に関わらず、子どもたちは無限の可能性を秘めています。ただ、それを引きだすためには、その子にあった関わり方、育て方を見つけださなければならないのです。そしてそれは、他でもない、私たち親に与えられた大切な使命。
「発達障害」という字面を前に臆病になる必要はありません。今、子どもが問題行動を起こしているのは、あなたの育て方が間違っていたからという訳ではないのです。発達障害を正しく理解することで、かつての亮太のように、わかってもらえずに苦しんでいる我が子を救ってやることができるはずでしょう。
これらの本に目を通し、自分の子どもに当てはまるところがあるのなら、躊躇することなく専門機関に相談してみてください。発達障害と診断されることは決して「ダメな子」というレッテルを貼られることではありません。むしろ、幼稚園や学校、地域の中で「ヘンな子」「ダメな親」と思われているレッテルを剥がしとることができる絶好の機会なのです。
子どもの顔は千差万別。子どもの脳だって千差万別。少しでも早く子どもの特性に気づくことができれば、あなたも大切な子どもたちも、これ以上、苦しみ悩む必要はありません。
エジソン、モーツァルト、ニュートン、アインシュタイン、アガサ・クリスティ、チャーチル、ジョン・F・ケネディ、ビル・ゲイツ、トム・クルーズ……。発達障害を告白したり、発達障害を疑われたりしている偉人は数知れず。この世界の発展は、発達障害の人々が支えてきたと言っても決して過言ではないのかもしれません。適切な支援を受けることで、我が子の隠された才能を引きだすことができるのです。
まずはこの5冊の本を読み、発達障害への正しい理解を深めることから始めましょう!