スペースオペラから歴史小説まで、様々な世界観の物語に、多くの魅力的なキャラクターを登場させる田中芳樹。ここでは、根強いファンが多いことでも知られる、田中芳樹のおすすめ作品をランキング形式でご紹介していきます。
1952年、熊本県に生まれた田中芳樹は、小学校時代から中国の歴史に興味を持ち『三国志物語』などを愛読。『シャーロック・ホームズ』を呼んで、イギリスの異国文化に関心を持ったり、少年誌『日の丸』のファンだったりと、本と密着した少年時代を過ごしたようです。
学習院大学に入学後、1978年、ペンネーム李家豊で執筆した『緑の草原に…』が、幻影城新人賞小説部門を受賞し、作家デビューを果たします。その後ペンネームを田中芳樹に変え、1982年、『銀河英雄伝説』を発表。好評を博してシリーズ化され、一躍人気作家に躍り出ると、1988年、同作で星雲賞日本長編部門を受賞。その後も幅広いジャンルで作品を発表し、コアなファンが多いことでも知られる人気作家です。
幻想の国「マヴァール帝国」を舞台に、複雑に絡み合う内部抗争や、周辺諸国との武力抗争を描く『マヴァール年代記』。3人の青年たちを主人公として、モデルとなっている中世ハンガリーの歴史を巧みに織り交ぜながら、政争の絶えない激動の時代を綴る架空歴史小説です。
皇帝ボグダーン2世亡き後、マヴァールでは後継者争いが勃発していました。次期皇帝の候補として上げられているのは、主人公の1人であるカルマーンと、その甥のルセト。帝国は2派に分裂し、激しい抗争を繰り広げます。そんな中カルマーンの旧友、金鴉国公ヴェンツェルは、カルマーンを支持するも、皇帝崩御の裏に隠された秘密に気づいてしまいます。
そのことをきっかけに、密かな陰謀を巡らし始める、野心家のヴェンツェル。政争には、カルマーンとヴェンツェルの旧友・リドワーンも巻き込まれることになり、かつて青春時代を共に過ごした3人の友情も、終わりを迎えることになるのです。
- 著者
- 田中 芳樹
- 出版日
田中芳樹によって描き出された壮大な世界観が魅力的で、風景描写には異国情緒が溢れている本作品。作品を通して陰謀や策略が渦巻き、血で血を洗うような戦いが繰り広げられますが、どのキャラクターも存在感があり、生き生きと戦場を駆け回る姿が印象的です。
テンポが良くスピード感のある展開に、物語の世界へどんどん引き込まれていくことでしょう。ヴェンツェルの妹・アンジェリナが非常に明るくてたくましく、かつての友人同士の戦いという、物悲しさも感じるストーリーに、救いを与えているのではないでしょうか。田中芳樹の作品に興味のある方には、ぜひ読んでいただきたい物語です。
中国南北朝時代、美しすぎる外見を隠すため、仮面をつけて戦場に出たと言われている歴史上の人物、「蘭陵王」こと高長恭をモデルに、その華麗で壮絶な生涯を綴る歴史小説『蘭陵王』。若くして非業の死を遂げた、貴公子の姿が胸に刻まれる1冊です。
6世紀中国、戦乱の世にある北斉の武将・蘭陵王は、勇猛果敢な人物で、知恵もあり戦さでは負け知らず。人柄も良く誠実で、北斉では珍しいたいへん良心的な武将です。難があるとすれば、彼の容姿が美しすぎること。味方の兵士が見惚れてしまい士気が下がるだけでなく、敵からも侮られてしまうことから、蘭陵王は鬼面をつけて戦さに挑んでいるのです。
- 著者
- 田中 芳樹
- 出版日
- 2012-03-09
蘭陵王の魅力的なキャラクターもさることながら、史実に基づいた重厚なストーリーや、手に汗握る戦闘シーンにも引き込まれます。田中芳樹の卓越された文章力が遺憾無く発揮され、鬼の仮面をつけ白馬にまたがり、颯爽と戦場を走り回る蘭陵王の姿が、目に浮かぶようです。
物語では皇帝の無能さが際立ち、次第に国が滅びていく様子や、蘭陵王が周囲からの嫉妬や圧力を受ける様子には胸が痛みます。ヒロインの月琴と織り成す、ささやかなラブロマンスが、この悲劇的な物語に温かみを与え、同時に蘭陵王の時代に翻弄された生涯に、より一層の切なさを与えているのではないでしょうか。
日本では馴染みの少ない、中国の南北朝時代ですが、そこには様々な人間ドラマが存在します。当時の時代背景を詳しく知ることもできるでしょう。貴公子に降りかかる悲劇とともに、その激動の時代を生きたたくさんの人々や、歴史のロマンに思いを馳せてみてはいかがでしょう。
中世ペルシアをモデルとして描いた国、バルスが舞台の、大河ファンタジー小説『アルスラーン戦記』シリーズ。1986年、第1巻が刊行されて以降、絶大なる人気を誇り、アニメ化もされているこの作品。2017年現在までに第15巻までが刊行されている、話題のシリーズとなっています。
圧倒的な富と軍事力により、大陸公路の中心として君臨する国、バルス。主人公は、14歳の王子アルスラーンです。突如侵攻してきたルシタニアの軍勢に対抗すべく、初めての戦いに挑むも惨敗。アルスラーンは城を追われることになってしまいました。
1巻から7巻までの第一部では、アルスラーン王子の成長していく姿や、才ある部下たちとともに、ルシタニアに奪われた国の奪還を目指す様子が綴られます。
- 著者
- 田中 芳樹
- 出版日
- 2003-02-21
端正な顔立ちと人を惹きつける力のあるアルスラーンが、徐々に仲間を増やし、勢力を拡大していく様子は、読んでいてとてもわくわくします。部下たちは皆個性的で魅力があり、策をめぐらせ、どんどん戦いに勝利していく様子は爽快の一言。主人公のみならず、それぞれのキャラクターにも様々なエピソードがあるので、お気に入りのキャラクターが必ず見つかることでしょう。
本書は読みやすい文体で、迫力ある面白いストーリーが楽しめる、まさに王道とも言える娯楽ファンタジーです。読書が好きな方だけでなく、RPGなどが好きな方も存分に楽しめるのではないでしょうか。難しいことは考えずにその世界観に没頭出来る、田中芳樹作品の中でもおすすめのシリーズです。
近未来の世界を舞台に、7つの都市国家で勃発する争いを描く『七都市物語』。ファンの間でも傑作として名高い本作は、一冊の中に、田中芳樹ならではの魅力的な要素が凝縮された、読み応え充分の1冊になっています。
西暦2088年、「大転倒」と呼ばれる大惨事が地球を襲います。地軸が90度転倒したことにより、地球上にありとあらゆる自然災害が次々と発生。約100億人の死亡者を出し、人類は壊滅的な被害を受けました。安全な月へと逃れ、この様子を眺めていた一部の人々は、2091年、地球に7つの都市を設立し、数少ない生存者を住まわせます。
月面都市の人々は、地上500メートル以上を飛ぶ飛行物体を破壊する「オリンポス・システム」によって地球を支配しました。ところが、月で謎の疫病が蔓延。「オリンポス・システム」を稼働させたまま、月の人々は滅び去ってしまうのです。地球上では、7つの都市による果てない争いが繰り返され、時代は西暦2190年を迎えました。
- 著者
- 田中 芳樹
- 出版日
本作でも田中芳樹お得意の、戦略性に富んだ熱い戦闘シーンが随所に見られます。空中戦ができないという閉じ込められた空間の中、重厚な地上戦が繰り広げられ、それと同時に、政治的な争いからも目が離せません。一癖も二癖もある強者たちの策略を楽しく読むことができます。
皮肉や毒が込められたような、登場人物たちの軽妙な会話はとても面白く、人間味のあるやり取りに釘付けになってしまうことでしょう。それほど長い物語ではなく、気軽に読むことができますから、田中作品を試しに読んでみたい、という方にはぴったりの作品です。
銀河系を舞台とした英雄たちの攻防を描くスペースオペラ『銀河英雄伝説』シリーズ。本編全10巻、外伝も多数存在するこの超大作は、田中芳樹を一躍人気作家へと押し上げ、星雲賞日本長編部門を受賞しました。アニメ化やゲーム化もされ、多くの人たちから愛され続けているロングセラー作品です。
現代よりも遥か未来。人類は宇宙空間へと進出しました。銀河では、初代皇帝ルドルフによって建国された「銀河帝国」と、帝国に反旗をひるがえした人々によって建国された「自由惑星同盟」の二大国家が、150年にも及ぶ抗争を続けています。
そんな中、それぞれの国に天才的な能力を持った、若き英雄が登場します。1人は、帝国軍の軍人として常勝を誇る、「戦争の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラム。もう1人は、戦場において卓越した心理洞察を見せ、「魔術師」と称される同盟国のヤン・ウェンリー。このタイプの異なる2人のリーダーを中心として、壮大な物語が展開されていくのです。
- 著者
- 田中 芳樹
- 出版日
- 2007-02-21
何と言っても、美しく鋭気に満ちた覇者ラインハルトと、無欲でおっとりとしている天才ヤンの、対照的なキャラクターに心惹かれてしまいます。その他にも、魅力的な人物たちが何百人と登場するのですが、皆個性と存在感があり、誰が誰だかわからなくなる、といった心配も杞憂に終わります
戦争とは、政治とは、人間とは、命とは。ストーリーには、そんな奥深いテーマが盛り込まれています。舞台は架空の世界ですが、現代社会においても、けして無縁とは言えない問題についても触れられていて、様々なことを考えさせられる作品です。読者を惹きつける田中芳樹の筆力は折り紙付き。物語がとにかく面白く、1度はまり込んだら、読むのをやめられなくなる、1番におすすめしたい傑作です。
『銀河英雄伝説』については<小説『銀河英雄伝説』の魅力を全巻ネタバレ紹介!>の記事で紹介しています。気になる方はあわせてご覧ください。
田中芳樹のおすすめ作品を、ランキングでご紹介しました。どの作品も世界観が素晴らしく、魅力的なキャラクターがたくさん登場します。興味のある方は、ぜひ読んでみてくださいね。