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『銭ゲバ』作者・ジョージ秋山のおすすめ漫画ランキングベスト5!

更新:2020.11.30 作成:2017.2.14

ジョージ秋山は日本の漫画家。人間の本質を遠慮なしに描き出すその作風は、時に残酷な世界を作品の中にありありと映し出します。今回はそんなジョージ秋山の魅力が感じられるおすすめの作品をご紹介!

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善悪やモラルを問う漫画家、ジョージ秋山

1966年にギャグ漫画で商業誌デビューし、1970年代にはギャグとは程遠い描写で人間の醜い本質を描き出し、世間の注目を浴びた作家です。ジョージ秋山というペンネームは、バンドマン風にしたかったという理由から着けられた名前で、本人は若気の至りだと言っていたそう。

そんな彼を知る人達は、大尊敬しているはずの手塚先生の漫画を読んだこともなく、漫画を読むとバカになる、などと心にもない事を言い独特の照れ隠しをする人だと語ります。

1970年には『銭ゲバ』を少年誌サンデーに、『アシュラ』を少年誌マガジンに発表。今まで描いてきたギャグ漫画とは打って変わったその作品は、ショッキングな内容で物議をかもします。『アシュラ』が掲載された少年マガジンは一部地域では有害図書扱いとなるほどの騒ぎとなり、一躍時の人となりました。

しかしながら、人間の本質をなんのてらいもなく描き、そしてそれに対する回答を作者自身の言葉で語る独特の世界観を好むファンは多く存在。そして彼の作品は数十年の時を経た後にアニメ映画化やテレビドラマ化を果たしています。

年輪を重ねてからもその作風は変わらず、宗教の思想などを軸とした作品や、より哲学的な内容を盛り込んだ作品を発表しつづけ、国際問題や社会問題を作品のモチーフとするようにもなってきています。

5位:ジョージ秋山が正義とは、悪とは何かと問う!

第5位は『デロリンマン』。ジョージ秋山が初期に描いたギャグ漫画作品です。主人公であるデロリンマンとその敵オロカメンが、正義と悪の是非をめぐり論争を繰り広げる異色作となっています。

自殺未遂によって顔が醜く崩れてしまった主人公三四郎。彼は人を救う使命を帯びる男デロリンマンであると名乗り、周囲の人々に嫌われさげすまれても正義を説き続けます。

デロリンマン (1)

ジョージ秋山
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そしてそんな中、物語のキーパーソンとなるオロカメンが登場し、この喜劇は様相を変えていきます。涙を流しつづけながらデロリンマンを愚か者と語るその仮面の男は、正義を説く彼に対し人の本質は悪であると論じるのです。

二人の相反する人物によって正義と悪に対する議論がなされるこの物語は、少年漫画でありながら哲学的な要素を色濃く反映している作品。正義のヒーローに憧れる少年たちに真の正義とはなんぞやと問いかけてもいるようにも思えます。当時の少年たちはこんな漫画を読んでいたんですね……。

物語終盤で明らかにされる事実により、この作品はデロリンマン三四郎の心の葛藤を描いたものだということがわかっていきます。ギャグ漫画というテイストでありつつも、人とは何か、正義とは何かを問いかける、ジョージ秋山らしい作品です。

4位:名うてのトラウマ漫画。しかしどこか愛おしい

第4位は『アシュラ』。1970年に少年マガジンに掲載され、カニバリズムなど、その残虐な描写により当時の少年たちに大きな衝撃を与え、物議をよんだ問題作です。冒頭からショッキングな内容と共に始まるこの作品、本当に少年誌に掲載された漫画なのだろうかと目を疑う世界観です……。

舞台は平安時代末期、飢餓により屍があふれかえる荒んだ時代。飢えに負け産み落として間もない我が子を喰らおうとしてしまう母親、そして生き残り人を喰らいながら獣のように生きる赤子がいました。後にとある法師によってアシュラと名付けられたその子は、若狭という女性と出会うことで、愛情や喜び、苦しみや悲しみ、人としての様々な感情を知っていきます。
著者
ジョージ秋山
出版日

不幸を背負い生まれ落ちたアシュラは、母親への憎しみ(想い)や若狭への執着(愛情)、人の感情を知ることで本当につらい思いをしていきます。

「うまれてこないほうがよかったギャァ!」(『アシュラ』より引用)

アシュラが心の底から叫ぶこのセリフは、作品を読んだ方みなに響く声でしょう。しかしけっして救いのない作品ではありません。殺伐とした世に様々な人と出会い成長していくアシュラの姿は、その風貌とは裏腹に妙に愛おしく見える時があるのです。

そして後に発表された完結編では、出家したアシュラが空の下で微笑む場面が描かれます。読んでいる方も、そしてアシュラ自身も救われる素晴らしいシーンです。

作品の中に描かれている愛憎劇には、愛するがゆえに憎む人の性といいますか、人のありのままを表現しており、美しく描くだけが愛ではないと言われているような気がする作品です。

3位:36年の時を経て復刻!ジョージ秋山が描く幻の作品

3位は『ばらの坂道』。1975年に単行本化されたものの、その差別的な表現や内容から長きに渡って出版を自粛され、古書にはプレミアムがつくほどでした。しかし2011年に復刊されようやく手軽に作品に触れることができるようになった作品です。

狂人の母を持つ主人公、土門健。この物語は彼の幼少の頃より始まります。遺伝性の狂気を持つ母を見捨て父は蒸発、祖父は事故死、そして同級生の足を母がツルハシで刺してしまい、罪の意識にさいなまれる健。更には、遺伝性により健自身も狂っていくかもしれないと知らされるなど、全く救いの無い話が展開されていきます。
著者
ジョージ秋山
出版日
2011-03-30

作中には、健という名前が示すように、彼が背負った業に、必死に向き合いながら健気に生きていく健の姿が描かれています。一見救いの無い物語で、少年が自分の理想を描きながらも挫折していく、しかしそれこそが人生であり、生きていくということだ。そう読み手に訴えかけるかのようです。

巻末に、日常を描写する作品に日常語を正しく使えないのでは表現が成り立たない、というような解説がされています。差別用語や表現無くしてこの作品で描かれる人の業は語れない、ということではないでしょうか。復刊された作品には可能な限りこのような表現が残されており、この作品を復刻したいという熱意が感じられます。

2位:飄々と生き、人生を語る雲のキャラクターが魅力

第2位は『浮世雲』。はぐれぐも、と読みます。2016年時点で108集まで発売されている長寿作品であり、何度もドラマやアニメ化され、数多くのファンを持つジョージ秋山の代表作とも言えます。作者初の青年漫画です。

時は幕末、江戸の宿場町で問屋を営む主人公雲は、酒と女が大好きな典型的な遊び人。しかし達観したような性格に、人を引きつける不思議な魅力持つ男で、なぜか時の将軍徳川慶喜ともフレンドリーな会話を楽しみます。

時代が幕末とはいえ歴史上の事件などは取り上げず、ただただ平穏な日常が過ぎていく日々。そんな日常の中にある、人と人との触れ合いや、家族とのやりとりを描いています。そしてそれらを独特の言い回しで彩っていく雲にどこか人間味があるのです。
著者
ジョージ秋山
出版日
1975-06-06

作者ジョージ秋山は人とは何かを問いかける人物。この作品でも、雲の言葉を通じ人生の様々な教訓を語り、読み手へと問いかけます。

「立派になろうなんてのは疲れますから、自分のやりたいことだけ、自分が楽しいことだけ、考えたらいいんですよ。」

「怠けるだけ怠けたら、やる気になりますよ。人間なんてそんなもんですよ。

「望むことと生きることは別々だから、望みが叶わなくても、意気消沈するなかれです。肝心なことは、望んだり生きたりすることに飽きないこと。」
(『浮浪雲』より引用。)

あなたはこの雲の言葉をどう捉えるでしょうか。雲と同じ答えでしょうか?違う答えでしょうか?人生においてその答えは十人十色。しかしもし何かに行き詰まっているのなら、この作品を読みその問いかけに答えを出してみるのもいいかもしれませんね。

1位:ジョージ秋山が描きだす人間の本性

第1位は『銭ゲバ』。言わずと知れた名作、そしてジョージ秋山の作品がギャグ漫画から露悪的な作品へと移った記念作です。最後まで救いとなる人物が登場せずに結末を迎えてしまいます。しかし欲望にまみれ、どんなに醜い本性がありながらも、やはり純粋な愛に飢え、それを求めるのが人間なのではないかと語りかけられるような作品です。

幼い頃より金に苦労し、それにより母を亡くした蒲郡風太郎。彼は金の力に取り憑かれたかのように生きるようになります。成長して大企業の社長一家に取り入り会社を乗っ取り財界の頂点へ。そして政界へ進出、殺人容疑、逆転劇からの当選を果たします。
著者
ジョージ秋山
出版日

ある時出会った純真な女性も、結局は金欲しさに売春を要求するなど、まさに波乱万丈な事件が起こり続ける彼の人生。金に群がる醜悪な人間の姿がまざまざと映し出され、その内容は暗く淀んだ作品とも言えます。

しかし欲望にまみれた風太郎であっても、純真だった女性を心の拠り所としています。人は醜くありながらも、美しい何かに惹かれる性を持ち合わせていることもまた確かなのです。

物語のラストで描かれるのは、人間の幸福についての原稿を頼まれ、幸せとは何かと思いにふける風太郎の姿。巨万の富を得たはずが、思い浮かぶのは貧しくもなく豊かでもない、しかし穏やかで暖かい人生でした。

金を望み人を蹴落としてきてまで手にしてきたその幸福が、彼の本当の望みでは無かったと悟った時、物語は思いがけない結末を迎えます。

銭ゲバにおける風太郎の役割は、欲望がうずまくこの醜悪な世の中を風刺したものなのではないでしょうか。そうであったとしても、人はこの世界で生きていかなくてはならない。ならば醜悪な世界にこそ美しいものを見出す、それが人というものなのだろう。そんな作者の語りが聞こえてくるような気さえします。

彼の作品には、生きる上でのこのうえのない苦しみ、喜び、そしてそれらの事柄に対する答えを求めずにはいられない、人間の性が描き出されているようです。飾らずに真っ正直にそれを問いかけ続けるジョージ秋山の作品には、他に得難い独特の世界観を感じずにはおれません。