笑える物語を読むと、気持ちも楽しく明るくなりますよね。ライトノベルにはとにかく楽しく笑える物語がたくさんあります。今回は、そんなライトノベルの中でも特に笑えて、もちろんストーリーも面白い作品をご紹介!
GJ部(ぐっじょぶ)の活動拠点は、木造旧校舎の一室。どんな活動をしているのかもよくわからない謎の部に、主人公の四ノ宮京夜はほとんど強制的に入部させられてしまいます。そこで待っていたのは、部長の天使真央を始めとした個性的な部員達のゆるっとした日常でした。
- 著者
- 新木 伸
- 出版日
- 2010-03-18
1話4ページのショートストーリーを集めた小説で、本の表紙や帯には「四コマ小説」なんて書かれています。ストーリーを楽しむというよりも、個性的な部員達の日常を主人公の京夜の視点から楽しむという、これぞまさに日常系ストーリー!という作品です。
部員の天使真央は、背は小さいけどプライドが高い強気の意地っ張りで、気分を害すると物を破壊することから「クラッシャー真央」という異名まであります。一方、真央の妹であり部員でもある天使恵はマイペースで天使のような女の子。そんな彼らが織りなす日常は実に「ゆるふわ」です。
他にも皇紫音はあらゆるゲームをこなすゲームの天才。肉をこよなく愛し常に部室に肉を持ちこむ羅々・バーンシュタインは、グラマラスな体型で猫と話すことができます。そんな彼女達と主人公は、毎日部室で過ごします。
「いつもの放課後。部室にはいつものように皆の姿があった。漫画を読んでいたり、一人チェスに興じていたり、編み物をしていたりと、各自がてんでに好きなことをやっている。その中で、部長だけが一人、妙なことをやっていた。(中略)つま先立ちになって、ぴょんぴょん跳ねている」(『GJ部』より引用)
こんな感じのゆるっとした日常がたくさん短いページ数で連ねられています。基本的に大きなストーリーはなく、1話完結型です。しかも1話がとても短いので、5分くらいの隙間時間でもさらっと読むことができます。まさに日常生活の合間に、ゆるっと読むことのできるラノベなのです。
あわむら赤光によるライトノベル作品。中二病の少女が書いた、いわゆる「妄想ノート」が現実となってしまうというコメディタッチの痛快な物語です。
本作品で描かれるのは、美少女でありながら重度の中二病を患う吉岡楓子がノートに書いた、空想や妄想が実体化してしまうというもの。彼女の生み出した中二病感満載のキャラクターたちが暴れまわり、主人公吉岡英二を巻き込みドタバタ劇を繰り広げます。
物語は基本的に英二の視点で描かれていますが、とにかく楓子のキャラが立っている本作品。彼女のキャラクターを楽しむのが最大の目的とも言えます。兄英二いわく、妹は残念な頭の持ち主であるそうで、その言動は確かに自分の空想世界にどっぷりと浸かってしまった、いわゆる中二病でオタクっぽい言動が目立つのです。
- 著者
- あわむら 赤光
- 出版日
- 2010-08-15
楓子が空想したマリスやアイシャリアなどの妄想キャラクターが具現化した時、彼女は奇声をあげて大喜びします。
「本物のマリスたんだぁー!!」」(『あるいは現在進行形の黒歴史』から引用。)
「アイシャリア姉さまの上乳眼福だあウェヘヘヘヘヘヘ」(『あるいは現在進行形の黒歴史』から引用。)
作中では終始こういった暴走とも呼べるようなセリフを連発するのが楓子クオリティなのです。兄ラブで中二病、そして妄想家である楓子は、時に度を越すほどの変態っぷりを発揮し、英二にどつき倒されたりもします。こういった兄と妹のテンポのいいボケとツッコミも読み応え抜群です。
また、簡潔な文体なので難しい文章が苦手という方でもすんなり読める内容になっています。しかも勢いのある文章は、ハイテンションな楓子のキャラクターも相まって、時に大爆笑を誘うほどの力が溢れたもの。何も考えず笑いたい、そんな時に読みたい一冊ですね。
主人公の式見蛍は、死にたい願望の強い男子高校生。「死にてぇ」が口癖ですが、今のところ死んでいないのは、痛いことは嫌なので楽に死ねる方法を探しているからです。そんな蛍はある日、交通事故にあってしまいます。
死にはしませんでしたが、その事故をきっかけに蛍はある能力に目覚めます。それは「自分から半径2m範囲内の霊を実体化する」というものでした。この力を得たことで、蛍は駅のホームで1人の幽霊と出会います。少女の姿をした幽霊は記憶を失っていました。
- 著者
- 葵 せきな
- 出版日
- 2006-01-20
彼女は幽霊ですが、蛍の「霊を実体化する」力のおかげで、側にいる時は体温も感触もある普通の少女です。そんな少女を蛍は「ユウ」と呼び、奇妙な同居生活が始まったのでした。
この作品は、ファンタジア長編小説大賞で佳作を取った作品です。主人公はとにかく死にたがりです。
「首吊り自殺なんてものは最初から却下だ。だって、やたら苦しそうだし。一部には『うまくいけば一瞬で意識が飛ぶから楽』という意見もあるようだが、そんなもん、全然信用ならない」(『マテリアルゴースト』より引用)
こんなことを考えながら、何だかんだと生きている蛍。冒頭からかなりネガティブな主人公なのでもしかしたら苦手な人もいるかもしれません。しかし、そんな性格でありながらライトノベルの主人公らしく、蛍はとてもモテます。ラブコメもギャグもある、軽快な会話とストーリーは、主人公のネガティブさも気にならなくなってくるほど楽しめる物語です。
主人公の蛍と幽霊の少女ユウを中心に周りを固めるキャラクターも個性的。巫女装束が嫌いな巫女や、漢前な「帰宅部部長」の先輩など、とても個性的で読んでいて飽きることのない、ゴーストと青春とネガティブが合わさったような物語です。
妖怪のラノベ作家をテーマとした杉井光著作の『ばけらの!』。とあるライトノベルレーベルからデビューした主人公の新人作家・杉井ヒカルの周りにいる同期や先輩の作家たちは、なんと全員美少女である上に妖怪なのです。
もし、この作品の主人公・ヒカルのように、同じアパートで妖怪たちと同居する生活を送るとしたら、どう思いますか?美少女だけど、妖怪はちょっと……と、怖く感じますよね。
妖怪とは一般的に、俗に言う「化け物」として怖いイメージしかありません。見た目が美少女のように胸がきゅんきゅんくるもので、性格も優しかったりツンデレだったりと萌え属性ものだとしても、その正体が妖怪という「化け物」だと知ったら、怖いと思いますよね。
ましてや、妖怪が自分と同じアパートに住んでいるとなれば、いつ襲われたり、怖いことをされたりするのかわかったものじゃない……。そう「化け物」という存在に怯えるあまり、逃げ出したいと考えてしまったとしても、不思議ではありません。
- 著者
- 杉井 光
- 出版日
- 2008-09-16
「小説家業界は化け物だらけだと聞いたことがある。でも世の中広いし、小説書いて食っていこうなんて人の中には化け物じみたやつがいてもおかしくはないかなと思ってた。だってまさか、ほんものがいるなんて思わないだろ?」(『ばけらの!』から引用)
自分の周りにいる、自分と同じラノベ作家で妖怪たちを見て、ヒカルも最初はそう思うほど戸惑っていました。しかし、彼の周りにいるその妖怪たちは、妖怪としての怖いイメージは一切なく、それぞれが妖怪らしからぬ個性と人間味溢れるキャラの持ち主だったのです。
ヒカルの隣部屋住まいで同期の受賞作家で、狼の精霊・葉隠イズナ。引き籠もりでギャンブル好きのダメ人間で、ヒカルの部屋によく入り浸っています。ふたりの住むアパートの大家の座敷童・神無月つばさ。彼女の立派なラノベ作家で、執筆活動に精を出します。巨乳のグールの作家・風姫屍鬼は、「ポリバケツ」という呼び名を付けられるほどの大食いです。
そんな妖怪だとは思えない、個性溢れるラノベ作家の3人の美少女に囲まれたヒカルは、彼女らと時にじゃれ合い、時に振り回されながらも、自らもラノベ作家としてペンを取り続けます。しかし、作家としての日々の中でヒカルを待ち受けるのは怖い担当編集者と原稿の締切り、さらにそんな時に必ず起きる、ちょっとした事件です。
まさに刺激いっぱいな美少女妖怪とライトノベルを巡るこの作品、皆さんも一度手にとって見てみてはいかがでしょうか。
魔石というエネルギー源が発達し、魔工機という道具が開発されていく世界。主人公、スービー・キュージットは魔工機職人をしている大学生です。
いつものようにスービーが部屋にこもり設計図を描いていると、小人族のコートボニー教授と出会いました。
コートボニーはスービーの描く様々な設計図に興味を持ち、スービーに対して、消耗しないエネルギー源である、永久魔石を見つけることが夢であると語ります。お互いに目標を話し合い、意気投合した2人は魔工機コンテストに出場することを誓うのです。
- 著者
- 桜山うす
- 出版日
- 2015-01-22
本作は魔石と魔工機が発達した異世界の物語ですが、発明品の金銭や利権も描かれ、2人は訴訟に巻き込まれていきます。法外な条件を重ね合う示談や証拠にもならないような出来事を挙げて賛同を得ていく法廷など、ファンタジーとは思えない展開がコミカルに描かれていくのです。
また、永久魔石の捜索でもスービーの受難は続いていきます。魔石の噂を信じダンジョンにもぐりますが、コートボニーの指示が適当で死にかけたり、気付いたら独房にいたりと、展開がころころと変わっていくのです。
これでもかとエピソードを詰め込んだ、ドタバタコメディです。ラストには切なささえ感じてしいます。大風呂敷を広げに広げた作品を、手に取ってみてください。
魔王の魔術を駆使する少女たちと絵画にしか興味のない看守が脱獄を図るバトル譚です。
かつて魔王が支配していた世界。魔王は滅ぼされると同時に、自身の魔力を絵画に閉じ込めて、世界中にばらまきます。魔力のこもったそれぞれの絵画は、その絵のモチーフの少女に封じられました。封じられた者たちは魔王の魔術に魅入られ、本人の気付かないうちに使ってしまいます。そんな彼女たちは危険視され、天空に浮かぶ大監獄に囚人として捕まり、管理されていました。
- 著者
- 永菜 葉一
- 出版日
- 2015-02-28
主人公リオンは、絵画にしか興味がない売れない画家でした。そんな彼はリンゴを描いた作品が呪物的に見えるという理由で、大監獄に呼ばれてしまいます。そして危険人物として自由に行動できないよう看守にされてしまいました。絵をかくこともできない境遇にリオンは絶望し、脱獄を決意するのです。
本作に登場するヒロインたちは囚人です。魔王の絵画を宿す彼女たちは道具のように扱われています。
リオンは時に非道な手段を選びながら、囚人たちを救い、脱獄の協力を頼んでいきます。その真摯な態度に少女たちは惹かれていき、リオンを誘惑しようとしました。しかしリオンは絵画にしか興味がなく、彼女たちの思いに気付きません。その掛け合いは夜這いや勘違いなどを交えて、エロティックにコミカルに描かれています。
また脱獄劇も激しい戦闘、熱い頭脳戦が繰り広げられます。リオンの前に立ちふさがるのは強大な魔術を持つ囚人と、彼女を携えた看守です。一方、リオンには霧を出す魔術や小火を操る程度の囚人しかいません。能力は明らかに劣る中、リオンは戦略を立て戦っていくのです。
魅力的なヒロインたちと唐変木なリオンの恋愛劇、魔術と知力が混ざる激しいバトル。勢いのある面白い作品をぜひお楽しみください。
日本のとある大学。6人の生徒たちは夏休みにありがちな都市伝説を真に受け、地下資料室に眠るイタリア生まれのゾンビを目覚めさせてしまいます。これが主人公のユーフロジーヌとアルマ。大学生たちはゾンビを目覚めさせるだけでなくユーフロジーヌの大切な秘石を盗んでいたのでした。
- 著者
- 池端 亮
- 出版日
- 2012-06-30
この秘石がないと身体が崩壊してしまうと、ユーフロジーヌはやむを得ず学生たちを殺し始めます。殺るか殺られるか、陸の孤島と化した大学キャンパスを舞台にゾンビと学生による殺戮ゲームの幕が上がりました。
ゾンビの少女と学生のサバイバルゲームであり殺戮ゲーム。しかしその中身はユーフロジーヌの天然が炸裂するコメディ要素多めの作品となっています。
作中では多くの天然ボケをかましているユーフロジーヌですがそこはやはりゾンビ。人を殺すことになんのためらいもありません。惨殺などのグロいシーンもイキイキと描かれ、ホラーな部分も垣間見えます。
ゾンビの視点からその価値観を描いた本作は、ユーフロジーヌのシュールな目覚めに始まり終始コメディータッチとグロ系が入り混じりながらもどこかシリアスになれない内容。しかしテンポよく進むストーリーや登場人物の掛け合いは読みやすくなっています。
読み進めることでゾンビ対人間という単純な物語ではなく、ゾンビ対悪人と常識人の構図が見えてきます。萌えや笑い、感動、殺戮が盛り込まれた新たなゾンビ系ラノベとして新境地が開拓できるのではないでしょうか。
ネコルと呼ばれる猫崎ユヅルは高校二年生になり、先輩である久遠霧香に恋をしています。しかし彼には幼いころ、ぴーちゃんという女の子と出会い、恋をし、そんな彼女に求められながらも助けてあげられなかった後悔が心に棘のようにささっていました。
そんなある放課後、ツノ付きのヘッドギアを被った少女に襲われてしまいます。やっとの思いで帰宅したものの、なんと翌日の学校で昨日のヘッドギア少女が度会ヒカリと名乗り、彼のクラスに転入してきたのです。挙句、自分のことを都市型作戦兵器というロボットだと言い出し、そのように振る舞う始末。何かを排除しようと椅子を投げるなど騒ぎを起こすヒカリを、ネコルは阻止するという日々が続くようになります。そしてある日、ヒカリは、かつての少女ぴーちゃんなのではないのかという疑惑が生まれ……。
- 著者
- 竹岡葉月
- 出版日
- 2016-07-07
謎の美少女ヒカリが転入生としてやってきて一緒に過ごすうちに、彼の中の苦い思い出が呼び起こされていく物語は読み進めるのが不安になるほど苦々しいものです。ラブコメではあるのですが、全編においてセピア色に染まった世界観を醸し出し、どこか切なさを含んだ物語になっています。
ヘッドギアという鉢を被った少女はいったい何者なのかということが物語を通してのテーマとなります。ぴーちゃんとネコルの関係や、ヒカリがなぜヘッドギアを被っているのかなど、多くの謎に追っていきます。
作者の筆力のおかげもあって、おかしな世界観でコメディでもあるのにも関わらず、切なさを散りばめ感動させられる物語へと昇華させられています。仲間が力を合わせ、恋に至る物語はラブコメとしても一級ですよ。
自らを学校を守る都市型作戦兵器だと言うヒカリのおかしなロボット行動や、アンテナを押さえられるのが弱かったりするところが、おかしくもあり可愛らしくもあります。しかし、ヒカリがぴーちゃんなんじゃないかという疑惑が出てからは、ドタバタラブコメだった物語は一気に急転直下。穏やかだった日常は崩れ去っていくのです。
本作の元になった作品は、古典『お伽草子』の『鉢かづき姫』。鉢かづき姫は、寝屋備中守藤原実高という人物が長谷観音に祈願して授かった娘でした。彼は長谷観音のお告げ通りに娘の頭に鉢を被せるのですが、なんとその鉢が取れなくなってしまいます。まま母にいじめられた後に、入水自殺をしますが未遂に終わります。そんな彼女に遂に転機が訪れます。宰相殿御曹司から求婚されるのです。しかし宰相の母が結婚に反対。結婚を諦めさせようとしているところで鉢が取れ、「鉢かづき姫」の端正な顔立ちが満天下に知らしめられることになるのです。
「かづき」は「頭に被る」という意味で、本作の「かぶっちゃった」とも意味は少し違えどリンクしています。さて、ヒカリの被るヘッドギアという鉢にはどんな意味が込められているのでしょう。『鉢かづき姫』をベースにした物語になっているため、『鉢かぶっちゃった姫』を読む前でも読んだ後でも読んでみることを勧めます。
謎の多い地方都市、垣ノ立市で巻き起こる、少し不思議なボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーです。どうかその結末まで読み切ってみてください。
これは単に、高校の修学旅行中で異世界へ行ってしまった少年少女が楽しく愉快に異世界を楽しむ話です。それ以外にはないといってもいいくらいです。
そんな中世ファンタジー風世界のお姫様から「異世界からあらわれし者が世界を救う伝説」を聞かされたものの、すでに世界は救われたあと。彼らはそんな平和な世界を、修学旅行として満喫することになってしまいました。
漫画とゲームとラノベとゆとり教育で育ったためか、彼らはあっさり異世界のことを受け入れます。そして悪の魔王の手から世界を救ってやろうと決意。しかし倒すべき魔王はすでにいないというところが面白いところ。その気になれば、みんなまとめて次の日の儀式で現実世界に帰れるのですが、帰ることは選ばずに、ただただ楽しみます。
- 著者
- 岡本 タクヤ
- 出版日
- 2015-10-20
修学旅行と称して異世界中を観光する少年少女たちが、様々なトラブルを起こしていってしまうというドタバタコメディ。主人公である沢木浩介たちはクラスメイトたちを全員回収し現実世界への帰還を画策しますが、思春期の好奇心を前には思い通りにはいかないものです。
異世界に飛ばされたら何かの能力を発現したりするのがラノベの定石ですが、そんなことも一切ありません。主人公も2年1組の面々は個性的ではありますが、普通の少年少女たち。戦闘では雑魚キャラと知られるゴブリンさえまともに倒せず、努力しても異能力に目覚めたりもしません。そして基本的に全編コメディで、重い話はほとんどない点が特徴といえます。
キャラ数自体が多いため、ひとりひとりの内面を深く掘り下げるといった要素はあまりありませんが、掛け合いを楽しめ、軽い文章でスラスラと読み進めることができるでしょう。タイトル通り、ただただファンタジー世界で修学旅行をする話。帰るまでが修学旅行の異文化交流コメディをお楽しみください。
ネトゲ大好き男子高校生西村英騎は、MMORPG「レジェンダリー・エイジ」で女性キャラに告白しますが、その相手は実はおじさんで……。この1件以降「リアルとゲームは別物」だと区別するようになります。そんなある日、いつものようにキャラ名ルシアンとしてネトゲを楽しんでいたところ、所属するギルド「アレイキャッツ」の仲間であるアコに惚れられてしまい告白もされ、なんと彼女とゲームの中で結婚することになってしまいます。
そのネトゲのオフ会が開かれ、メンバーは英騎と同じ県立前ヶ崎高校に通う生徒たちだということが判明。成り行きで現代通信電子遊戯部(つまりネトゲ部)を設立することになってしまいました。英騎に告白したアコの中の人は玉置亜子であり、引きこもりでネトゲとリアルとの区別がついておらず……。そんな亜子の更生も兼ねて、放課後に部室でネトゲをする毎日が始まります。
- 著者
- 聴猫 芝居
- 出版日
- 2013-07-10
主人公である英騎は元々帰宅部で、オタクであることをつまびらかにしているオープンオタク。オタクな話でコミュニケーションを取るなど、現代の若者によくありそうな人物像ですね。ゲームの腕は廃人レベルにはいっていないものの、亜子に比べればかなりのものです。そもそも亜子がネトゲが好きなのにも関わらず、かなり下手な部類に入っている点が面白いところでもあります。
コミュニケーション能力が高そうな英騎とは打って変わって亜子はコミュニケーションが苦手な電波娘。家族とネトゲ部メンバー以外には対人恐怖症気味で他人は極力避けます。ネトゲ部の面々の苦労のおかげもあってクラスメイトとも馴染めるようになっていきますが、こういう人はクラスに1人はいたなあと思わせられることでしょう。亜子の残念な性格更生のためにネトゲ部のメンバーたちが「ネットとリアルは別」と必至に言い聞かせるのは作品を通しての面白さの1つです。
英騎は「リアルの自分が亜子に好かれているわけではない」とか「自分と噂が立ったら可哀想だ」とか、自尊心が低いオタクであり、男女関係については堅実に考えています。しかし亜子との関係が徐々に進展し、両親への挨拶まで完了してしまっているなど英騎の思いとは裏腹にことは順調に進んでいってしまうんですよね。普通に考えたらかなりのリア充に見えるのですが、これもラノベマジックなのか英騎が苦労人に見えてきます。
作者いわく、日々オンラインゲームを遊んでいたため、オンラインゲームの話が書きたかったとのこと。様々なネトゲのネタが散りばめられており、オンラインゲームが好きで知っている人にはニヤリとさせられるものとなっていますよ。
理想と現実の問題を巧みに描き出しています。
主人公である草壁桜という男の子の元に突然天使がやってくるというストーリーです。天使の名前はドクロちゃん。その名の通り出会ったばかりの桜を撲殺してしまうドクロちゃんですが、すぐに「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー」と復活させてくれます。
そんな彼女の目的は、未来の世界で桜が「女の子の成長が12歳で止まってしまう不老不死の薬」を作ってしまうがために「天使による神域厳戒会議(ルルティエ)」から命を狙われることになった彼を守るためでした。桜の家に居候することになった彼女がたびたび桜を誘惑したり、ルルティエからの刺客がやってきたりと大わらわ。そんなドタバタコメディ作品です。
- 著者
- おかゆ まさき
- 出版日
一度聞いたら忘れられない「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー」という呪文と共に、ライトノベルの代表的な作品として知名度を誇っています。
男の子の家に、突然女の子がやってきてなんやかんやとヒロインたちを増やしていく典型的なハーレムコメディですが、そこに「撲殺」を加えたことで独特の世界観を作り出しています。王道的なラッキースケベシーンから始まる冒頭が、いきなり撲殺血みどろへ、そして復活というインパクトとテンポによって駆け抜けるようなコメディとして完成しているのです。ちょっと違ったハーレムコメディを、撲殺天使の魔法の呪文と共に楽しんではいかがでしょうか。
主人公、八坂真尋はある日夜道でとんでもない怪物に襲われてしまいます。そんな彼を助けたのは銀の髪の美少女でした。彼女は自分のことをクトゥルー神話のニャルラトホテプそのものであると言い、真尋を狙う悪の組織から守ると家に上がり込みます。ふたりの異常な日常を描いたコメディ作品です。
今作はラブコメならぬラヴコメ、ラヴクラフトコメディであると作者が公言する作品です。その名の通りラヴクラフトという作家が友人たちとの間で作ったクトゥルー、もしくはクトゥルフという架空の神話が発想のベースとなるパロディコメディをメインに扱った作品となります。
- 著者
- 逢空 万太
- 出版日
- 2009-04-15
タイトルにもあるヒロインのニャル子さん、ニャルラトホテプもクトゥルー神話における怪物の一体です。とはいえこの作品ではかわいい美少女、ニャルラトホテプらしい不思議パワーを使う以外にはほぼ人間そのままなのでご安心を。
クトゥルー神話よりもアニメ・マンガ・ゲーム等のネタが随所に散りばめられているような作品ですので軽い気持ちで楽しむことができると思います。
生徒会役員は全員、人気投票で選ばれるという私立高校碧陽学園。人気投票とは、立候補や推薦といった選挙の要素が一切ない、純粋な「人気」投票です。そしてそのシステムの性質上、生徒会は美少女達が勢ぞろいすることになりました。
- 著者
- 葵 せきな
- 出版日
- 2008-01-19
ただ、そんな生徒会役員の枠の1つに「優良枠」というものがあり、それだけは人気投票ではなく、試験で学年一位の人間が選ばれます。その枠を使い役員となったのが、杉崎鍵でした。彼は猛勉強の末トップに立ち、念願の生徒会入りを果たしたのです。そうまでして生徒会に入りたかった理由はただ1つ。美少女達の揃う生徒会に入りたい……その一心でした。
美少女揃いの生徒会に男子は1人。まさにハーレム状態で物語は進んでいきます。もちろんその状態にしたのは主人公の杉崎なので、言ってみれば彼の思惑通りの状況です。たとえば、大人になることという一見真面目な会話から始まったように見えたのに、話はあっさり飛躍し、会長が杉崎に食ってかかるシーンがあります。
「杉崎はもうちょっと副会長としての自覚をねぇ……」
「ありますよ、自覚。この生徒会は俺のハーレムだという自覚なら充分――」
「ごめん。副会長の自覚はいいから、まずはそっちの自覚を捨てることから始めようね」(『生徒会の一存』より引用)
杉崎のこのようなゲスい部分はいっそ清々しく読むことができます。ストーリーはいわゆる日常もの。生徒会の役員がひたすら生徒会室で駄弁っているという内容が、基本的には主人公の杉崎の視点で語られていきます。そして美少女揃いの役員達は、みんなそれぞれとても個性的です。
生徒会長の桜野くりむは身長が140cmと小学生にすら見間違えられるダメ人間、副会長の椎名深夏は運動神経もスタイルも抜群の美女で、その妹の真冬は男性恐怖症。大人の魅力をまき散らすのは書記の紅葉知弦です。
短編集の形を取っているため、隙間時間にも読める気軽さも魅力の1つ。バランスよく混ざったギャグと萌えを息抜き代わりに楽しむことができる作品です。
主人公となる観束総二はツインテールをこよなく愛する男子高校生です。そんな彼はある日、異世界から来たトゥアールという人物から突然ブレスレットを押し付けられ、ツインテール幼女戦士「テイルレッド」に変身することになってしまいます。
異世界から来た怪人集団を倒すため、ツインテールを守るため、テイルレッドは今日も戦うという、やっていることは王道な、しかし変わったキャラクターたちが織り成す軽快な「バカ小説」とでもいうべき作品です。
- 著者
- 水沢 夢
- 出版日
- 2012-06-19
男の主人公が女の子の姿に変身する、という性転換的な要素を加えた魔法少女物語です。もちろん戦うのは主人公だけではなく、正統派ツインテール少女たちも変身してかっこよく戦ってくれます。
この作品の一番の見どころは主人公のツインテールへの情熱でしょう。2015年には「日本ツインテール協会」から「ツインテールアワード2015」の特別賞まで授与されています。
軽快的で勢いのある文章、思わず笑ってしまうようなハイテンションさ、そして意外とまっとうで熱いバトル、なのにキャラクター性は変態ばかりというかなり完成度が高い作品といえるでしょう。とにかく「テイルレッド」が非常にかわいいのでそれだけでも一見の価値ありです。
10歳になったある日、アデル・フォン・アスカムは自分の前世が栗原海里という若い日本人女性だったことを思い出しました。彼女は生前、幼い少女を助けようとしたがため、その命を落としてしまっていたのです。
そして死後に出会った神様にお願いをします。それは海里の人生は秀才だったがために思うように生きられなかったため、「来世は次の人生、能力は平均値でお願いします!」と、普通の人間として生まれ変わることでした。
そんな期待をして生まれ変わってみたものの、神様は勘違いしてしまい、なんと平均は平均でも全生物の中で最強の生物の能力の半分(魔力であれば、人間の13600倍の古竜種)を持って生まれてしまったのです。生まれ変わった先のファンタジーの世界において、間違っても最強であることがバレないように気を付け頑張る少女の物語になっています。
- 著者
- FUNA
- 出版日
- 2016-05-14
生まれ変わった先がファンタジー世界というのも面白いところですが、何より普通の女の子に憧れる少女がチート能力者だというところが見所といえます。しかもその能力を隠そうとするものの、周囲には筒抜け。隠そうとすればするほど目立ってしまう少女の日常には、くすりとさせられることでしょう。
小さな体躯であるのにも関わらず、巨大な魔物の攻撃をを受けてもびくともしないほど頑丈で、魔力は人間の6800倍もあり、腕力も少女のそれからはかけ離れたほどの豪腕。もはや少女とは呼べないほど強く生まれてしまった彼女が、その最強さを持て余しながら暮らしていきます。2巻目からは冒険者となり、そのチート能力を発揮していきますが、一貫した目標もないためただただ能力を使い彼女流に普通に過ごしていきます。
文章は三人称で軽い文体。ゆるく何も考えずに楽しむことができる作品になっていますよ。元々小説投稿サイト「小説家になろう」の作品であったためか、制約もなく作者が自由に書き綴った物語が展開していきます。コミカライズもされていますので、よかったらそちらもどうぞ。
ある日、都立陣代高校に1人の転校生がやってきます。その転校生の名は相良宗介。この作品の主人公です。宗介は一見普通の男子高校生ですが、なんと彼はミスリルと呼ばれる対テロ極秘傭兵組織の最年少エージェントでした。陣代高校に通う千鳥かなめという少女を秘密裏に警護するという特殊任務を与えられ、高校生として学校へ潜入してきたのです。
- 著者
- 賀東 招二
- 出版日
- 1998-09-18
しかし幼い頃から戦場で暮らしてきた宗介は、平和の日本の生活になかなか馴染むことができません。警護対象であるかなめとも衝突を繰り返してしまいます。副題である「戦うボーイ・ミーツ・ガール」を楽しむことができるSFロボットな学園コメディです。
主人公の宗介が傭兵組織の最年少エージェントという設定からもわかるように、作中にはSFや軍隊の用語も多く出てきます。しかし作品自体はとてもわかりやすい文章でまとめられているので、普段SFや軍隊ものは読まないという方でも、気軽に読むことができるでしょう。
「どんな手段を使ってでも殺す、銃が無ければナイフで殺す、ナイフが無ければ素手で殺す、両手が切り落とされれば喉笛を噛み千切る、死んだとしても尖った骨となり敵が踏むのを待つ様な男」(『フルメタル・パニック!』より引用)
宗介は上記のように称される人物。少年兵として戦い続けてきたためか、平和な日本の常識が通じず、学校内でもお構いなしに銃やら地雷やらを使用して騒ぎばかり起こします。
かなめはそんな宗介を気味悪がったり怒ったりしながらも、色々な出来事を乗り越えていくうちにだんだんと気になっていきます。まさに「ボーイ・ミーツ・ガール」の王道とも言えるストーリーで、期待を裏切りません。
個性的なキャラクターの会話は人間味があって、共感しながらぐいぐい読ませてくれます。学園コメディにアクション、もちろん少年と少女の青春も詰め込まれた、盛りだくさんな王道ライトノベルです。
『ベン・トー』の主人公、佐藤洋は高校1年生の男子。寮で暮らす彼は、食費を節約するために、立ち寄ったスーパーで半額になった弁当を買おうとします。しかし、そこで「半額弁当争奪戦」に巻き込まれ、意識を失ってしまいました。
その後出会った白粉花や槍水仙達から、洋は「半額弁当争奪戦」について聞きます。それは、スーパーにおいて「半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)」に行われる「半額弁当」をかけたバトルのことでした。そして主人公も、「半額弁当」を巡った壮絶なバトルへ身を投じていくことになるのです。
- 著者
- ["アサウラ", "柴乃 櫂人"]
- 出版日
この物語は、あえて一言で言うと、半額弁当の取り合いです。セール中のデパートやスーパーなどで見かけることのある商品の取り合い合戦が、この作品では「バトル」になって描かれています。
「所詮俺たちが獲得せんとするのは半額弁当でしかない」(『ベン・トー』より引用)
バトルものの中でもかなり特異な設定です。大真面目に半額弁当を争奪するバトルは、最初こそその設定のインパクトに圧倒されますが、読み進めていくうちにどんどん引き込まれています。それも、主人公を始めとしたキャラクター達の「半額弁当」に対する熱意が伝わってくるからかもしれません。
この作品は、「このライトノベルがすごい! 2009」の新規部門で6位、翌年の2010では総合で8位を取りました。さらに2011年、2012年とも総合でそれぞれ5位、3位とランキングをあげます。斬新なアイディアとキャラクターの魅力が光る作品です。
スポーツ万能、雑誌モデルまでこなす桐乃を妹に持つ主人公高坂京介。幼少時は仲が良かったけれど、成長していくにつれて険悪なムードに。一見どこの家庭でもありそうな関係は、あるDVDをきっかけに異変が起きます。ここから京介は妹の秘密を知り、妹のために協力しようしていき……。
- 著者
- 伏見 つかさ
- 出版日
- 2008-08-10
「桐乃のため」ではなく「いい兄」を演じるために協力する京介は、「桐乃」という存在ではなく、「妹」という名前のほうを愛し、大切にしていたのです。だからこそ「桐乃のことは嫌いだけど、妹のことは好き」という発言まで飛び出します。桐乃という個人を見ない京介でしたが、桐乃の真剣さを知ることで気持ちに変化が現れます。一方、自分のために精一杯協力してくれる京介に対して、桐乃の方にも現れる気持ちの変化……。
現実世界やSNS上での人間関係、家族間の気持ちの変化など、さまざまな人間関係が入り組みます。ラブコメディですが、読み応えある作品です。
目つきが悪くてヤンキーだと誤解されてしまう高須竜児と、一度怒り出すと手がつけられない逢坂大河の2人がドタバタしながらも、心を通わせていく青春恋愛ストーリー。
見た目とのギャップが激しい2人が、互いの想い人に想いを伝えるために、協力し合います。しかし、協力関係という間柄だったはずが、いつの間にか2人は互いが必要なただ1人の存在であることに気付きます。
- 著者
- 竹宮 ゆゆこ
- 出版日
- 2006-03-25
けれど、お互いの恋に協力するという立場以上に踏み込めない2人。なかなか素直になれない2人の姿に、読んでいてヤキモキしてしまうこともあります。ですが、少しずつ近づいていく心の距離に、甘酸っぱい懐かしい感情が呼び起こされるのではないでしょうか。
しかし2人の間に立場の壁が立ちはだかります。竜児は父親が蒸発しており、駆け落ち同然で実家を出たせいで実家との関係が断絶している母親との2人暮らし。一方、大河は金銭的には何不自由ない生活を送れているものの、継母などと折り合いが悪く1人暮らしをしています。
単なる恋愛ストーリーではなく、親子の微妙な関係も描かれている本作。親と子供の気持ちが通じ合うシーンは、思わず胸が熱くなってしまいます。
また、この作品は友情もアツい!友人のために自分の想いを抑えようとするヒロインは逆にこう言われてしまいます。
「自分の幸せは自分の手で掴み取る」(『とらドラ!』より引用)
ただ甘くて切ないだけのストーリーではなく、家族関係や友人関係も繊細に描かれているから続きが気になってしまうのかもしれません。
様々な障害を乗り越えて2人が最後に選ぶ選択とは?現実味のない恋愛関係ではなく、リアルな恋愛関係を描いている物語です。
「このライトノベルがすごい!」では三冠同時達成という史上初の快挙を成し遂げた本作。誰もが納得できるような面白さが、詰め込まれています。
- 著者
- ["渡 航", "ぽんかん8"]
- 出版日
「1人ぼっち」を極めようとしていた比企谷八幡。八幡はスペックが高い高校生なのに友達がいない、残念な高校生でもありました。そんな八幡を見かねたのが、「奉仕部」顧問の平塚静。平塚は、生徒が抱える問題の解決を手助けするというちょっと変わった「奉仕部」に、八幡を送り込むことにします。そこで八幡は、校内一の美少女と出会うのですが……。
奉仕部には八幡の他にも社会適応が難しいと思われている生徒が、静によって入部させられています。誰かのために活動し、自己改革を促す部活。しかし素直になれない3人の部員たち。ひねくれていて人を信じることができない3人が悪戦苦闘しながらも、少しずつ打ち解けていく青春ラブコメディです。
主人公の高校2年生梓川咲太は、ゴールデンウィーク最終日に自身が通う峰ヶ原高校図書館で、野生のバニーガールと出会います。
そんな彼女は、からかうように「ねえ、キスしよっか」と言い、しばらくして咲太の前から消えてしまいました。彼女はただのバニーではなく、活動休止中の人気タレントであり、咲太が通う高校の上級生でもある桜島麻衣先輩だったのです。と、それが第1巻『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』の物語。
1巻はバニーガール先輩である桜島麻衣、2巻はプチデビル後輩の古賀朋絵、3巻はロジカルウィッチの双葉理央というふうにヒロインが1巻ずつ変わっていくような体裁で物語が進んでいきます。
巻ごとにヒロインが変わるたび、問題を抱えたヒロインが現れそれを解決していくといった物語構成になっています。麻衣がメインヒロインとなっていますが、どのヒロインも魅力があふれているので物語を追うのが楽しくなってきます。
- 著者
- 鴨志田 一
- 出版日
- 2014-04-10
本作ではにわかには信じがたい都市伝説、思春期症候群が描かれます。
思春期症候群という謎の症状は、基本的に治療法は「元になった問題」を解決するほかありません。そのため咲太が一生懸命そんな思春期症候群の少女たちをを助けようと奮闘する物語が紡がれ、その中にSF要素として「もしも自分が見えなくなったら」とか「もしも世界が繰り返されたら」とか「もしも自分が分裂したら」という仮定を物語として落とし込んでいます。
ラノべ自体のタイトルが『青春ブタ野郎は○○の夢を見ない』というふうに、○○のところにその巻独自の文言が入ります。どれが何巻目なのかわかりづらいので「青春ブタ野郎」シリーズ紹介記事をご確認ください。
この作品は『さくら荘のペットな彼女』でお馴染みの鴨志田一によるラノベであり、イラストも同作でコンビを組んだ溝口ケージが担当しています。『さくら荘のペットな彼女』が好きな方には強く勧められる作品となっています。
田舎の町で暮らしている阿良々木暦はある日、瀕死の状態の女性と出会います。実は、彼女は吸血鬼で、暦は彼女を助けるために自らの血を与えました。本来であればそれは暦の死を意味するものでしたが、女性は自分の命を助けるために死を覚悟した暦を殺すことはせず、代わりに暦を「吸血鬼の眷属」へと変えることにしました。
- 著者
- 西尾 維新
- 出版日
- 2006-11-01
吸血鬼のような人間になった阿良々木暦は、その後、女吸血鬼の出現によって生じた街の霊的エネルギーの乱れから次々に現れるようになった怪異と、その怪異に憑かれた少女達と出会いを通し、少しずつ成長していきます。
「化物語」を始めとしたこのシリーズは、テレビアニメや劇場版アニメ、ドラマCDやゲームにもなっています。「このライトノベルがすごい! 2008」で11位、その後2009年、2010年ではそれぞれ6位、2位を獲得している人気シリーズです。
オムニバス形式で、主人公の暦は全編を通して登場しますが、メインになる女の子は毎回違います。作者が創作した「怪異」をモチーフにしたいくつもの話が物語を構成し、シリーズの第一作となるのは『化物語』では病弱な女の子が空から降ってくるところから物語は始まるのです。
「例によって遅刻気味に、僕が校舎の階段を駆け上っていると、丁度踊り場のところで、空から女の子が降ってきた。それが、戦場ヶ原ひたぎだった」
「咄嗟に受け止めた戦場ヶ原ひたぎの身体が、とても――とてつもなく、軽かったからだ。(中略)戦場ヶ原には、およそ体重と呼べるようなものが、全くと言っていいほど、なかったのである」(『化物語』より引用)
冒頭から一気に物語へ引き込まれていく展開。ここからどんどん読み進めていくにつれて何よりおもしろくなってくるのは、キャラクター達の会話です。肝心の本編を一瞬忘れてしまいそうになるほど読み応えのある、笑わずにはいられないものとなっています。
暦は主にツッコミ役、相手がボケのことが多いですが、この掛け合いはもはや漫才のよう。もちろん全体を通したストーリーも面白いのですが、1つ1つのエピソードにとにかく笑いが絶えない物語です。
『バカとテストと召喚獣』は学力低下に悩まされる世界が舞台です。そこに颯爽と現れ新風を巻き起こした「試験召喚システム」。これは「テストの点数」が「召喚獣の強さ」になるというもので、このシステムが導入された文月学園高等部が物語の舞台です。
この学校ではテスト結果を元にAからFのクラスに振り分けられます。主人公の吉井明久は、自信満々でテストを受けますが、結果は最低のFクラス。そんなFクラスに、なぜか学年トップクラスの才女・姫路瑞希が振り分けられてきます。
- 著者
- ["井上 堅二", "ファミ通文庫編集部", "葉賀 ユイ"]
- 出版日
病弱な彼女は、運の悪いことにテスト期間に体調を崩し途中退席したために0点扱いにされてしまったのでした。そんな彼女のために、明久は悪友を巻き込み、Aクラスと最高設備を奪うため「試験召喚戦争」を起こします。
「バカテス」と呼ばれて多くの人から人気を集めている本作品。えんため大賞編集部特別賞を受賞しました。その後「このライトノベルがすごい!」2009年、2010年にはそれぞれ3位、1位を受賞しています。
試験の点数でバトルをするという発想が斬新で、そこにギャグはもちろんラブコメも盛り込まれ、そして何と言ってもひたすら笑えるライトノベルになっています。作品の基本はタイトル通り、「バカ」と「テスト」と「召喚獣」。主人公の明久は、「悪いことがあった上に更に悪いことが起きる喩え」を答える問題に「泣きっ面蹴ったり」と答えるくらいの頭の悪さです。
AクラスとFクラスは、ただ振り分けられるだけでなく、教室の設備が愕然とするほど異なります。Aクラスの担任は、クラスが振り分けられた後、生徒達にこう言います。
「ノートパソコン、個人エアコン、冷蔵庫、リクライニングシートその他の設備に不備のある人はいますか?」(『バカとテストと召喚獣』より引用)
一方、Fクラスの担任。
「皆さん全員に卓袱台と座布団は支給されてますか? 不備があれば申し出てください」(『バカとテストと召喚獣』より引用)
同じ日の同じ学校の教室のひとコマなのに、AクラスとFクラスではこれだけ違うのです。
明久はAクラスの設備を奪うために戦争をふっかけますが、もちろんそう簡単にFクラスがAクラスに、それどころかBからDのクラスに勝てるわけもありません。そこでFクラスは戦術や交渉を駆使して勝ちあがっていきます。
ギャグに笑えることはもちろん、バカな主人公の熱血や、強烈な個性を持つ脇役達がうまく書き分けられている本作。試験がテーマの1つでもあるため難しいのかと思うかもしれませんが、魅力的なキャラたちのおかげで全く難しく考えることなく読むことができます。
召喚獣のシステムは、こういうジャンルを読み慣れていない人にはわかりにくいこともあるかもしれませんが、それを考えるよりも先に笑いがこみあげてきます。章の合間に出てくるテストなど、細かなところにも遊び心がいきわたっていて、読んで笑えること間違いなしです。
いかがだったでしょうか。コメディ作品とは読んでいるだけで楽しくなってくるものです。シリアスな作品ばかり読んでいる人も、たまにはコメディ路線のものを読んでみるのもいいかもしれませんよ。