どうも! 川辺です。急に寒くなってきましたね。僕はといえば年末、恵比寿のリキッドルームで開催するミツメのイベント『WWMM』だったり、年明け以降に向けて準備をしているところです。
日頃ミツメの活動はメンバーや手伝ってくれている友達とああでもない、こうでもないと言いながら色々とやっているのですが、『WWMM』に向けて準備をしているうちに気づいたらバンド・メンバーだけでなく、周りのみんなとも時を経たなあと実感し、しみじみしたりしていて秋のせいかな、と思いつつちょっとエモくなったりしています。
「チーム」なんていうのはちょっと照れくさくはあるし、そんな大それたものでもないしなとは思っているんですが、自分が普段好んで見る映画の監督、例えばコーエン兄弟はほぼ毎度同じスタッフで制作陣を固めたりしていて、繰り返し同じ人たちで集ってものを作ったり活動していくことは、どんどん出来るものが濃密になっていく気がしてとても魅力的だなと思っています。
そんなことを考えつつスパイクジョーンズの『アダプテーション』を見たところ、ビッとくるものがあったので紹介させて頂きます。前作『マルコヴィッチの穴』(1999年)と近いメンバーで作られた『アダプテーション』(2002年)は3年という比較的短いスパンで制作されています。
その2作ともの脚本を手がけるチャーリー・カウフマンが『アダプテーション』では主人公として登場します(演じるのニコラス・ケイジ)。主人公が実際の脚本家というチームの制作スタッフにフォーカスをあてつつ、映画の制作過程が題材になっていて、実話と作り話を織り交ぜつつ話が展開されていく構造になっています。
と、ちょっと書いてみても長くなってしまい複雑に思える設定が劇中ではとてもスムーズに見られるように練られていて、かつ前作でやった下地があってこその表現が数多くあることに感動したのでした。制作スタッフによる濃い表現が随所に見られます。
さて、ここからはやっと今回の本の紹介テーマなのですが、『アダプテーション』では事実と虚構入り乱れて妙なリアリティがある中、チャーリー・カウフマンの脚本が上手くまとまらない様が描かれてます。
脚本にしようとしている作品のストーリーに起伏が少なく、映画に向いているとは言えないことに大きな問題があると思うのですが、真面目な主人公はなんとか形にしようと原作者とコンタクトをとったり、あらゆる手段で真摯に制作に向き合っていきます。
そんなこの映画に描かれているような小説(原作)と映画(実写化)の関係は永遠のテーマというか、監督と原作者の間で今までも数々の争いが起きてきたようなことであります。
バンドはというと、ある程度そういうものとは無関係でいられるのでほのぼのとした気持ちではありますが、そんなこと……つまり小説と映画の関係について考えた本や映画化にまつわる逸話のある本を5冊あげさせて頂きます!
地図にない町
『ブレードランナー』などの映画化をはじめとして、多くの小説が映画化されたことで知られるディックの比較的初期のものを集めた短編集。
『ブレードランナー』の原作は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』という作品なのですがここでは置いておくとして、『地図に無い町』はいくつか読んだ中で、SFがあまり得意ではなくてもすんなり読める作品が多く収録されています。
星新一が好きな人もいいと思います。タイトルになっている地図にない町は普遍を感じさせつつ奇妙な話で面白く、現実がだんだんと浸食されていく展開は圧巻でした。ほかには「あてのない船」が好きでした。時代的な背景もありますが核戦争はディックの作品で何度も取り上げられるテーマであり、この短編集でもいくつか出てきて、現在にも大きく警鐘を鳴らしているような気がして、心にくるものがありました。
パーキーパットの日々
こちらはどっちかというともう少しSF寄りの作品が多く収録されている短編集で、SFは結構設定が複雑すぎて苦手!という人にも取っつきやすくおすすめ!(表紙がちょっと怖いイラストなのですが中身はそうでもありません……)。どの作品も面白いです。
「変種2号」は『スクリーマーズ』、「にせもの」は『クローン』という映画にそれぞれなっているので、見比べてみてください(笑)。過去の自分に助けられる「報酬」という作品が特に好きでした。