今年で俳優歴17年目を迎える岡山天音。
ドラマ・映画・舞台、様々なフィールドで活動しながら、「嘘しか書かない」をテーマに掲げる自身のエッセイ「※この岡山天音はフィクションです。」を執筆中。最近では「本人が書いている事すら嘘にしたい」との意向から、課金したAIにエッセイの執筆を丸ごと代行させる不届者っぷり。
今回は普段の連載に替え、「嘘じゃない、本物の岡山天音」――その実体に迫った。
――岡山さんは普段SNSもやっていませんし、あまりご本人がどんな方なのかという所が想像できない気がするのですが、ご本人が思う岡山天音像って、実際どんな人間だと感じますか?
「確かに。SNS苦手ですね(笑)それで言うと自分でも自分がどんな人間なのか、どこか宙に浮かせておきたい、みたいな所があるかも知れません」
――宙に浮かせておきたい……?それはご自身の中でも、ご自身の印象を決め付けたくない、みたいな思いがあるという事なのでしょうか?
「まさにそう(笑)やっぱり自分の中に未知数な自分が居ないと、役を演じる上で自分が役に追いつけない、みたいな事になると思うんです。役よりも自分自身のサイズが小さければ、その役を全うする事はできない訳ですから。あるいは、役を超えられない、とも言えるのでしょうか」
――なるほど。自分でも自分の可能性を信じておきたい、と言う事ですね。そういった意識って、どなたかの影響を受けて培った感覚なのでしょうか?
「いえ。特に誰かから受けた影響って事ではないですね。自分の中から勝手に咲いた花です。世界に一つだけの花、と言った所でしょうか(笑)。そういう花をかき集めた花束で、この俳優という仕事に就けている自分を日々お祝いしたい。そんな思いがずっと心の中にあります」
――なるほど。やっぱり独自の考えをお持ちだな、と思うのですが。逆にご自身にとって、どなたかの影響を受けたことってあるんでしょうか?
「影響は常に受けてます。例えば今ここにある紙コップに入った麦茶。今、僕はこうやって話しをしながらも、視界の端に映るこのお茶から、影響を受けています。このお茶がただここに存在している事。この麦茶って、「自分が麦茶だ」とか思ってないですよね?僕が今こうして少しこの麦茶を飲んじゃったりして。それでもこの紙コップの中の麦茶は「岡山さんに飲まれちゃったよ〜。え〜ん。胃袋と紙コップで別々に生き別れちゃったよ〜。え〜ん」とか、考えてないですよね?芝居って、役って、そういう事だと思うんです。それぞれの存在がただ無自覚にそれぞれの存在としてそこに在るだけ。言葉を吐く。ただ、その人としてそこに在る。自分が役を演ずる上で、役を演ずるという領域から脱して、ただそこに在る、という所まで行き着きたい。そういうインスピレーションを、こういったお茶や、その辺の石や、ただ降りしきる雨なんかから、日々学ばせてもらってます」
――なるほど。非常に興味深いお話ですね。確かに私たち人間って、自分が自分であるなんて事、普段は意識してませんもんね。
「まさに、so(笑)。僕らはただそこに存在して、ただ呼吸を繰り返す。芝居って、そういう事ですよね?」
――非常に興味深いです。そういった独自の感覚を持つ岡山さんが、今、ハマっているマイブームみたいな、そういった身近なお話もお伺いしたいのですが。
「そうですね……。最近は、「魑魅魍魎」にハマってます」
――…魑魅魍魎……?興味深いです。
「so(笑)魑魅魍魎って、画数すごい事になってますよね?「いい加減にしてくれ(笑)」って思って。僕、死ぬまで手書きで魑魅魍魎って書くこと一生ないと思いますもん(笑)。書ける気がしない(笑)。っていうか書く時に絶対字面思い出せない(笑)。鬼の部分が四つ並んでるよなぁ、とかしか思い出せない(笑)。っていうか魑魅魍魎って書く状況がまず現実に無さすぎ(爆笑)。もっとあれ(笑)。そこはあれよ(笑)。がんばれ(爆笑)」
――確かに(笑)。「魑魅魍魎」って私も書いた事ないですし、書ける自信ありません(笑)。一体いつ書く状況が生まれるのか…。そこは興味深すぎます…。
「so so so………。だから、妙に惹かれるんですよね。「魑魅魍魎」って。この間も休みの日、ずっとその事を考えていました。魑魅魍魎って字をずっと眺めたりして。そしたらなんか字が四体の鬼に見えてきて。それぞれの武器持ってる鬼。怖っとか思って。「怖っ」って口に出してましたもん。気づいたら(笑)。でもそうやって、何かぼんやりと一つの事に執着して思考するのが好きで。それで言うと、役に対してもそうなのかも知れません。作品の撮影に入っている間は、カメラの外でもその役のことをずっと考えている。だから俳優ってある種怖い仕事だな、とも思うんです。ずっと一つの事を考え続けて、いつの間にか現実とお芝居の境界線が無くなってしまう。現実とお芝居が一緒くたになって、日常生活でも役として生きてしまう。この間も撮影中にヒロインの方の顔が鬼に見えてきて。あぁ、鬼って現実に居たらこうなのかなぁ、とか思って」
――休みの日の方がお芝居の日に入り込んできちゃったんですね(笑)。でもそれは確かに。俳優さんのお仕事って本当に興味深いですよね。ある種、身を切る様な事を繰り返していると言いますか。本当に興味です。
「相手の方からしたら、本番中に何やってんだって話ですけどね(笑)。その事をそのヒロインの子に後から話したら、怪訝な顔されましたけど(笑)。本当に怖かったです(笑)。マジで鬼みたいな顔してました(笑)。マジで鬼やん(笑)とか思って(笑)。マジで鬼ですやん、とか思って(爆笑)」
――それは流石に興味(笑)。なんだかこう言ったユニークなお話をお聞きしていると、そもそもの岡山さんのイメージと全然違っていて、そこは俄然、興味です。
「よく言われます(笑)。でも全然、なんでも無いですよ僕なんて。なんでも無い事で笑っちゃったりして(笑)」
――いえいえ。非常に興味な方だなと思います。では改めて最後に。これからの岡山さんが目指す俳優像、または今後の展望などをお聞かせできますでしょうか?
「う〜ん、なんでしょう。……これは俳優という仕事の話からは少し遠ざかるかも知れませんが、自分に関わってくれた人たちに恩返しがしたいな、とはやっぱり思います。今日まで本当に沢山の方と出会わせてもらって、そこで沢山のものを貰いましたから。そういう人達に、岡山天音が居て良かったな、と。自分の人生の最期に思ってもらえる様な人として、人生を終わらせたいですね。それこそさっきの話じゃないですけど、自分の世界に一つだけの花をかき集めて作った花束を、そういう人達にプレゼントして周れる様な、そんな人間になって、自分のso式の時にはみんなに泣いてもらえる様な。そんな俳優というか、人間になれていたら、自分は自分の人生に、世界に一つだけの花束を渡せるのかも知れません」
岡山天音の素顔。そこに興味は尽きない。
今回、語られたその虚実は結局のところ、また霧の中へと姿をくらませる。
しかし、その口から発せられた言葉たちは、まごう事なき輝きを放っていた。
そもそも嘘を吐き続けるというその姿勢こそ、俳優としての本来の正しい姿なのかも知れない。
彼の口から溢れる出まかせ。
今後もその『嘘』の行くへに。興味。
あいつ俳優んなりやがった。
あいつっつーか俺。
てかあれって本当に俺?
いけしゃあしゃあと。インタビュー。
マジで。世界に一つだけの花ってなんだよ。畜生。何を引用してんだよ。
つか笑いすぎ。(笑)って書かれすぎ。(爆笑)とか書かれすぎ。
魑魅魍魎のとことかあまりに阿保が剥き出しになっちゃってて引いたわ。変わってるヤツと思われたいのか、本質的にアホなのかわからないけどありがとう。いや逆に。どの道、俺の悪性が全面的に露出しちゃってて草。
so。
破綻、破綻、破綻。
訴えよかな。まあ無理なんだけど。俺だから。
「俺」。
人の善意につけ込むカス。
そもそも俺が善意を持ったのが間違いだった。
俺は漫画家になりたかった。マジに。中学の頃までは。
でも俳優んなりやがった。
俺の顔したあいつは。
中学の頃、俺は漫画家になりたい清廉な子供だった。
学生の本分である勉強そっちのけで、毎晩、家で漫画を描いた。
自分の頭の中で練りに練った大切なキャラクター達を紙の上に登場させる。
カッコよくて、可愛くて、面白い、大好きなキャラクターたち。
きっと気を許せる友達が少なかった自分が、あの頃本当は出会いたかった誰かと、紙の上で出会っていたんだと思う。
そうやって世界の端っこの、誰も知り得ない逢瀬を、毎晩自室で繰り返しては、遊んだ。
ある時、当時流行っていた絵を描く人間が集まる交流サイトで、オンライン上での知人だった見知らぬ誰かと、実際に会ってみる流れになった。
俺の漫画の趣味はかなり偏っていて、心底、趣味の話が出来る誰かを求めては、俺はそのサイト内を徘徊していた。
それで、やっと出会えたその人物とだけは、誰とも話せなかった漫画の話ができる。
俺とその相手は、相手の指定で、新宿のスイーツ食べ放題店で待ち合わせる事になった。
当日、初めて会ったその人物は、ただの三十路のおじさんだった。
俺は緊張で空いてない胃に、それでもじっとしていられなくて、何口も何口もティラミスを流し込んだ。
「十四歳かぁ。いいな。俺もその頃に戻りたい」
男は、皿に盛った二切れのショートケーキだけを、時間をかけてゆっくりと食べた。
同じ種類のケーキだけを二切れ皿に盛っている事に触れたりしても良かったんだろうけど、緊張している俺には、その事に心を留める余裕がなかった。
それでも実際に声を交わして誰かとする漫画の話は、格別に楽しかった。
具体的にどんな話をしたのかは緊張もあって覚えていないんだけど、興奮しながら話していた事だけは覚えている。
それで来店して一時間が経とうしていた頃、向こう側に座る男が、ぽつりと呟いた。
「俺、漫画も好きなんだけどさぁ。本当は俳優になりたかったんだよね。ちょうど虫博士くん位の歳の頃」
虫博士というのは当時の俺の交流サイト上でのハンドルネームだった。虫すき。
相手の男のことも、俺は本名ではなくサイト上のハンドルネームで呼んでいたはずなんだけど、そのハンドルネームが何だったかを、俺はどうにも思い出せない。
「今日はありがとう。本当に楽しかった。またこうやって、実際に会って虫博士くんと漫画の話ができたら嬉しいなぁ。虫博士くん、大人でも知らない漫画沢山知ってるし。俺も勉強になる。っていうか帰りに本屋寄ってかない?」
その時のその男の顔が、なぜだか妙に寂しそうに見えた。
それに誰かが、ましてや当時の俺からして、漫画に詳しい大人に、自分の漫画への姿勢を褒められた事がたまらなく嬉しかった。嬉しくなった俺は、その男の物悲しそうな気持ちごと何とかしてあげたくなって、調子に乗って、多分こんな感じで返した。
いや、僕も本当に楽しかったです。僕も◯◯さんとまた会いたいです。◯◯さんの為だったら、なんでもします。
笑ってはしゃぎながら、そんな事を言った。
その時の相手の顔が、今でも忘れられない。
「本当?ありがとう。本当に」
俺たちはその後、新宿の大きな書店に寄って、それぞれの家路に着いた。
その夜、俺は夢を見た。夢の内容は、その日スイーツの食べ放題に行ったせいか、ピンクがどこまでも続く空間に、ショートケーキやティラミスや、それ意外にも色んな種類の大きなケーキが一切れずつ宙に浮かぶ空間に一人ぽつんと立っている、そんな奇妙な夢だった。
自分の向かい二十メートルほど先には茶色いドアが一つあって、俺はただその対岸に立っている。
しばらくするとそのドアが、キィーという木の軋む様な音を立てながら、ゆっくりと開かれていく。
ドアの先は真っ黒で、でもそこにはなぜか、今日会ったあの男が立っていた。俺の話を聞いてくれた、あの柔和な男が。
男は口を開く。
でもおかしい。
今俺がいる場所から離れた所に男は立っているはずなのに、男の息を吸い込む音が、耳のすぐそばで聞こえた。
「本当?ありがとう。本当に」
その瞬間目が覚めた。
目が覚めてからが、地獄のはじまりだった。
俺は今の夢を振り払うかの様に体を起こそうとする。でも、体は一向に起き上がらない。
声を発しようにも、声が出ない。
というか体の感覚自体がなくて、まるで映画館のスクリーンで自分の視界を眺めている様な、とにかく自分の体の現実感がひとつも無くてびっくりした。
しばらくすると、俺の意思とは無関係に俺の体は起き上がり、辺りを見回す。
まるで初めて来た知人の部屋の様子を、密かに値踏みするかの様に。
俺の意思とは無関係に、俺の体が動いている。
持ってかれた。
俺の体は、昨日会ったあの男のものになってしまった。なんでかわからないけど、そんな実感がどこからか湧いてきて、俺は震えた。
これから俺の体が、俺以外の誰かに、「使われる」。出せない声を何度も吐き出す。
でも俺の意思の出口なんて、もうこの世界のどこにもない。
そこからは俺じゃない俺の人生を、スクリーン越しに傍観するだけの人生が始まった。
マジでミスった。
あれからずっとbad入ってる。
きっとあの時あそこで、俺があいつに、何でもする、とか言ったのが「あいつが何かをくぐる為の条件」だったんだ。
俺はその「条件」をクリアさせてしまった。
だから俺はこんな場所に閉じ込められて、自分じゃない自分が、人生を好き勝手やるロードムービーを延々眺めさせられてる。畜生。人の善意につけ込むカス。
でもよくわかんねーけど、あいつが眠りについた後、夢の中でだけは、毎回俺の番が回ってきた。なぜか夢を見るのは俺の係なのだ。
でも番手が回ってきた所で夢の中じゃしょうがない。俺は夢の中でだけやっと自分の物になる手足を動かしては、毎晩、頭を抱えてる。
それ位しか夢の使い道なんて無ーよ。
俺は俳優になった。
いや、岡山天音になりすましたどっかのおっさんが俳優やってる。
俺は漫画書きてえっつーの。
マジ無いわ。
※この岡山天音はフィクションです。
実在する岡嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いいいいっていい行っていい帰ってこなくていい嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いいいから嫌い来るな嫌い
【#26】※この岡山天音はフィクションです。/失踪する叔父
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【#25】※この岡山天音はフィクションです。/雨宿り。後から軒下に入ってきたお婆さん。
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【#24】※この岡山天音はフィクションです。/せっかく諦めたばかりだったのに。
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※この岡山天音はフィクションです。
俳優・岡山天音、架空の自分を主人公にした「いびつ」なエッセイ×小説連載を開始!