非日常を日常で感じれる伊坂幸太郎さんの3冊【結城洋平】

更新:2021.12.16

「臆病は伝染するし、勇気も伝染する。誰かの役にたちたい病も伝染する」。伊坂幸太郎さんの本は、あ! このフレーズ!! 別の作品にも出てきたフレーズだ!! この登場人物!! あの作品でも出てきた!!と、別の作品のはずが気づいたら繋がっている。

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一冊の本が点だとしたら、何冊か読んでいくうちに点が線になっていて気がついたら線が丸になっている。そんな味わった事のないワクワクを体験させてもらえます。

先月までの舞台「くるみ割れない人間」が終演し、くるみ割れない世界から現世に戻って参りました。次の舞台「メッキの星」メッキの星に旅立つまでの間、読み虫になれる絶好の期間です。
本を読む楽しさを作品を通して教えてくれたのは伊坂幸太郎さんでした。

友人が勧めてくれて初めて読んだのが『アヒルと鴨のコインロッカー』。それから『ゴールデンスランバー』『オーデュボンの祈り』『陽気なギャングが地球を回す』と読み続けていくうちに、前のめりになりながらもっと知りたい!!早く、深く読みたいと読書好奇心を駆り立ててくれた作品の数々は胸を張って好きと、言わせてくれる作品ばかりです。

気づいたら円になっている

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2014-11-14

「PK」「超人」「密使」。3つのタイトルからなる『PK』。

最初の章の「PK」を読み終えた時、中編集だったんだ!?と思い次の章の超人を読み始め、辺りを見渡すとまんまと伊坂Worldへと足を踏み入れていました。「PK」で起きていた出来事が面白いように繋がっていく感覚はまさに点が線になり、気づいたら円!! 点線円!!!(そんな言葉あるのか!?)

超能力や未来人。日常ではあり得ない現象や世界を、あれ? もしかしたらこんな世界あるかも?と思わせてくれる「PK」はまさにタイムトラベラーにさせてくれます。

「。」が「、」だったときの高揚感

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2016-11-28

「PK」は「PK」でとても気持ち良く完結されています。が、『首折り男のための協奏曲』を読み進めていくうちに……。終わってなかったー!!とまた伊坂Worldへと放りこまれるのです。文末の「。」だと思っていたものが「、」であったときの高揚感は他の何にも似ていないワクワクするものがあります。

物騒なタイトルからは想像できない軽快な点線円です(もう普通に使ってしまっている)。

アイデアの源泉が知れる一冊

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2015-05-28

エッセイがあまり得意ではなく、書く機会をあまり増やそうとしないと自身で明言している伊坂さんがデビュー10周年を記念して出版された『3652』。

普段は作品を通して触れていた伊坂さん。頭の中にある思考の結果として読んでいた作品の、思考の過程を垣間見ることができる貴重な一冊でした。エッセイの中で頻繁に登場する伊坂さんのお父さんのエピソードがとてもチャーミングで、出てくるたびにニヤニヤしながら読んでしまいました。

また、一年の初めに書かれている「干支エッセイ」。その年の干支を元に文章が進んで行きます。十二支全て読み終えると、干支エッセイを欲する自分が出てきました。伊坂さんにとって、書くことが毎年の悩みの種という干支エッセイ。悩んだ末に文字になる干支エッセイは必見です!!

伊坂さんの作品のアイデアとなる本や映画や音楽の数々を知れて、好きな人の好きな物を知りたいという欲求をこれでもかと堪能できる一冊です。

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