受験生や大学生でもタメになる!おすすめ哲学書5冊【河邉徹】

受験生や大学生でもタメになる!おすすめ哲学書5冊【河邉徹】

更新:2021.12.16

どうも! WEAVERのドラムのかわべです!  まだまだ寒いですが、もうすぐやってくる春を楽しみに日々を過ごしています。寒い季節は、いまだに自分が受験生だった頃のことを思い出します。季節が巡る度にやってくる記憶ってありますよね。

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受験生の季節が終わった後、僕は無事大学生になったわけですが、大学では文学部で哲学を専攻していました。そして最近、「哲学ってどんなものか気になります」だったり、「大学で哲学を専攻しています」という声を聞くことがあります。

なので今回は、そんな哲学始めましたの方にも、既に学んでいる方にも、為になる読むべき哲学書を5冊紹介したいと思います。

僕は哲学という学問に触れたことが、自分の人生や歌詞に少なからず影響を与えているのだと思います。多くの人にとってとっつきにくい学問かもしれませんが、哲学はとても身近にあるものです。「生きてるってなんだろう」「どうして誰かのために生きるんだろう」など、当たり前のことを疑問に思った瞬間、それが哲学の始まりです。

今哲学を学んでいる方だけでなく、ちょっと興味があるかも、という方が読んでも面白い本を用意しました。是非読んでみてください。

本を読んで、この人と同じ意見だな。とか、逆にこの人はこう言っているけれど自分はこう思うな。などと、自分の立場を決めて、議論に参加している気持ちになれるのも哲学の喜びの一つですよ。

「哲学とは何だろう?」と迷う方に役立つ一冊

著者
出版日
この本は、僕が大学で卒業論文を書く時に購入した本で、今でも時折読み返す本です。取り上げている領域がとても広く、「哲学といっても自分は何に興味があるんだろう」と迷っている方にも、役に立つ本だと思います。

自由とは何か、良いとは何か、死とは何か。様々なことを読みやすく解説してくれていて、それをもっと深く知りたい人のための、読書案内も各章で紹介されています。この本から哲学を始めるのに最適ですね。

僕は学生の頃、他我問題に興味があったので、二章目の「私と他者」の部分は特に何度も読みました。他我問題とは、「自分に心があるのと同じように、他人にも心があるのかな」などと考えることです。そりゃあるでしょ、と思っている人ばかりだと思いますが、じゃあそれはなぜそう思うのか、とちゃんと考えていくのが哲学です。

人だけでなく、動物や虫、ものに対してもそうです。人間と見た目も行動もまったく区別がつかないロボットには心があると言えるのか、など、今の時代に考えておくのもこの世界をより知るために必要かもしれません。

哲学に関するさまざまな領域を学ぶことができる一冊

著者
戸田山 和久
出版日
2014-03-05
まさにタイトルそのままの、哲学入門にふさわしい素晴らしい本です。著者である戸田山和久さんも本の中で言っていることですが、これは哲学入門、と言っても有名な哲学者についての解説や、哲学史の紹介だけの本ではありません。

現代を生きる僕らの生活は、科学の成功によって成り立っています。だいたいの人が、科学的な証拠があるものこそ正しい、という感覚を持って日常を過ごしていると思います。観念的なものよりも、物理的なものが正しい、と思っている僕らは、そういう意味では唯物論者と言えます。

その感覚を前提にこの本は書かれているため、とても理解しやすいです。

よくある初心者のための哲学、みたいな本では、歴史的哲学者の紹介から始まり、例えばプラトンのイデアが云々という説明があり、その辺で「なんだか胡散臭いなぁ」という気持ちにさせられてしまう人も多いのではと思います。イデアとは、物事の本質はイデア界にあり、僕らが見ているものはただの影に過ぎないというとても大切な概念ですが、物質的な感覚を持つ忙しい現代人にとって、簡単に共感できるものではないです。

この本では、唯物論者の感覚を持ち続けたまま、「意味」とは「目的」とは「自由」とは「道徳」とは何かが解説されていき、「生きる」ということの意味にまで着手していきます。 「人生とは」のようなとても大きな課題にたどり着く過程で、哲学に関する幾つもの領域を学ぶことができます。

扱う内容は、決して平易ではないですが、文章の語り口調や例えが明快で、最後まで楽しく読めるはずです。

そもそも哲学なんて役に立たないんじゃないの、などと思っている方にも、是非読んでいただきたいですね。そしてあとがきの最後の一行まで読んでほしいです。哲学からの挑戦が書いてあります。

哲学をより実践的に示した一冊

著者
マイケル サンデル
出版日
2011-11-25
マイケル・サンデルさんのハーバード大学の人気講義「Jusice」をもとにした本です。

哲学をよりプラクティカルなところに落とし込んでいて、実際にあった事件や思考実験をもとに、正義について考えていきます。

第二章ではベンサムやミルの「功利主義」についての議論があります。最大多数の最大幸福を求めることをよしとする功利主義は、一見多くの人を幸せにする最も有効な手段だと思います。直感的にも、それを否定することは難しいと思いませんか? しかしもし文字通り、最大多数の最大幸福を求めることを最適解とするなら、どんな間違いが 起こるのかなど、幾つもの実際に起こった例を交えて解説しています。

また、第九章では「責任」というものについても考えさせられます。我々は先祖の罪を償うべきなのか、という議論は、今の時代でもみんなにとって興味のあることだと思います。

例えば、僕らは日本人が海外で世界遺産に落書きをした、などというニュースを聞くと、まったく知らない日本人の行為であっても、海外の人に申し訳ない気持ちになったりします。そんな風に、責任を感じる境界線は一体何なのか、などは考える価値のあることだと思います。

哲学にリンクする「ミーム」という概念

著者
スーザン ブラックモア
出版日
こちらは入門書のように様々な分野を扱ったものではなく、少し専門的な本です。「ミーム」という言葉自体、あまり多くの人に知られていませんが、誰にとっても興味深いと思ってもらえるような内容なので、紹介してみようと思います。

ミームとは、ある概念です。人の脳を住みかとして、人の脳から人の脳へ、ミームは自分をどんどん複製していきます。例えば「スカートを履くこと」や「髪の毛を染めること」もミームの一つです。そうしたミームが人の脳に入りこんで、人の行動に作用し、人の脳の間で複製されているのです。

人が必要以上におしゃべりに進化したのも、ミームが拡散されやすいようにそうしたのかもしれません。何も考えないでおこうと努力しても、考えを止めることができないのは、ミームが湧き上がってくるからかもしれません。

それらは決して空虚な話ではなく、ダーウィンの自然淘汰による進化理論が確立され、科学の力で遺伝子の正体が少しずつ明らかになってきていますが、その遺伝子とミームのアナロジーは強い説得力を持っています。

TEDでも、2002年にダニエル・ダネットが、2009年にこの本の著者であるスーザン・ブラックモアがミームの話をしています。2009年ではミームからさらに進化した、テクノミームであるテームの話をしています。テクノロジーの力で、人の手を介さずとも広がる第三の自己複製子であるテームの、その危険性を指摘しています。コンピューターは、人の力ではなく、自分を増やそうとするミームの力でできたものかもしれませんね。

僕自身、大学では学んだことのない分野でしたが、非常に興味深く、今の時代に考えるべきことでもあると思います。学生の方は、是非卒論のアイデアにしてみてください。

時間のない方は、この本のリチャード・ドーキンスさんによる序文だけでもどうぞ。

ファッションを哲学する

著者
鷲田 清一
出版日
少し趣の違う本を紹介します。

鷲田清一さんによる、ファッションを、そしてモードというものについて、真っ向から向き合った本です。うわべの問題として軽く見られがちのファッションには、様々な役割があるということを改めて考えることができます。

服の役割と聞くと皆さんなら、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。身体を保護したり、寒さから守るため、といったものにはとどまらない、服の役割に気づくことができるでしょう。制服一つをとっても、制服を着ることで違う自分になったような気持ちになるように、人格に影響していることがわかります。

時代と服の関係性の考察も、面白いです。著者は、第二の皮膚ともいえる服は、極細の繊維が持つ羽毛のようなやさしい感触や、絹より滑りのいい装飾感にうっとりすることもあれば、80年代に登場したボディ・コンシャスな服は、逆に皮膚への刺激や感触を楽しむ服だったのではないか、と考察しています。

また、今は多くの人にとって、服は個性を楽しむためのものであると思います。著者は、わたしたちの生きている社会は、人々に誰かであることを強要する社会であり、地下鉄のファッション雑誌の吊り広告でも「じぶんらしさ」を強要し、自分が誰かよくわからないままに、自分らしくあることにこだわる、と書いています。

そして、個性を発揮しなければいけない故に、個性のないものが個性になることもあります。それについて著者は、ファッション現象そのものに反抗するためのアンチ・モードでさえ、たちまちモードの一つに飲み込まれる、と考察しています。

他にも山本耀司、川久保玲、三宅一生といった日本人デザイナーについての言及もあったり、ファッションに興味のある方は、読んでみると何か発見があるかもしれません。

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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