卑弥呼についての本5選。邪馬台国時代の謎を倭人伝や小説から読み解く

更新:2021.12.16

学校などでも繰り返し繰り返し学んできたであろう、邪馬台国やその女王卑弥呼。では彼女について、邪馬台国について、実際にはどれほどのことがわかっているでしょうか。今回は、かの時代の謎に迫る本を5冊ご紹介します。

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中国の史書に記される、邪馬台国の女王、「卑弥呼」とは。

卑弥呼の活躍が主に見られるのは弥生時代の後期、その存在の多くは中国の歴史書の中で散見することができます。当時、日本は「倭」と呼ばれており、彼女の治める「邪馬台国」は、その中に存在するとされる国のひとつでした。「倭」の中で非常に強い力を持っていた「邪馬台国」は、30ほどの国を従えていたといわれています。

「邪馬台国」の当初は男性の王が治める国でした。しかし騒乱が起こり長い戦いとなった後、各勢力はそれぞれ共同で1人の女性を女王とすることにしたのです。これが、女王卑弥呼の誕生です。人前には出ず、多くの女性に世話をされていたという卑弥呼は、「鬼道」というまじないの力で国を治めていました。まじないによって天災や戦争などを占っていたというわけです。

倭の国を描く歴史大作

著者
帚木 蓬生
出版日
2012-05-30

架空の「倭」を舞台とする小説作品『日御子』。主人公を務めるのは通訳を務める一族の子として生まれた針で、彼は病床の祖父から、漢で「金印」を授かった時の話を聞くことになります。彼からして遠い時代の話に彼は胸を躍らせます。そして、それから十数年後、針は漢の使いに通訳係として同行することになるのです。500ページを超えるスケールで描かれる歴史ロマン小説になっています。

針の一族は大陸から渡来したという「あずみ」の一族で、この物語はその一族を中心に書かれています。通訳とはいうものの、当時の中国に対する外交官としての役割もあった「あずみ」の一族の重責を書きながら、「和平」というテーマを表現しています。

物語の中でもう一つ意味を持つのはあずみの一族に受け継がれていた4つの家訓です。「人を裏切らない」、「人を憎まず、戦いを挑まない」、「良い習慣は才能を超える」、「骨休めは、仕事と仕事の転換にある」。現代にも通じるこの4つの家訓が、どのように基盤となって物語を動かすのか、ぜひ読んで確認してみてください。

本当の卑弥呼とは?

著者
義江 明子
出版日

まじないの力で国を治めた優れた巫女。卑弥呼について学ぶことといえばまず、このことが先に来ることでしょう。しかし、この卑弥呼が巫女であったとする説は実は近代に創られたものだった、と本書『つくられた卑弥呼―“女”の創出と国家』では語られています。有名な「魏志倭人伝」そして「風土記」や「日本書紀」などの伝承もふまえて丁寧に読み解くことで、古代の女性首長としての卑弥呼について論じています。

邪馬台国の女王卑弥呼を、ジェンダー的な視点で考え、彼女の正しいあり方を見つめなおす主旨の本書。そもそも古代では特別男尊女卑というわけもなく、女性が実験を握るということはおかしなことない、とこの本では書かれているのです。その上でこれまでそうだと思われていたことを一つひとつ論じています。たとえば人前に姿を見せない、というのはあくまでも中国での記録であるので、中国の使者に姿を見せていなかっただけなど、そう考えればそうかもしれない、新たな卑弥呼像を知ることができる1冊です。

邪馬台国はどこにあるのか

著者
安本 美典
出版日
2009-09-10

邪馬台国はいったいどこにあったのか、残念なことに現代においても明確な答えというものはありませんが、一番有力であるとされるのは「機内説」です。同様に、奈良県にある箸墓古墳も卑弥呼の墓であるとする説が一般的となっています。しかし本書『「邪馬台国=畿内説」「箸墓=卑弥呼の墓説」の虚妄を衝く! 』は、そのタイトルにもあるように、それらの説に待ったをかける1冊。著者は邪馬台国北九州説を支持する立場から、機内説を考古学的、文献学的にかけ離れていると否定します。

専門的な説明が多く、少し難しい内容もありますが、数学なども交えて科学者の立場から箸墓の建造年代は卑弥呼のものとは違うなど、一つひとつ論破していく様が面白い内容となっています。たとえばマスメディアでは、炭素14年代測定法によって箸墓の年代を卑弥呼が死んだとされる西暦240~260年ごろと大体的に発表がなされていました。

しかし、そもそもそれらは科学的に成立しえないという報告が他にもあがっていたのです。著者は、マスメディアではそのことが報じられないことについて、はじめにしっかりと苦言を呈しています。著者が真に批判しているのは学問をパフォーマンスのように広め、そしてそれに踊らされるマスメディアにあるのでしょう。卑弥呼について、そしてマスメディアへ警鐘を鳴らす1冊です。

邪馬台国だけではない、倭の姿とは

著者
森 浩一
出版日
2010-08-06

古代史を知るためにまず外せない史書『倭人伝』。邪馬台国や卑弥呼についてはもちろんですが、それ以外にも古代のことを知ることのできる貴重な史料です。本書『倭人伝を読みなおす』は、そんな倭人伝をもう一度しっかりと読むことで、今まであまり知られることのなかった国々、都市、外交の様子など、当時の倭の姿を知ることができます。古代ロマンと学問の楽しさを、見つめ直せる1冊になることでしょう。

本書では、そういえば邪馬台国のことは知っているけれど他にあった国のことを知る機会はなかったということを教えてくれます。面白いのはこの時代、文字が使われていないわけではなかった、という記述でしょうか。伊那国という国では中国や朝鮮あたりと文字でやりとりしていたと書かれています。邪馬台国も含めた古代史のロマンを、堪能してみませんか。

常識を覆す、新たな古代史

著者
山形 明郷
出版日
2010-05-21

邪馬台国に纏わる二つのテーマ、それにそって古代史の謎を解き明かす1冊『卑弥呼の正体―虚構の楼閣に立つ「邪馬台」国』。著者が精査した中国史書の数はおよそ289冊3668巻にものぼります。それらを通して楽浪郡、帯方郡、百済、新羅、高句麗などの諸郡、諸国家の位置から邪馬台国を導き出す意欲的な内容となっています。固定概念、常識を覆されることでしょう。

結論としては、邪馬台国は日本ではなかったのでは、卑弥呼は日本人ではなかったのでは、といった内容となっています。朝鮮半島に存在した国々は実はもっと大陸側に存在していた、というのがその中で1つの根拠となっているのです。その朝鮮の国々と接していたとされる「倭」もまた朝鮮半島に存在していたのでは、つまり「倭」とは現代の日本列島とイコールで結ばれないというのです。新たな着眼点として読んでみるのも面白い1冊ですよ。

神秘的で謎が多い邪馬台国、そして卑弥呼という女王。壮大な歴史ロマンを感じるのにこれほどの題材はないでしょう。ぜひ、古代に思いを馳せながら読んでみてはいかがでしょうか。

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