日本史上、重要な人物である聖徳太子(厩戸王)。名前を知らない人は、いないほどでしょう。そんな彼には多くの偉業があります。そしてまだまだ知られていない秘密も。 実は実在しなかったなど、常識を覆すような秘密が記された書籍でいっぱいです。
聖徳太子は、飛鳥時代の皇族で政治家です。本名を厩戸王(うまやどおう)といいます。聖徳太子という名前はこの厩戸王が残した数々の功績を称えるために与えられたものでした。遣隋使の派遣、冠位十二階の制定、十七条憲法の制定、法隆寺の建立などその偉業の数々は歴史の教書に載るほどです。また、10人の話を同時に理解したり、キリストのように馬小屋で生まれたなどの逸話も残されています。
しかし昨今では、その数々の偉業についてある疑問が浮かびあがるようになりました。その疑問とは本当に聖徳太子がそんな多くの偉業が成しえることができたのかということです。ただでさえも謎の多い人物。本当に存在していたのかという疑問もあります。それが本当だとすればこれまでの常識が覆ってしまいます。
そんな謎多き人物についてこれまでに多くの書籍が発表されてきました。その書籍たちは膨大な文献から聖徳太子という人物についての考察をしたり、謎を解き明かしてきています。そんな中、近年でも新たな事実が発見されたり、学説が浮かび上がったりし続けています。
それでは聖徳太子(厩戸王)に関する書籍5冊、お楽しみください。
1:教科書からも消えかけている⁉︎
神がかった逸話や脚色のせいで、実在さえ疑われている聖徳太子。 その影響をどこから受けているのかというと、学校の教科書です。以前では「聖徳太子」と名前が出ていたのに対し、2017年現在では「厩戸王(聖徳太子)」という書き方に変化されています。
そして、以前なら太子1人の功績だったとされていたものはすべて朝廷一体の運営だったとされているのです。ちなみに、ここでいう「いなかった」とは、「聖人のような存在ではなかった」というもので、決して彼の存在を否定しているものではありません。
2:蘇我氏とは非常に親密な協力関係にあった
女系天皇が即位していた頃の飛鳥時代は、事実上は補佐役である大臣や皇太子らが権力を握っていました。そのなかで力をつけた蘇我氏に対抗するために、聖徳太子はこれまで「冠位十二階」「憲法十七条」といった法整備を整えてきたと言われています。
このような様子からは両者が対立しているような印象を得られますが、実際はそんなことはありません。 当時蘇我氏は物部氏と勢力を争っていましたが、聖徳太子は蘇我氏のために戦勝祈願をするなどしています。かの有名な「冠位十二階」「憲法十七条」の制定も、蘇我馬子の協力なしには成立しなかったのだといいます。
1:彼が書いた国書が隋の煬帝を怒らせた
聖徳太子の時代に有名な逸話、それが隋への遣隋使です。当時の倭国は世界的に見ても非常に遅れた国であるとされていました。そこで太子は遣隋使を送ることで、歴史上ずっと宗主国とされてきた中国から、日本を対等に見てもらおうとしたのです。
その時小野妹子に託した国書の「日出づる処の天子、書を日没する処の天子に致す、恙無しや」という有名な文面が、煬帝の怒りを買ったと言われています。 よく言われているのは倭を「日出づる処」、隋を「日没する処」と称したことに怒りを覚えたという説ですが、その他にも「天子」という表現が唯一無二の支配者である皇帝のプライドを傷つけたという話もあります。
2:儒教や仏教の教えから憲法十七条を作った
聖徳太子といえば「十七条の憲法」を思い浮かべる方は多いかもしれません。しかしこの憲法は、現代の日本国憲法のような体系的なものではなく、儒教や仏教の教えを強く反映した教範のようなものでした。
例えば第一条「和を以て貴しとなす」は、簡単に言うと「長幼の序を敬い、喧嘩をやめなさい」という意味です。第二条の「篤く三宝を敬へ」は、仏と宝典と僧を生涯に渡って敬いなさい、そうすれば末期まで人に助けてもらうことができるでしょう。という意味です。
聖徳太子の偉業を基にして書かれた本書。遣隋使にまつわる話を中心に、彼の挑戦的な冒険が描かれています。その他、遣隋使として有名な小野妹子も活躍しています。
著者の聖徳太子に対する独自の見解も書かれているので、楽しみながら歴史を学ぶことができる1冊です。
- 著者
- 町井 登志夫
- 出版日
- 2012-07-17
隋がアジアを侵略していくなか、聖徳太子はいずれ日本にもその手が回るだろうと予想していました。そして隋の日本侵攻を未然に防ごうと思い立ちます。人の良い小野妹子はその真面目な性格のせいで厄介事に巻きこまれる日々を送っていました。彼は聖徳太子の思いついた作戦により遣隋使として隋に連れていかれ、戦争に巻きこまれるハメになるのでした。
本書は、遣隋使をテーマに隋と高句麗との戦争が描かれた小説です。洛陽の皇帝に送った手紙に始まり、歴史でならった聖徳太子の偉業の裏側を読むことができます。彼が高句麗と共に隋と戦うシーンにおいて、事態を打破すべくとんでもない作戦を思いつくのが楽しい作品です。また小野妹子が作戦に翻弄される様子も読んでいてとても面白いですよ。
タイトルだけでもすでにインパクトのある本書は、その名の通り、これまで常識だった聖徳太子という人物は実は蘇我入鹿だったのではないかと読み解いています。
今まで認識していた歴史を覆す、衝撃的な内容です。
- 著者
- 関 裕二
- 出版日
蘇我入鹿といえば王位を狙う悪人として大化の改新で暗殺されたことで有名です。それは日本書紀にも記載されています。日本書紀といえば天皇が神の子孫であることを示し、その正当性を示すために作られたものです。そして、聖徳太子が成してきたされる冠位十二階などの功績は蘇我入鹿のものだと本書では示しています。
それではなぜ蘇我入鹿を悪人に仕立てる必要があったのでしょうか。それは天皇を善の存在として認知させるのに必要だったからです。もし天皇が聖徳太子のような英雄的存在を打ち滅ぼしたとしたら、その行為にたいする正当性も薄れてしまいます。このように本書は日本書紀の観点から分析もしているのです。とんでもない仮説が書かれていますが、学術書としても面白い1冊です。
本書では聖徳太子をひとりの人間として、その功績などを研究した学術書です。
- 著者
- 梅原 猛
- 出版日
日本史だけでなく、中国の古代書や三国史などの文献も読み解いており、アジア史という観点からも聖徳太子という人物の偉業を考察している点が面白い1冊となっています。
聖徳太子は冠位十二階の制定や法隆寺の建立など、日本の礎を築いてきた政策で有名です。その他にも本書では外交官としての聖徳太子の働きも言及しています。日本書紀から中国の文献までさまざまな観点から考察している点が、興味深いのです。
本書では、謎多き聖徳太子という人物像を掘りおこしていこうという試みがなされています。
- 著者
- 吉村 武彦
- 出版日
- 2002-01-18
冠位十二階の制定など数々の功績を残して聖人とまで呼ばれている聖徳太子。本書では聖人としての名前ではなく、厩戸王(うまやどおう)という飛鳥時代を生きそこで生活していた1人の人物として描かれています。
本書ではひとりの人物としての彼について書かかれているので、当時の生活に密着した書籍とも言えます。推古朝の政治構図や仏教の受容など、斑鳩に拠点を置いた飛鳥時代の生活が垣間見えて面白いです。また、古文などの資料に触れられるので、貴重な体験もできる内容になっています。
さまざまな功績で歴史に名を遺した聖徳太子ですが、彼が残したのはその功績だけではありません。彼は預言者としての一面があったのです。
- 著者
- 小峯 和明
- 出版日
- 2007-01-19
世界でもノストラダムスの大予言や、マヤ暦など世界滅亡に関する予言は多くあります。聖徳太子もまた人類の滅亡を予言していたのです。
本書では、彼の予言を記した「聖徳太子未来記」だけでなく「野馬台詩」なる預言書も取り扱っています。この2つは明らかに偽書であるとし、当時の人間にとってこうした予言がどれほど政治に重要であったかに振れているのです。占い=政治という今では考えられないような構図を知ることができます。新しい観点から見た面白い歴史書といえます。