日本のファンタジー小説おすすめ20選!難易度別に紹介!

更新:2021.12.11

魔法使いがいたり、異世界を冒険したり、日常ではありえない非日常を描くファンタジー。世界的に有名なものならだれもがご存知かもしれませんが、今回は日本が誇るファンタジー小説について難易度別にご紹介いたします。

ブックカルテ リンク

初級編:一太郎の周りは妖怪でいっぱい!謎解きファンタジー小説

時は江戸時代、主人公の一太郎と、彼に仕える佐助、仁吉をはじめとする妖たちが繰り広げる謎解きファンタジーです。この人気シリーズは『しゃばけ』から始まり、2007年に手越祐也主演でドラマ化もされました。

主人公は、江戸にある長崎屋と呼ばれる大店の跡取り息子で、若旦那の一太郎。彼に仕えるのは、佐助と仁吉と呼ばれる手代のふたりです。一太郎からは兄のように慕われており、たいして彼らも一太郎が1番で2番がないと言うほど大事に思っています。

著者
畠中 恵
出版日
2004-03-28

そんな彼らは実は、人間の姿をしていますが人間ではありません。佐助は、弘法大師が猪よけに描いた犬の絵の化身、犬神。そして仁吉は白沢と呼ばれる、9つの目を持つとされる中国の聖獣です。

ある日、とある付喪神が一太郎に「気になる匂いがする」と訴えます。妖を身代わりに置き、夜に抜け出した一太郎は何者かによって襲われてしまいます。辛くも、佐助と仁吉が間に合い逃げ切れたものの、次の日大工職人が首を切り落とされて死んでいるのが見つかるのです。

そしてその後も、次々と薬問屋ばかりが殺されていきます。「なぜ、薬問屋ばかり狙われるのか?本当に人間の仕業なのか?」一太郎はこの疑問を解き明かすために、佐助や仁吉ら妖たちと共に立て続けに起こる事件を調査し解決していくことになるのです。

虚弱体質である主人公を佐助たちがいさめたり、それでも外に出たくて脱走を図ったりするシーンなど、コミカルで笑える要素も多い本作。時代小説でありながらも軽く読めてしまいます。

また、単なる時代小説かと思っているのはもったいない!妖という非日常ががっつりと絡んでくる、時代に、謎解きに、ファンタジーにと魅力盛りだくさんの作品なのです!

初級編:舞台は1000年後の日本、偽りの神に疑え!

『新世界より』の舞台は1000年後の日本。かつての文明が滅んだこの世界では、人類は「呪力」という超能力を使い、バケネズミという生き物を使役しています。

主人公の渡辺早季は「神栖66町」と呼ばれる街で暮らす少女。12歳を迎え、呪力を解放したことを機に「全人学級」へ入学し呪力の訓練を受けるようになります。

ある日、早季は同級生たちと町の外へと出かけます。そこでかつての文明の図書館を探検していると自走型端末「ミノシロモドキ」に出会い、ミノシロモドキからとある事実を知ってしまうのです。それは禁断の知識とされいたもの。知ってしまったことで、早季たちを取り巻く、平和だと思っていた仮初の現実は徐々に歪んでいってしまうのです。

著者
貴志 祐介
出版日
2011-01-14

この世界での人類は、呪力や、バケネズミを行使することで、「悪鬼」や「業魔」と呼ばれるものを退治してきました。しかし、そこには多くの謎があります。人間に服従するとされてきたバケネズミが襲ってきたこと、「悪鬼」や「業魔」の正体、文明を崩壊させるまでに至らせた「呪力」。徐々に真相に近づいていき、見えてきたものとは?

今まで平和で、当たり前にあった現実が、12歳という思春期真っ只中で歪んでしまった早季たちの心情は計り知れないものがあります。彼女たちは、本当の平和のために歪んだ現実にどう立ち向かっていくのか、手記という体裁で描かれたからこそ、よりリアルにのめりこめる作品です。

初級編:地球と隣り合わせのファンタジー世界

「十二国」シリーズは記神仙や妖魔の存在する中国風異世界を舞台にしたファンタジー小説です。十二国記とタイトルの通り、この世界存在する国は12です。各国それぞれの王様によって統治されています。

そこでは麒麟と呼ばれる存在が天の意思に従って王を選びます。選ばれた王は不老を与えられ、天の定めた決まりに従って国を治めることになるのです。麒麟が王を選ぶものの、その後の繁栄の度合いは王によって異なり、君臨する期間も異なります。王が死ねば、麒麟が新たに王を選び、麒麟が死ねば王も死に、新たに麒麟が生まれることでまた王が選ばれ各国が統治されていく世界です。

この十二国は地球と隣り合わせに存在しており、地球(現実世界)から地球人が十二国の世界に流されることもあれば、十二国で生まれるはずの人間が生前に流されて地球に生まれることもあります。そして地球から来たものを「海客」といい、十二国から流されたものを「胎果」といいます。突如異世界へ流された地球人、地球に存在し生活を送りながらも、自分の居場所に疑問を持つ十二国人。彼らの自己の探求について描かれた作品となっています。

著者
小野 不由美
出版日
2012-06-27

さて、このシリーズは、『魔性の子』から始まるのですが、こちらは、現実世界に十二国の世界が迫ってくる恐怖を描いた、地球人側の物語。なのでまず十二国記の世界に入り込みたい方には、2作目の『月の影 影の海』から読むことをおすすめします。今回はその『月の影 影の海』をご紹介します。

日本で生まれ育った女子高生の中島陽子は、夜眠るたびに恐ろしい気配に追われ、日を追うごとにその気配との距離が縮まっていくという、異様で恐怖に満ちた夢を見ていました。そんな日々を送っていた陽子の前に、異国の装いをした「ケイキ」という男が現れます。突然の出来事に戸惑う陽子を更に異形の獣が襲い、それを退けたケイキは、そのまま強引に陽子を月の影の向こう側にある世界へと連れ去ってしまうのです。

突然知らない世界に連れてこられた陽子に迫る、異形の獣や、陽子に対する「海客」としての差別の目。ケイキとは一体何者なのか?人間不信に陥ってしまう陽子を待つのは、明るい未来か、それとも……。

この作品を読んだ後に月を眺めてみると何とも不思議な高揚感に包まれてしまいます。本当はもしかしたら自分自身さえも胎果した人間だったのかも、なんてことを思い浮かべてしまうかもしれないほど、作品の世界観は確立されており、入り込めるものとなっています。

ぜひ、いつも目にする月の向こう側にあるかもしれない世界に思いを馳せながら、ひっそりとした宵闇のなかでお楽しみください。

初級編:短槍使いバルサ、命を懸けて皇子を守れ!

「守り人」シリーズのメインキャラクターは短槍使いのバルサ。彼女は各所を旅する用心棒です。旅の途中バルサは青弓川で、流されていた新ヨゴ国第二皇子のチャグムを助けます。お礼に招かれた宮で、彼女はチャグムの母である二ノ妃にチャグムを連れて守ることを依頼されました。

チャグムには、この世(サグ)と重なって存在する異世界(ナユグ)の水の精霊ニュンガ・ロ・イム「水の守り手」の卵が宿っていたのです。新ヨゴ皇国には建国伝説があり、それによると、初代皇帝のトルガルは水妖を退治したことで皇国を築き上げたとされていました。そして、現帝であるチャグムの父帝が皇国の威信を守るために、チャグムを暗殺しようとしていることが、依頼の理由だったのです。

しかし、敵は父帝からの刺客だけではなく、ニュンガ・ロ・イムの卵を食らうナユグの怪物、ラルンガも彼を狙っていました。

チャグムを連れて宮から脱出したバルサは、まず呪術師のタンダとその師匠のトロガイを頼ります。そこで分かったのは、卵か孵るのは夏至であり、孵化とともにチャグムの体から離れるということでした。その時が来るまで、バルサたち4人は共に暮らすことになります。

著者
上橋 菜穂子
出版日
2007-03-28

バルサにもかつて命を狙われた経験があり、父の親友で短槍の達人ジグロに助けられた過去がありました。バルサは日々をチャグムと過ごしていくにつれて、チャグムに自分を重ねるようになり、徐々に彼が何にも代えがたい大事な存在となっていきます。

そのころ、帝に仕える星読博士のシュガは建国時からの記録を調べ上げていました。チャグムに宿った水妖は建国伝説のものと同じなのではないかと疑ったからです。しかし、そこで知った事実とは、トルガルの伝説は歪曲されてしまったものであるということと、ニュンガ・ロ・イムは実は怪物ではなく、雨を降らせて作物を助けてくれる存在だったということでした。

刺客や、ラルンガから逃げつつ、チャグムに生き抜く術を学ばせるバルサ。来る夏至までチャグムを守り通し、無事ニュンガ・ロ・イムを孵らせることができるのでしょうか。

卵を宿していることから、ナユグ側へ知らず知らずのうちにひかれてしまうチャグムは危なっかしく、読んでいるこちらまでが、何とかしてあげたくなるような気持になります。そんな彼のために立ち回るバルサの戦闘シーンはリアルさを帯びており、目の前にそのまま映像として流れそうなほど圧巻の描写力を感じます。

最初は、箱入りの皇子らしく何も世の中を知らないチャグムですが、徐々にバルサによって野営の方法や、簡単な狩りの方法を学んでいきます。そして皇子という立場だからこそ知らなければならない、国の下々の人々の様子も。この物語の中でみるみる成長していくチャグムの逞しい様子も注目してください。

初級編:あなたの隣にも、ひっそりと暮らしているかも……

「常野物語」シリーズは2017年2月現在、『光の帝国』、『蒲公英草紙』、『エンド・ゲーム』の3作品が刊行されています。不思議な力を持った「常野」と呼ばれる一族を、時代を超えて描くファンタジーシリーズですが、それぞれが独立した作品です。

常野一族について大枠を知りたい方は、『光の帝国』を、優しさと感動にあふれた暖かなストーリーを楽しみたい方は、『蒲公英草紙』を、そして、スリリングで圧倒的な世界観を楽しみたい方は『エンド・ゲーム』を手に取ってみてください。それぞれが独立しているものの、登場人物は少しずつリンクしているので、読み進んでいくうちに、様々な時代に生きた常野の人々の姿を楽しむことができますよ。

欲望や、栄光にとらわれず、現実世界にひっそりと私たちの中に溶け込んでいる彼らの生き様を、まるですぐ隣にいるかのように楽しめるシリーズです。

著者
恩田 陸
出版日

常野一族の持ち不思議な能力のひとつ「しまう」というものは、膨大な情報を丸ごと記憶することができます。それも、書物や談話といった言葉だけではなく、人間の感情や心の在りようも記憶することができるのです。

『光の帝国』の「大きな引き出し」に出てくる主人公は、「しまう」能力を持っているものの、これが何の役に立つのかと疑問に思っていました。そんなある日、毎朝挨拶をする老人が心臓発作で目の前で倒れてしまいます。駆け寄った主人公が老人に触れたその瞬間、彼の頭に老人の記憶が「響いて」きました。

「響く」というのが、「しまった」情報が頭の中で文字通り響く能力で、これができて初めて一人前とされます。老人の記憶が「響いて」きた主人公は、懐疑的だったこの力とどう向き合っていくのでしょうか。

このように不思議な能力を持った常野一族が、何を思い、何のために、どこへ向かい、どこへと帰るのかという生き方を、不思議な暖かさと、淡い哀しみで彩った作品です。連作短編集となっているので、気軽に空いた時間などで楽しんでみてください。

恩田陸の作品を他にも読んでみたい方は、こちらの記事もご覧ください。

恩田陸おすすめ26選!代表作から最新作までジャンル別ランキング

恩田陸おすすめ26選!代表作から最新作までジャンル別ランキング

『夜のピクニック』などで高い人気を博している恩田陸。彼女の作品は膨大な読書歴と実体験に基づいており、ジャンルは実に広範です。この記事では恩田陸の物語を、青春、ミステリーといったジャンルごとにランキング形式でおすすめしていきます。

初級編:ティーンから大人まで楽しめる恋愛ファンタジー小説

『空色勾玉』は神と人間が共存する世界を舞台にしたファンタジー作品です。

舞台は日本古代。闇の大御神を敬う闇の一族と、輝の大御神を敬う輝の一族は対立し争いが絶えませんでした。

輝の一族の領地で育った挟也(さや)は、輝の大御神の第二子月代王(つきしろのおおきみ)に憧れを抱いていました。そんな挟也はあるとき、闇の一族と出会います。闇の一族は、挟也は“水の乙女”の生まれ変わりだといい、挟也が産まれたときに持っていたという勾玉を託します。そんな出来事があったあと、ひょんなことから月代王に見初められた挟也は、采女として月代王に仕えることになりました。

輝の宮で挟也は稚羽矢(ちはや)と出会います。とある理由で稚羽矢は幽閉されていましたが、挟也との出会いをきっかけに脱出することを決意。ここから、闇の一族と、輝の一族、そして挟也と稚羽矢の運命が絡まり合う戦いが始まります。

著者
荻原 規子
出版日
2010-06-04

あらすじだけみると漢字や登場人物が多くとっつきにくい印象があるかもしれませんが、いざ読み始めると一気に引き込まれることは間違いありません。

まず登場人物たちが魅力的です。主役の挟也と稚羽矢は、最初は弱い存在ですが、物語が進むにつれ確実に成長していきます。“水の乙女”だといわれた挟也は自分が何者なのかを求め、稚羽矢は幽閉されていたため世間を知らずとても純粋でもろい存在。そんな挟也たちを見守る周りの人間たちのあたたかさにほっとしたり、敵対する人物にハラハラしたり知らない間に感情移入してしまいます。

また月代王は輝の大御神の御子、つまり神様です。月代王の他にも神様が登場しますが、神様が人間の地で共存しているという設定も面白いです。神様ながらに、嫉妬など人間らしい感情を持っていたり、不死の存在であるがゆえ人間とわかり合えなかったり。挟也たちと敵対しながらも完全に悪者というわけではないので、こちらも見逃せないキャラクターです。

そんな神様たちと繰り広げる物語はとても壮大で優しさにあふれています。西洋のファンタジーとはちがった素朴さや、日本の風景の美しさなどが描かれていてまさに日本のファンタジーといえるのではないでしょうか。ファンタジーでありながら、恋愛要素も少し含まれていて大人も十分に楽しめる作品です。是非ご一読ください。

初級編:時代小説としてもミステリー小説としても楽しめるファンタジー小説

舞台は近未来の日本。日本の一部の地域にできたのは鎖国状態の “江戸国”。まさに江戸時代がそのまま現代によみがえったようなその国は、日本の領地の中にありながら独立国として認められていました。

大学2年の辰次郎は高い倍率をくぐり抜け江戸に入国します。辰次郎の身請け先は泣く子も黙る“金春屋ゴメス”こと長崎奉行馬込播磨守でした。その頃江戸国で致死率100%の“鬼赤痢”という流行病が広まります。辰次郎はゴメスにこの流行病の治療法を探るよう命じるのでした。辰次郎はその病の正体にたどりつくことができるのでしょうか。

著者
西條 奈加
出版日
2008-09-30

まず、この作品の面白いところは、その設定です。

ただの時代小説ではなく、人々が月に住むこともできるような時代に“江戸国”という、便利とはいえない生活を送る国家が存在します。しかしそこに住む人は自然の中で生きる事を楽しみ、自給自足で、昔ながらの生活の知恵を使い豊かに暮らしています。

江戸国は人数制限がされており、また、一度出国したものは再入国出来ないシステムになっているのです。そんな暮らしに憧れる人が多いので、江戸国には300倍もの倍率をくぐり抜けなければ入国できません。この無茶苦茶な設定も読めば読むほどすんなり入ってくるのがこの小説の面白いところです。どんどんその世界に引き込まれ江戸国に住みたいとすら思わされます。

そしてそんな高い倍率を突破したのが辰次郎。実は辰次郎は、幼い頃江戸国で暮らしたことがあり、一度出国した身なのです。それなのに、なぜ入国できたのか。これが、“鬼赤痢”を解明するのにつながっているのです。

そして辰次郎とゴメスのやり取りや、周りの人間達もとてもいいキャラでその世界に飛び込みたくなります。よくある時代小説とは違い、近未来の暮らしを知っている人間が、江戸時代さながらの暮らしをする江戸国に入国するためとても読みやすいです。時代小説を読んだことがない方もすんなり入り込めるのではないでしょうか。ファンタジー、時代小説、推理小説としても楽しめる、そんな作品です。ぜひご一読ください。

初級編:戦記ファンタジー小説の最高峰

『デルフィニア戦記』はシリーズ全18巻の戦いあり、冒険あり、恋愛ありのファンタジー小説です。

デルフィニア国の国王ウォルは、彼の存在を邪魔に思う敵対貴族の策略により国を追い出されてしまいました。そんなウォルが敵に囲まれ窮地に追いやられているところを謎の少女リィが助けるところから物語は始まります。戦いの上に固い絆で結ばれた2人は、個性豊かな仲間たちを巻き込みながらさまざまな事件に巻き込まれるのでした。

著者
茅田 砂胡
出版日

個性的で魅力的なキャラクターが多く、敵対するものでさえ愛着を持ってみてしまいます。きっとお気に入りのキャラクターが見つかるのではないでしょうか。

その中でも主役の2人が魅力的です。リィは異世界からやってきた少女。とても強く、世間知らずで破天荒、しかし容姿端麗というそのギャップがたまりません。また、そのリィと戦士の絆で結ばれるのがウォル。屈強な戦士ながら繊細な一面も持っており、リィとのやり取りがとても面白いです。恋愛要素もある作品ですが、リィとウォルが単純に恋愛関係にならないのがいいところ。あくまで戦士の絆なのです。

全18巻と長編ですが、まったく飽きることはありません。次々起こる事件に読んでいる側もハラハラさせられ読む手が止まらないでしょう。戦記物でありながら、恋愛部分も多数あります。キャラクター同士の掛け合いが面白く、声に出して笑ってしまう場面もあるほど。しっかり出来ている舞台設定もさることながら、キャラクターを楽しむのに最適な作品です。ぜひご一読いかがでしょうか。

初級編:映画化もされ、『陰陽師』ブームを巻き起こしたシリーズの第1巻!

6つの短篇から成る、『陰陽師』。平安時代を舞台にした本書は、そのタイトルなどから恐ろしい物語なのかと想像してしまいますが、実はヒューマンドラマのような奥の深い話です。大ヒットした映画版と合わせて楽しむのも良いでしょう。

時は平安、醍醐天皇が国を治めていた時代。安倍晴明という陰陽師がいました。

「ーー陰陽師。分かり易く言うなら、占い師とでもいうことになるだろうか。(中略)陰陽師は、星の相を観、人の相を観る。方位も観れば、占いもし、呪 によって人を呪い殺すこともでき、幻術を使ったりもする。眼に見えない力ーー運命とか、霊魂とか、鬼とか、そういうもののことに深く通じており、そのようなあやかしを支配する技術を持っていた。」(『陰陽師』より引用)

著者
夢枕 獏
出版日

当時は死というものが現在より身近にあり、その原因はあやかしだと信じられることもありました。そこで、識神(または式神)と呼ばれる精霊を操る陰陽師が「陰陽道」に基づき様々な呪術や占いを行い、人々を救っていたのです。
 
本書に収録されているのは6つの短篇。晴明と親しい間柄にある武士、源博雅が怪異に遭遇し、晴明に解決の協力を求めるという設定を軸に展開します。中でも印象的なのは、怪しいものに見初められてしまう娘を晴明が救う話「黒川主」や、ある女の中に棲む鬼を追い出すため晴明が奮闘する「白比兵尼」など。

起こる事柄は一見怪奇的ですが、ホラー小説とは異なる独特の深みのある物語です。どんな難題も解決してしまう陰陽師、安倍晴明の鮮やかな振る舞いに、きっとワクワクしながら読み進められるはず!

初級編:華麗な一族が支配する世界で巻き起こる、時代ファンタジー小説!

2012年、史上最年少で松本清張賞を受賞した著者、阿部智里のデビュー作である本書は「八咫烏」(やたがらす)一族が支配する「山内」と呼ばれる世界の中で美しく、時に読者を驚かせながら進んでいきます。

金鳥(きんう)と呼ばれる宗家の下に属するのは、それぞれ役割を持つ東西南北の4つの家(宮鳥と呼ばれる貴族階級で構成)。語り手は東家の二の宮と呼ばれる姫です。

八咫烏(やたがらす)をイメージする上で身近な例は、日本サッカー協会のシンボルマーク。『古事記』や『日本書紀』にも登場する、三本足を持つ伝説の大烏を指します。

著者
阿部 智里
出版日
2014-06-10

「山内」と呼ばれる世界では、人々は普段人の姿で生活をしています。しかし何か急なことでスピードが必要な時には、鳥に姿を変えることができます。ただ貴族階級である宮鳥の間では、それはみっともないこととして少々軽蔑されているのが現状。一方宮鳥以外の人々は山鳥と呼ばれ、その中でも階級分けがされており、最下位の位になると鳥の姿のままで生活をしなければなりません。

物語が展開していくきっかけは、宗家の若宮の御后選び。東西南北それぞれの家から選ばれた姫が、御后として選ばれるために金鳥の宮廷へやって来ます。若宮と結婚し後継を産めば、自分の人生もしかりお家も安泰となるので、姫たちの間にはなんとも言えない緊張感が。

ここまで書くと、細部まで丁寧に作り込まれたファンタジーの世界で繰り広げられる、煌びやかな物語と解釈してしまいがち。しかし中盤あたりからその世界観が一変。一気に現実に起こりそうな様々な事件が勃発します。読者は驚いたまま、でも途中で読むのを止められず、最後まで読破してしまうでしょう。もっと物語の世界観を感じたくて、また初めから読み直したくなること間違いなし。

このファンタジー小説の執筆当時、著者はなんと若干20歳だったそう!どこからこのような豊かな感性と発想力が浮かんでくるのか、驚きでしかありません。瑞々しく光る新しい感性に触れたくなったら是非本書を開き、八咫烏の背に乗り飛び立つような気持ちで、壮大な読書の旅を始めてみてください。

初級編:じんわりとした感動が押し寄せる!一風変わったファンタジー小説

香月日輪は、このファンタジー小説で産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞しています。中高生から大人まで楽しめる、「妖アパ」シリーズ記念すべき第1巻をご紹介します。

本書の主人公は中学校に入学したばかりの時に両親を失い、孤独になってしまった高校生。その後は親戚の家に住まわせてもらいながら学生生活を送っていました。高校入学と同時に寮に入ることが決まり、やっと親戚たちに気兼ねしながら過ごす生活から解放されると喜びます。しかしその寮が火事になり、入居できなくなってしまいます。

「自分の部屋へは戻らずに、玄関から飛び出す。ここにはいられない。いたくないんだ、俺だって!そう叫びだしそうになる。『くそ!なんでだよ…なんでこうなるんだよ!!ちくしょう!!』(中略)荒れ狂う胸の内をどうしようもなかった。何かに当たり散らしたい衝動を抑えきれない。俺はただ走った。あてもなく。とにかくどこかへ行きたかった。ここではない、どこかへ。」(『妖怪アパートの幽雅な日常1』より引用)

著者
香月 日輪
出版日
2008-10-15

絶望を感じる主人公ですが、何としても自立をしたい一心から、改めて入居物件を探し始めます。そして、寮の建て直しが終わるまで2万5000円で住めるという破格物件を発見!うますぎる話だと心の中では少し疑いながらも、主人公は入居を決意。しかしそこは何と、妖怪や幽霊が「入居者」の一風変わったアパートだったのです……。

はじめは困惑する主人公ですが、変わった入居者達と共に生活をしていくうち、心がゆっくりとほどけてきます。主人公の奮闘する姿が心温まるタッチで描かれており、同年代の読者だけでなく大人も元気をもらえるでしょう。全10巻刊行されているので、どっぷり世界観にハマりたい方におすすめしたいファンタジー小説です。

初級編:生きるに値するか判断を下す死神

千葉という死神を主人公とした、6つの短編集です。千葉は「調査部」員として人間界に行き、調査対象である人間を観察し、死を見定めます。

クレーマーに悩まされる女性、仇討ちを目論むやくざ、殺人を犯して逃亡する若者、美容院を経営する老婆等、その人の状況や性格に合わせ、姿を変え、千葉は一週間をリミットに「死」か「見送り」かの判断を下します。物語の中で千葉があらゆる人と接し、まるで事務作業のように「死」の判断を下す様は寒気を感じると共に、ゾクゾクと身を震わせます。

著者
伊坂 幸太郎
出版日
2008-02-08

感情のない死神・千葉の視点で、死が迫る人々の生き様を淡々と描いたこの小説は、短編ながら、調査対象や、その人を取り巻く人々の苦悩や生き様が濃く描かれており、一話でも読了感が味わえる作品です。伊坂幸太郎の小説は一気に読みたくなるものばかりですが、この小説は一話一話、じっくりゆっくり味わいながら読むことをおすすめします。

中級編:女であっても武器を持て!すべては後宮を守るため

『後宮小説』は中国風の架空の国である素乾国を舞台とした作品となっています。

17世紀、素乾国と呼ばれる国では皇帝の崩御に伴って、次期皇帝のための後宮整備が実施されることになりました。国中各地で宮女募集が行われ、14歳の銀河はこれに応募し、後宮の教育機関である女大学で学ぶこととなります。そして都城である北師へと旅する道中で、義賊である平勝と厄駘に出会うのです。

北師に到着し、教育を受けていく銀河ですが、天真爛漫な性格と、儒学にとらわれることのない自由な思想で生きていました。たくさんの仲間やのちに師となる瀬戸角人と出会い、その中で房中術に基づいた奇抜な後宮哲学を学んでいきます。

著者
酒見 賢一
出版日
1993-04-25

ちょうど同じ時期、新皇帝となった双槐樹に対し、異母弟である平菊を皇帝へ即位させようとする琴皇太后一派によって双槐樹の暗殺計画が進められていきます。そんな状況の中銀河は双槐樹と瀬戸角人の策によって正妃として立后されました。

宮廷内で陰謀が渦巻く中、銀河が北師へ向かう道中で出会った平勝と厄駘のふたりが退屈しのぎというだけの理由で挙兵。その反乱を利用して琴皇太后も野望のために大きく動き出します。やがて争いが後宮にまで押し寄せようとするとき、銀河は後宮を、国を守るため宮の女たちを率いて武器を手に立ち上がりるのです。

天真爛漫で、3食付きの住まいが与えられるという、なんとも現金な理由で宮女へ応募した銀河が、一国の后として、国のために今まで非力とされてきた女たちを率いる姿には、圧倒され鳥肌が立ってしまいます。

中級編:すべての敵は「アトラス」にあり!壮大なファンタジー小説

『シャングリ・ラ』の舞台は地球温暖化が進み、地球上で人類が生きるには厳しくなってきた近未来。国連はかつての京都議定書で定められた、目標二酸化炭素削減幅を大幅に上回る議決を強行採決してしまいます。それによって経済市場は株価ではなく経済炭素へと手段が移行。そしてその影響はM7.5の第二次関東大地震によって都市が機能しなくなってしまった東京都にも及び、炭素税が容赦なく課せられてしまいます。

やがて東京再生計画に乗り出した政府は、空中都市アトラス計画を実行します。しかし、当初は都民全員が移住できるはずだったのですが実際に用意できたスペースは350万人分だけで、都民全員分は賄えませんでした。

著者
池上 永一
出版日
2008-10-25

やがて、アトラスへと移行を終えた政府機関はアトラス中心の統治をおこなうようになり、アトラスと難民であふれた地上との深刻な格差が生み出されてしまうのです。そこでこの計画に反政府組織「メタル・エイジ」の総裁、北条國子が立ち上がります。

ただの環境汚染による避難と、それによる格差を生み出したと思われた「アトラス計画」。実は別の目的が隠されていました。アトラスへ移住するためのアトラスランクとは。真の意味とは、そして、アトラスの後継者とは一体何なのか。謎が深まっていくストーリーです。

アトラスランクAAAとされる國子は、貧困層の民の思いを背負い、仲間と共に、計画を実行した政府軍へと立ち向かいます。

いずれ起こってしまうかもしれない地球温暖化による環境破壊。とても無関係とは思えない未来だからこそ、ある種のパラレルワールドのように、「もしかしたら」という思いをもって楽しむことができる作品です。

中級編:売れない物書きの、不思議なおすすめファンタジー小説

「ほんの100年前のおはなし」というキャッチコピーの『家守綺譚』は、明治時代を舞台としたお話です。

売れない物書きである綿貫征四郎は親友の高堂が亡くなったことをきっかけに、彼の家の家守として住まうことになります。ある雨の降る晩に、その家の床の間の掛け軸から亡くなったはずの高堂がボートを漕いでこちらへとやってくるのを征四郎は目撃し、声をかけます。

「どうした高堂、逝ってしまったのではなかったか。」(『家守綺譚』より引用)

死んだはずの友人に、しかも掛け軸からやってくる人間にかけるにしては、なんともとぼけた言葉なのですが、物語はここから始まります。

著者
梨木 香歩
出版日
2006-09-28

百日紅に懸想をされたり、河童を拾ったり、庭の白木蓮から白龍が孵るの目撃したり、子鬼を見たり。こんな日常と非日常の境目をふらふらとしているような調子が終始続いていきます。不思議な不思議な、とある家守の物語なのです。

高堂の勧めで買い始めた犬のゴローのおかげでお隣さんからおすそ分けをもらったり、生計的にも手伝ってもらったりと、不思議な雰囲気の人間が、人間臭さを帯びてきたかと思えば、河童とサギのケンカの仲裁にゴローが入っていたりとやはり非日常がついてくる。ストーリーには「奇妙」が必ず付いてまわります。

最終話の「葡萄」では高堂が行ってしまった「理想の国」と呼ばれる場所へと、綿貫は足を踏み入れます。そこに住む男に葡萄を食べるように勧められますが、一喝して断ります。そして現実世界へと戻るために告げた言葉には、いままでとぼけた雰囲気をあふれさせていたとは思えないほど、人間臭く、そして義理堅い人情味あふれた綿貫を感じることができるのです。

上級編:アル中だけれど、気品が漂う転落半生

『バルタザールの遍歴』は、人生の苦楽を描いた、20世紀初頭のウィーンが舞台となった没落貴族である双子のメルヒオールとバルタザールの転落半生を扱った小説です。

メルヒオールが過去を過去を回想しながら、それをバルタザールが手記にまとめるという形で進められていて、横からバルタザールが茶々を入れたり、内容に不満を言ったりしています。

ふたりの血筋は、ハプスブルク家にも連なるかつてのウィーン家の名家、ヴィスコフスキー=エネスコ公爵家であり、彼らは跡取り息子です。1906年に生まれたその時から、将来は公爵家を継ぎ、由緒正しきエネスコ宮の相続人になることを約束され、それはそれは大切に育てられてきました。

著者
佐藤 亜紀
出版日

第一次世界大戦が勃発し、650年に及んだ、ハプスブルク帝国が崩壊、貴族政が廃止され共和国が成立し、かろうじて、ふたりの父公爵は何とか財産を守れたものの、母親の自殺をきっかけにどんどん家は没落。彼らは酒におぼれ、酒瓶を片手に旅に旅する生活へと転落していきます。

ここまでの紹介ですと、ただの歴史になぞった貴族のお話に思えますよね。ではこの作品はどこがファンタジーなのか?ぜひ読んでいただきたいのはまさにそこにあります。ここで1つ、物語の大前提となる重要な部分のヒントとなる一節ををご紹介します。

「バルタザールはまた酒に専念し始めた。私の筆跡にやや乱れがあるとしたら、それはバルタザールが左手で飲み、私が右手で書いているからだ」(『バルタザールの手記』より引用)

さて、黄身と溶かしバターをかけたホワイト・アスパラガスといった洒落た料理に漂う趣味の良さ。生まれながらの貴族であるだけに、奔放でありつつも気品が漂うふたりの物語の、いったい何がファンタジーなのか。ぜひ本作でその要素をお楽しみください。

上級編:文章を楽しむ。愚かな人たちのビターファンタジー小説

あらすじはいたってシンプルです。婚礼の日にさらわれた花嫁を追って、波乱を乗り越えて駆ける青年の冒険の物語。本当にシンプルなのですが、この物語の真骨頂は、物語自体というよりも、それを構成する文章にあります。

崖の上と下に位置する、サバキヤとイラハイ。この2つの国の興亡に、花嫁をさらわれた青年の冒険を絡めた物語です。花嫁を坂の上から転がすという何とも愚か極まりない遊びをしている人たちを描いていたり、執拗に人を殺そうとするイルカが住民を殺戮しまくったりという、まさに「愚かしい」の一言が似合う、面白い問題作です。

著者
佐藤 哲也
出版日

この、愚かなことをしている愚かな人たちの物語を、なんともいえない独特のテンポで長く長く言い回し、まじめに読んでいるうちに、「ひょっとして自分だけがバカなんじゃないか?」とまで思ってしまうような複雑な面白さを秘めています。

元気いっぱいにあふれているときよりも、すこし疲れていているときに、この作品を読んでみてください。くらくらとした絶妙な心地に浸ることができますよ。

上級編:村上春樹の最高傑作とも名高い作品

本作は、「世界の終り(空想)」と「ハードボイルド・ワンダーランド(現実)」という2つの物語が、同時進行の形で展開し、やがて一つの極に向かって行くという長編です。

「世界の終り」は、「計算士」という架空の職業についていた主人公が、「暗号化」という特殊装置を開発した天才老博士の依頼を受けた事で、「計算士」組織と「記号士」組織の両方から追われる羽目になり、逃げ込んだ世界(主人公の深層意識を具象化した世界)でした。

そこは「絶対に乗り越えられない壁」に囲まれた世界でもあり、住民は「影」に「感情」を奪われた人達ばかりが暮らしていました。憎しみも、愛おしさも、希望も絶望も無いこの世界で、満足して生きられると思った主人公でしたが……。

著者
村上 春樹
出版日
2010-04-08

受賞作の選考に定評がある谷崎潤一郎賞を受賞した本作は、村上春樹の最高傑作の呼び声も高い作品ですが、厚くて重いので、ぜひ、春樹作品を何作か読んでから挑戦していただきたい1作です。

上級編:織田信長は両性具有だった!?

『信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』の舞台は1930年のドイツ。ベルリンに滞在中のアントナン・アルトーを、日本人の青年総見寺龍彦が訪ねるところから物語は始まります。総見寺はある説をアルトーに説きます。それは日本の有名な武将織田信長と、ローマ史上最悪とも言われる3世紀のローマ皇帝ヘリオガバルスの共通点でした。実は両者ともにアンドロギュヌス、つまり両性具有者であり、さらに両者の信仰する神が同じであると説くのです。この突拍子もない話を裏付けるように様々な事例を取り上げる2人の会話を軸に物語がすすんでいきます。

著者
晴明, 宇月原
出版日

どうしてこんなことを思いついたのか、テーマが素晴らしいです。織田信長とヘリオガバルスが似ていて、両者とも両性具有であるというあり得ない設定。両性具有であるがゆえの妖しい魅力に周りの人間達が魅了され彼らについていくという、あぁなるほどとつい納得してしまうようなことが描かれています。豊臣秀吉や、明智光秀など有名な人物もでてきます。豊臣秀吉が草履を温めた有名な話や、本能寺の変もこの作品の中では全く違った解釈になっているのです。ありえないと分かっていても、そうなのかもと思わされるぐらいの説得力がこの作品にはあります。

また、作中で信長の守護神である午頭天皇は太陽神であるという説が飛び出し、れを裏付けるにあたり、さまざまな神話が取り上げられます。古代神バールにはじまり、ヨハネの黙示録、スサノオなどなど。ヨーロッパからアジアまで幅広く登場するため、神話などが好きな方にはたまらない内容になっているのではないでしょうか。

とんでもない設定が軸になっていますが、歴史上の出来事がたくさんでてくるため歴史物としても楽しめます。また歴史に強い方ほど楽しめるでしょう。「これとこれが繋がるの?」と知識があればあるほど心がくすぐられるのではないでしょうか。読む楽しみを思い出させてくれる作品です。ぜひご一読ください。

上級編:濃厚な文体で描かれるRPG風ファンタジー小説

『アラビアの夜の種族』の舞台はエジプトのカイロ。時代はまさにナポレオンの軍隊が迫ってくるその時でした。奴隷軍人のアイユーブは、ナポレオン軍対策としてある戦略を思いつきます。それは、夢中になりすぎて戦意を失ってしまう“災厄の書”をナポレオンに贈ろうというものでした。そこから、“災厄の書”の内容として3つの物語が語られる2重構造の物語です。

“災厄の書”の内容として語られる物語をメインに話は進んでいきます。物語はとてもファンタジー色が強いものになっており、妖術、魔女、魔物などが出てくるので異世界を体験しているような感覚になるのではないでしょうか。そして各物語の間ではどんどんナポレオン軍が侵攻してくるので、ドキドキハラハラする展開になっています。 

著者
古川 日出男
出版日

昔のエジプトが舞台というだけあってその世界観を表すように文中では華やかな単語が並べられています。多彩な言葉選び、物語の内容などたまらなく知的好奇心をくすぐられます。そういった本を読むことの面白さを思い知らせてくれるというのもこの作品の魅力です。“災厄の書”の目的がそうであるように『アラビアの夜の種族』自体が私たちを夢中にさせる作品といえるでしょう。

と、ここまでご紹介しましたが、この作品はあまり先入観を持たずとにかく一度読んでいただきたいです。とても長いですが、後半がとくに面白くページをめくる手が止まらなくなります。読む際は必ずまえがき、あとがきまで余すことなく全ページ読むことをおすすめします。

数あるファンタジー小説の中でも、日本の作品を難易度別に紹介させていただきました。ライトに読めるものからディープなものまで、いろんな楽しみ方ができると思います。もちろん、難易度ごとに進んでいくのもいいですが、気分に合わせて読んでみるのもまた一興ではないでしょうか。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る