チョコレートの歴史を紐解くおすすめの本4選!

更新:2021.12.16

口に入れた瞬間その甘さが全身を包み込む。まるで味覚が、嗅覚が、心が、飛び上がってチョコレートという名の歓喜を受け入れているかのよう……。今回はチョコレートの歴史を紐解くおすすめ本を紹介します。

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チョコレートの歴史を裏側まで語り尽くす!

「カカオ」という名はほとんどの人に知られていますが、それがどんな形をしていてどんな色なのか知っている人は少ないのでないでしょうか。

『チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石』の表紙を開くと、巨大な緑色のアーモンドのような物の写真が飛び込んできます。まさにそれがカカオ。このカカオが甘くてとろけるあの褐色のチョコレートに変わるとは、にわかに信じ難いかも知れません。

この本で紹介されているチョコレートの歴史は、非常に多面的で奥深いものになっています。まさにチョコレートの世界史を知り尽くした作者、武田尚子のなせる技です。

たとえば興味深いのが「第5章 理想のチョコレート工場」。あのキットカットを最初に発売したイギリスの大手チョコレート企業であるロウントリー社が「チョコレート」という名の宝石を如何にして守っていったかのかが記されています。

著者
武田 尚子
出版日

開業当初は家族経営的な会社だったロウントリー社も1904年には従業が2945名に増え、会社としての一体感が失われてしまいました。そこでロウントリー社が考えたのが社員の住居対策と年金対策。これらの対策によって、従業員を手厚くもてなし、なんとか会社をまとめていこうと考えたのです。

その政策が上手くいき、ほっとしたのも束の間、1910年代に入ると離職者の多さに悩まされることになります。特に若い女性の離職率が高くなっていったのです。そこでロウントリー社は女性従業員の心を掴むために、工場の敷地内にプールや図書館を作ります。

さらに女性の大好きなお喋りも禁止せずに、作業中に歌を歌うことまで許可したそうです。

今日私たちがおいしいチョコレートを食べられているのは、影で試行錯誤を繰り返してチョコレートを作り続けた、ロウントリー社のような会社のおかげかも知れませんね。

内容も多岐にわたり、言葉も明快で、チョコレートの世界史を学びたい人には欠かせない1冊です。まるでチョコレートのイメージにかかった霧を、この本が少しずつどこかに追いやってくれるよう。これを、読めばチョコレートがさらに美味しく感じること間違いなしです。

面白さ溶け出すチョコレートの歴史書

作者は広島大学名誉教授である佐藤清隆。『チョコレートの散歩道——魅惑の味のルーツを求めて——』は作者による前著『カカオとチョコレートのサイエンス・ロマン』に続く2冊目のチョコレート専門書です。カカオがチョコレート食品として世界中で大人気になる歴史を綴っています。

この本の魅力は知的好奇心が満たされる面白さです。数千年前に登場したチョコレートがどのような紆余曲折を経て現在の形になったのかが、多くの挿絵と穏やかな文章で滑らかに語られています。

もともとカカオはどのように人々に食されていたのか、現在のチョコレートの形に至るまでに数千年の時を超えてどれだけの人々の努力があったのか。いつもの散歩コースでなく、新しい知らない散歩道を歩いているかのような高揚感を感じることが出来ます。

著者
佐藤 清隆
出版日

チョコレートの遍歴だけでなく、科学的な観点からもチョコレートの魅力に迫っています。普段食べたり作ったりしているチョコレートを美味しくするヒントも記されているのでチョコレートがさらに奥深くなること間違いなしです。

チョコレートがどんな軌跡を辿って現在の姿にたどり着いたのかを作者自身が世界中で経験したエピソードや情報を交えて分かりやすく伝えています。チョコレートの魅力のルーツをぜひ辿ってみたい人。本書を読んでチョコレートの歴史を堪能する散歩に出てみませんか?

チョコレートについてどれだけ知っている?

「チョコレートって、不思議な食べ物です。なくても生きていけるはずなのに、その魅力にとらわれるとチョコレートのない人生なんて考えられない。人生を豊かにしてくれる芸術(アート)のような存在。チョコレートは、ただ食べるだけでも十分幸せになれますが、この本を読んで、さらにチョコレートの世界をお楽しみいただけたならうれしいです。
(『チョコレート語辞典』より引用)

『チョコレート語辞典』はチョコレートの歴史や用語を徹底的に素敵な絵と共に解説した一冊です。本書には普段当たり前に食べているチョコレートの知られざる秘密がたくさん記されています。

例えば、紀元前2000年頃の中米ではカカオ豆は通貨として使用されていたそうです。カカオ豆30粒でウサギ1匹と交換できた、という説も。

著者
Dolcerica香川 理馨子
出版日
2016-10-05

また、チョコレートの消費量が世界一の国はどこかご存知でしょうか?答えはドイツ。年間一人あたりのチョコレート消費量はなんと12.2キロ。これはだいたい板チョコ200枚に相当します。では気になる日本の順位は……?答えは本書に載っていますので、確認して見て下さいね。

チョコレートには「テオブロミン」という成分が含まれています。この香りには、集中力を高めたり精神をリラックスさせる働きがあるのだとか。このテオブロミンの名前の由来は「テオブロマ・カカオ」。「神の食べ物」を意味するそうです。

神の食べ物であるチョコレートの秘密を、あなたもチョコレートをつまみながら覗いてみませんか?

とことんチョコレートを科学する!

みなさんは「食品物理学」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?食品物理学とは食品の性質を物理的に解き明かしていく学問のことです。

『チョコレートはなぜ美味しいのか』は、そんな食品物理学を研究する上野聡によって書かれました。チョコレートの口溶けや滑らかさは、チョコレートのどんな成分によって決められるのか?ちょっと変わった視点からチョコレートの美味しさを明らかにしています。

読んでいるとチョコレートを口に入れて、脳が「美味しい」という信号を発するまでのルートと過程を観察しているような気持ちになれる本です。チョコレートを口で溶かしながら「美味しい」までのシグナルに想いを馳せて見ると、食品物理学という科学の世界の深遠さを身をもって感じることができます。

著者
上野 聡
出版日
2016-12-16

作者の豊富な科学の知識が、実にシンプルで明快な言葉で食品物理学の世界を紹介することを可能にしています。「美味しい」を科学の観点から理論的に説明……と聞くと躊躇してしまう人もいるかも知れませんが、普段あまり科学についての本は読まない人にこそおすすめしたい一冊です。取り扱う食品は、私たちの身近にあるチョコレート。読めばあなたも「とろける」食品物理学の世界に魅了されるはずです。

いかがでしたでしょうか?読めばきっとチョコレートの奥深い世界の扉を開けることの出来る、そんな4冊をご紹介しました。あなたのお気に入りの本がきっと見つかると思います。

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