今月は、現在、自分が教師役を絶賛撮影中ということもあり、教育・教師にスポットが当たっている本を3つご紹介。自分が学生だった頃に、先生側の考えなんて、理解しようともしなかった。小説とは分かりながらもグサグサ刺さる言葉や感情の数々。歳をいくつか重ねた今ようやく理解できる。あの時苦労を掛けた恩返し(?)を少しでも出来たらなと。誰もが学校を経験し、教育を受け、大人になっていく。数年前なのか、はたまた半世紀以上前なのかは、人によって違うでしょうが(刺さないで)、あの頃にショートトリップでもしてみましょう。帰ってきた時には、自分の現実が、少し変化しているかもしれません。
人間の苦悩や葛藤を「教育」を切り口に描く
- 著者
- 重松 清
- 出版日
帰りたい。37歳の小学教諭は思った。22年前に故郷の町は、ダムの水底に、沈んだ。ある同級生の事故死によって、散り散りになった同級生たちと再会する。
【カカシの夏休み】
妻を亡くし、娘とともに暮らす中年教師。ライオンのたてがみのような長髪も、今ではすっかり禿げ上がりカツラになってしまった。理想と現実の落差に悩まされる。人生の厳しさ前に、しかし必死に向き合い生きていく。
【ライオン先生】
3年前、わたしはひとごろしと呼ばれた。わたしのせいで同級生の男の子が死んでしまった、らしい。
【未来】
重松清の3編が収録されている本作。「帰りたい場所」「歳をとること」「死」がそれぞれ濃淡を見せつつ組み合わさったお話が並んだ、とあとがきで著者が語っている。家族、教育をテーマに人間の苦悩や葛藤への励ましを与えてくれるような作品に、涙が気付けばホロリと流れる。ノスタルジー禁止と作品の中ではあるが、たまには良いのでは。
心に刺さった一節
“おまえたちのこと、ほんとうは嫌いなんだ”
小学校教師が主役の不思議なストーリー
- 著者
- 村上 春樹
- 出版日
- 2001-04-13
22歳の春にすみれは生まれて初めて恋におちた。相手は17歳年上で更には既婚者である、女性であった。愛称は「ミュウ」といった。小学校教師の「ぼく」は大学生時代にすみれと出会い、それ以来すみれに恋をしていた。ヨーロッパに渡っているミュウとすみれ。その事は、すみれからの手紙でぼくは知る。その後暫くして、話は聞いているものの、面識のないミュウからぼくにいきなり国際電話が入る。
「一刻も早くここに来られる?」
現実から気付けば、不思議な浮遊感に包まれている世界観に連れていかれた。こちら側とあちら側、明確なラインはなく常にボヤけているようで、確かに存在している。読み手によってそれぞれ違う解釈になる作品かと。この香り立つストーリーを是非。
心に刺さった一節
”言葉というかたちをとるべきではないなにかだった”