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池上遼一のおすすめ漫画ランキングベスト5!リアルな画力に唸る!

更新:2017.3.8 作成:2017.3.8

精密なデッサン力とリアリズムに徹し、作品を描き続ける作家池上遼一。彼が描く登場人物はどれも現実的で、男性も女性も常にリアル!今回は、そんな「男らしさ」や「女らしさ」にこだわり続ける作家の、情熱に満ちた作品の数々をご紹介します。

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絵はまさに精妙巧緻!若さあふれる劇画作家、池上遼一とは?

大阪芸術大学のキャラクター造形学科教授であり、劇画家として紹介されることもある池上遼一。貸し漫画を皮切りに、『ゲゲゲの鬼太郎』で有名な水木しげるのアシスタントを経て劇画漫画を中心に活躍します。アウトローな人物像を好み、精密な絵によって描き出される作品の世界観は、裏切りや同盟が繰り返される複雑な人間関係を描くシリアスな世界です。リアリズムに溢れる作風は、独自の劇画漫画の世界を確立しています。

彼の描く主人公やヒロインはアジアンテイストな人物が多く、日本以外でも、香港や台湾などでも人気を博しています。眉目秀麗な登場人物たちには、リアルな美しさを求める池上の情熱がそのまま形になったかのような、そんな完成された美しさが感じ取れるのです。

無類の戦車好きだと公言している池上は、2014年に『ガールズ&パンツァー』にハマったと語っており、御年70歳を迎えてなお、新しいものへ挑戦する気概というものは失われていないようです。漫画家の制作現場を紹介する『浦沢直樹の慢勉』という番組にも出演し、作成中の漫画を紹介するなど、尽きることのない漫画への情熱を感じる人物です。

原作者とコンビを組み、作画メインで漫画を描くことで描き出される美麗な絵の数々は、ひとつのジャンルに特化した極致、と言えるのかもしれません。高い技術と経験に裏打ちされたリアルな絵は、彼の好むアウトローな世界を描き出すにはまさに打ってつけ。この先も、そんな現実的な世界観を好むファンを魅了し続けていくのは間違いないでしょう。

5位: 池上遼一が生み出す、日本独自の作品世界『スパイダーマン』

マーベル・コミックの『スパイダーマン』を翻案し、舞台や人物を日本に移すという企画意図で始まった漫画作品『スパイダーマン』。

将来科学者を夢見る青年、小森ユウ。ある日、実験室に備え付てあった放射能制御装置をいじっていた彼は、装置に影響を受けたクモに刺され、それにより強靭な力に目覚めてしまいます。壁を自在に登ったり、体から糸を出したりとクモの特殊能力を身につけたユウは、全身を覆うスーツと糸を飛ばすことのできるガジェットをつくり、スパイダーマンとなります。
著者
池上 遼一
出版日
2004-06-23
もともと舞台や人物を日本に置き換えるという基本路線があったのですが、連載を重ねるうちに徐々にオリジナル色が強くなり、後に完全な独自作品となりました。原作版のスパイダーマンが伯父ベン・パーカーの言葉を原点にヒーローとして奮起するのに対し、本作品の主人公小森ユウには、ベン・パーカーにあたる人物がおらず、ポリシーと呼べるものがありません。そういった意味では人物像も大きく変更されており、原作版とは全く違ったスパイダーマンとして楽しめる作品なのです。

本作を紹介するにあたってまず最初に語るべきは、原作版とは描かれる雰囲気がまったく違う、という点でしょう。スタン・リー原作の、マーベル作品の顔とも言える作品『スパイダーマン』は、人々のヒーローとなる少年の活躍劇です。様々な苦悩を抱えながらも正義に邁進していく少年を描く、エンターテイメント性の高い明るい作品となっていますが、本作品で描かれるのは主人公ユウの苦悩と転落の人生なのです。

小森ユウことスパイダーマンが、最初に倒したエレクトロという敵は、実は彼が想いを寄せる女性、白石ルミ子の兄でした。当然スパイダーマンはルミ子から恨まれることになります。世間の人々からも「ヒーローというなら戦争を終わらせてみせろ」など、否定的な言葉が投げかけられ、見ている方が辛くなるほどの可哀想な男なのです。どこをどうやったらこんなに違うお話になってしまうのかは不思議ですが、逆に言えばこの圧倒的な違いが本作品の魅力でもあります。本家作品とは全く違った価値観とテイストが味わえるこの物語は、原作ファンも、そうではない人も、一度は味わっておいて頂きたい作品です。

本家マーベルコミックのクロスオーバー作品の会話中に、「日本のスパイダーマン」として認知もされている本作品。日本の劇画作家ならではの暗いテイストで描かれる異質なダークファンタジーは、ちょっと変わったヒーロー活劇を堪能できます。おすすめです。

4位: 透明人間とヤクザによるワンダーバトル!『アダムとイブ』

原作を山本英夫、作画を池上遼一が担当した本作は、鬼才と呼ばれる個性的なふたりがタッグを組んだことで話題を読んだ快作です。人の五感と第六感をそれぞれ担当する、奇抜な暴力団キャラクター6人と、主人公である透明人間が戦いを繰り広げていきます。

スメルと呼ばれる「嗅覚」に長けた男が、「視」「触」「味」「聴」そして「第六感」それぞれに長じた男たちを自分を含む6名を集め、衰退し始めている暴力団を裏から立て直すべく画策します。高級キャバレーに集い、目隠しをした女たちをはべらせていた彼らは、突如謎のふたり組に襲撃を受けます。ふたり組といっても姿は見えず、そのうち襲撃者が透明人間であることがわかっていくのです。かくしてクラブの室内のみを舞台に、今まさに6つの感覚に発達した暴力団たちと、透明人間ふたり組の荒唐無稽な戦いの火ぶたが切られたのでした。
著者
山本 英夫
出版日
2016-02-29
『殺し屋1』などで知られる、狂った世界観を描き出す作家山本英夫が描く奇抜な原作に、池上遼一が精密な作画を提供することで完成された本作品。クラブの一室のみで話しが展開されるストーリーは、余計な要素は一切使わず、必要な要素のみを使うことで、ふたりの鬼才が読者に語りたいことや見せたいものをしっかりと感じさせてくれます。本作品に描かれるのは暴力に対する美学や哲学。その内容は、スメルと呼ばれる男が作者を代弁するかのように作中で雄弁に語ってくれます。

さらに目を見張るのは主人公ふたりの存在です。透明人間ですから姿がわからないのは当然といえば当然ですが、第1巻の時点ではふたりの素性はおろか、どんな姿をしているのかもまったくわかりません。セリフらしいセリフもほとんどないという奇抜すぎる主人公たちですが、それに対抗する暴力団キャラクターもドスの効いた個性の塊だったりします。五感を基本とするクセを持った登場人物たちは、この無駄の無いストーリーの中で「透明人間を五感を頼りに捉える」という役割をしっかりと果たしています。ワインを鼻から飲む男や、女性の髪を燃やしてその臭いを嗅ぐ男など、個性を通り越して奇人とさえ言える面々は見応え十分です。

そんな荒唐無稽な設定と物語に厚みと深みを与えているのが池上遼一の画力です。彼が描く人物たちはどれもリアルで、あり得ない設定の人物にもしっかりとした説得力を持たせてくれます。これだけシンプルにまとまった世界で、ふたりの作者の持ち味をこれでもかと味あわせてくれる作品は他にないでしょう。一押しの作品です、是非読んでみてください。

3位: 正義のくノ一が、名だたる男たちを悩殺!『天使は舞いおりた』

天草四郎時貞の隠し子の少女を主人公に展開される、お色気MAXのくノ一(くのいち)ものです。池上遼一の美麗なタッチで描かれるくノ一の悩殺シーンが最大の魅力の本作品は、女性の美しさを堪能できる作品でもあります。

いまだ潜伏キリシタン狩りが続く島原の地。弾圧に苦しむ人々の中に、天草四郎時貞を父とする美少女、愛衣が降り立ちます。島原の乱で討ち取られた父の無念を晴らすべく江戸幕府に戦いを挑む決心をした彼女は、その美貌を駆使し、天下になだたる大名や彼女を狙う刺客たちをつぎつぎに幻惑していきます。この物語は、正義のくノ一となった愛衣を中心に美しい女性たちが活躍する歴史ロマンです。
著者
池上遼一
出版日
2015-08-17
常にその時代の最高の美男美女を描き出す努力を続けているという池上は、本作品でも最高に美しい女性を描いてくれています。写実的というだけでなく、人物の表情を細かく表現し、現実よりもリアルに描き出すその画力は驚嘆に値します。昔から、くノ一といえばお色気というイメージですが、愛衣はお色気を担当しているだけの安っぽいキャラクターではありません。細やかな表情によって表現される彼女の心情は、生い立ちや今の状況などを踏まえた深い感情を物語ります。美しい絵によるエロティックなシーンも見応え十分とはいえ、しっかりと歴史ロマンとしての様相も呈している作品なのです。

女性キャラクターの姿が見どころであると解説してきましたが、それは決して男性読者だけに向けたものではありません。池上遼一が描く登場人物は、彼が考える「最高の美しさ」を表現しています。男に媚びるような女としてではなく、女ならではの特性を活かしつつ、彼女たちの生き様を表現している姿からは、男女問わず得られるものがあることでしょう。

2位: 一世を風靡した「男」の漫画『男組』

『美味しんぼ』の原作者雁屋哲と、池上遼一のタッグによる少年漫画作品です。戦後30年頃の日本を舞台とし、男の生き様をテーマに掲げた本作品では、己の信念を賭けて戦う男たちが描かれます。登場する人物には空手やカンフーを使わせ、バトルエンターテイメント作品としても仕上げられています。

私立青雲学園は、神竜剛次という、権力と暴力を振るう男によって無法地帯と化していました。校長は現状を打開するべく、関東少年刑務所から流全次郎(ながれぜんじろう)という男を学校へ招き入れます。父親殺しの罪で入所していた彼は、巨大な勢力を持つ神竜に対抗するには学園の生徒一人ひとりの結束が必要だと語り、彼らをまとめ上げます。そして彼は後に、学園内にとどまらず、社会全体の巨悪に立ち向かっていく正義の旋風となるのです。
著者
["池上 遼一", "雁屋 哲"]
出版日
1974-10-01
非常に懐かしいストーリー構成をした本作品は、あの古き良き時代に一世を風靡した、王道のバトル漫画の様相を成しています。ただただ悪を尽くす神竜という敵に対し、正義を振りかざす陳家太極拳の使い手、流。そして彼を慕う仲間たちは五家宝連と呼ばれる猛者であるなど、いわゆる四天王のような立ち位置です。~拳という拳法の使い手であるというのもまたベタ設定。ベタベタすぎて今となってはあまり見なくなった人物設定ですが、こういった作品には、やはり王道設定が映えます。

登場するのは10代の少年たちなのでしょうが、あえて「男」と表現したのには理由があります。本作品は「男の生きざま」を大きなテーマとしており、作中でも登場人物たちによってそういった哲学めいたものが語られます。「少年」たちというよりは「男」たちとして彼らを見て欲しい作品なのです。

そんな彼らが戦いを繰り広げるこの物語には、当時の漫画界の事情を反映している部分が見受けられます。1970年代ではジャッキー・チェンなどによるカンフー映画や、空手や格闘技を主体にした作品が人気を博していました。漫画界においてもそれは例外ではなく、舞台が日本でありながら、登場人物たちは独特の拳法を使っていたりと、よくよく考えてみると突拍子もない設定だったりするわけです。

そんな自由な作風で描かれる本作品は、まさに「痛快」という言葉がしっくりとハマる少年漫画らしいエンターテイメント作品です。悪に立ち向かう正義の男たちの、単純であるがゆえの面白さをはらんだ物語。エンターテイメントに徹した作品としては秀逸な出来栄えですので、ぜひお試しを。

1位: 池上遼一が送る、極道と政治の闇を打ち破る傑作『サンクチュアリ』

『北斗の拳』原作者で、武論尊の名でも知られる史村翔を原作とし、池上遼一がその技巧を尽くし描き出す、政治をテーマにした漫画作品。カンボジアでの戦乱を経たふたりの男女が、日本を変えるために表側(政治)と裏側(ヤクザ)に別れ行動していく物語です。

ポル・ポト政権下のカンボジアから生き延び帰国した北条彰と浅見千秋。腐敗した日本の政治体制を悲観し、彰が裏のヤクザの世界へ、千秋が表の政治の世界へそれぞれ入り、変革をう促そうとします。ジャンケンによって役割を決めたふたりの行動からは、向き不向き、男や女などに関係なく、腐敗した政治世界へ挑戦する気概が感じ取れれることでしょう。

暴力団北彰会の幹部、民自党代議士である佐倉の秘書となったふたりの物語は、裏側と表側の両サイドを描きつつストーリーが進行していき、個性的な登場人物たちによって、それぞれの裏舞台が語られていきます。様々な謀略に巻き込まれていくふたりの理想は現実となるのか、最後まで目が離せない展開です。
著者
["史村 翔", "池上 遼一"]
出版日
本当の姿は想像することしかできないであろう、政治や極道の世界を見事に描ききっている本作品は、裏と表であるにも関わらず、密接に繋がる両者の舞台裏を描く作品でもあります。非常にリアルに表現されている作品の内容は、実際の人物や団体をモデルにしているようにもとれますが、その辺は主観が入り交じる意見となるので割愛しましょう。ただしこのように、この人物のモデルは実在のこの人では!?といった側面から楽しむのも面白いかもしれませんね。

信念に溢れるふたりの男女が、表と裏の古い体制を打ち破っていくストーリーにはスカッっとする爽快感があります。日本の政治体制をたったふたりで変革させていくという壮大なストーリーにも関わらず、全12巻と読み切りやすい長さでまとまった物語は、軽快なテンポで進んでいき、作品の世界にぐいぐいとのめり込まされていくようです。

リアルな絵に定評のある池上遼一ですが、本作品では絵だけでなく、政治もリアルに描かれています。作中に登場する首相公選制の導入や国民投票などは、作品連載中の1990年代としては現実の政治を先んじている内容ともいえ、作者ふたりの、政治というものへの思慮の深さがうかがえます。そういった真摯に政治へ向き合う作風は、読者の自己啓発意欲も促してくれるほどで、まさに漫画界に名を残す傑作といえます。

男や女に対する美学を持ち合わせる池上は、ここでは「ヤクザの美学」ともとれる内容を描いてくれています。政治側もそうですが、特にヤクザ側の個性ある登場人物の面々は、暴力を振り回すだけがヤクザではないと言わんばかりに魅力的な人物も登場します。池上遼一といえば『サンクチュアリ』とまで言われる理由がそういった所にあるのかもしれませんね。実際に読んで、みなさんの目で確かめてみてはどうでしょうか。

技巧の極致、精密作画などと形容される池上作品をご紹介してきました。彼のこだわる「リアルさ」は現実的という意味にとどまりません。漫画ならではの、ある意味、非現実的な美しさを描き出すことで、よりリアルな印象を与えるような手法をとっているのです。これらの紹介作品を読み、ぜひ池上遼一による匠の技を実感していただきたいと思います。