ギャグ漫画界の重鎮、相原コージが描く不条理でシュールな笑いに満ちた世界を堪能できる、おすすめの5作品を集めました。ストレス社会を生き抜く人々に。笑いがもたらすエネルギーを感じてください。
青年向け漫画雑誌を中心に、ギャグ漫画を数多く執筆するギャグ漫画界の重鎮。シュールな笑いに満ちた不条理ギャグ漫画の元祖的存在です。
日本デザイナー学院のまんが専攻科を卒業後、漫画雑誌のガロに作品を投稿するも落選。1983年に、漫画アクションに持ち込みした『8月の濡れたパンツ』が掲載されデビューを果たします。この『8月の濡れたパンツ』は相原コージが学生の頃に授業で執筆した作品で、すでにカラーの原稿が含まれていたために、編集部では笑いをとったようです。
代表作に『ぼのぼの』や『忍ペンまん丸』などの作品を持ついがらしみきおに影響を受けた相原コージは、多くのギャグ漫画を世に送り出します。初の単行本作品となった『ぎゃぐまげどん』では、既成概念にとらわれることのない新しいギャグ漫画を描き、邪道まんが家という誉め言葉をもらったことも。
また、プロレスや格闘技に造詣が深く、ブラジリアン柔術を習っていた経験は、のちに自身が描く作品に大きく活かされています。
相原コージの代表作の1つである4コマギャグ漫画『コージ苑』が、『コージジ苑』となって30年ぶりに帰ってきました。テーマは時事問題。相原コージ独自の切り口で時事ネタを笑いに変えたギャグ漫画作品です。
- 著者
- 相原コージ
- 出版日
- 2015-11-30
相原コージの代表作とも言える『コージ苑』は、あいうえおの五十音順に4コマ漫画を連載し、ギャグ漫画の広辞苑となるようなスタイルの作品で大人気となりました。30年の時を経て帰ってきたこの『コージジ苑』は、長年培われてきた相原コージの技術とセンスが発揮された時事ネタが魅力。
相変わらずの下ネタやグロネタも含まれながら、数々のヒット作を生み出してきたギャグ漫画界の重鎮の持ちうる技法と笑いが詰め込まれた、中身のぎゅっと詰まった作品となっています。
相原コージらしい、読んでいくうちにギャグとは何なのかがわからなくなってくるような、シュールで乾いた笑いも健在。おもしろおかしく、時事を学んで一石二鳥!往年のファンはもちろん、初めて相原コージ作品を読む人も、サクッと読めて気軽に楽しめるのでおすすめです。
『真・異種格闘大戦』は、相原コージの格闘技やブラジリアン柔術に対する造詣の深さが発揮された、動物界最強を決める動物たちの戦いを描いた格闘トーナメントギャグ漫画です。
- 著者
- 相原 コージ
- 出版日
- 2005-02-28
タイトルの『真・異種格闘大戦』の名の通り、動物界の代表14科16種16名の選手たちによる格闘トーナメントが主軸のストーリー。繰り出される動物ならではの技、習性が活かされた試合展開、戦いでありながらも笑いが込み上げてくる描写が魅力です。人間からは若干18歳にして人間最強の称号を手にした強矢鋼(ごうや はがね)が参戦することに。
まず読み始めたら、この強矢鋼が主人公のように話が進みますが……。さすが相原コージと言わざるをえない展開、そして演出で、なんて不条理!と思わず叫びそうになることでしょう。しかし、それこそが相原コージワールドであり、大きな魅力なのです。ブラジリアン柔術をしていた作者の経験が大いに活きた作品でもあります。
本来ありえない世界観に、ありえない試合ですが、いつの間にか妙にエキサイトしながら笑っていることでしょう。動物界の最強を手にするのは誰か?試合を観戦している気になって読むのも楽しいかもしれませんね。
『かってにシロクマ 動物生態図鑑』は動物生態を題材にしたギャグ漫画です。OVA、ゲーム化もされた、相原コージの人気を確立した作品でもあります。
- 著者
- 相原 コージ
- 出版日
シロクマとはホッキョクグマのことでなはく、アルビノのエゾヒグマ。主人公はエゾヒグマの「シロ」。好奇心旺盛な間抜けな子熊です。厳しくも優しい母グマと、双子の弟大ちゃんと、あることがきっかけで一緒に暮らすことになったウリ坊と共に、北海道の大自然の中で生きています。
この主人公的存在、シロは、なにをやってもどんくさいです。よくできた弟の大ちゃんとは正反対で、最後の一言以外はちゃんと言葉で話すこともありません。しょうもないことでいつも母グマに怒られていますが、なんとも憎めないキャラクターです。
背景で他の生き物たちが生きている姿や、生死をかけて戦っていたりする描写が何気なく、当たり前のように描かれていることもあり、まさに動物生態図鑑という雰囲気。自然界の厳しさと摂理をリアルに、笑いと共に描いた珍しいテイストが魅力です。時に自然界ならではのシリアスなテーマが取り上げられるメリハリが、さらに笑いを盛り上げているのでしょう。
ラストの終結の仕方は、ギャグ漫画としても、そこに至るまでのストーリーとしても意外なもの。ぜひお手にとって確かめてみてください。
ゾンビが出現し、感染は拡大。恐怖に陥った人間たちの悲劇を、ユーモアとお色気を盛り込み描いた、ゾンビ、パニックホラー漫画『Z~ゼット~』。ギャグ漫画界の重鎮、相原コージのゾンビ像が反映された作品です。
- 著者
- 相原コージ
- 出版日
- 2013-04-26
一度死んだ人間がゾンビとなっているのに、脳を破壊する程度で死ぬというのは死んだ者が死ぬという理論になってしまうため、その点に疑問を感じた相原コージの描くゾンビは、「殺しても死なない」うえに、人間だけにはとどまらず、生きとし生ける全ての生き物にも感染。ゾンビ化した生物の一部でも食べてしまった他の生物も、ゾンビとなってしまうために拡大は恐ろしいほどに進んでゆきます。
脳を破壊したくらいでは倒れないゾンビたち、焼き尽くすなどして消滅させるしか対処方法もなく、切断されて残された一部でさえも動き続けるという恐怖。ゾンビが本当に恐ろしいのが魅力で面白い作品です。
展開としては、ゾンビの発生初期、発生中期。発生後期の3部構成となっており、それぞれの時期の様々な人間模様を描いていくます。一応主役ポジションも存在しますが、オムニバス形式で主人公になれない登場人物たちにもスポットライトを当てるため、全く現実世界ではないにも関わらず、感情移入しやすいリアルを感じさせるのも魅力です。
ここでもやはり不条理ギャグ漫画家の元祖、相原コージの特徴が満載のギャグが連発。ゾンビパニックホラーとギャグがMIXされた異色といえる作品は、少し違った路線の相原ワールドを堪能できるおすすめ作品です。
ギャグ漫画界の重鎮が描く、本格忍者漫画『ムジナ』。相原コージが解き明かしたストーリー漫画の技法、長い年月をかけて培ってきた経験、持ちうる全てを詰め込んで描いた集大成と言える作品です。
- 著者
- 相原 コージ
- 出版日
相原コージが少年時代に熱中していた忍者漫画ですが、漫画を執筆するようになってからはすでに過去のブームとなってしまっていました。その過去のブームとなったジャンルを自らの持ちうるセンスや技術を詰め込んで復活させた本格的忍者漫画。面白くないわけがありません。
真面目な展開だけでなく、細かい解説が要所要所に見られ、この解説自体が一種のギャグになっているというこだわり抜かれた演出もなされています。経験値の高さとセンスがなければ描けないであろう、細かに計算しつくされた展開は見事なものです。
非常に緻密に練られた構成で、培ってきた技法が盛り込まれた相原コージの集大成的な作品ですが、過去作品を知らないとわかりづらいネタも出てくるため、他の作品を読んでから読むことをおすすめします。
忍者社会の重厚なストーリーに相原コージらしい乾いた笑いを誘うギャグが数々が盛り込まれた、本格忍者漫画、他の作品を楽しんでからぜひ読んでみてください。
普段は面白く、何気なく読んでいるけれど、ギャグ漫画を描くということは自分がどんなに落ち込んでいても、気分が乗らなくても、悲しいときでも、人が笑えるものを描き続けなければいけないということです。それって恐ろしく大変で、才能のいることだと思いませんか?どんなことがあっても、作品の中はいつも面白くないといけないなんて。何十年とギャグ漫画を描いてきた相原コージ。やはり重鎮と呼ばれるのはそれだけのセンスを持ち、人を惹きつける魅力を放っているからでしょう。そんな相原コージの作品、一度手に取ってみてはいかがでしょうか?