昭和という時代を覗いてみる本【ハッカドロップス・マイ】
どんなにその時代が残したものが好きでも、その時代の文化に興味があっても、結局は、自分が生きていない時代を当時の人と同じように捉えるなんて無理な話だと思っている。

私は平成生まれだ。だけど昭和という時代に、文化にとても興味がある。

新しい感覚で「昭和」を生き抜いた女性

著者
阿木 燿子
出版日
横須賀ストーリー以降の山口百恵さん作品のほとんどを作詞されている(!)、作詞家、阿木燿子さんのエッセイ本。妄想癖があって、授業中いつも数字や記号を言葉に置き換えていたエピソードや、今やなかなか見ない電話ボックスで遭遇した変な人の話など面白いです。

あの歌詞を書いている人は普段こんなことを考えて、こんな風に育ってきたのかぁという読み方もできてニヤけます。女が一人で旅をすると不都合なことが結構あったと書いていて、でも女も一人でたくさん旅に出るべきだと。昭和という時代を、当時とても新しい感覚で生き抜いていかれた女性なのではないかと思いました。

戦後の娼婦の生き様と覚悟

著者
池波 正太郎
出版日
2014-01-15
男性に依存するというよりもむしろ逆、戦後の時代を女一人で生き抜いていくために娼婦として稼いでいる女性たちのお話です。長く、着実に一人で生きて行くには自分を高く売り、堅くやれと本の女性たちは言います。自分たちの娼婦としての稼ぎ時もしっかり自覚している。そしてお金を貯めて将来は商売を始めて、一生を一人で暮らしていこうという覚悟があります。

今でこそ一生一人で暮らしていくことは選択肢として普通にあるわけですが、時代によっては相当の覚悟が要ることだったのかもしれないなぁ。なんて思いながら(実際のところはその時代を生きてみないと解らないのだけれど)、どこまでも潔いこの女の人たちを尊敬せずにはいられません。

昭和初期の暮らしや流行を描写

著者
水木 しげる
出版日
1994-08-01
昭和の文化に興味があっても政治や歴史となるとなかなか難しい……というか、なかなか文化と暮らしと、政治って結びつかない。と思っていた矢先この本を見つけました。関東大震災~満州事変までの史実が描かれるとともにその頃の暮らしっぷりや生活の中で流行っていたことなどが一緒にわかるようになっていたりと退屈しない工夫がされていて、歴史の勉強もできるので実用的というだけでなく、本当に面白いです。

水木しげるが解説する戦前の歴史

著者
水木 しげる
出版日
1994-08-01
こちらは満州事変~日中全面戦争までの本。人口取りという遊び(順番に都市を取り地理の本で人口を調べて多い方が勝つ)が流行れば日本全国の都市の人口を暗記し、遊びがすたった頃には世界の人口を書物に表すところまで及んでしまう。

水木しげるさん幼少期のエピソード。ドーナツというのが外国から渡ってきたのを食べに炎天下20キロ歩いたり当時がリアルに感じられる。そして昭和7年当時の内閣総理大臣犬養毅が暗殺された五・一五事件を象徴する流行語となった「話せばわかる」と「問答無用」。これも是非絵付きで見ていただきたい。感動します。

昭和歌謡曲の礎を築いた作者のエッセイ

著者
阿久 悠
出版日
作詞家・阿久悠さんの、新聞に連載されていた文章を一冊にまとめた本。

「地球がおかしいよねと感じ始めたのは、もうずいぶん昔になる。ぼくらは感覚だけで花の咲き方、雨の降り方、風の吹き方を、どうも本来とは違っているようだ、これは異変ではないだろうかと感じていたわけだ」
「シトシトとザアザアは動態の違いではなく、季節への信頼のようなもので、どこかで安心する。こういう安心が日本人を微妙に、そして、やさしく育てていた」

歌謡曲の歌詞というのは一曲4分ほどの、小説などと比べればとても短い言葉の連なりの中に、ドラマ、情景、哲学などが含まれている凄いものだと思います。昭和歌謡曲の一時代を築かれた阿久悠さんの言葉は一つ一つの密度がとても濃い。

まともに影響を受ければ人生を変えられてしまうほどの、強烈さを持っています。

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