経済小説おすすめランキングベスト5!【金融関連編】

更新:2021.12.17

経済は身近でありながら少々とっつきにくいイメージがあります。経済小説は現代とリンクする部分が多いというのが特徴。中でも金融関連にスポットを当てた作品をランキングでご紹介いたします

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5位:専門知識満載!50億円と美女の行方を追う

『マネーロンダリング』は、香港を舞台にした国際金融小説です。主人公はファイナンシャル・アドバイザーの工藤秋生。主に日本企業向けのオフショアアドバイザーをしています。ある日、工藤の元へ若林麗子と名乗る美女が現れます。麗子は5億円のお金を損金として処理をしてほしい、と工藤へ依頼。工藤は麗子の望むとおりの枠組みを提案し、手続きをしていきます。

その後、日本から麗子を追った黒木という男が工藤の元を訊ねてきました。黒木は、麗子は日本から送金した50億円ものお金とともに行方をくらませた、と告げます。麗子は、そして50億円のお金はどこへ消えたのでしょう。

著者
橘 玲
出版日
2003-04-15


作者の橘玲(たちばなあきら)は、元編集者。海外への投資を中心とした「海外投資を楽しむ会」の創設メンバーであり、日本経済新聞で連載を持ったこともあるなど、経済知識がかなり豊富です。海外向け投資をしているだけあってか、現地の金融事情や街並みの描写が秀逸。工藤とともに欲望渦巻く香港の街並みに立っているような錯覚を覚えます。

経済の知識を得ながら麗子と消えた50億円の行方を追うという、推理小説的な要素も楽しめる本作。展開が早く、テンポ良く進んでいくため飽きさせません。

美女と汚れたお金の行く先はどこなのか。愛と欲望が絡まった物語をお楽しみください。

4位:リアルすぎ!メガバンクを舞台にした経済小説!

メガバンクとは、莫大な預金残高を持つ都市銀行のことを言います。日本ではTVCMをしている銀行などが当てはまるでしょう。作者波多野聖(はたのしょう)は銀行に勤務していた経験を持つ作家。株式ファンド・マネージャーとして活躍していたこともある、経済の専門家です。そんな波多野が、過去の経験を生かして書いた作品が『メガバンク最終決戦』です。

著者
波多野 聖
出版日
2016-01-28


桂光義は、日本最大と言われるメガバンクTEFG銀行の専務。ある日、盤石だったはずの銀行が、国債の大暴落をきっかけに巨大な負債を抱えてしまいます。機能不全となったTEGF銀行には、暴落した株を狙う外資系ファンドや、暴利をむさぼろうと暗躍する官僚の魔の手が迫ります。桂は総務部の二瓶正平とともに、生き残りをかけた戦いに挑んでいきます。

実際に金融の現場で働いてきた波多野聖が書いたこともあり、桂や二瓶などが市場に対峙しているときの心理描写がとてもリアル。実際の企業がモデルということもあり、より物語が身近に感じられます。また、官庁がやたらと口を出してくるところも、なんだか現実味を感じるポイント。政治とお金の切り離せない関係や、大規模な銀行の持つ影響力を示しているのです。

物語は開幕から緊張を孕んだまま、銀行内の権力闘争に謎の組織も登場して混迷を極めていきます。誰もかれもが欲望に突き動かされる中、毅然と立つ桂と二瓶の姿に胸打たれます。椎名桔平主演でドラマ化もされた本作。実際に起こりうる可能性のあることだけに、想像力がかき立てられる1冊です。

3位:これは外せない!人気ドラマの原作

堺雅人の名演技と「倍返しだ!」のセリフが強く印象に残る、社会現象にもなったドラマ『半沢直樹』。銀行マンを主人公としたドラマの原作となっているのが、池井戸潤の『オレたちバブル入行組』。本作はドラマ第1部の内容にあたります。

著者
池井戸 潤
出版日
2007-12-06


バブル期に大手の都市銀行、東京中央銀行に就職(入行)した半沢直樹。関西支店でも中核となる大阪西支店の融資課長を務めるまでになりました。ある日、支店長の浅野の強引な決定により、5億円の融資を行った会社、西大阪スチールが倒産してしまいます。明らかなデータ改竄が見られたものの、社長の東田は失踪。責任を押し付けられた半沢は、子会社への出向を回避するため、憤怒しながらも5億円の債権回収に乗り出します。

銀行は誰もが行くところではありますが、その内部組織がどうなっているのかまでは、外からはわからないもの。銀行員である半沢を中心に、銀行内の関係がだんだんと見えてきます。池井戸潤も元銀行員であったためか、リアリティはバッチリ。専門的知識を重視するよりも、人物描写に力を入れた物語は、読者にページを捲らせる力を持っています。

ドラマよりもちょっと冷徹な部分のある半沢直樹が危機的状態からどんでん返し、逆に相手をやり込めてしまう姿はとても痛快。スカッとすること間違いありません。ドラマの映像を脳内で展開しながら楽しめる、良質なエンターテインメント小説です。

2位:外資系金融機関を舞台に日米の経済変遷を知る!

日本で経済の大きな転機といえば。1986年に始まり、1991年頃に崩壊したバブル景気でしょう。以後日本の景気は低迷し、20年以上が経った今でも回復の兆しは見えません。黒木亮『巨大投資銀行』は、景気が好調となった1985年ごろからが舞台。日本、アメリカを中心に、大きく変化する世界の経済情勢を上下巻の大ボリュームで描いていきます。

著者
黒木 亮
出版日
2008-10-25


日本の都市銀行、東都銀行の銀行員である桂木英一は、旧体制から抜け出せない勤め先を辞してしまいます。向かった先はアメリカ合衆国、ニューヨークにあるウォール街。アメリカ経済の中心地で、桂木は投資銀行のモルガン・スペンサーに就職します。慣れない外資経済に揉まれながらも頭角を現した桂木。そんな時、凄腕トレーダーの竜神宗一と出会います。

本作は架空の銀行や企業が多く登場しますが、実際の企業が名称を変更して登場するのも特徴。桂木の就職先であるモルガン・スペンサーは、実在する世界的な総合金融サービス企業である、モルガン・スタンレーであるようです。登場人物たちが過ごす時間も現代で起こったこととリンクしており、上巻はバブル崩壊。下巻では2001年9月11日、多くの犠牲者を出した同時多発テロのことについても触れています。

桂木の目を通して日本とアメリカ、そして世界がたどってきた金融史をなぞるような形になっていますが、それだけではありません。株や為替取引に必要な単語、知識が満載されており、外資系の金融機関への就職を考えている方にも最適。巻末には金融用語辞典がついているので、わからない言葉もすぐに調べることができ、安心です。

桂木は外資で培った腕を、日本の銀行を立て直すために使おうと誓います。金融という分野にありながら、利になびきすぎず、己の信念を貫く桂木の姿は理想像。こうあらねば、と背中が正される思いです。金融に関するすべてを詰め込んだ本作。金融に関する知識以外にも、桂木の人間的成長も合わせてお楽しみください。

1位:経済危機後の日本の問題に警鐘を鳴らす意欲作

経済小説家として知られる真山仁。その地位を確立させた作品が『ハゲタカ』です。映画化やドラマ化もされて人気となった本作は、『バイアウト』、『レッドゾーン』、『グリード =GREED』とシリーズ続編も好調です。

バブル崩壊後の1997年。元ジャズピアニストの鷲津政彦は、ゴールデン・イーグルと呼ばれ、世界で辣腕を振るうファンド・マネージャーです。彼が得意としているのは、ハゲタカファンド。経営破たん、または危機に陥っている企業の株式を買い取って再生させ、企業利益を高めた後に株を高値で売るという方法です。

鷲津は不景気にあえぐ日本に帰国し、危機状態の企業を次々と買収していきます。買収先の企業の職員や、敵対ファンドの妨害もある中、次々と成果を上げていく鷲津。一方、鷲津の下で働くよう誘われた芝野健夫は、自身の務める三葉銀行の体制に疑問を抱き、退職。鷲津の誘いは性格に相容れないものを感じて断ったものの、ターンアラウンドマネージャー(企業再生家)として動き始めます。

著者
真山 仁
出版日
2013-09-13


物語は鷲津と芝野、そして休業寸前の老舗旅館を背負うことになる、松平貴子を中心に進んでいきます。鷲津は容赦なく、強引とも取れる方法で企業を買収していきますが、内には復讐という強い思いを抱いていることが、後に明かされます。正義を振りかざすわけではないその姿は、ダークヒーロー的。手腕の鮮やかさに、思わず感嘆してしまうほどです。

登場する企業や銀行にはモデルがあり、読むだけで察することができます。出来事も実際に企業がたどってきた過去を踏まえ、未来の姿を予想。もしかしたら、こうなるのかもしれない、という説得力があります。

経済的な知識が無いと、再生してもらえるならいいじゃない、などと楽観的に考えてしまいがちですが、利権が絡むとそう話は簡単に終わらないもの。本作では鷲津や芝野、貴子たちを取り巻く環境や行動を通し、日本経済の問題点が洗いだされていくのです。

経済の知識を蓄えながら、1人の男の復讐劇を見守っていくことになる本作。テンポよく物語は進んでいくため、襟首をつかむような勢いで、読者を物語に引き込んでいきます。知の攻防をお楽しみください。

経済小説は身近でありながら、少し遠いところを描いたものです。専門的知識も興味を持って聞かなければなかなか覚えられないもの。小説として楽しみながら、経済の仕組みや問題点も理解できる経済小説は、教科書的な役割もしてくれる存在です。ぜひ、経済への理解を深める一助としてみてください。

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