江口寿史のおすすめ作品ランキングベスト5!ポップなギャグ漫画!

更新:2017.3.10

『彼女』など女の子の顔を描いたイラストで若者から大人気の作者。元はギャグ漫画で一世を風靡しながら、今ではその絵がTシャツやCDジャケットに使用されるなど、ポップアートのイラストレーターとしても有名です。 彼といえば、80年代のサブカルに多大な影響を及ぼした漫画家の1人。今回はそんな江口寿史の作品から、代表作を含めておすすめの漫画ベスト5をご紹介します。

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江口寿史はサブカル界のキング・オブ・ポップ!

 

1956年3月29日生まれの漫画家、イラストレーター。1977年に発表した作品『恐るべき子どもたち』がヤングジャンプ賞入選、同作が「週刊少年ジャンプ」誌上に掲載されてデビュー。

1975年にデザイン学校へ1年間浪人して入学しますが、長続きしません。1年後、甲状腺機能亢進症の手術で入院したのを契機に、小学校3年から描いていた漫画の道に進むことを決意。

小さい頃に『鉄腕アトム』などの漫画に触発されて漫画を描き始めた江口。最初期の絵柄は現在と違って丸っこく、手塚治虫のタッチの影響が見て取れます。代表作『すすめ!!パイレーツ』では秀逸なギャグが評価されましたが、『ひのまる劇場』、『ストップ!! ひばりくん!』を経てデザイン性のある画風に移行していきます。

ハイコントラストが特徴的なポップデザインが評判になる一方で、遅筆さが目立つようにもなり、徐々に活動の軸がイラストレーターに移っていきました。

 

5位:ジグザグ凸凹探偵物語『ひのまる劇場』

 

主人公の白智小五郎(しらともこごろう)は、助手の戸田光国(とだみつくに)と私立探偵事務所を営んでいます。地階の事務所に依頼人はろくに来ず、1階の喫茶店MiYaKoで食い逃げをする日々。しかしひとたび事件とあれば、国際馬鹿事務局認定のフールマークにかけて華麗におバカに解決します。

 

著者
江口 寿史
出版日
1995-06-01

 

本作は三流探偵とその助手による探偵ギャグ漫画です。

主人公はかの有名な探偵明智小五郎を思わせる名前で、さぞ有能なのだろうと思わせてパッとしません。100種の職業スキルはあっても腕前は平凡そのもの。あまりに影が薄いので自虐ネタを披露する始末です。「はくち」とも読める名前には江口の毒が感じられます。

事務所の脇を固める助手の戸田は地味な好青年。その正体は、世間を騒がす怪盗マウスキッドです。ただしそれは探偵業が不振のために行ってるバイト。他にはお茶汲みとして居座る謎の美少女月子がいます。実はこのふたり、後に人気を博する江口作品のある登場人物にそっくり。

無軌道ギャグは探偵を置いてけぼりにして明後日の方向に突き進みます。ぜひそのハイスピードなギャグ展開をお楽しみください。

 

4位:江口寿史のおもちゃ箱、形式不揃いの作品集!『江口寿史のお蔵出し 夜用スーパー』

 

漫画の神様、毛塚治虫(けづかじむし)が過ごしたアパート「ドギワ荘」には、漫画家を目指す若者達が集っています。

古株の「テラさん」は人格者で、漫画にも一家言あるみんなの兄貴分です。ところが美人の若い女性を見かけると、漫画的表現の黒目の中にスケベな目が開眼して文字通り目つきが変わるヘンタイ。

ドギワ荘の紅一点「キロ子さん」は、瓶底眼鏡を外すとナイスバディの美人。毎回ちょっとしたことでテラさんがキロ子さんをエッチな目で見て……。

 

著者
江口 寿史
出版日
2010-12-11

 

本作は90年代に描かれた単行本未収録の未完連載、短編、エッセイ、4コマ作品のバラエティ豊かなごった煮的作品集です。表紙とタイトルから察せる通り、ちょとエッチな下ネタが含まれます。

「ドギワ荘」シリーズは藤子不二雄A『まんが道』のパロディ。ギャグとはいえ有名漫画家を下ネタに巻き込むという、危険な内容になっています。スケベとエロと妄想たっぷり。案外これが漫画家の真実……!?

あまり見かけない、ボウリングを題材にした未完の名作「ラッキーストライク」も収録。女子高生、玉村瀧を主人公にした学園ギャグ漫画です。瀧は江口作品の例に漏れず魅力的なヒロイン。

出版の事情からごちゃ混ぜのような印象を受ける作品集ですが、逆に言えば様々な角度から江口寿史を楽しめる一冊となっています。

 

3位:江口寿史がスポ根漫画に挑戦!父の栄光時代を越えろ『エイジ』

 

通称エイジと呼ばれる主人公の赤木英児は、喧嘩っ早いトラブルメーカーです。亡き父、圭児郎は往年の名ボクサーで、実家もボクシングジムなのですが、エイジ自身はボクシングと距離を置いています。

ある日、幼馴染みの高杉まりなを巡って、エイジは上級生と戦うことになりました。相手はボクシング部の草薙直矢です。圭児郎のトレーナーだった乃木は、偶然その対戦を目撃し、驚きます。エイジには父親譲りの確かな才能があったのです。

エイジの兄、攻児郎もボクサーでしたが、彼は平凡な選手でした。しかし、攻児郎が全力で挑み、そして負けてしまったタイトルマッチを観戦したことで、エイジの中で眠っていた闘争心に火がつきました。

 

著者
江口 寿史
出版日

 

江口はギャグ漫画家として知られていますが、本作はギャグ抜きの正統派スポ根漫画です。才能を持ちながらも鬱屈とした生活を送っていた主人公が、自分の進むべき道を見出し、目標を目指すというストーリー。

エイジがボクシングから離れていたのには理由があります。父の圭児郎は伝説のボクサーと讃えられる選手ですが、エイジが物心つく頃にはすでに落ち目でした。戦う強い父ではなく、戦って負ける父の背中を見続けた結果、ボクシングを忌避するようになったのです。

そうして屈折していたエイジは、周囲の人々の影響や後押しによって目覚めます。

本作では1984年の一夏の模様が描かれます。直接的な続編に『「エイジ」2』、1年後の様子を語る『「エイジ」'85』があります。魅力的な物語ですが残念なことに未完。どちらも『「エイジ」コンプリート・エディション』に収録されています。

江口はいずれ完結させる意向を見せており、その時が来るのが楽しみな漫画です。

 

2位:暴走すちゃらか野球団!『すすめ!!パイレーツ』

 

富豪、九十九里吾作(つくもりごさく)の気まぐれでセ・リーグに新たなプロ球団「千葉パイレーツ」が創設されました。金に飽かせて強力な選手を集める贅沢なチームです。

10年後。九十九里は破産し、経営悪化して落ちぶれたパイレーツは弱小球団に成り下がっていました。主人公の富士一平はそんなパイレーツに入団、日本一のチームを目指して気負いますが……。

 

著者
江口 寿史
出版日

 

1977年から「週刊少年ジャンプ」誌上で連載された本作は、江口の初連載作品となります。野球漫画ならばスポ根!という当時の常識を覆した、千葉パイレーツとその周囲で巻き起こされる不条理ギャグを描いた作品です。

個性豊かな選手が登場し、主人公の一平だけがほとんど唯一の常識人という有様。がさつでいい加減な犬井犬太郎と、小賢しい猿山さるぞうが引っかき回し役。このトリオの構図は同時期「週刊少年チャンピオン」で連載されていた『マカロニほうれん荘』を意識したものだと「BSマンガ夜話」で江口は語っています。

流行や時事ネタのパロディが多く、当時の世相を垣間見ることが出来ます。80年代に流行した「ぶりっこ」は本作に由来するとも言われており、サブカル的にも重要な作品です。

野球団とはあまり関係ないエピソード「史上最大の生中継」が、『ハイ・ヌーン』と改題されて「世にも奇妙な物語」で2度実写ドラマ化されました。原作とドラマではラストが異なっており、ドラマをご存知の方も是非一度元になった本作をご覧ください。

 

1位:江口寿史が描く才色兼備の完璧ヒロイン!だが男だ。『ストップ!!ひばりくん!』

 

主人公の少年、坂本耕作は高校1年にして母親を亡くしました。天涯孤独となった耕作は、遺言に従って母の友人、大空いばりを頼ります。いばり宅に居候することになった耕作は、現地について驚きました。表札にはなんと「関東極道連盟 関東大空組」とあり、いばりは暴力団の組長だったのです。

尻込みする耕作でしたが、邸宅で可憐な少女を見かけて、あっさり心変わり。いばりは歓迎会を開いて、娘3人息子ひとりの家族の紹介をします。長女つぐみ、次女つばめ、三女すずめ。そして最後に紹介されたのが、長男のひばり。耕作が心奪われた、あの少女でした。ひばりは女装癖のある男だったのです。

 

著者
江口 寿史
出版日
2009-07-16

 

見た目は理想的な可愛い女子なのに実は男。「男の娘」と言えば近年隆盛したジャンルで、サブカル界では一定の市民権を得た感があります。

本作が「ジャンプ」で連載されたのは1981年のこと。今から約35年も前に先鞭をつけた江口の感性には驚嘆すべきものがあります。当時はラブコメ漫画全盛期。理想化されたヒロインが男というギャップのあるギャグ漫画を作ることで、そんなラブコメ漫画を茶化したかったのかも知れません。

何が気に入ったのか、ひばりは場所を問わず積極的に耕作の気を引こうとします。

ひばりが男であることは、大空家と大空組の者、耕作以外は知りません。学校では当然、可愛い女の子のひばりが恋のアタックをしているようにしか見られません。なまじ見た目が好みなだけに、ひばりが男であることを知る耕作は苦悩することに。

男のひばりが可愛ければ可愛いほど、それ自体がおかしみを引き起こすギャグになる。そう気付いた江口は、徹底してひばりを等身大の女の子に見えるよう描きます。ファッションディテールへのこだわりは、後年のポップなデザインに通じます。

アニメ化もされた伝説的作品ですが、連載が中断したため長年未完扱いでした。2010年に発売された『ストップ!! ひばりくん!コンプリート・エディション』第3巻で、最終話が加筆されたことで無事完結しました。

 

いかがでしたか? ギャグとポップアートの才能を持つ江口寿史。双方を両立するのは難しいらしく、遅筆なのが残念です。江口は美麗イラスト集、エッセイなども出版しています。エッセイはギャグ漫画家ならではの切り口で面白く、気になった方はこちらも必見。

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