もしかしたらハッピーエンドかもしれない5冊

もしかしたらハッピーエンドかもしれない5冊

更新:2021.12.12

ふくろうずの内田万里です。わたしはハッピーエンドが好きです。でも、物語は必ずしもハッピーエンドである必要はないと思います。そこに大切なものを感じられたら、それで良いと思っています。 でも、あんまり悲劇的だと、やっぱり嫌です。そんなわたしが、わたしなりに「もしかしたらハッピーエンドかもしれない」と密かに思っている5冊を紹介します。

ふくろうずのヴォーカル・キーボード。内田万里(Vo, Key)、石井竜太(Gt)、安西卓丸(Ba, Vo)で2007年にふくろうず結成。2011年6月、メジャーデビュー・アルバム『砂漠の流刑地』をリリース。2015 年1月から放送されたドラマ『ワカコ酒 Season2』のオープニングテーマにミニアルバム『ベイビーインブルー』収録曲「いま何時?」が使用され、メンバーもカメオ出演して話題に。 同月には恵比寿LIQUIDROOMにてツアーファイナルが大成功。2016年4月には東京・クラブeXにて、ワンマンライブ「ふくろうずの360 ゚ライブ ~死角の無いやつら~」を開催。同じく4月に大阪・Music Club JANUSにて自主企画「プリティーツーマン~春はあげぽよ、YO!YO!白くなりゆく!?~」で、ねごとと共演し会場を盛り上げた。 7月13日にリリースされた最新アルバム『だって、あたしたちエバーグリーン』は、2014年6月リリースの『マジックモーメント』以来となる作品。2017年1月からは3カ月連続企画ライブ、6月には東京・大阪で「さらば!プラネタ銀河ツアー」を開催した。9月6日には結成10周年の集大成となるニューアルバム『びゅーてぃふる』をリリース。12月24日、結成10周年を記念したライブ「ごめんね、ありがとライブ」をもって解散を発表した。 オフィシャルホームページ http://www.fukurouzu.com/
ブックカルテ リンク

「ライ麦畑でつかまえて」

著者
J.D.サリンジャー
出版日
1984-05-20
そこそこお金持ちの16歳の少年が家出をして、何かを求めて都会をさまよい、打ちのめされてお家に帰るまでの話です。でも、16歳だったら家出しても帰っちゃうのが普通ですよね。そのリアリティが好きです。

そんな情けない主人公が、生きづらい世の中に訳も分からずツバを吐き続ける姿に、知り合いの姿がダブります。わたしにとってこの作品は、友人のことや、恋人のことを、ふと思い返させてくれる作品です。懐かしい気持ちになります。

ちなみに主人公は家に帰っても何もしません。本当にだめなやつです。

「カッコーの巣の上で」

著者
ケン キージー
出版日
2014-07-08
舞台は1960年代のアメリカです。主人公は白人とインディアンの混血で、そのために人種差別にあい、傷つき、社会から逃れるため、「フリ」をして精神病院に入っています。

そんな空虚な日々を送っていた主人公が、マクマーフィーという下品だけれど、ありのままに生きようとする強い信念を持った男と出会うことで、失われていた自尊心を徐々に取り戻していく話です。

そしてある日、精神病院で悲劇的な事件が起こり、それをきっかけに主人公は自分の力で再び生きていくことを決意します。そして最後、主人公は奇跡を起こします。

「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」

著者
村上 春樹
出版日
2005-09-15
天才科学者のために様々なトラブルに巻き込まれることになった「僕」の現実世界。一角獣が住む不思議な街に記憶を失ったまま住むことになった「僕」の非現実的な世界。この2つの世界からなる話です。

つい先日、読み終えました。2回目です。1回目に読んだ時は、主人公の身に起こるあまりにも理不尽な出来事に腹が立ったのを覚えています。確か当時、中学生でした。

だけど、久々に読み返してみて、今回は不思議とまったく腹は立たちませんでした。生きているとたくさん理不尽なことがあると知ったからかもしれません。もしかしたら、何より自分がとっても理不尽な性格をしていると分かったからかもしれません。

いずれにせよ、中学生の時より自分は大人になったんだと思います。改めて読んでみて、昔も今も好きなシーンがありました。音楽が失われた「世界の終わり」で主人公が唄を取り戻すシーンです。

人間にとって、音楽はとても大切なものなんだな、ということを思い出させてくれます。そして主人公は最後、永遠の命を手に入れます。

「トーマの心臓」

著者
萩尾 望都
出版日
2007-07-26
トーマの自殺をきっかけに、少年たちがそれぞれ抱える苦悩に向き合い、時に衝突しながらも乗り越えていく話です。

トーマの死んだ朝、遺書めいたものがユーリの元に届きます。彼はそれを破り捨てますが、同じ日に、死んだはずのトーマとそっくりな顔をしたエーリクという転校生がやってきます。

その奇妙な転校生を中心に、なぜトーマは自殺したのか、なぜユーリの元に遺書が届いたのか、なぜユーリは遺書を破り捨てたのか、様々な謎が、いろんな過去と共に解き明かされていきます。

この作品から、生きることや死ぬことや、恥ずかしいけれど、他人を深く愛するってどういうことなのかを強く考えさせられました。そして少年たちは最後、少しだけ大人になり、それぞれの道を歩き出します。

「シュガータイム」

著者
小川 洋子
出版日
「不自然」なものに囲まれながら暮らしている女子大生の話です。

不自然な弟の体、不自然な恋人との関係、突然生まれた不自然な食欲。そんな不自然だらけな日常を主人公は静かに受け入れ、愛し、ひたすら食べ続けます。

主人公が食べることによって心のバランスを取っているんだとしたら、それは断崖絶壁で逆立ちしながらピースをするくらい危ういバランスだと思います。

でも、青春って、それくらいギリギリのバランスが奇跡的に保たれてる期間のことかもしれません。そして最後、主人公の青春は突然終わりを告げます。
  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る