女の子はじめました、な本【ハナエ】
“女の子はじめました”という歌い出しではじまるわたしの楽曲、「神様はじめました」。アニメ「神様はじめました」のオープニング曲として発表し、今ではライブで欠かせない曲となっている。リリースしたのはまだわたしが十代の、まさに“女の子”だった頃だ。しかし二十代となった今でもまだ変わらずに、むしろより深いところで楽曲を理解しながら歌い続けていられるのは、女はいつまでたっても女の子だった頃を忘れられないからかもしれない。

女の子って何で出来てる? お砂糖とスパイスと素敵なものぜんぶで出来てるよ。でもそれだけで出来てる訳がないよ。何で出来てるかは自分でも知らないよ。

可愛くて、甘くて、切なくて、矛盾してて、笑えちゃうほどロマンティック。今回は、頭からつま先まで全身どっぷり女の子気分に浸れる本をご紹介する。

ときめきや憧れに気付かせてくれるエッセイ集

著者
甲斐 みのり
出版日
2011-06-09
お気に入りのワンピース。古本屋の匂い。哀しくて綺麗な歌。はじめて好きだと言われた日のこと。黒い髪につけた赤いリボン。サボンの香水。あの人との恋。いつかの憧れやときめきは、大人になった今でも胸をきゅっと締め付ける。すべてがセンチメンタルで、すべてがポエジーだった頃。わたしは、まぎれもなく少女だった。

日常の中に潜む“可愛い”を見付け出し、柔らかくあたたかな文章でそれを案内し続けている著者の甲斐みのりさん。彼女の発信する“可愛い”は、どこか懐かしい気持ちになるものばかり。レトロで素敵な喫茶店、少し恥じらいながら歩きたくなるデートスポット、箱を大切にとっておきたくなるお菓子……。誰にも教えたくないような、大好きな人にだけ教えたくなるような、そんなときめきや憧れに気付かせてくれるエッセイ集がこの『つまさきだちの日々』だ。この作品をお洋服に例えるならば、レースやフリルたっぷりのドレスではなく、上質なコットンで丁寧に仕立てられたブラウス。思いきり気取るわけではなく、ちょっとつまさき立ちをするくらいの背伸びが心地いい。

“憧れ”というのはとても少女らしい感情だと思う。作中に、こんな一文があった。

“日々、いろいろなことに憧れているけれど いま、一番憧れているのは、たったひとりに「わがまま」を言うこと”

もう立派に大人と呼ばれる年に成っても何かに憧れている続けている限り、女もまた、少女なのだろう。

可憐な少女たちの心の機微を描いた一冊

著者
吉屋 信子
出版日
2009-05-30
大正初期、少女画報に連載された吉屋信子女史による短編をまとめた『花物語』。可憐な少女たちの心の機微を流麗な美文で描いたこの作品は、当時より“女学生のバイブル”と評され世代を越えて読み継がれている。収められているのは、女同士の友情や愛情を描いた物語。少女と少女、少女とお姉さん、少女と奥さんであったりと関係は様々だが、女同士の物語だということはどの短編にも共通している。

この作品を読むときにキーワードとなるのが、“S”という言葉だ。英語のシスターの頭文字を取って、エス。少女同士の友達以上恋人未満の関係を指す言葉である。まだ男女で教育の制度も違った時代、少女同士で淡く心を通わせ合うのは一時の流行だったそうだ。

女の子同士の恋愛を描いた“百合”というジャンルがあるが、この作品はいわゆる百合モノより、もっと淡く、そしてとにかく切ない。スカートの裾と裾が触れるか触れないかの距離で心を通わせる少女たちの美しさに心が揺れる。あえかに咲く花、まさにそのものの美しさだ。

冒頭の話に戻るが、わたしの楽曲「神様はじめました」の歌詞には文学作品へのオマージュが多い。リリースから年月も経っているので、ここで少しばかりネタばらししてしまおう。“ためいきはヴィオロンの調べに似て”はヴェルレーヌの『秋の歌』から、“まなざしは悪の華”はボードレールの『悪の華』から。他にも様々な作品へのオマージュがあるので、探してみてほしい。そしてこの曲、実は歌詞がめちゃくちゃエロいのでそこにも注目してみてほしい。めちゃくちゃエロいので。

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