『ケロロ軍曹』と言えば悪ノリ気味なアニメが有名ですが、吉崎観音の漫画が原作です。ケロロの看板であまり目立ちませんが、吉崎作品には隠れた良作が多くあります。今回はそんな吉崎観音作品ベスト5をご紹介しましょう。
吉崎観音(よしざきみね)は1971年12月2日生まれの九州出身の漫画家です。長崎日本大学高等学校デザイン美術科を卒業しています。藤子・F・不二雄作『ドラえもん』がきっかけで漫画家を志しました。
1989年、小学館新人コミック大賞にて佳作を受賞。デビュー後、初期はゲーム雑誌「ゲーメスト」誌上で版権漫画を発表していました。この時、3年ほど『ふたりエッチ』で有名な克・亜樹のアシスタントをしたそうです。
その後漫画雑誌「月刊少年エース」で連載開始した『ケロロ軍曹』が大ヒット。2004年には、同作品で小学館漫画賞児童向け部門を受賞しました。
代表作は『ケロロ軍曹』、『アーケードゲーマーふぶき』等。代表作から窺えるようにアニメやゲームの造詣が非常に深く、その縁でキャラクターデザインを手がけることもあります。
「宇宙流究極真剣」は「宇宙家」に伝わる宇宙最強の剣法です。当代当主によって主人公の宇宙十兵衛が正当伝承者に選ばれました。兄の百兵衛はその選定を受け入れられず、密かに十兵衛を宇宙に放逐し、伝承者の受け継ぐ2振りの秘剣のうち「両断剣」を奪取します。
百兵衛の罠によって惑星X(クルス)に飛ばされた十兵衛。「超格闘惑星」と呼ばれるそこは力だけが正義の無法の地でした。十兵衛は残された秘剣「断星剣」を手に、惑星Xを支配するストライクバトルという戦いに身を投じることになります。
- 著者
- 吉崎 観音
- 出版日
本作は、十兵衛が名実ともに最強と認められるまでを描くサバイバル格闘漫画……ではありません。へっぽこ侍ギャグ漫画です。
十兵衛の風貌は一見して、寡黙で深謀遠慮な達人風。その実、強敵を何もすることなく片付けてしまう強運の持ち主で、何も考えてない天然キャラです。十兵衛は宇宙家の秘剣・断星剣を持ってはいますが、「かつて星を斬った」という怪しい曰くだけが残るなまくら刀。
十兵衛の周囲で繰り広げられる不条理ギャグ、パロディのオンパレードから、後に『ケロロ軍曹』に繋がる原点なのだろうということが窺えます。掲載誌「コミックニュータイプ」休刊のために未完の作品でしたが、描き下ろしを加えた『宇宙十兵衛 完全版』が2000年に刊行されました。
ハーバラ王国にはパズルが好きなファ=ミリア姫がいました。ミリアの15歳の誕生日、差出人不明の怪しげなプレゼントが届きます。それは箱状の立体パズルでした。パズルマニアのミリアがそれを解くと、中から少年が現れました。
それと時を同じくして、ハーバラ城をスチール3姉弟が強襲してきす。窮地に陥るミリア。それを救ったのはパズルの少年でした。彼の名はエイト。彼は、自分はミリアを守るために生まれたのだ、と彼女に言い放ちます。
- 著者
- 吉崎 観音
- 出版日
本作はSF色のあるアクションファンタジー漫画です。エイトは「ガーディアン」と呼ばれる戦闘ロボット。他のガーディアンと違って、唯一成長機能を搭載しています。エイトは当初「ミリアを守る」という使命以外一切不明の存在でした。しかしエイトが成長するにつれて、少しずつ彼の謎、そして世界を揺るがす危機が明らかになっていきます。
展開が進むにつれてアクションに比重が置かれますが、序盤はギャグが多め。記憶が白紙のエイトのボケにミリアの天然ボケが重なる緩さです。作品全体でレトロゲームへのオマージュが多いのも特徴。パッと見てすぐわかるパロディから、少し捻りが入ったものまであり、元ネタを類推しながら読むのも本作の魅力の1つです。
かつて星降りの大会のモンスターバトルで、タイジュの国に優勝をもたらした少年がいました。別世界の少年、テリーです。以後、モンスターマスターとなったテリーはたびたびタイジュにやって来て腕を磨いていましたが……。
主人公のクリオは、テリーと同じく別世界の少年です。タイジュの精霊わたぼうはクリオに才能を見出し、最後の力でクリオをタイジュに送り出して消え失せます。
タイジュの国はわたぼうとモンスターマスターの力で長らく平穏でした。しかし、わたぼうの消失と、モンスターマスター失踪のせいで急激に荒廃していきます。そこでクリオはタイジュの国の新たなモンスターマスターとなり、先代マスター・テリーの行方を追い求めるのです。
- 著者
- 吉崎 観音
- 出版日
- 2012-06-22
本作は国民的RPGの外伝ゲーム『ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド』(以下、DQM)の後日談を描く漫画です。スピンオフのスピンオフという形ながら、吉崎のゲーム好きを反映してか、ドラクエらしさが色濃く感じられます。DQMをベースに「ロト3部作」と呼ばれるドラクエ1~3を上手く取り入れた魅力的な世界観です。
少年漫画らしく本編ではクリオの冒険と成長が描かれます。当初クリオは勇者に憧れる少年でした。モンスターと心を通わせ、協力して戦う魔物使いの姿に感動し、テリーのようなモンスターマスターを目指すようになります。
主人公はクリオですが、原作ゲームの主人公であるテリーも重要な人物です。彼はなぜ姿を消したのか。わたぼうの消失との関係は? クリオがテリーを見付けた時、それらの謎は明かされ、タイジュの国に平穏が戻るのでしょうか。
本作は一応完結しているものの、当時は打ち切りのような扱いでした。新装版となって再刊行される際、物語を補完する読み切り『復活夜』が最終巻に収録されました。
主人公の桜ヶ咲ふぶきはゲームが好きな女子中学生です。しかも、ただのゲーム好きではなく、なんとアーケードゲームのチャンピオン。ある時、謎の男から受け取った下着「パッション・パンティ」を履いたことで超人的なゲームの才能に目覚めました。
ゲームで人心掌握を目論む謎の秘密組織、ギュラシック団。ふぶきは組織に付け狙われ、戦いの渦中に身を投じていきます。
- 著者
- 吉崎 観音
- 出版日
かつて漫画雑誌「コロコロコミック」に連載されていた、すがやみつるの『ゲームセンターあらし』という伝説的ゲーム漫画がありました。ゲーム対決を描く本作は、すがやみつる公認のオマージュ作品となっています。
スカートを翻し、あられもなく下着を晒すふぶきの必殺技「一撃でクリアー!」は、『ゲームセンターあらし』の主人公あらしが、ゲーム筐体の上で宙返りしてコマンドを叩き込む技が元ネタです。また、あらしのトレードマークがキャップ(帽子)であるように、ふぶきのトレードマークはパンツとなっています。どちらにも同じマークがプリントされています。
ふぶきのパンツ、パッション・パンティこそ彼女のゲーマーとしての力の源。これをパンチラすることで普通の女子中学生にゲームチャンピオンの力が宿るのです。細かい理屈はさておき、ふぶきは毎回ゲーム対決でこれを披露、お約束のサービスカットとなっています。
ふぶきにパッション・パンティを渡した謎の男の正体は? 伝説のゲーマー、あらしとの関係は? そしてギュラシック団との戦いの行方は如何に。
オカルト好きな日向冬樹は、近頃宇宙人に侵略される夢に悩まされていました。姉の夏美は取り合わず、明後日の方向を指さして宇宙人がいたとからかいます。しかし、そこには本当に宇宙人が隠れていたのです。
「な……何故バレたでありますか……!?」
彼こそ地球侵略を目論むカエル型宇宙人の先遣隊隊長、ケロロ軍曹。冬樹と夏実にあっさり捕らわれたケロロは、本隊から見捨てられ日向家に居候することになりました。
- 著者
- 吉崎 観音
- 出版日
本作はメディアミックスもされ、今なお根強い人気を誇る吉崎観音最大のヒット作です。吉崎は自身の漫画でこれまでにもアニメやゲームのパロディを手がけて来ましたが、本作ではそれがさらに顕著になりました。パロディの幅も広くなり、時事ネタから芸能人ネタまで飛び出してきます。
個性豊かなキャラは吉崎の柔らかい筆致で一見キャッチーですが、蓋を開ければ一癖も二癖もある難物ばかり。地球を「ポコペン」(アニメではペコポン)と呼ぶケロロをはじめとするケロン星人達、巻き込まれた哀れな一般人と思いきやしぶとく図太い日向家の人々、彼らを取り巻く濃い地球人や後々現れる他の宇宙人の面々。
ケロロ軍曹は日向家の家事手伝いをしたり、趣味のガンプラ作りに勤み、時々小隊を集めて不毛な企みをする毎日。こんな緩い侵略者ライフで地球征服を完遂する日は来るのでしょうか。
いかがでしたか? 吉崎と言えばアニメゲームパロのイメージですが、ストーリー漫画のテクニックもかなりのものです。過去作にはケロロに繋がるものもあり、その遺伝子を探しながら読むのも楽しみの1つ。是非一読してにんまりしてください。ゲーロゲロゲロ。