美術文脈からハウスを読み解く
- 著者
- 椹木 野衣
- 出版日
シミュレーショニズムからハウスを読み解き評論した、批評家・椹木野衣の初期の代表作。
美術と音楽の解釈に共通する点がある故に、まずはカンディンスキー、ウォーホールなどをサンプリングした作品、小説家ウィリアム・バロウズのカットアップ作品、マイケル・ヤングのリミックスした作品など、美術作品の紹介から本書は始まる。
熟読すべきは、ハウス・ミュージックを現代美術の文脈から紹介する章。サンプリング、カットアップ、リミックスなどの用語は、ハウスと密接に関係して使われるようになり、現在では一般的になった。その普及以前に、どのようなものなのかを解析した書籍。ハウスミュージックは「スキゾフレニックな最終消費文化」と紹介していて当時の熱狂を感じる。現在はEDMがその枠組に当てはまるのだろう。
現代思想の視点からDJ文化を読み解いた訳書では、『DJカルチャー―ポップカルチャーの思想史』という書籍もある。アンダーグラウンドでDJが活動することがカウンターカルチャーとして機能するという内容であるが、10年以上たった現在ではそういった思想的な指針を熱く打ち出す人は減ってしまった。
次に何を再生するのか……?
- 著者
- 沖野 修也
- 出版日
- 2005-10-26
クラブジャズDJ、沖野修也によるDJのための選曲“術”についての本。
DJが曲を繋ぐことによって得られる高揚感など意識の変化は、なぜ起こりうるのか? クリエイティヴな選曲のために行うべきこととは? クラブジャズユニット、キョートジャズマッシヴのDJでありクリエイティヴ・ディレクター沖野修也による、断片的に語り継がれていた選曲のための知識をまとめた今までにない書籍。
この本のメインコンテンツは、「スターDJの選曲メソッド」と章立てた、過去にリリースされた有名DJたちがリリースしたミックスCD、12枚の解説。ミックスCDに収録された曲を順に紹介して、選曲された理由を読み解いて解析していく。でシルクレビューでは得られない知的興奮がある。ちなみに1枚目は、名盤中の名盤、Larry Levan『Live at the Paradise Garage』。どう解析しているかが気になる方は手に取ってほしい。
DJ文化に馴染みのない方から「DJはレコードを繋いでいるだけでは?」という意見はよく耳にする。しかし、プロの知見からの選曲への考察に触れることで、今までの楽曲の捉え方が変わるだろう。
レコードディガーを深掘り
- 著者
- ["D.L", "katchin'", "Illicit Tsuboi", "MACKA-CHIN", "MURO", "RYUHEI THE MAN", "家永 直樹", "尾川雄介", "クボタタケシ", "黒田 大介", "小西 康陽", "鈴木 雅尭", "須永 辰緒", "永井 博", "馬場 正道"]
- 出版日
- 2016-09-23
レコード屋通いがやめられない……。レア盤文化を1冊。
国内屈指のレコードディガーとして名高い、2014年に他界したラップグループ・ブッダブランドのMCであり、トラックメイカーのデブラージを巻頭に、レコードの魅力に取り憑かれてしまった人達を紹介。雑誌『GROOVE』のアーカイヴと新たに撮り下ろした記事も含めた1冊。
レコードからサンプリングしてトラックメイクするゆえにレコードディグ=ヒップホップの印象が大きいが、それだけの枠に留まらずにクボタタケシ、小西康陽、須永辰緒などにも話を聞いている。ジャンルや立場は違えど、レコード好きとしてお互いにリスペクトしあっていることが美しい。
同じ盤を何枚も買うことや、海外への買い付けはもちろんのこと、それよりも深い個人的な趣向を持った収集癖の話などに触れられるのが本書の醍醐味だ。現在はレコードを買う事自体が高価な趣味になってしまったが、今後も新譜がプレスされ続け、絶えることはないだろう。