紳士のスポーツとして知られるゴルフ。スピード感とはほど遠い競技でありながら、静的な競技として独特の難しさのあるスポーツとしても知られています。ゴルフだからこそ生じる心理や勝負に徹するシビアな世界感を、漫画から学んでみてはいかがでしょうか。
「プレデター」の異名を持つほどのケンカ屋であり、帝倫高校1年生の主人公・優木蒼甫がゴルフ部の谷川コーチに喧嘩を売ったことから、ひとりの青年のゴルフ人生が始まります。暴走族を一人で壊滅させるほどの戦闘力をもち、周りから恐れられる蒼甫ですが、興味をもったことに対しては並外れた集中力を発揮。そして、これまで負けを知らなかった人生を送ってきたため、勝つことに対して異常な執着心を抱いています。
そんな蒼甫がゴルフと出会い、一心に競技に打ち込むことで、ゴルフの難しさや負けることの意味など、人間として重要なことを学んでいきます。技術的な面も去ることながら、青年の人間的な成長からも目がはなせない作品です。
- 著者
- 佐々木 健
- 出版日
- 2009-01-16
本作の特徴は王道とも言える展開にあります。不良としての蒼甫をリアルに描き出しながら、ゴルフとの出会いから次第に人間性を変化させていくというシンプルな物語。しかし、そんなストーリーの中に描かれるあまりにまっすぐな青年の姿に、心を奪われてしまうのです。喧嘩では負け知らずの蒼甫が、初めての試合で最下位になり、人生で初の敗北を喫するシーンには大人になって忘れてしまった大切なもの感じられるはず。
さらにストーリー性を補足するように、ツアープロコーチの谷将貴が監修しているため、ゴルフに精通した人でも十分に楽しめる内容に仕上がっています。そんな青春を思い出させてくれる少年漫画でありながら、玄人にも楽しめる幅の広さが、この作品の魅力と言えるでしょう。
福島の山奥での祖父との生活を楽しむ小学生のガウェイン・七海が、ゴルフとの出会いによって、才能を開花させていく姿を描いた作品です。野球やサッカーなど、どんなスポーツにおいても遠くに飛ばすことに魅力を感じるガウェインは、ある日旅行中の女子プロゴルファー・西野霧亜と出会いを通じ、野球では体感することができない飛距離に魅せられてしまいます。
その後、ランスロットや小泉祐美子といった個性的なライバル。名コーチとの呼び声の高いオルブライトからのスカウトを経て、ゴルフの名門校であるキャメロット学院へ進学することに。厳しい実力主義の環境の中で、ギフトと呼ばれる才能を開花させ、ガウェインだけが使いこなすことができるライジングインパクトという能力を見出します。その後も訪れる数々の試練に、持ち前の人間性とギフトを武器に立ち向かう物語です。
- 著者
- 鈴木 央
- 出版日
- 2007-01-18
『ライジングインパクト』の魅力は個性的なキャラクターが程よく親しみを感じさながらも、誰もが憧れるような才能を発揮する点にあります。主人公のガウェインは、ライジングインパクトというギフトを駆使することで、450ヤードもの距離を飛ばしてしまいます。さらに、ランスロットはシャイニングロードと呼ばれるギフトを備えており、絶対的なパッティング技術をもっています。
そんな非現実的な才能と相対するように、ガウェインの底抜けに明るい性格や福島なまりは、読者をほっとさせ、親しみやすさを醸し出します。ゴルフという勝負の世界を舞台にしていながら、人情にあついキャラクターが多く、真理をついた名シーンも多い本作。憧れを抱かせるさまざまなギフトと魅力的なキャラクターによって、ジャンプ史上唯一の、打ち切り後も同じ設定で再連載という歴史的な快挙を成し遂げた名作でもあります。
屋久島と奄美大島の間に点在する12島の総称であるトカラ列島を舞台に物語は展開していきます。トカラ列島は最も人口が多い島で百数十名、小さな有人島は周囲がわずか4.7キロメートルしかないという秘境ぶり。さらには、幽霊船と呼ばれるフェリーが唯一の渡航手段と、ゴルフのイメージとはかけ離れた環境を紹介するように本作は始まります。
そんな秘境の地・トカラ列島に、日本プロゴルフ協会を追放され、貯金なし、定職なしの元プロゴルファー五十嵐一賀が、新しい職場の面接を目的に訪れます。そんな彼が、ゴルフの天才少女とんぼと出会い、人間としてゴルファーとして、成長していく物語です。
- 著者
- 作・かわさき健、画・古沢優
- 出版日
- 2016-05-28
週刊ゴルフダイジェストで連載され、読者大賞を受賞していることから、玄人目線でも楽しめる漫画と言えるであろう作品が『オーイ! とんぼ』です。プロゴルファーの成田美寿々も本作のファンであり、学べることがあると話しています。さらに、物語の冒頭でとんぼが3番アイアンしかもっていないながらも、状況に応じたさまざまなショットを打ち分けるというシーンが登場します。
素人目線ではありえないと思われる才能ですが、決して不可能ではなく、実践できるスキルであり、ゴルフの本質を捉えていると成田プロのお父さんが断言しています。このように、あえて秘境の地を舞台にし、道具さえも満足に揃えていないとんぼを主人公として描くことで、新たな発想を与えてくれる。そんな魅力がゴルフ経験者の心を掴んで放さない作品です。
24歳とゴルフ界では遅いと言われる年齢ながらプロゴルファーを目指す主人公の沖田圭介が、持ち前の体格と熱心な性格、多くの理解者によって着実に成績を残していく作品です。圭介は家庭の事情から京都大学を中退することとなり、鹿沼カントリーの研修生としてプロを志します。日々練習に打ち込む姿に惚れ込んだ小針春芳や宇賀神正行らによって、圭介の才能は一気に開花することに。
その結果、たった1年という驚異的なスピードでプロテストに合格を果たし、その後も国内にとどまらず、輝かしい戦績を残し続けます。才能や性格だけでなく、良き理解者にも恵まれたことでカリスマ性を発揮する圭介を中心に展開する人間関係や、心理描写を細かく描いた作品です。
- 著者
- 坂田 信弘
- 出版日
1990年から連載を開始し、今もなお根強い人気を誇るゴルフ漫画『風の大地』。綿密に組み立てられた構成とリアルな心理描写で、本当のプロの視点を感じられる点が最大の魅力です。本作では、プロとしては遅いと言われる年齢からプロゴルファーを目指す沖田圭介の姿が細かく描かれていますが、作者である坂田信弘の経験がベースとされています。
実は作者も京都大学を中退し、自衛隊に入隊。その後28歳というかなり遅い年齢でプロゴルファーとなった経緯をもっており、圭介の設定は実体験をベースに描かれていると考えられます。ひとつひとつのシーンがイメージではなく、本当の体験であるため、他の作品にはないリアルさを感じられるのが本作です。
葛藤や苦悩を描いた従来のスポ根漫画にはない、一流の視点からゴルフを楽しめる漫画と言えます。
天性の飛ばし屋でありながら極端に戦略や理論に弱い藤本草太と、芝を読み戦略を講じる能力こそあるものの極端に小心者の太子治。ゴルフ理論は完璧でありながらも、身長150センチで非力と身体的なハンデを背負う谷田部光一の3人が、あるレッスンをきっかけにチームきりたんぽを結成することから物語の幕が上がります。
草太はプレーヤーとして、太子はキャディー、光一がスイングコーチとしてチームを結成し、それぞれの役割を見出すことで、もともと備わっていた才能が開花。お互いに長所を活かし、短所を補い合うことで最初の試合であるチワワンオープンプレーヤーからトップ争いを展開します。
男子ゴルフ界トップに君臨するマイト竿崎やエリートの花咲司などのライバルとの争いや、苦しい資金繰りから生じる借金問題など、数々の試練に遭遇しながら、次第に成長していく3人の姿を爽やかに描いた作品です。
- 著者
- なかいま 強
- 出版日
- 2011-07-13
『黄金のラフ』の最大の魅力は、飛ばし屋としての才能やコース戦略、スイング理論など、能力こそあるものの試合では全く活躍することができなかった3人の出会いにあります。それぞれの長所を活かすことで発揮される才能や、驚異的なスピードで成長する姿からは爽快さすら感じられます。
さらに、敷居の高いイメージのあるゴルフ漫画でありながらも、草太の知性のなさや全く噛み合わない3人の会話の中にある笑いの要素も魅力のひとつです。少し難しい理論的な内容でも、分かりやすく描き出すという作者の気遣いを感じられる作品でもあります。
ゴルフ経験者でも全く経験のない方でも、ゴルフや笑いの要素とともに、思い切り活躍する3人の姿には感動と新たな気づきを見出すことができるはずです。
子どもの頃に憧れる職業のひとつと言えば、プロのスポーツ選手。特に男の子は、必ずサッカー選手や野球選手になることを、一度は夢に見ます。子どもにとって身近なスポーツとは、学校の授業で行い、友達たちと一緒にプレイができる、団体競技が主流。しかし、道具をそろえるのに多額の費用が掛かるスポーツは、人口が少ないこともあってか、よりプロを目指そうという子どもたちが多いように感じられます。
ゴルフは大人向けか子供向けかと言えば、確実に大人向けのスポーツです。コースの状態によってクラブをかえていくことも多いため、たくさんの道具を持っていた方が対応しやすい、という面もあります。道具が全てではありませんが、少なからず影響があるもの。そんなゴルフに見せられてしまった少年の活躍を描いているのが、『DAN DOH!!』です。
- 著者
- 坂田 信弘
- 出版日
主人公の青葉弾道は、通称ダンドー。熊本の小学校に通い、博多弁のようなイントネーションの言葉を話します。好きなスポーツは野球で、ゴルフのことなどまったく考えていませんでした。しかし、プロゴルファー新庄樹靖の試合を見てからゴルフに興味を持ち始め、新庄本人に出会ったことで、ゴルフの道に進むことになります。
スタート時は小学生でしたが、中学生編もあり、読者はダンドーの成長を見守りながら、ゴルフの描写を楽しむことになります。試合のシーンは、風の描写が怪物になるなど、漫画ならではの表現方法を用いられました。エンターテインメント性が高く、臨場感が増しています。
何かに打ち込んでいたはずなのに、別の何かを知って、その道に邁進していくというのは、とにかく勇気のいる行動です。ダンドーの精神は、より年相応の反応とみても良いのでしょう。努力家で、ゴルフに対してとてもまっすぐなダンドー、博多弁がクセになる彼の成長を見守ってください。
どんな人間も、その日の気分が行動に影響を与える事が多々あります。特にスポーツ選手などは、結果に大きな影響を与えてしまうのを、メディアなどで見たことがある人も多いのではないでしょうか。優勝確実と言われた選手にのしかかるプレッシャーを考えると、思うような結果が出ないのも、仕方がない気がしてしまいます。
一流のスポーツ選手ですら、自身の精神をコントロールするのは至難の業です。しかし、誰かの言葉で落ち着きを取り戻すことはあっても、自身の精神の持ちようは、自分で何とかしていかなければなりません。そんな時、役立つのが『ゴルフは気持ち』です。
- 著者
- いけうち 誠一
- 出版日
ゴルフは、基準となる打数があり、どれだけ少ない数でコースを回れるかを競うスポーツです。となると、やはり大切な場面での失敗は許されないもの。特に、練習では上手くできたことが、実際のコースを回るとなると、とたんにできなくなってしまうということももちろんあるでしょう。
そんな時に役立つのが本作。妻の父親が急に倒れた時など、実際にありそうなシチュエーションと、その時にどんなことを考えるべきか、細かく説明されています。様々なシチュエーションが登場するので、自分自身と置き換えた時にも、より参考になるでしょう。どんな心構えでいればよいか、知っているだけでも効果はあるはずです。
技術だけではなく、精神面を鍛えてこそ、真の実力が出せるもの。いつも何となく失敗してしまうという方はもちろんのこと、結果を残したい人など、幅広いプレイヤーの参考になる、指南書的な作品です。
脱サラとは、サラリーマンをやめ、別の職業に転職することを指した言葉です。一般的には起業する人に対して使用される言葉ですが、全ての人が起業し、新しい商売を始めるわけではありません。中には、その道のプロを目指すという、途方もない志を胸に、一歩を踏み出す人もいるのです。
『キンゾーの上がってなンボ』は、脱サラした男がプロゴルファーを目指すという物語。しかし、そこに裏社会の要素が入ることにより、ハードボイルドな雰囲気を醸し出します。劇画タッチではありますが、基本的にはゴルフ漫画です。スポーツものにはあまりない要素が、新鮮に感じられます。
- 著者
- 小池 一夫 (著), 叶 精作 (著)
- 出版日
主人公の前野金蔵は、一部上場の有名会社に勤めるサラリーマンでした。アマチュアゴルフランキング1位を獲得するなど、かなりの腕前。しかし、仕事との両立はいささか難しくゴルフに集中できる環境でプレイするために仕事を辞め、離婚までしてプロゴルファーを目指し始めます。
プロを目指して邁進していた金蔵でしたが、とあるきっかけからヤクザに関わることになり、闇ゴルフのプレイヤーたちからも狙われる存在となってしまいました。闇ゴルフは賭け要素があり、試合に負ければもう二度とゴルフができない体にされてしまいます。超人的な能力と勝負強さを見せる金蔵は、果たして無事にプロになることができるでしょうか。
ヤクザや賭けゴルフといった、裏社会要素がミックスされたのが、本作最大の特徴です。何でもありというせいか、現実に行われている試合よりも、緊張感は高め。見たこともないようプレイが飛び出し、読者を驚かせます。金蔵がイケメンであることもあり、様々な女性とのラブロマンスも展開、ゴルフだけではなく、1冊で何度も美味しい作品です。
各スポーツに様々な専門用語がありますが、ゴルフは特に特有の用語の多いスポーツ。打数を表す言葉に、鳥の名前が使用されているのは、広く知られていることです。『インパクト』のタイトルに使用されているのも、ゴルフ用語のひとつ。ボールが当たる瞬間を意味する言葉です。
ゴルフ人口は多く、特に中年男性がプレイしているイメージが多いでしょう。会社の上司と、接待などでプレイされることも多く、近頃では男女年齢問わず、様々な職業の人が楽しんでいます。本作の主人公も、本職を持ちながら、類まれなるゴルフの才能を開花させた人物。その意外な職業に驚いている間に、作品世界に引き込まれていきます。
- 著者
- 坂田 信弘
- 出版日
鳴海一丸は、元鍛冶師。暗い過去を背負っており、現在は流浪の研ぎ師をして各地を転々、生計を立てていました。ひょんなことから、今まで無縁だったゴルフクラブを握った一丸は、その生まれ持った才能をいかんなく発揮。ボールを真っ二つに割るほどの、驚くべき威力を持ったショットを見せました。
その才能を、間近に見ていた仙道桂の導きもあり、一丸はゴルフの道を進み始めます。元鍛冶師という、今までにない職業であることにまず驚かされるでしょう。鍛冶師として培った技術が、ゴルフに生かされているのをみると、そんな馬鹿なと思いつつ、その豪快なゴルフに魅了されてしまいます。
一丸は、最初は抵抗があったものの、ゴルフの道を少しずつ踏みしめるように進んでいきます。ライバルとの戦いは、技術的なことはもちろんのこと、精神的な駆け引きの描写が見事。手に汗握る展開に加え、恋愛要素など、一丸の人生をより身近に感じることができます。長いゴルフという道のりを踏み出した一丸の活躍、ぜひその目で確かめてください。
人に歴史ありとは言いますが、波風もなく、特に大きな事件もなく生きている人は誰1人として存在しません。誰しも何らかの壁にぶつかり、苦悩しながら日々を生きています。珍しい職業についている人はそれがより顕著に見えるのでしょう。普通とは少し違う立場にいるからこそ、その姿がやけに眩しく見えるのです。
『千里の道も』は、25年もの長期間連載されていたゴルフ漫画。1人の男がプロゴルファーを目指すところから始まり、実際にプロとして活躍していく姿を描いています。漫画となると、主人公がとにかく強い、ほぼ負けないという作品が支持される傾向にありますが、本作では苦悩や挫折を余すことなく描写。プロゴルファーの人生を追っていく形で物語が進んでいきます。
- 著者
- 大原 一歩
- 出版日
坂本遼は18歳、高校卒業後にゴルフ場の研修生を始め、プロゴルファーを目指していました。物語は坂本がプロゴルファーを目指す研修生としての生活をスタートさせるところから始まり、やがてプロになった坂本の活躍や試合などを描いていきます。
坂本の苦悩や成長はもちろん、プレイ中の描写がとても多いのが特徴。内面を丁寧に描写しているので、より坂本のことを応援したくなるでしょう。ただ強いというわけではなく、人間らしく苦悩する姿があるからこそ、1人の人間としての坂本の魅力にハマってしまうのです。
シリーズも多く、追っていくのにはいささか骨が折れますが、海外の試合に出場するなど、活躍の幅はワールドワイド。実際に試合を見に行っているような緊迫感を味わうことができます。まずは1冊手にとって、坂本の生き様を堪能しましょう。
ゴルフ漫画といえども、リアルな心理描写を描いた作品から専門的なスキルを描いたものまで、それぞれの魅力があります。さらに、少し敷居の高いイメージのあるゴルフですが、その面白さを知れば、身近に感じることができそうです。ぜひ、今回紹介した5作品の中から、お気に入りの漫画を見つけてみて下さい。