ハウ・ゼイ・ビケイム・ザ・ビートルズ/誰も知らなかったビートルズ・ヒストリー
1989年12月31日
僅か1年でこんなに顔が変わるのか。そんな風に思ってしまう程、ビートルズの4人の顔の変化は音楽同様激しい。その積み重ねが、“赤盤”“青盤”の愛称で長年親しまれてきたベスト盤のジャケットに集約されている。僅か7年であそこまで“老成”しちゃう程の変化を見せた彼らは、それでもまだ20代だった。被写体としても面白い存在だったそんな4人の写真集は、だからこそ全世界で数えきれない程発売されている。オフィシャルカメラマンも多い。そんな中から、時代の空気も詰めこまれた写真集を、年代順に3回に分けて紹介します。
後ろ向きに演奏するスチュアート・サトクリフ、マイクのみでプレスリー風に歌うジョン、遅れて到着したトミー・ムーア(ドラマー)との演奏風景など、まさに歴史的な写真が満載なのだ。休憩時にビリー・フューリーにサインをねだるジョンや、その後のブリティッシュ・ビート・シーンを盛り上げるジェリー・マースデンの演奏写真も含め、よくぞ残しておいてくれたものだ。上記61年12月17日の写真も計16点。「ラヴ・ミー・ドゥ」でレコード・デビューするまで、というよりもピート・ベストに代わってリンゴ・スターが加わるまでの流れを写真で知ることができるマニア必携の1冊だろう。ハウ・ゼイ・ビケイム・ザ・ビートルズ/誰も知らなかったビートルズ・ヒストリー
1989年12月31日
プロのカメラマンではなかったが、12歳の太っちょポールや、ポールに出会ってまもない10代前半のジョージ・ハリスン(ビートルズ時代と顔が同じ)をはじめ、62年6月11日のBBCラジオ出演時の演奏写真や、同年7月1日にキャヴァーン・クラブで撮影された、ジョンとポールの肩に手をかけるジーン・ヴィンセントの写真、ポールの自宅でジョンと二人でアコースティック・ギターをかき鳴らす様子など、身内の“特権”を生かした、デビュー前のビートルズのあどけない熱気に満ちた写真を数多く残している。写真集としては本書が最適だが、文章ともども楽しみたい方は『素顔のマッカートニー』(82年)や『リメンバー/ビートルズ誕生の軌跡』(96年)をどうぞ。Mike Mac’s White And Blacks
1986年11月03日
序文でジョンは、ユルゲンは「ビートルズの美と精神」をカメラに収めた最初の人物で、その後、彼のようなカメラマンは出てこなかったと記しているが、ジョンがそこまで称えるのは、ユルゲン自身のロックンロールへの愛着の強さを感じていたからだと思う。ビートルズが一切出てこない、ハンブルクでロックンロールに熱狂する若者たちの日常をとらえた本書の後半には、そんなユルゲンの想いが凝縮されている。手元にあるのは、ほんの一部だけデザインの異なる81年の初版本(Google Plex刊)だが、83年の再版本も同じく、雑誌感覚でパラパラとページをめくれるチープさがいい。おなじみイギリスのGenesis Publicationsから97年に出た1750部限定の豪華で高価な写真集『From Hamburg To Hollywood』よりもこっち、である。ROCK’N’ ROLL TIMES
1983年09月21日
そんな中で、まるでシングルB面曲の味わい(褒め言葉)を持つカメラマンがいる。デビュー時(62年9月)の4人を追っかけたピーター・ケイだ。たとえば9月10日にリヴァプールの楽器店でアコースティック・ギター(ギブソン J-160E)を購入するジョンとジョージを収めたり、9月後半には、同僚のレス・チャドウィックと二人でリヴァプールのアルバート・ドックやロイヤル・リヴァービル周辺で撮影を行なっている。ポンコツ車をバックに移る4人を見るたびに、もっといいロケ地はなかったのかと思うが、それもまた当時のリヴァプールの良さであり、無名の4人だからこそ成しえた縁でもある。本書の邦題の「!!」も最高。BEATLES IN LIVERPOOL/日本未公開写真集!!
1988年02月11日
とはいえ、エミリオ・ラーリと聞いても、マニアでさえピンと来る人は少ないかもしれない。ビートルズ初の主演映画『ハード・デイズ・ナイト』の監督リチャード・レスターに自分を売り込み、熱意にほだされたレスターにオープニングのメリルボーン駅での同行を許可され、その時に撮った写真をニュース通信社に売り込み、2作目の映画『ヘルプ!』撮影時にスチール撮影の依頼をレスターの事務所から受ける――。運も味方にビートルズを引き寄せた手腕は、撮影の合間に見せる4人のふとした表情を切り取るセンスの良さに表われている。ドラッグでラリッた様子もとらえた「ありのまま」のビートルズは、映画以上に天真爛漫。
- 著者
- エミリオ・ラーリ
- 出版日
- 2015-09-18
本と音楽
バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。