序文でジョンは、ユルゲンは「ビートルズの美と精神」をカメラに収めた最初の人物で、その後、彼のようなカメラマンは出てこなかったと記しているが、ジョンがそこまで称えるのは、ユルゲン自身のロックンロールへの愛着の強さを感じていたからだと思う。ビートルズが一切出てこない、ハンブルクでロックンロールに熱狂する若者たちの日常をとらえた本書の後半には、そんなユルゲンの想いが凝縮されている。手元にあるのは、ほんの一部だけデザインの異なる81年の初版本(Google Plex刊)だが、83年の再版本も同じく、雑誌感覚でパラパラとページをめくれるチープさがいい。おなじみイギリスのGenesis Publicationsから97年に出た1750部限定の豪華で高価な写真集『From Hamburg To Hollywood』よりもこっち、である。
まるでシングルB面の味わい
ビートルズのデビュー前後のカメラマンとして知名度が高いのは、モップトップ(おかっぱ頭)を考案したと言われるアストリット・キルヒヘアと、初期の日本盤シングルのジャケットに写真が使われたデゾ・ホフマンだろう。でもこの二人、写真集はあるにはあるが、アストリットは高くて手が出ないものが多く、手が出る『Yesterday:The Beatles Once Upon A Time』(2007年)は、64年の映画 『ハード・デイズ・ナイト』撮影時の写真を収めたものだ。デゾはといえば、『デゾ・ホフマン未公開写真集』(76年)も『ウィズ・ザ・ビートルズ/ビートルズ、その青春の日々』(83年)も、申し訳ないけれど、普通のスナップ写真程度の仕上がりなのだ。