時代を先取り、独創的かつ斬新なアイディアで数々の衝撃的な作品を生み出してきた望月峯太郎。思わず笑顔が溢れる作品から、得体の知れないものに対する恐怖を描いた作品まで、おすすめのランキングベスト5をご紹介します。
1964年、神奈川県生まれの漫画家、望月峯太郎。昔から漫画少年だった彼はグラフィックデザインの仕事に就いていたものの、高校時代の友人の漫画が入賞したのをきっかけに自身も漫画家を目指すようになります。
主にヤングマガジンを中心に活躍し、数々の衝撃作を生み出した彼は独特な表現方法や作風で後の漫画家にも大きく影響を与えています。『バタアシ金魚』、『鮫肌男と桃尻女』など、映像化された作品も多く持っている漫画家です。
『東京怪童』の連載途中からペンネームを望月ミネタロウに変更。得体の知れない、理解の及ばない存在に対する恐怖を描いたホラー要素の強い作品で定評がありますが、うってかわって笑顔になれる、心温まるほっこりできる作品も描いています。
第5位は『座敷女』。都市伝説、ストーカーといった要素を織り交ぜ描かれたホラー作品です。
ある真夜中、アパートの隣室の戸をしつこくノックする音に気付いた大学生、森ひろしが自分の部屋の戸をあけて覗いてみると、そこにはロングへアとロングコートの大女が。後日電話を貸してほしいと訪ねてきたサチコと名乗るその大女を玄関にあげてしまった日を境に、ひろしはサチコに付きまとわれるようになっていきます。
- 著者
- 望月 峯太郎
- 出版日
- 1993-07-02
ひろしに付きまとうようになったサチコの異様な行動が徐々にエスカレートしていく様は、もう恐怖せずにはいられません。口裂け女をモデルにしたとうかがえる不気味なビジュアルのサチコが、やがてはひろしだけでなく、彼の周りの人まで巻き込んでいくように……。幽霊や妖怪的ホラーではなく、心理的に恐怖を感じる内容になっています。
この作品が執筆された1990年代前半は、まだストーカーという言葉が世間に浸透していませんでした。そんな時代にストーカーというテーマと恐怖を取り入れた作品を描いた望月峯太郎の常に1歩先を行く新しさと独創的なセンスは高い評価を得ています。
人間にとって未知の存在、得体の知れないものがどれほどの恐怖を与えるのか、目の当たりにできる作品です。サチコの正体は?ぜひ、考察してみてください。
第4位は『万祝』。亡き母の強くなってという言葉を胸に、メンタルではなく肉体的強さを求め続ける女子高生のフナコは、父親と2人の平凡な暮らしにうんざりしていました。しかし16歳の誕生日、漁師だった亡き祖父が残した宝の地図を発見!地図を奪いに来た海賊に連れ去られ、彼女は宝探しの冒険に繰り出すことになります。
- 著者
- 望月 峯太郎
- 出版日
- 2003-08-05
海賊、宝島、冒険、まさにロマン!といった要素が満載の『万祝』。爽やかなフナコや楽観主義的な冒険活劇は、とてもスカッと読める魅力のある作品です。漫画にとってリアリティを出すことも大変魅力的ですが、漫画だからこそ描くことのできる現実ばなれした出来事や世界というのも、やはり大きな魅力となりえるでしょう。
現代海洋冒険ロマン譚!といった表現がしっくりくる、ドキドキ、ワクワクがいっぱい詰まったフナコの宝探しの行方やいかに!現実を忘れて、フナコたちと一緒に広い海に繰り出した気分で冒険の毎日を楽しんでみてください。
第3位は『ドラゴンヘッド』。2003年には実写映画化された、望月峯太郎の人気作です。
主人公、青木輝(テル)の乗った修学旅行の帰りの新幹線は、突如発生した大地震によりトンネルで脱線、そして出入り口は崩壊。テルを含む3人の生存者は、絶望的な状況を生き抜くための術を懸命に模索します。大地震により荒廃した世界で、極限状態に置かれた少年たちの恐怖、苦悩、狂気を描いた究極のパニックホラーです。
- 著者
- 望月 峯太郎
- 出版日
- 1995-03-01
陰鬱で、真っ暗で、ページをめくるのが怖くなってくるほどに暗い世界が描かれた『ドラゴンヘッド』。荒れた新幹線内をあえて傾けて描くことで読者の平衡感覚を奪い、建物やコンクリートの崩れ具合等を細かく書き込み、1つずつは小さなことですが、こうしたこだわりが荒廃した世界をリアルでより一層恐怖心を掻き立てられるものたらしめています。
生き残った3人のうちの1人、いじめられっ子だったノブオはメンタルの弱さも影響し、自分は神なのだと自身にも謎のボディペイントを施し、どんどん狂っていくのですが、その狂気の様はもちろん、ボディペイントは作品の象徴ともとれるほどの衝撃の不気味さ。一度見たら忘れられない印象を植え付けるビジュアルです。
謎の災害、竜頭と呼ばれる恐怖を感じない人間たち、核兵器の存在、謎や解釈は人によって変わってくる、はっきりとした答えのでない結末を迎える作品のため、読者自身が考え、答えを考察することができます。そういった答えのない謎の残るものが苦手な方もいらっしゃるかもしれませんが、ぜひ作者の伝えたかったことを考えながら読むことを楽しんでほしい作品です。
第2位は『ちいさこべえ』。山本周五郎の原作を、望月ミネタロウが時代背景を平成にコミカライズした作品です。
家事で両親を失ってしまった26歳の大工の若棟梁、茂次は、父の残したいつの時代も大切なのは人情と意地だという言葉を胸に、家業を再興するため奮闘。そんな彼は同じ境遇の火事によって孤児となってしまった子どもたちを放っておけず、自ら引き取り育てることになっていきます。
- 著者
- ["望月 ミネタロウ", "山本 周五郎"]
- 出版日
- 2013-03-29
山本周五郎の書いた原作を、斬新にリメイクした『ちいさこべえ』。望月ミネタロウのデザインの仕事をしていた経験が発揮されているオシャレなコマ割りや絵、ファッション、そして良質な笑いが溢れる、楽しい先品となっています。
自分の居場所が見つからず放浪生活を送っていた茂次は、長髪に長い髭を蓄え、どこか内気そうに見えて実は頑固でワイルドなしゃべり方がん印象的なギャップの持ち主。そんな彼がとまどいながらも自分の力で家業の再興に奮闘する姿がとてもかっこいい。
孤児を引き取りながら、お手伝いとして雇われた幼馴染の女の子、りつも交えての日々は、読んでいるうち心が温かくなってきます。不器用でも必至に生きる登場人物たちに、笑いと元気と優しさをもらってください。
放浪しながら自分の居場所をさがしていた茂次は、自分の居場所を見つけることができるのか。今では少なくなってしまった下町の人情物語、4巻で完結することを惜しむ声がでるほどの人気です。ぜひ、読んでみてください。
第1位は『東京怪童』。脳に問題を抱えた青少年たちの治療やケアをするためのとある病院を舞台に、思ったことをなんでも口にしてしまう17歳のハシを主人公として、苦悩しながらも必死に生きようとする彼らの日々を描いています。
- 著者
- 望月 ミネタロウ
- 出版日
- 2009-06-23
人は自分の理解の及ばないものを恐怖し、嫌悪しがちです。そしてマイノリティと呼ばれる人たちにとって生きづらい世界を作り出しています。しかしそんな生きづらい世界で、自分を受け止め変わりたいともがき、懸命に生き抜く青少年たちの人生に触れられる作品です。
他人に理解されず、うまく生きられない彼らを見ていると、人との関わりについて考えさせられます。少し人と違う景色が見えるだけ、価値観が違うだけ、素直になりすぎるだけ、そんな彼らの世界を疾患という一言で表現する違和感を覚えることでしょう。人の精神世界の神秘性や多様性といった点にもフォーカスしてみてください。
なにが正常でなにが異常なのか、どこからが疾患でどこまでが個性なのか、いろんな価値観や概念があやふやになってくる感覚に襲われる『東京怪童』。望月ミネタロウらしい、読者に深く考えさせてくれる作品ですので、ぜひ一度手にとってみてください。
望月峯太郎のおすすめ作品、いかがでしたでしょうか?ランキングを参考にぜひ楽しんでみてください!