「ひとに薦められた本」を僕は基本的に読みますし、自分で選ぶのとは違う楽しさがあります。自分自身で選んだ本はどうしても、「自分の価値観や感性が好みそうなもの」という潜在フィルターがかかってしまいます。
その点、「誰かのおすすめの本」にはそれがありません。そして、選んだひとの思想や考え方、美意識、願望なんかが色濃く出ます。僕は自分以外の誰かの思想に触れたり、新しいものを知ることが大好きなので、とてもありがたく読ませて頂いてます。
今日は自分の感性だけじゃ選ばなかっただろう、頂いた3冊をご紹介します。
「想像の余地」を残しておくことの大事さ
大ヒット作『すべてがFになる』の森先生の著作です。僕も森先生の小説は何冊か読んだことがあったのですが、エッセイや随筆のようなものも書かれていることは知りませんでした。
ジョン・レノンや、フィンセント・ファン・ゴッホを始め、世の中には様々な天才がいますが、森先生もその一人と思います。そんな森先生の偏見無し、真っ平らな意見を抽出したのがこの一冊です。とてつもない視点の鋭さとユニークさの100連発という印象でした。読んでいて、自分の表現者として目の曇りが取れるような本でした。
本書の引用ですが〈もう少し雑な仕事をしてほしい。あの粗さが受け手によっては想像の余地なり、自分に適用するときに必要な融通となる〉という言葉は身に沁みました。
詞も書きすぎると、歌も歌いすぎると、逆に伝わらないときがあります。メンバーへの話し方やスタッフへの伝え方も説明が「過ぎる」と逆にマイナスになるときがあります。
「想像の余地」を残すことはコミュニケーションにおいても、創作においても大切なのだと思います。
いくつものヒントが詰まった古典
覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰 (Sanctuary books)
2013年05月25日
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池田貴将
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サンクチュアリ出版
「不安と生きるか、理想に死ぬか」の言葉を残した幕末の思想家、吉田松陰の超訳本です。簡単に言うと“幕末の凄い人の教えを死ぬ程分かりやすくした本”になります。現代を生きる僕たちにも、その言葉はいくつものヒントになり得ます。
吉田松陰は「なにが得られるか」を優先しませんでした。「自分たちがやる意味」を優先し、念頭においた人生を送りました。そして30の若さで安政の大獄に散りましたが、彼がいなければ明治という時代は来なかったでしょう。
自分の安全を守るよりも、志をおいていくことに焦点を当てているひとの生き様はきっとどこかの誰かの胸を打ちます。それまで、あまり詳しく知らない偉人の話の本を頂いたことで、僕自身も古典に目を向けるようになりました。
「松蔭のように」とはなかなか言えませんが、何かを遺すために音楽を作る人生を選んだ僕には突き刺さる一冊でした。