捉え所のない怪物たち
少なくとも、ただ本を読むという行為は、絶対に安全な遊びなはずだ。それなのにどうしてこんなに、ぞっとするのだろう。
この高原英理『怪談生活』は、少し変わった怪談集だ。
怪談集というより、随筆集といったほうが正確なのだが。著者が見聞きした怪奇な物語、江戸時代の実話とされる怪談奇談。因果応報の物語とは違う、不思議で、捉え所のない、そんな「怪談」たちが、集められている。
冒頭に、著者の小学生時代のエピソードがある。
教室のカーテンの裏などを指して、「おるよ(居るよ、の意)」というのが流行ったというのだ。何かがいるわけではないのは、皆わかっている。わかっていても、何だか厭な気がする。何がいるかは言わない。ただ「おるよ」と言う。
この厭な気持ちが、つい求めてしまう不快さの本質だろう。
ホラー+爽やかな青春
こちらはフィクション。
新本格、ミステリー、ホラー……ファン層の幅広さもその魅力を証明している著者の、未収録短編作品集である。テーマや掲載誌で収録したわけではないにも関わらず、このタイトルに相応しい、不思議で、捉え所のない、人間でない、何かが介在する物語たちが集まっている。
ぜひ、巻末の著作リストで、他の気になった作品も読んでみてほしい。
その中でも、今春、新生活を始めるにあたって、おすすめのホラー小説がこちら。
主人公は中学生。転校先のクラスでは、いないものにされていた少女がいた。代々そのクラスには、「何か」があって……というあらすじだが、読むのが止まらなくなること請け合いだ。
ホラーは得意ではない、もう少し怖くないものを、という方には、綾辻行人『Anotherエピソード S』をおすすめしたい。どちらも爽やかな青春「も」てんこ盛りの作品だ。