人間の残酷さや闇が垣間見えるいじめ。ドラマや映画でもよく取り上げられるテーマですが、漫画では絵と文字の表現で映像よりさらにリアルに感じ取れる場合もあるものです。そんないじめについて描かれた漫画をご紹介します。
父親の仕事の都合で東京から田舎へ引っ越し、廃校間近の中学校・大津馬中学校に転校した野咲春花はクラスメイトから悲惨ないじめを受ける日々を送っていました。
家族に黙ってやり過ごそうとしていた春花でしたが、意を決して両親に打ち明けたことがきっかけでいじめはさらにエスカレート。異常なまでに度を越して行われるクラスメイトによるいじめは、春花の家族にまでその魔の手が及び、なんと家に火をつけられ、家族を殺されてしまうのです。
クラスメイトによって大切な家族の命を奪われた春花は、狂気的な復讐劇を繰り広げていくことに……。
- 著者
- 押切 蓮介
- 出版日
春花が受けたいじめや家族への仕打ちも壮絶ですが、その後の春花の復讐はさらに衝撃的。いじめを扱った漫画というと被害者と加害者が和解してハッピーエンド、というのがひとつの定番ですが、『ミスミソウ』はそこからは完全にかけ離れたサイコホラー漫画です。
目を引くのは登場人物たちの鬼気迫る表情と心理描写。春花とそのクラスメイトたちの絶望、中学生という未熟さの残る彼女達の不安定さ、狂った怒りなどが痛いほど伝わってきます。サスペンスやホラーが好きな方へおすすめの漫画です。
『ミスミソウ』については<『ミスミソウ』の見所を最終回までネタバレ紹介!傑作ホラー漫画の鬱展開…>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
主人公は15歳にしてプロ棋士となった主人公・桐山零。幼くして両親を亡くしたことやその後の引き取り先でできた義理の姉との軋轢で心に深い傷を負っていた零は、将棋の面でも成績が伸び悩んでいる状況でした。しかしそんなある日、酔いつぶれていたところを介抱してくれた女性・川本あかりとその妹たちに出会い……?
- 著者
- 羽海野 チカ
- 出版日
- 2008-02-22
川本家の人々との出会い人と触れ合うことの暖かさを知った零は、様々な人と関わりを持つようになり人として、そして棋士としても大きく成長していくようになります。そんな中川村家の次女・ひなたがいじめられていた同級生をかばったことで標的にされ、ひなた自身もいじめられていることを知ります。それを知った零はどうするのか?いままで孤独で自分のことで精いっぱいだった零の決断には驚かされることでしょう。
いじめの描写については作中では一部だけの登場ですが、このエピソードは作者である羽海野チカの姪がいじめられていた同級生をかばったという実話を元に描かれています。ある場面であかりが発する「間違ってない」というセリフには、作者の特別な思いが込められているのです。
すえのぶけいこ作で講談社から刊行されている漫画です。すえのぶけいこといえばドラマ化されたいじめ漫画『ライフ』で有名ですが、彼女の最初の単行本作品がこの『ビタミン』です。
主人公はごく普通の中学生・沙和子。中学三年生の秋を迎えようとし受験に悩む沙和子でしたが、彼氏の光太は成績優秀でみんなの憧れの存在。光太に勉強を教わりながら楽しく学校生活を送る沙和子でしたが、光太には変態で残酷な一面が存在し……?
ビタミン
2001年11月09日
思わず目を背けたくなる酷さのいじめもありますが、それによってよりリアルさが実感できます。物語の1話目にして彼氏に裏切られるという衝撃、昨日まで仲良くしていた友達からとは想像できないようなひどいいじめ。その結果沙和子は家族までとも険悪な関係に陥ってしまいます。
「いじめの実態を知る」というのもひとつのテーマですが、『ビタミン』で思い知らされるのは「一番大切なものは何か」ということ。いじめを通して起こる人間ドラマが魅力の漫画です。
第一志望の高校受験に失敗し、母・祖母と共に生まれ育った仙台へと引っ越してきた主人公・村咲みどりは母親の母校である聖エトワール女学館へと入学します。その後、みどりは偶然の出来事から幼馴染の氏原あかりが同じ学校に通っていることを知り喜びますが、あかりは中学生の頃からみどりのクラスメイト・伊集院エレナとその友人達にいじめられていたのでした。
トモダチごっこ
2011年07月13日
「失敗したあの頃に戻ってやり直せたら……」というのは誰もが一度は思うことなのではないでしょうか。いじめがテーマの漫画において非常に珍しい、タイムスリップという展開が斬新な作品です。
今作のテーマは「人生のやりなおし」。タイムスリップしたあかりはあかりのいじめに関して別の選択肢を選び、自分がいじめられる運命を回避することにしました。けれどその後の展開は最初の運命よりも悲惨になり、彼女を悩ませるようになります。
いじめと友達がテーマの漫画にタイムスリップというファンタジーが加わった、不思議なストーリーが楽しめる作品です。
「人と人が互いに気持ちを伝えることの難しさ」という大きなテーマを元に描かれた本作は雑誌掲載時に大きな反響と批判を呼び、大変話題となりました。その人気の高さから2016年にアニメ映画化もなされた、聴覚障害があることからいじめの被害者となっている少女・硝子を率先していじめていた将也が主人公の漫画です。
- 著者
- 大今 良時
- 出版日
- 2013-11-15
いじめの被害者と加害者は分かり合うことはできない……そんな大人の先入観を吹き飛ばすこの漫画は、いじめを受けても優しい心を忘れない硝子によって変化していく将也の心理描写が一番の見どころです。
硝子への贖罪を誓う将也ですが、硝子は聴覚障碍者のため言葉では謝ることすらできない。硝子に謝りたい、感謝の思いを伝えたいという思いから、必死で手話を学んでいくことになります。「聴覚障碍者へのいじめ」という内容の際どさから批判も少なからずあった今作ですが、一度読めばそれよりももっと大切な、人間の大きなテーマに気付かされることでしょう。
よく男子と勘違いされる野球が大好きな女の子、中谷遥。父親の都合で転校した小学校は、男女の仲が異様に悪くギスギスとしたクラスでした。
しかし転校先でも野球を続けたい遥は、少年野球チーム「リトルキャッツ」に入ります。そして、エース投手で同じ団地に住んでいる、田辺渡と大衝突。非常に険悪なムードになってしまうのです。
しかしそんな時、渡の兄で甲子園出場経験もある高校生の健と出会います。怪我が理由で野球をやめてしまい、一時期荒んでいた健でしたが、遥との交流の中で徐々に元の優しい性格に戻っていきます。
- 著者
- 藤村 真理
- 出版日
- 2008-04-25
少女漫画ではこれまた珍しい野球女子を主人公にした作品ですが、話のメインになるのは他の少女漫画と同じく、人の気持ちの揺れ動くさま。野球を知らない人でも面白く読むことができるでしょう。
遥は渡に思いを寄せていましたが、そこに幼馴染の勇馬、「リトルキャッツ」キャプテンの一寛など、さまざまな登場人物の思いが交錯し、小学生の恋模様は複雑になっていきます。
なんてことはないでき事をきっかけにいじめられる渡や、女子だからという理由でプロ野球選手になる夢を叶えることができないと嘆き悲しむ遥など、小学生ゆえの陰湿な残酷さや性差といった重たい部分もきちんと描いているのが本作の魅力の1つです。
2017年現在は、2011年の掲載を最後に連載を休止してしまっています。続きに思いを馳せながら読んでみてはいかがでしょうか。
壮絶なサイコホラーから感動必至の作品まで、いじめを扱ったおすすめ漫画5選をご紹介しました。いずれも心に刺さる作品ばかりのため、ぜひ一度読んでいただきたいものばかりです。