線の細いキャラクターよりも、ガッチリした体格のオヤジやガテン系が多いことで有名な内田カヲルです。そんな内田作品で、特におすすめしたいものをランキングでご紹介いたします。
内田カヲルは大分県在住のBLコミック作家です。初コミックは1996年発売の『たかをくくろうか』。デビュー当時から受け攻め関係なく、むっちりとした筋肉を描いており、体毛や割れた腹筋など男くさいキャラクターが多いことで有名。2007年に「内田かおる」から、「内田カヲル」に改名しています。
バランスのとり方が絶妙で、コメディや微笑ましいシーンがあると思うと、はっとさせられるほど現実的な描写があるなど、とにかく読み応えがあります。また、思い切りとノリの良い作品も多く、コメディタッチで楽しく読めるものがあるのも特徴です。
内田カヲル作品が初めての方におすすめしたい作品です。彼女の作品傾向がわかる上、読んでいくにつれ、不器用で純粋なゴツイ男が可愛く、愛おしいと思えてしまう不思議な魅力があります。
- 著者
- 内田 カヲル
- 出版日
- 2008-10-16
生真面目で無骨なスタントマン半沢は、派手さはないが実直な仕事ぶりで、後輩からも信頼されています。スタントの仕事で参加した映画の撮影で、年下の人気俳優・小町と出会うのですが、初対面からピリっとした雰囲気です。ですが、撮影が進むにつれて、相手の実力や仕事の姿勢を知り、徐々にお互いを認め合うようになります。半沢を気に入った小町に懐かれ、ある日二人で飲みに行くのですが、酔った半沢を見た小町は、我慢しきれず暴走してしまうのです。
恋愛の王道のような展開で恋が始まります。小町の半沢への印象は、感じの悪い奴。けれど、いやな奴だと思っていた相手に褒められ認められたことで、相手の意外な一面を発見し、小町は恋に落ちてしまいます。
外向的と内向的、性格すらも対照的の二人。少々の誤解はありつつも、二人はゆっくりと愛を育んでいきます。特に小町の我儘が毎回毎回とても面倒くさいのですが、半沢の父性を思わせるような懐の深さで、なんだかんだと小町を受け入れる姿は胸を打たれます。
ドジで忍術も体術もあまり得意ではないダメ忍者と、次期頭領と名高いエリート忍者・若様のお話です。若様の行動が突拍子もない上に、常識の範疇をいつも超えており、何もかもがぶっ飛んでいます。コメディ要素が強いので、気兼ねなく楽しく読める作品です。
- 著者
- 内田 カヲル
- 出版日
- 2014-01-27
若様の御側付きだった下忍の太助は、里のエリートである若様のことを慕っていました。しかし、ある事件を機に御側付きの任を解かれ、一般人に交じり生活をする「草」の任務をあてがわれます。狭いアパートで独り暮らしを始めるのですが、アルバイトから帰ると、なぜかいつも若様が部屋で太助を待ち構えているのです。その頻度はほぼ毎日。甲斐甲斐しく太助の世話を焼く姿は、まるで押し掛け女房のよう。若様のことを諦めようとしていた太助は、複雑な思いでいっぱいです。なんとか若様を説得させようとしますが、なかなか上手くはいきません。
「お背中お流しするぞ?」
「結構です」
「くの一の常套手段が何故 効かぬ?」(『若様隠密帖』から引用)
忍びの世界しか知らなかったために、世間からズレまくっている若様が可愛いです。愛する人のため家事も率先してやるのですが、失敗ばかりで上手くいきません。それを何だかんだ優しく見守る太助の、若様の好意をちゃんと受け止めている姿にほっこりします。
また、脇役忍者たちやり取りや若様のコロコロ変わる衣装にもご注目です!
この漫画には、内田カヲル特有のゴツイ男はあまり登場せず、人の良さそうなサラリーマンと見た目も性格も可愛らしい中学生の心温まる恋愛ストーリーが優しいタッチで描かれています。
- 著者
- 内田 カヲル
- 出版日
- 2016-10-27
サラリーマンの正三は、電車の中で困っていた中学生・康平を助けます。その日を境に、正三は康平と電車の中でよく会うようになり、徐々に二人は仲良くなっていきます。ある日、康平に好きだと告白されますが、傷つけたくないという気持ちが勝った正三は、告白を受け入れ、二人はお付き合いを始めるのです。
初めは見守るような気持ちで接していた正三ですが、健気でまっすぐな康平を恋愛感情で好きなっていきます。大人の常識と本能との狭間で揺れますが、理性でしっかりと自分を押しとどめ、康平に合わせた付き合い方をする正三の姿勢が、とにかく素晴らしいです。康平への愛情の深さが分かります。
表題作以外の短編も、過激なシーンはほぼ無く、一線を越えることもないとてもピュアな話です。何より出てくる少年たちが純粋で可愛く、大変癒されます。そんな彼らを見守る大人の視線も優しさで溢れており、最後まで暖かい気持ちでいられる作品ばかりです。
両親のいない4兄弟がお互いを支え合いながら、恋に仕事に勉強にと頑張る日常を描いた作品です。周りの人たちの兄弟への愛情が優しく光るお話です。
- 著者
- 内田 かおる
- 出版日
- 2005-12-10
赤城家は、責任感が誰よりも強い長男の東吾を筆頭に、勉強はできるが気弱な次男・西也と、明るく元気な高校生・南樹、そして冷静沈着でクールな中学生・北斗の4人で、兄の友人・春太郎の手を借りながらもたくましく生活しています。そんな兄弟の末っ子・北斗が一目ぼれしたのは、長男の同僚・秋吉さん。年の差なんて関係ないと直球で秋吉さんを口説きだします。
4兄弟の恋愛模様を描いた作品です。特に話のメインは、クールな末っ子の北斗です。普段は大人びていますが、自分のことを好きなってもらおうと一生懸命な姿には胸を打たれます。ですが二人の恋がきっかけで、今まで上手くやってきた兄弟の間に摩擦が生まれ、北斗は家族と好きな人の間で悩み苦しみます。中学生というまだ成長段階である未熟な彼が、自分自身で決断する姿、そして家族の在り方とは何かをじっくり描いた作品です。
後輩の才能に惚れこみ自分の夢を託した男と、その男に惚れている後輩の物語です。『そして続きがあるのなら』はシリーズになっており、続編として『帰らなくてもいいのだけれど』と『そしてすべてが動き出す』が発売され、完結しています。
昔、漫画家を目指していた坂口は、今は麻雀雑誌でやる気のない編集者として働いています。編集よりもスロット三昧だと陰口を叩かれる日々。欝々な日々を過ごしていましたが、偶然立ち寄ったコンビニで後輩の藤代と再会をします。その藤代こそが、自分が夢を諦めるきっかけとなった男でした。高校時代、坂口は彼の漫画を読み、自分には才能がないと思い知り夢を諦めたのです。ですが、その藤代は漫画を今は描いていないと言います。それを知った坂口は、居ても立っても居られません。
- 著者
- 内田 カヲル
- 出版日
- 2009-11-27
「そんな事何の関係があんだ!?」
「才能のカタマリのくせに!」(『そして続きがあるのなら』から引用)
藤代にもう一度漫画を描かせたい一心で、執念深く毎日通いつめる坂口。そして、強引に描かせた麻雀漫画が面白いと評判になり、藤代はプロ漫画家としてデビューします。
藤代に最高の漫画を描かせるため、色々と面倒を見る坂口は、彼の才能に完全に惚れ込んでいます。そのためなら、自分が犠牲になっても構わないほどの入れ込みようです。そして、そんな坂口に高校時代から恋していた藤代は、彼を喜ばせたい一心で漫画を描き続けます。それ故に、初めは円滑だった二人ですが、微量なボタンの掛け違いが生まれます。
二人の愛情の間には、いつも「才能」があり、それが時に障害となって二人を苦しめるのです。徐々に意思の疎通が上手くできなくなり、お互いを思い合っているのに、相手には伝わらない、そんなじれったい描写が描かれています。切っては離せない「才能」との付き合い方を、二人で折り合いをつけながら模索していく姿に、そして障害を乗り越えるほど絆が強める彼らに心打たれること間違いなしの作品です。
内田カヲル作品は、がっちりした男らしい絵柄でも有名ではありますが、実は胸を打つ心温まる素敵なお話も多いです。愛情溢れる作品ばかりなので、読んだ後はほっとこりと優しい気持ちになれるのも特徴です。また、所々でちょっと笑える脇役たちの可愛い活躍も見物ですよ。ぜひ一度、お試しください。