3位:児童虐待 子どもたちの光と闇
児童養護施設・光学園の諸星園長(通称 園長アニキ)のもとには様々な問題を抱えた子どもたちが集まってきます。家庭で傷ついた子どもたちに向き合う園長アニキたちの奮闘記です。
- 著者
- 曽根 富美子
- 出版日
- 2010-08-10
第1話「少女が盗む理由」をここではご紹介。光学園に小学校四年生の野田ちえみがやってきます。母親に放置され三歳から様々な施設を転々としてきたちえみ。同じく光学園に暮らす同級生のジンコから見ても大人びた彼女がやってきてから、光学園にあらたな問題が起こり始めます。
一見明るい問題児のジンコも性的虐待、母親の育児放棄に合っています。彼女は弟のジンタを守って一生懸命に生きている……。大人たちに傷つけられた子どもたちが集まる光学園で、園長アニキは彼らの抱える闇に向かい合い、一緒に光を探しつづけます。作者である社会派漫画家・曽根富美子の入念な取材に基づく意欲作です。
2位:自閉症児の成長と葛藤
ベネッセ発行の『たまひよコミック SPECIAL』に掲載された作品です。実際に自閉症の当事者に取材したうえでの、自閉症児を育てる親の苦労、そして子どもが直面するいじめ問題を当事者の視点から描いています。
- 著者
- 曽根 富美子
- 出版日
生まれたときはただ手のかからない子どもだと思われていた愛里。自閉症への社会的認知が進んでいなかったため、高齢出産し懸命に子育てする母親は娘が「自分の内なる世界に広がる精神構造と現実社会とのギャップに恐怖し 激しい葛藤を繰り返していたこと」など知る由もなく悩み続けます。
やがて愛里が成長するにつれ、母親は彼女の感情表現とのすれ違いに苦しむことになります。愛里のお気に入りの「わたしの世界」が外部から侵害されてしまうことへの不快感から周囲との折り合いをつけられない愛里を、母は「全部ぶつけなさい」と抱きしめるのでした。
自閉症との診断を受けた後も外の社会との軋轢は消えず、愛里はいじめの対象になります。結果、高校も中退し引きこもることになりますが、いじめが社会問題化し、自閉症の研究も進む中で自らの意見を発信することによって社会と再び出会うことを選ぶのでした。自閉症児本人の、そして親の抱えるもどかしさや苦しさに正面から向き合った作品です。
1位:室蘭遊郭に生きた女たちの年代記
曽根富美子の出身地である北海道・室蘭市の遊郭を舞台にした作品。第1部では4人の娘たちが、そして第2部ではそのうちの一人の梅の娘・道生の半生が描かれています。1992年に日本漫画家協会賞を受賞、2010年代に電子書籍化されて再び話題を呼んだ大作です。
- 著者
- 曾根 富美子
- 出版日
昭和初期に青森の貧しい農村の4人の娘たち(松恵、梅、武子、道子)は鉄鋼の街、室蘭の葛西遊郭に売られます。道中、女衒の下田は地球岬を娘たちに見せ、「親である断崖」という意味だと教えます。その夜、客をとらされた松恵は自死し、娘たちの運命は時代の渦の中に投げ込まれるのでした。
葛西一の売れっ妓・夕湖となった梅、芸妓を目指して修行する武子、障害を抱えているために女郎になれず下働きのままの道子。夕湖は社会主義に傾倒する青年・中島聡一と出会い、自らのおかれた境遇と向き合うことになります。
足抜けに失敗し、地球岬で道子も命を落とし、梅は廓の隠し部屋へと連れ戻されるのですが「お前が今の時代そのものなのだ!」という中島の言葉は梅の奥深くに残ります。梅は日鉄社員の大河内に見受けされてもなお幸せとは程遠く、梅は懸命に時代を生き抜こうとしますが……。特に厳しく時にやさしい地球岬に見守られながら強かに生き抜く女たちの姿を描き出す人間賛歌です!