どのページも、どのコマも、こだわり抜かれた全く無駄のない美しい絵で漫画を描く上條淳士の、その画力に圧倒されること間違いなしの4作品をご紹介します。ぜひ、キャラクターの心情も物語も、絵で多くを語る彼の魅力を感じてください。
1963年に週刊少年サンデー増刊号にて、『モッブ★ハンター』でデビューした上條淳士。凄まじい画力の高さで定評のある漫画家です。背景にもこだわり、キャラクターの心情を背景だけで表現してしまう等、それまでの漫画には類を見ない表現法を確立し、用いています。背景の白地さえも上條淳士にとっては絵の一部であり、無駄な線を描かず、透明感とメリハリのあるスタイリッシュな陰影表現で、プロの作家にも大きな影響を与えたのです。
1985年から1987年まで連載していたインディーズバンドのボーカルを主人公とした『YO-y』が人気を博し、OVA化される出世作となりました。ペンネームは共作しているYokoとの統一ペンネームですが、一部作品では上條淳士&Yokoで発表されているものもあります。
初期はホワイトで原稿を汚すことが嫌で、ペン入れの際のミスは全て描き直していたそう。類まれなるセンスと画力、そしてこだわりから、広告やアーティストのアルバムジャケットも手掛け、イラストレーターとしても高い評価を得ています。
流星学園高校2年生の柴連司は、上級生も一目置くケンカ屋。その強さゆえに自分と同格以上の相手に出会えず、ケンカをしても充実感が得られなくなっていました。しかしある晩、通っているジムの帰りに高速道路のガード下で、能面をかぶった謎の男に強烈な蹴りをくらい、柴は失神。辻切りと呼ばれる、対戦相手をすべて一撃の蹴りで倒していくその男との再戦を誓った柴の本能が覚醒していきます。
- 著者
- 上條 淳士
- 出版日
ケンカなんて強くても意味がないのだと充実感を得られずにいた柴ですが、自分を美しい蹴り一撃だけで失神させた能面の男、好敵手を見つけたことで更に強くなっていきます。そんな主人公の柴連司を含め、上條淳士の描くキャラクターはクールでかっこいい。その高校生とは思えない大人っぽさにコミカルなセリフも交えながら、多くのファンを魅了してきました。
そして全体を通してテーマは格闘、ケンカ。本来あまりキレイなイメージではないケンカも、この作品ではなぜか美しく、かっこいいのです。上條淳士が描くと、こうまでに戦いが美しくなってしまうのかと思わず驚嘆すること必至。スタイリッシュでクールな、ケンカ屋柴連司の物語、ぜひ読んでみてください。
都市の過疎化が進み3年生6人しか在籍していない廃校寸前の中学校に転校してきた蜂谷詠兎。それは半年前渋谷で不定期開催される闇賭博13ナイト(サーティーンナイト)に出場して謎の事故死を遂げた陸真人(くがまさと)の仇を討つためでした。渋谷区在住で、観客から実力を認められたものだけが出場できる13ナイトに、最後の卒業生8人が挑みます。
- 著者
- 上條 淳士
- 出版日
この作品の主人公は蜂谷詠兎を中心とした8人の中学生。中学生と言えば現実的に見ればまだまだ幼さの残る子どもですが、そんな彼らが闇賭博に参加して仲間の仇をとるというストーリーを違和感なく描いてしまう上條淳士の表現力はさすがと言わざるを得ません。
また、この作品もクールな印象を与える描写が多々でてきます。1コマ1コマにこだわり、丁寧で美しく、余分なものは1つもない、全ての絵に意味があるという印象です。白と黒でこれだけの表現ができるものかと驚いてしまう、そんな芸術的雰囲気を感じさせます。まさにスタイリッシュ。
全4巻のコンパクトさで、上條淳士の魅力を感じられる『8』。ぜひ一度手にとってみてはいかがでしょう。
高校生にしてすでに異彩を放つパンク・ロックバンドのボーカル、トーイこと藤井冬威。友人と共にビッグスター哀川陽司のライブを乗っ取り、そのライブを見ていた哀川と敏腕マネージャーの目に留まります。そして後に芸能界デビュー。しかし音楽性を否定されてしまい、その話題性とルックスのみに注目が集まり、トーイはマスコミから道化のように扱われていきます。
- 著者
- 上條 淳士
- 出版日
- 2015-12-21
音を読ませる。そんな印象を与える作品『To-y』。音の出ない漫画で音楽を描くという矛盾を、従来の音楽を題材にした作品は歌詞や楽器の擬音で表現してきました。しかし上條淳士は文字を使うことなく、キャラクターの表情、動き、背景、そういった要素で音楽を表現したのです。上條淳士の表現力の高さに思わず驚嘆することでしょう。
そして彼の手によって生み出された美しいキャラクター達は連載当時のファンの憧れとなり、時を経てもなおファンを魅了し続けています。吉川晃司など、実在のミュージシャンをモデルにしたキャラクターも多く、そういった点に注目してみても楽しいかもしれませんね。
修学旅行で沖縄にやってきたカホは、6年前に別れた幼馴染のナツを探すうちにユキという不思議な少年に出会います。別々に出会った3人は一緒に住むことになり……。カホ、ユキ、ナツ、3人の生活にはなぜか必ず抗争がつきもの。裏社会もくぐりぬけ、彼らは危険な日々を駆け抜けます。
- 著者
- 上條 淳士
- 出版日
- 2017-03-25
大人っぽい女子高生のカホ、金髪眉無しで危ない雰囲気のナツ、謎の多い色盲のユキ、この3人の主人公がかっこよすぎる『SEX』。全員クールでスタイリッシュ、連載当時から憧れていたというファンも多いことでしょう。『To-y』に登場するドラマーの桃元も登場し、世界観を共有していることもファンとしては楽しい要素ですね。時を経ても色あせない、古さを感じさせないあたりは上條淳士のセンスと画力があってこそ!
ストーリーとしては米軍、暴力団、ユキの因縁の相手のヒガという人物、色んな相手ととにかく抗争を繰り広げるのですが、本来血なまぐさい争いすらも、上條淳士の手にかかればスタイリッシュなアクションに早変わりしてしまいます。どのコマも、描写も、どう切り取ってもとにかくオシャレなのです。シンプルで美麗なタッチで、まるでポスターのようにも見えてしまいます。
絵だけでもページをめくりたくなってしまう圧巻の画力と表現力を感じられる『SEX』。ぜひ楽しんでください。
いかがでしたか?どれもおすすめできる作品ばかりです!上條淳士の作品が気になった方は、ぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。