R-18文学賞。私が欠かさずウォッチングしている新人賞だ。女性ならではの感性を生かした小説というのがテーマであり、日常に蔓延る生き辛さや不自由さ、それぞれが抱える等身大の悩みが女性から圧倒的な共感を呼んでいる。今回は受賞作家の中から特に好きな作品を紹介したい。
脳が揺れる小説というのは、冒頭の一文で決まるのではないか。そう再確認したのが他でもない本書だ。これから始まる男子高校生と主婦との不穏な関係のはじまりを知らせる衝撃。哀を孕んだ官能。
- 著者
- 窪 美澄
- 出版日
- 2012-09-28
歳を重ねたという明瞭な境目など存在しないが、幸せを測る指標に悩み立ち止まってしまうことは、大人になれば誰もが経験することだ。
- 著者
- 田中 兆子
- 出版日
- 2014-03-20
東京に惹かれ上京したり、数年後結局故郷に戻ったり。地方都市で過ごす8人の女の子に共通しているのは、日常に退屈し、閉塞感を抱えていること。此処ではないどこかへという、漠然とした哀愁。地方都市の湿っぽさに嫌気が差し、東京という理想の境地に夢を見る。此処は自分の居場所ではないという焦燥感。「自分探し」なんて都合の良い言葉があるけれど、結局は故郷で浮いてしまった人間なのかもしれない。学生時代が充実し、地元で就職して友達もたくさんいるという若者には、残念ながら本書はいまいちピンと来ないのではないだろうか。
- 著者
- 山内 マリコ
- 出版日
- 2014-04-10
自分に無関心な夫を持った妻たち。嫉妬や欲望、諦観といった「主婦という病」をそれぞれに抱え、苦しんでいる。テレクラでアルバイトをする妻。忘れられない過去を持つ妻。夫が隠したつもりでいることも、全て見抜いている妻。知らず知らずのうちに秘めた病に蝕まれ、やがて静かに崩壊していく。
- 著者
- 森 美樹
- 出版日
- 2015-03-20
娘が「みっともない」女にならないよう「ちゃんとした」教育をする母。不運な母を支えるべく、2人の間には緩やかな相互依存が生まれた。いつから、母が嫌いになったのだろう。愛情がないのではなく重すぎるのだ。初めて彼氏ができ、実家を飛び出して自由を手に入れても、母の「正しさ」という呪縛は、私の骨に染み付いて取れなかった。日に日に母に似てきた、「ちゃんとした」私。
- 著者
- 彩瀬 まる
- 出版日
- 2015-08-28
本とアイドル
アイドルが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、詩集に写真集に絵本。幅広い本と出会えます。インタビューも。