今、身のまわりに中国の歴史上の人物や時代を扱った漫画や小説であふれています。それほど中国の歴史には魅力があるということなのでしょう。中国の歴史は長くて把握しづらいですが、興味を持った方がさらに理解を深められるおすすめの本をご紹介します。
中国史は次々に王朝が変わってどの王朝がいつなのかわかりにくいですね。大雑把ではありますが、王朝の移り変わりをご説明します。
殷(紀元前1600年頃) 甲骨文字で占う政治を行っていました。
周(紀元前1050年頃) 精密な青銅器が次々発掘される封建制の国です。
春秋戦国(紀元前770~紀元前221) 周の勢力が衰え多くの国が割拠します。儒教の孔子はこの時代です。
秦(紀元前221~紀元前206) 数々の国に勝ち抜いた始皇帝が中国を初めて統一します。
前漢・後漢(紀元前202~220) 前漢の武帝が中央集権制を強化し、後漢には西域に領域を広げました。
三国(220~265) 魏・呉・蜀が並び立った有名な三国志の時代です。
西晋・五胡十六国(265~420) いったん統一したもののすぐに北方の民族に押され国が乱立する時代。
南北朝(420~589) 黄河流域と長江流域に分かれて王朝が立つようになりました。
隋(581~618) 官僚を採用するための科挙(かきょ)が始まります。日本から遣隋使が訪れました。
唐(618~907) 則天武后(そくてんぶこう)や楊貴妃(ようきひ)が有名です。
五代十国(907~960) 約50年の間に5つの王朝と周辺に10もの国が並び立った不安定な時代。
北宋・南宋(960~1279) 経済や産業が発展し、宋学という新しい思想が生まれます。
元(1271~1368) 遊牧民が中国を支配、モンゴルの王朝が成立。
明(1368~1644) 倭寇に悩まされた時代です。
清(1636~1912) 西欧列強と日本に翻弄される中国最後の王朝。
中華民国(1912~1949) 辛亥(しんがい)革命で共和国へ。
中華人民共和国(1949~) 国民党との内戦に共産党が勝利、毛沢東が建国を宣言、現在へ。
中国の長い歴史は上記のように簡単に語れるものではありません。もっと詳しく中国史の魅力を知りたい方はおすすめの本をぜひ手にとってみてください。
中国の歴史を紹介する本は、図や年表を駆使して色鮮やかに視覚的に訴えるものが多いものですが、この本はところどころ年表をはさみ込むだけで、あとは文字の羅列。それでもわかりやすいのは、各項目のキャッチフレーズが興味をひき、そしてそれぞれ短くまとめられていることが理由のようです。
読み物としておもしろく、中国の歴史の大まかな流れを知りたい方におすすめです。
- 著者
- ["山口 修(著)", "宮崎 正勝(改訂)"]
- 出版日
- 2010-07-01
中国の文化は日本へ大きく影響し、そして深い興味を持たせてくれる魅力的なものがたくさんあります。
亀甲(きこう)や獣の骨に刻まれた甲骨文字、精巧な模様の青銅器などはるか古代の文化に魅了されて中国に興味を持たれる人も多いでしょう。
春秋戦国時代は「呉越同舟」「尊王攘夷」など、なじみ深い四字熟語や故事の宝庫です。孔子の教えに基づく儒学は今の私たちの生活にも入り込んでいます。
六朝時代に花開いた文化の代表、書の王義之、詩の陶淵明もよく知られるところです。唐の李白、杜甫、白居易などの詩は今も愛され続けているのです。
北宋で新しい儒学が生まれ、それを南宋の朱熹(しゅき)が大成して「朱子学」と呼ばれるようになりました。これは後の日本の思想にも大きな影響を与えることになるのです。
そんなお隣の国、中国の通史を簡単に一通り読みたい方におすすめの一冊です。
中国の歴史を知るうえで漢民族以外の周辺諸国、民族の動向も重要な役割を占めています。中国の歴史といってもそれは漢民族の歴史だけではとらえられないのです。
万里の長城に象徴されるように、漢民族は常に周辺からの圧迫というものに腐心せねばならず、また外勢力とうまく付き合わなければなりませんでした。
この本は、中国王朝の節目節目にあらわれる周辺諸国の動向を簡潔にまとめています。
- 著者
- 島崎 晋
- 出版日
- 2008-06-21
前漢・後漢において最大の悩みは北方の匈奴でした。最初は親和対策、それが転じて武力攻撃に移行します。そして匈奴以外の異民族、大月氏と手を結ぶために派遣した張騫(ちょうけん)によって西域の情報を知りシルクロードが開拓されるのです。
有名な三国志の時代のあと西晋が中国を統一しますが、内乱のため異民族を兵に取り込みます。取り込まれた異民族の兵も地位の向上を図り、国を建てるまでに至ります。これが五胡十六国の時代です。
漢民族を支配するために自ら漢人化した鮮卑族が、やがて隋、唐につながります。
その後漢民族国家が復活してもまた衰え、異民族の支配を受けます。モンゴルが台頭して漢民族を飲み込み、元王朝が建ち、災害や社会不安の機をとらえて漢民族の明王朝になりますがまた衰え、女真族が力をつけてきて清王朝が建つのです。
中国史の中で漢民族と周辺諸国がどうかかわり支配し、また、されてきたのかを説明してくれています。ページの隅の「その頃、日本では」が日本史との時系列を教えてくれてわかりやすいです。
中国の歴史は長いですがそれは必ず今の中国につながっています。
広い中国の周辺にはたくさんの国があり、中国に使者を送って貢物をさせる朝貢によって外交を行っていました。しかしそうした中国を中心とした考え方を持たない欧米とかかわりを持った時に、今までの長く続いてきた国の在り方を変えていかなければならない必要に迫られるのです。
年表や系図を巧みに使い、また各時代の代表的な人物のエピソードを添えて盛りだくさんな内容をぎゅっと見開き2ページ分にまとめられています。
- 著者
- 小田切 英
- 出版日
中国の長い歴史の中で、近代史は欧米や日本の利権争いがからみ合って複雑で私の苦手なところです。
清王朝に至るころには欧米諸国とかかわりを持たなければならなくなっていて、これまでの朝貢によって周辺の国々をしたがえる外交方法が崩壊するのです。
アヘン戦争での敗北をきっかけに各国と不平等条約を次々と結ぶ事態に陥った清は外国の技術を取り入れた富国強兵をめざします。しかし、今までの清の体制を残したままでは近代化もふるわず、その間周辺の国々を支配下におく西欧諸国がじりじりとせまってくるのです。
さらには朝鮮半島をめぐって日本と日清戦争が勃発。これに敗北したことにより弱体化が進んだ清は列強各国の利権争いの場となるのです。
そんな不満に対する暴動をきっかけに各地で蜂起がおこり、中華民国が成立、皇帝は退位を迫られ清王朝は滅びます。
一方、東北三省を勢力圏とみなす日本に対する抗日運動が激しくなって日中戦争が起こり、日本が第二次世界大戦で敗北するまで中国の領土は荒廃することになるのです。
その後国民党と共産党のどちらが国を担うのかの争いのあった後、1949年、毛沢東が天安門で中華人民共和国の樹立を宣言することになります。
石器時代からの通史はもちろん、近代史が充実しているおすすめの一冊です。
中国の歴史、英雄を扱った歴史小説は、日本でも数多く読まれています。それだけに、中国史は題材となる魅力的な歴史上の人物やエピソードの宝庫といえるでしょう。
この本の特徴は、図やイラストだけでなく中国の映画やドラマのワンシーンを参考資料として写真で添付されているところです。
巻末にはドラマ、映画、漫画、小説の作品紹介が掲載されていて、もっと中国の歴史を楽しみたい方におすすめです。
冒頭に漫画『キングダム』の紹介と作者、原泰久のインタビューが添えられています。
- 著者
- 山本英史
- 出版日
- 2012-11-30
広大な中国を支配するためには、その支配体制や政策は国の命運を分けるものになります。
古代では都市国家が複数連合してつながりを持っていましたが、それを初めて一つの国としてまとめたのが秦の始皇帝です。官僚制度を整え、郡県制をしき、度量衡や文字、貨幣を統一しました。
前漢ははじめ秦とは違う国の支配体制でしたが、武帝は始皇帝と同じく中央集権的体制を確立させます。
隋以後、試験によって官吏を登用する科挙が始まり、宋の文治政策では科挙の最終試験は皇帝が直接行うことになりました。それによって皇帝と官僚の結びつきが強くなり、皇帝の独裁が強化されるようになるのです。
しかし清の頃には欧米との外交は避けられないものになり、貿易に対する策を講じなければならなくなりました。林則徐がアヘンを禁じた結果アヘン戦争が起こり、これを皮切りに清は西欧に対して開国することになるのです。
中国史の様々な転換期に現れる人物と時代の流れを知るにはこの一冊をおすすめします。
中国は長い歴史の中で様々な王朝が立ち、そして分裂し、再び統一されてを繰り返してきました。また、周辺の漢民族以外の国々からも影響を受けたり、圧迫されたり、支配されたりもしてきました。
目まぐるしく変わる中国の版図はなかなか把握しづらいものです。この変動激しい大陸を視覚的に、時代ごとの変化を記してくれています。
「歴史地図」というタイトルですが、地図だけでなく時代の流れや特徴を詳しく説明してくれています。
- 著者
- 朴 漢済
- 出版日
中国を動かしていたのは権力を持った皇帝ばかりではありません。王や皇帝を支えた人々、あるいは利権を争って国を傾けた人たちや、文化を担った人々も忘れてはならない存在です。
春秋戦国時代、多くの国が割拠する中で、それらの国々はお互いどう付き合うべきかが大きな課題でした。人材を求める気運の中で「諸子百家」と呼ばれる様々な思想を説く人たちが自らの説を政治で実現するために登用されるべく国々を遊説してまわっていたのです。
西晋のころ貴族文化が花開いたといわれます。北方から江南へ移ってきた貴族たちに脱俗的思想が流行り、それが文学や芸術に結びついたのです。
中国の独特の存在として「宦官(かんがん)」があります。去勢された男性で皇帝の身のまわりの世話を担っていました。皇帝に近かったために宮廷で暗躍して利権を握ることもあり、唐の末期には皇帝ですら宦官に擁立され、国の勢いも衰えてゆくのです。
宋の時代に科挙の重要性が増すと学校や書院が作られ、社会、経済の発展に対応する人材として「士大夫」が支配階層に入ってくるようになります。
この本は歴史地図だけでなく、時代の特色を図とともに解説していてとても分かりやすいおすすめの一冊です。
わかりやすい中国史の本を5冊ご紹介いたしました。中国の歴史は4000年とも5000年ともいわれます。とても長い時間を一冊で解説してくれる分かりやすいものを選びました。これらを読めば一度読んだ漫画や小説が一層の深みをもって理解できるのではないでしょうか。