桑原水菜のおすすめ作品5選!サスペンスからBLまで幅広く描く作者

更新:2017.4.13 作成:2017.4.13

サスペンスから歴史ファンタジー、BLまで幅広く描く小説家・桑原水菜。彼女が生み出した作品は女性に絶大な人気を誇り、熱狂的なファンが数多く存在する作家の一人です。そのマルチな作風を紐解き、彼女の魅力に迫ります。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

カラーの違う作品を見事に描くマルチプレイヤー、桑原水菜

千葉県出身、2017年現在は東京在住の作家・桑原水菜。小さい頃はバレーボールや少林寺拳法に打ち込むなど意外と肉体派だった一方で、自作の漫画などを描いて過ごしていたそうです。中学時代に寺社や仏像に興味を持ったことをきっかけに、中央大学文学部史学科に進学しました。

大学時代に作家を志し、雑誌「Cobalt」に投稿。そして1990年『風駆ける日』で連載が開始し漫画家デビュー、同作はコバルト読者大賞も受賞しました。その後は集英社コバルト文庫を中心に活躍を続け、2015年にはデビュー25周年を迎えています。

代表作は『炎の蜃気楼(ミラージュ)』『風雲縛魔伝』『シュバルツ・ヘルツ』など。また、2017年4月現在最新シリーズの『遺跡発掘師は笑わない』が刊行中です。特に完結した今も絶大な人気を誇る「炎の蜃気楼」シリーズは、「BL三種の神器」のひとつと称されるほど。

ファンタジーやコメディなどのライトな作品があったかと思えばハードボイルドな作品もあり、その振り幅の広さはまさにマルチプレイヤー。また「黒薔薇ミズナ」という別名で『黒薔薇ミズナのBL講座』というBL初心者に向けたエッセイも発表しています。

プライベート面では非常に幅広い趣味を持っており、それは遺跡・仏像・新幹線とまさに多種多様。神社仏閣巡りなども好きで、よく奈良の寺社などを訪れているようです。多方面に渡る膨大な知識を持つ桑原水菜だからこそ、名作と謳われる作品を数多く生み出すことができるのかも知れません。

「鬼の手」を持つ天才『遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠 』

永倉萌絵が転職した「亀石発掘派遣事務所」。そこには西原無量という一人の天才発掘師がいました。21歳と若いながらも確かな腕を持つ彼は、国宝級の遺物を次々と発掘し、絶対的エースの名を欲しいままにしていますが、無愛想なのが玉に傷。また、無量のもつ一番の特徴は、まるで鬼の笑った顔のように見える火傷痕がある「鬼の手」と呼ばれる右手でした。

ある日無量と萌絵は、とある大学の発掘チームの依頼を受け、奈良に赴くことに。そこで「蓬莱の海翡翠」と呼ばれる緑色琥珀を発見。調査中に、文化庁のエリート職員となった幼馴染の相良忍とも再会しますが、その夜、無量を指名した現場責任者の大学教授が何者かに突然殺害され、現場から立ち去る忍らしき人物が目撃されます。

著者
桑原 水菜
出版日
2014-12-25

桑原水菜が自身の持つ知識を存分に発揮した、考古学ミステリー。元々『西原無量のレリック・ファイル』として刊行されていたものが、文庫化にあたり改題されました。

スピーディーに物語が展開するのが魅力の本作ですが、それぞれのキャラクターが立っており、読者を息つく暇なく引き込んでいきます。果たして目撃された人物は忍本人なのでしょうか。また、水面下で動き出す国家レベルの陰謀とは……。

無量の祖父が過去に起こした事件や、尖閣諸島付近に埋蔵されているといわれる鉱石など、事実と絡めたエピソードも注目のひとつ。歴史好きや遺跡発掘に興味がある人にもおすすめです。また本作は、文庫版のイラストを手掛ける睦月ムンクによってコミック化もされていますので、文庫版で興味を持った方は併せて読んでみてはいかがでしょうか。

少年に移植されたのは、悪魔の心臓『シュバルツ・ヘルツ-黒い心臓』

心臓病を抱える中学生の少年・嘉手納奏(かでな・かなで)は、移植手術を受けるためにドイツを訪れますが、突如行方不明に。

湖で見つかった奏は、その後病院に運び込まれましたが、そこへアイザックと名乗る男が登場。日本に戻った後、奏は護衛を申し出るアイザックと同居することになりますが、今度は神楽崎という謎の男子生徒が奏の学校に転校してきます。時を同じくして奏の周囲で不可解な事件が起こり始め……。

ドイツで奏に移植されたのは、実は悪魔の黒い心臓。そのせいで彼は次々と事件に巻き込まれていくのです。兄のものである心臓を奏から取り返そうと暗躍するアイザックらアース派と、黒い心臓を止めようと狙う神楽崎ことケヴァンらのヴァン派。2つの思惑が交錯し、黒い心臓を巡る戦いは巻を追うごとに激化していきます。

著者
桑原 水菜
出版日
2006-03-31

シリーズに渡って様々な伏線が張り巡らされ、謎が謎をよんでいきます。どの伏線が今後のストーリーにどう繋がっていくのかも見所のひとつ。また巻を追うごとに新しいキャラクターが次々と現れますが、そのどれもが美形キャラ。女性ならばどのキャラをお気に入りにするか迷ってしまうかも知れません。

アクションも満載で、圧巻の戦闘シーンが随所で繰り広げられます。謎の転校生が敵になったり、主人公に想いを寄せる女性が登場したりするなどの王道展開も見逃せません。先の読めないストーリー展開に、夢中になって読み進めてしまうはずです。また、桑原水菜の本作は北欧神話をベースに据え、ナチスドイツ・エジプト・ギリシャ・アステカ・バビロニアなど、様々な古代文明のエッセンスを取り入れたサスペンスファンタジーになっています。

桑原水菜の代表作にして不朽の名作『炎の蜃気楼』

戦国時代の武将の怨霊と、彼らを調伏する使命を持ち、400年間生き続けてきた夜叉衆が戦いを繰り広げる闇戦国。高校生の仰木高耶は、ひょんなことから自分が歴史上の人物・上杉景虎の「換生者」だということを知ります。換生とは、生まれ変わりのようなもの。やがて彼は、他の夜叉衆と共に、怨霊達を調伏する過酷な戦いへと身を投じて行くことになるのです。

著者
桑原 水菜
出版日
1990-11-02

知る人ぞ知る、桑原水菜の代名詞とも言える『炎の蜃気楼』。集英社コバルト文庫から発行された原作全40巻は大ヒットし、少女小説の金字塔となりました。アニメ化やドラマCDなどメディアミックスも多数展開され、社会現象にもなった桑原水菜の人気作品です。

中でも読者に衝撃を与えたのは、主人公・仰木高耶と、彼の臣下である橘義明こと直江信綱の過激なボーイズラブ描写ではないでしょうか。太宰治の『駈込み訴え』におけるキリストとユダや、映画『アマデウス』のモーツァルトとサリエリをモデルにしたと桑原水菜が語る、高耶と直江の関係性は、時に性描写を伴って描かれ、世の女性たちを魅了しました。本作が昨今のBLブームの先駆けになったと言っても過言ではないかも知れません。

作品をイメージしたワインやスイーツ、アクセサリーなどのグッズも数多く販売され、多くが即完売となりました。「ミラジェンヌ」と呼ばれるファンが作中に登場した史跡などの「聖地」を巡礼し、かなりの経済効果をもたらしたとも言われています。現在でも新作舞台が上演されるなど、根強いファンによってその人気は牽引され続けている桑原水菜の作品です。

船上のスパイ・ミステリー『カサンドラ』

時は昭和28年、ある豪華客船に乗船した入江秀作。名目上の任務は大臣の護衛ですが、彼の本当の使命は「カサンドラ」についての機密情報流出を阻止すること。そして、機密を持ち出した者を抹殺することでした。アグライア号の乗組員は、官僚・物理学者・米軍将校などクセのある人物ばかり。さらに、過去に入江の過失によって命を落とした親友の弟も乗船していることが発覚し……。

著者
桑原 水菜
出版日
2015-11-02

ギリシャ神話の預言者の名前を冠する「カサンドラ」ですが、それは暗号であり詳細は一切不明。「カサンドラ」の秘密、そして豪華客船アグライア号に搭載された新型エンジンの謎。戦後の高度成長期を舞台に、蠢く国家の闇とそれに翻弄される男性たちの物語です。

船上でおこなわれる諜報戦。テロ・殺人・裏切り……機密を巡ってアメリカ・ロシア・日本のスパイが入り乱れ、アグライア号の船上は知略と謀略に溢れた争いの舞台に。物語はラストまで二転三転、どんでん返しの連続で、読者も誰が敵で誰が味方なのかわからずハラハラしますが、桑原水菜の筆力がその心理戦に上手く引き込んでくれます。

登場人物が多く、専門用語も随所に登場するため、複雑なストーリーかと思いきや、息もつかせぬ展開と登場人物たちの心理描写の巧みさで、一気にラストまで読ませてくれるはず。戦争の影響をまだそばに感じさせる時代背景をリアルに描き、他作品とは一線を画したハードボイルドさが魅力の桑原水菜作品です。

狐と狸のお伊勢参り珍道中『弥次喜多化かし道中』

年に一度、多摩のくらやみ祭りの裏で開催される狐と狸の化け相撲。狐と狸が化け勝負をおこない、負けた方は「けもの汁」の具にされてしまいます。代表選手となった狐の弥次郎兵衛と狸の喜多八でしたが、彼らには相撲に出場することよりも叶えたい夢がありました。

弥次郎兵衛は人間の娘と結ばれるため、そして喜多八は美味しいうどんを食べるため、人間にしてくれるという伊勢の神様を訪ねる旅に出ることに。しかしこの二人、人間の生活がどのようなものか全く知りません。お金の知識すらないので、行く先々でトラブルになるのは間違いなし。前代未聞の「弥次喜多コンビ」が東海道を行く、狐と狸の痛快化かし道中です。

著者
桑原 水菜
出版日
2014-11-14

『箱根たんでむ―駕籠かきゼンワビ疾駆帖』に続き二作目となる、桑原水菜の時代小説。東海道を舞台に、お馴染みのあの弥次さん喜多さんコンビが珍道中を繰り広げるのですが、何と彼らは化け狐と化け狸という変わり種。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』をモデルとしながら、桑原水菜独自のアレンジを効かせた小説となっています。

イケメン狐の弥次郎兵衛と、メタボ狸の喜多八というコンビのキャラクター対比が面白く、すっとぼけたやりとりは何とも言えない可愛らしさがあります。保土ヶ谷宿で小田原で箱根で、次々と騒動に巻き込まれる二人ですが、困っている人を放っておけない性分のため、行く先々で化け術を使って人助け。実在の歴史上の人物も登場するなど、史実と絡めたストーリー展開も面白いところです。

コメディタッチでテンポが良く、男性も女性も気軽に読める一作。弥次喜多コンビの旅はまだまだ始まったばかりですが、二人は無事伊勢に辿り着けるのでしょうか。続編にも期待が高まります。

女性向けのイメージが強い桑原水菜ですが、硬派な作品やコメディも書いており、男女共に読むことができます。自分好みのジャンルから始めて、ぜひいろいろと読んでみて欲しい作家です。