ジョーカー・ゲーム
- 著者
- 柳 広司
- 出版日
- 2011-06-23
柳広司さんの連作短編スパイ小説。非常に人気のあるシリーズ作品で、漫画化やアニメ化、最近では実写映画化もされ話題となりました。今作は、その「D機関シリーズ」の1作目で、全5話が収録されています。
昭和12年、結城中佐の発案で設立されたスパイ養成学校「D機関」。そこで訓練を受けた優秀なスパイたちが繰り広げる物語が描かれています。とりあえず一言申し上げますと、D機関のスパイたちがハンパないっす。頭が良いとかそういうレベルじゃないっす。超ハンパないっす。うっす。彼らは医学や心理学、完璧なる変装など、ありとあらゆる技術を身につけています。その類まれなる能力を巧みに活かし、任務を完璧に遂行していきます。
鮮やかすぎて惚れ惚れしちゃいます。そんな切れ者揃いのスパイたちを統括する結城中佐ときたらもう……。群を抜いています。本当にカッコいいっす。憧れるっす。うっす。
展開もスピーディーで飽きません。パッと見、戦時中という時代設定によって難しそうな印象を受けますが、意外とそんなこともありません。それほど重苦しい雰囲気もなく、とっつきやすいです。また、文章量が少ないにもかかわらず深みのある内容になっているので、読み応えがあります。
この作品に関しては、頭脳戦というよりも、D機関の圧倒的な実力を堪能してください。ホントに惚れ惚れします。そして今作を好きになった方は、ぜひ続編もチェックしてみてください。ちなみに私は、2作目「ダブル・ジョーカー」に収録されている「柩」が好きです。D機関の設立者、結城中佐の過去を知ることが出来ます。
容疑者Xの献身
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
- 2008-08-05
もはや説明不要、東野圭吾さんの長編ミステリー小説。「ガリレオシリーズ」の3作目です。
福山雅治さん主演のドラマ「ガリレオ」としても有名なシリーズですね。今作は、直木賞受賞や映画化もされた超名作。もしかしたら、私が過去に読んだ小説の中でも、一番好きな作品かもしれません。ズバ抜けて面白いんです。それほどに衝撃を受けた作品。まだ読んだことがない方には、ぜひとも読んで頂きたい!!
今作は、天才物理学者の湯川と天才数学者の石神による頭脳戦が描かれています。二人は大学時代の旧友。石神が企てた完全犯罪を湯川が解き明かしていくという倒叙ミステリーになっており、ドキドキの臨場感が味わえます。そして、終盤で迎えるトリックの種明かし。私、久しぶりに鳥肌が立ちました。非常に秀逸な仕掛けです。唸ること間違いなし!
と、こうやって読むと「石神って凶悪な犯罪者やーん」って思いますが、一概にそうとも言いきれない背景があるのです(もちろん犯罪は絶対ダメよ)。とりあえず読んで頂ければわかると思います。このストーリーね、もうホントに切なすぎます。胸が苦しくなるほどに切ないんです。
ちなみに私は号泣しました。人目もはばからずバスの中で号泣しました。そしておばあちゃんに声をかけられました。切なかったです。
やはり有名作というのは、それだけの理由があるんですね。
私は捻くれ者のせいか、あまりに有名すぎる作品は、ちょいと敬遠してしまう傾向にあります。「もっと通な作品を読んでやる!」という無駄な見栄を張るせいですかね。お子ちゃまなんです。恐れ入ります。はい。ということもあって、普段はあまり有名作を読まない私ですが、この作品を手にして本当によかったと心の底から思っています。
これを機に、名作を読み漁ることにします。よく「これを知らなきゃ人生損する」のような言葉を耳にしますが、まさにこの作品がそれに値すると思います。未読の方は、絶対に読んでください!! それほどに読む価値のある作品だと思います。
Fake
- 著者
- 五十嵐 貴久
- 出版日
五十嵐貴久さんの長編コンゲーム小説。主人公は、個人で興信所を営む宮本剛史。彼の元に西村と名乗る人物が訪れ、とある依頼をします。その内容とは、美術の才能はあるが学科がからっきしダメという息子の昌史を、どうにか東京芸術大学に入れさせるため、センター試験で高得点をとれるようにして欲しいというもの。
宮本は、先端技術を駆使してカンニングを決行するが……。というお話。ただただ娯楽的でエンタメ感満載の小説ですが、ドキドキな展開も多くて楽しめます。
今作は、頭脳戦の中でも心理戦の意が強い作品。終盤では、10億円という大金をかけたポーカーゲームが行われるのですが、この緊迫した空気感が堪らなく気持ちいい!! あたかも自分が勝負しているかのような高揚感が味わえます。
ポーカーで重要なことは、自分の手札の強さだけではありません。相手の手札を予測したり、相手にうまく勘違いさせるなど、手札以外での勝負が非常に大事。相手の表情や言動、しぐさなど、様々な情報を読み取って駆け引きをするのです。これぞまさに心理戦!! ふぉおぉおおーっ!!!!
ちなみに今作は、イカサマを駆使したアンフェアなポーカーのため、通常のポーカーとはまた違ったドキドキ感が味わえます。この「騙し合い」は非常に見物です。ポーカーのルールを知らない方でも楽しめるように書かれているのでご安心を。
結末のトリックに関しては、少々無理のあるアンフェアな印象。どんでん返しが強烈すぎて「そんなのアリ!?」って突っ込みたくなりますが、全体を通して面白いので気にならなーい!!
ちなみに私、登場人物の加奈ちゃんが好きです。すごく好きです。共感者求む。