日本史漫画のおすすめならこの5作!楽しみながら時代がわかる作品

更新:2017.4.13

エンターテイメントの一形態として認知される漫画。その漫画に史実を反映した歴史ジャンルがあることをご存知ですか? 今回はそんな歴史漫画の中から、日本史にスポットを当てた5作品をご紹介します。

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仙石権兵衛秀久、激動の戦国時代を生き抜く!『センゴク』

時は戦国、1567年8月15日、稲葉山城陥落。織田信長軍に攻め立てられる斉藤龍興(たつおき)の家臣に、仙石権兵衛秀久はいました。互いに想い合う侍女のお蝶を逃がすため、単身奮起する権兵衛。定石を無視してがむしゃらに戦う権兵衛を信長は評価、木下藤吉郎秀吉の配下に加えました。

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康。3人の天下人の下での活躍と凋落。戦国時代においても類い希な運命を辿った武将、仙石権兵衛秀久の戦いが始まります。

著者
宮下 英樹
出版日
2004-11-05

本作は2004年から「週刊ヤングマガジン」誌上でシリーズが連載されている宮下英樹の作品。あまりメジャーな武将とは言えない仙石秀久を主人公に据えた長編大河漫画です。

タイトルは戦国時代と仙石の苗字をかけたもの。仙石秀久が姉川の戦いで挙げた軍功により秀吉から与えられた俸禄も1000石ですが、これはタイトルの由来というより秀吉の茶目っ気でしょうか。

大柄で型破りな権兵衛は情に厚い熱血漢。その力強い意思はしばしば周囲の武将に影響を与えます。権兵衛のモデルとなった実際の仙石秀久は、粗野ながら決断力のある優秀な武人だったそうです。残忍な一面もあったようですが、そこは本作ではデフォルメされています。

物語は基本的に歴史に伝わる通りに戦国時代の闘争を描いていきますが、独自の時代考証、未だ定説には至らない新説を積極的に取り入れているのが特徴。歴史は不動のものではありません。定説を覆す新発見はしばしば行われているのです。しかし歴史学の慣例的に、新説が新たな定説となるまで10年ほど様子見されるもの。新説に意欲的な本作は、次の定説を先取りする教科書として使えるかもしれません。

既存概念の破壊も多く見られます。実は刀を使ってチャンバラするのは現実的ではないんです。本作冒頭でも、弓矢が最も危険で、次に強力なのは槍と言明されます。武士道とは戦乱が平定された江戸時代の理想像で、戦国時代においてはまったく通用しません。

本作はこのように歴史の常識を打ち壊しながら、リアリティのある合戦模様やそれに至る細かな経緯を時に荒々しく、爽快に描き出します。

蒙古襲来!神風吹かずとも戦う、もののふの勇姿『アンゴルモア 元寇合戦記』

1274年10月。北条氏の内紛、二月騒動に巻き込まれた元御家人の朽井迅三郎(くちいじんざぶろう)は、対馬への流刑に処されました。対馬に着いた迅三郎らは、罪人とは思えない待遇を受けます。訝しむ彼らに対馬の主、宗助国(そうすけくに)の娘、輝日姫(てるひひめ)は途轍もない事実を告げました。

二月騒動の契機である、鎌倉幕府を揺るがせた蒙古襲来の噂は真実で、すでに艦隊が対馬の間近に迫っていると。罪人達はそれを迎え撃つ苦役に就く運命にありました。輝日姫はこう続けます。

「この対馬のために死んでくれ」(『アンゴルモア~元寇合戦記~』より引用)

著者
たかぎ 七彦
出版日
2015-02-07

本作は2013年に「サムライエース」で連載開始され、ウェブサイト「コミックウォーカー」に移籍して連載継続中のたかぎ七彦の作品。鎌倉幕府衰退の遠因になった日本史史上でも重要な転換点にも関わらず、あまり知られていない元寇の文永の役を舞台にした漫画です。

元寇とは、モンゴル帝国と高麗王国連合による当時世界最大級の艦隊が、2度に渉って日本を襲った侵攻のこと。神風(台風)が起こって日本は助かった、と歴史で習った方もいらっしゃるのではないでしょうか。詳しい研究によると、時期的に九州近辺に台風が来るはずがなく、当時の元と日本の史料にも記述がないことから、神風は誤りだと判明しています。

では何が元寇を凌いだかというと、迎撃した日本軍の力によるところが大きいのです。本作では、史実には残っていない日本軍の武人をディテールアップし、歴史を逸脱しない程度に創作を行っています。

源義経を源流とする兵法、義経流の使い手、朽井迅三郎。元は幕府の武士だっただけあって、優れた統率力と戦闘力の持ち主です。彼自身は実在した人間ではりませんが、『八幡愚童訓』に登場する対馬で戦った流人の口井勝三、源三郎の兄弟がモデルだそうです。

またヒロインとなる輝日姫は、壇ノ浦の戦いで海に身投げした安徳天皇の子孫。これは歴史ファンがニヤリとさせられる設定です。安徳天皇が落ち延びて、対馬の祖となったという伝説が残されており、作者はそれを利用したのでしょう。

アンゴルモアで思い出されるのは、やはりノストラダムスの予言かと思います。アンゴルモアは恐怖の大王と呼ばれていますが、これにはいくつか解釈があって、そのうちの1つにアジアの侵略者=モンゴル帝国を示すという説があります。恐らく本作のタイトルはそこから来ているのでしょう。

九州から援軍が到着するまでの7日間。900隻にも及ぶ大艦隊に対して、迅三郎は対馬にいる人々をまとめ上げ、迎撃を試みます。戦いの行く末は如何に。


『アンゴルモア』については<『アンゴルモア元寇合戦記』10巻までネタバレ紹介!迫力の歴史漫画が面白い>の記事で紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。

天下を狙うは武だけにあらず。数寄こそ物の上手なれ。『へうげもの』

戦国乱世にあって、戦一辺倒の武将とは趣を異にする男がいました。織田信長の家臣、古田左介。彼は武勲を立てる出世欲はあるものの、地位よりもそれによって得られる褒美に目がない、物欲の武将でした。

左介は茶聖、千利休に学び、後に織部と改称して天下一の茶人となる男です。

著者
山田 芳裕
出版日
2005-12-22

2005年から「モーニング」で連載中の山田芳裕の作品です。2009年文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、2010年手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。2011年にはNHK制作でアニメ化もされました。

戦国時代を舞台とする漫画は数多くありますが、本作は風流やわびさびといった当時の文化に主眼を置いた珍しい漫画となっています。時代背景的に残酷な描写もされますが、それよりも左介をはじめとする数寄者(風流を好む文化人)のコミカルさが際立ちます。

古田左介は実在の人物、古田左介重然がモデル。作中では顔芸に近い百面相を披露します。古田重然もそうだったかは定かではありませんが、千利休の教え「人と違うことをせよ」通りに型破りを好んだ文化人だったようです。その一端を示す史料として『宗湛日記』があり、博多の豪商神谷宗湛が「セト茶碗ヒツミ候也。ヘウゲモノ也」と書き残しています。

タイトルにもなっている「へうげもの」の「へうげ」とは「ひょうげる」という言葉で、ふざけるあるいはおどけるといった意味。古田重然がわざわざ作らせた茶器が「面白い、珍妙」なものだったということは、本人も相当風変わりな人物であったことが窺えます。

左介は信長の使いっ走りのような役目を果たして成り上がっていきます。ですが激動の時代は着実に進み、世相は移り変わります。天下人や名人の下で感性を磨き、「織部好み」と称される流行を生み出すことになる左介。彼はいつまで己の「へうげ」を貫く「へうげもの」でいることが出来るのでしょうか。

愛憎入り乱れる耽美な古代日本ロマンス!『天智と天武』

1884年、奈良県法隆寺。美術研究家アーネスト・フェノロサと岡倉天心の2人は仏像研究のために、長年秘されてきた夢殿に踏み入ります。厳重に封印されたそこには聖徳太子の化身とされる救世観音像が安置されていました。見事な作りの仏像でしたが、なぜか光背が直接頭部に釘で打ち付けられていました。まるで何かを呪うように。

時は遡ること1200年前。645年、皇極天皇の御代。後に天智天皇となる中大兄皇子が蘇我入鹿、高句麗、新羅、百済の王子と共に勉学に励んでいました。日本史に残る大事変、大化の改新までまもなく……。

著者
中村 真理子
出版日
2013-02-28

本作は2012年から「ビッグコミックスピリッツ」誌上で連載されていた中野真理子の作品。日本書紀に書かれた出来事を大胆にアレンジし、耽美の空気漂う異色作となっています。

本作は副題に「新説・日本書紀」と冠されてるように、日本書紀の記述を踏襲しつつ、異説私説を取り込んで独自解釈の展開を見せます。史実では聖徳太子の死後、専横を振りかざした蘇我入鹿を、中大兄皇子と中臣鎌足が討ったとする乙巳の変。なんとこれを凄まじくアレンジ。愛憎渦巻くドラマに変貌させました。

中大兄皇子の弟、後に天武天皇となる大海人皇子。これを実は蘇我入鹿と皇極天皇の不義の子と設定し、複雑な胸中の中大兄皇子を中臣鎌足が唆し、謀殺したという筋が描かれます。しかも中臣鎌足は百済の王子、余豊璋と同一人物。

もちろん、史実では大海人皇子は中大兄皇子の実弟で、蘇我入鹿の子供という証拠はありません。余豊璋と中臣鎌足が同一人物ということもないです。

しかし、日本書紀には天皇家の正当性を示すために編纂された歴史書という側面があり、内容に疑問符が付くというのも事実。これら異説は、そうした状況から推測された仮説で、大真面目に検討されたこともあります。

ちなみに作中で描写される救世観音像ですが、これはアーネスト・フェノロサの記述を再現しています。しかし後世の研究で、フェノロサの記述が誤りだと判明。光背は確かに後頭部に固定されていますが、それは釘ではなく金具で、当時の仏像としてはごく普通の様式だそうです。

救世観音像の謎から始まる、愛憎と策謀の果てのおぞましい人間ドラマ。現代から窺い知ることの出来ない過去には、こういったことが本当にあったのかも知れません。

戦国乱世を駆け抜ける偉丈「婦」見参!『雪花の虎』

1530年、越後春日山城。長尾家は嫡男の晴景(はるかげ)の体が弱く、城主為景(ためかげ)は長く後継ぎとなる男児を待望していました。為景の正室、紺は夢枕に毘沙門天が立ったことから、次に身籠もった子は毘沙門天の化身となる男児であると確信。

そして生まれたのは……なんと女児でした。赤子は虎千代と名付けられます。幼名を虎千代、元服して景虎を名乗ることになる、戦国最強の武将上杉謙信の誕生です。

著者
東村 アキコ
出版日
2015-09-11

本作は2015年から「ビッグコミックスピリッツ増刊ヒバナ」で連載されている、東村アキコの作品。上杉謙信女性説を前提にした戦国歴史漫画です。執筆に当たっては事前調査を行ったようで、描写には一定の説得力があります。

上杉謙信が実は女性だった、とはいささか突飛な設定ではありますが、これは1968年に作家の八切止夫が提唱した仮説です。根拠となるものはいくつかありますが、どれも傍証からの推測の域を出ず、学説としての信憑性はあまりありません。ですが、そのことと本作の創作物としての面白さには関係がありません。

質実剛健を絵に描いたような武将、鬼神と恐れられた上杉謙信が女性だった、というだけで、謙信の軍記にぐっと面白みが加わります。果断な謙信の裏側に女性ならではの悩みがあったとしたら?

謙信を際立たせる男と言えば、終生のライバル、甲斐の武田信玄です。史実では謙信と5度に渉る川中島の合戦を繰り広げた猛将が、作中では細面のイケメン姿で登場します。

他には謙信=虎千代が幼少期を過ごした林泉寺の僧、宗謙(しゅうけん)。益翁宗謙(やくおうそうけん)は実際に幼い虎千代に禅の道を説いたとされる人物です。名前の読み方が違うのは創作か、あるいは史料の違いかと思われます。彼もまたイケメンで、心身共に虎千代を支えることに。

本作のもう1つの特徴は、歴史的説明の多いページのスペースで、歴史に弱い読者向けにこぼれ話を展開するところでしょう。その中で一応かいつまんだ説明がなされますが、長文が面倒ならば説明ページを飛ばして良し、という前代未聞の試み。

作者の東村アキコは歴史を苦手と公言しています。その経験を踏まえた上で、読者に入り口で挫けず、面白い箇所まで読んでもらいたいという願いから、こういった措置を取ったのだと思われます。

女性目線で男装の女性武将を描く異色作。女謙信がどのように戦国を駆け抜けるのか、今後の展開にご注目ください。

いかがでしたか? 日本史漫画の良いところは、実際に史跡を見に行けるところだと思います。今回ご紹介した作品で歴史に思いを馳せつつ、縁の地を訪ねてみるのも面白いでしょう。

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