普段買っているパン屋さんの中、すこし覗いてみたくありませんか?有名店のパン屋さんがどんな考え方でパンを作っているか、パン職人とはどういった仕事なのか、がわかる本をご紹介いたします。
どうしてこのパンなのか、どうしてこの立地なのか、どうやってタケウチができたのか。
その疑問全てに答えてくれるのがこちらの1冊です。
店を持ちたいと考えている人、職人と呼ばれる仕事をしている人、自分の働き方に疑問を持っている人、様々な人にオススメしたい「働くとは」を考えさせてくれる本。
まず、タケウチが一番大切にしているのは、イメージ。
作りたいパンのイメージをできるだけ具体的にし、どうやったらそれが実現できるか考える、これがタケウチのパン作りの流れです。
カフェやレストランで必ず1個はアイディアを考えるそうで、月に新作が30個あったこともあるそう。ほぼ毎日新しいパンを出していたということです。イメージ力と実現する力の強さが感じられます。
- 著者
- 竹内 久典
- 出版日
- 2008-09-01
1日のうちで、食べたいものは変わっていきますよね。それに合わせて、タケウチでは120種類以上のパンを焼いていました。
朝は、デニッシュやクロワッサンなど朝食に食べたい、リッチなパンやサンドイッチ。昼は、ベーグルやがっつりのサンドイッチ。夕方は、食事に会うハード系のパンやバケット、すこし塩味の効いたおつまみになるパンが欲しいですよね。
時間帯に合わせてパンを焼く、というとそれだけ数が増え、作業時間も長くなって大変なことです。しかし、その分それぞれの時間に買いにくるお客様の要望に合わせられるので、客層が広がり、お客様の要望にも答えられている形になります。
一通り読んで感じるのは、人の繋がりを大切にし、自分の感性を大切にしている、ということ。お客様の要望に答える、それぞれのパンについているファンを大切にする、新作を出す、自分のいいと思ったものを出す、などといったことです。
直接言われることだけでなく、肌で感じ取ること。何よりそうした自分の感覚を繊細に感じ取って、信じて進むことができるタケウチはそんな人間だと感じます。そしてそれが「どこにもない」「タケウチだから」ということを側から見てもわかるくらい実現させている理由だと言えるでしょう。
すでに大阪にタケウチはなく、兵庫県に移転しており自分の作りたいパンを作るため予約販売のみで営業しています。
以前とは違い、2人でパンを焼いているのでたくさんパンは焼かず、半分は食事パン、半分は甘いパンといった感じです。パン職人として、パン屋さんとしてのタケウチが今後も楽しみになる1冊です。
こちらもパン業界では超有名店、岐阜県高山市にある「トランブルー」の1冊。
なぜ、パンのワールドカップで3位になれたのか。日本全国から修行にくる人たちをどのように育てているのか、などの全てが書かれています。
パン職人の仕事を知ることで、自分の仕事への向き合い方を考えるヒントになるもしれません。
- 著者
- 成瀬 正
- 出版日
- 2016-07-21
著者の成瀬は、「簡単な仕事なんてない」と言います。製造から販売まで、全てをこなすのに短くても4、5年はかかるそうです。1つの仕事を長く続けている人は、わかる部分が多いのではないでしょうか。長く続けている、うちにわかってくることやできるようになることがたくさんあると思います。
こちらの本は、仕事を長く続けている人、人に教える立場にある人、上の立場に立っている人に特に読んでいただきたいです。
特に第4章「スタッフに学ぶ」には、働き方、部下との付き合い方を考えさせてくれるヒントがたくさんあります。
「販売をすることでお客様を意識したパンをつくる」(『世界も驚くおいしいパン屋の仕事論』P.21より引用)
見て学ぶ、先輩に教えを乞う、といった意識があまりない若者が多くなってきているのではないでしょうか。トランブルーでは、自ら販売をさせることによって見られること、見ることを意識する、ということを学ばせるようにしています。
そうすることで、“気づき”の五感を鍛えているのです。
また、常に不安や緊張感を持つことによってパン作りが怠惰なルーティーンに陥らないように気をつけています。どんな仕事でもそうですが、同じ作業をしているようで毎日環境が違ったり、お客様が違ったり、状況は常に同じではありません。
状況に甘んじないことを気づかせてくれます。
他にも、修行計画は自分で立てる、この人だ!と思ったらしつこくアタックする、など学び、再発見を与えてくれる部分が満載です。
ここまで読んでいると、お父さんの後を継いで順風満帆の人生のようですが、オープンしてからしばらくはお客様が来ず、明日の営業ができるほどパンが余ったり、お父さんの死後、借金と工場の再建に追われながら仕事をしていたことも書かれています。
どんな人も苦労なくして現在の状況にいるわけではないのだ、ということに気づくでしょう。
今、苦しい状況にいる方にもすこし時間をとって読んでいただきたい1冊です。
ベッカライ・ビオブロートは、兵庫県芦屋にあるパン屋です。
ベッカライは「ベーカリー」、ビオは「バイオ」、ブロートは「ブレット」という意味を持っています。
特徴は、毎日石臼で挽いた全粒粉の小麦を使っていること、オーガニックの食材にこだわっていること。なぜそんなパン屋ができたのか、材料から店の立地まで“なぜ”が全て書かれている1冊です。
- 著者
- 松崎 太
- 出版日
- 2014-09-01
全粒粉は、ふすまの部分まで入っているので普通の小麦より栄養価が高いと言われています。オーガニックの食材は、環境にも体にも環境にも優しい食材で、どちらも日本ですこしずつ認知が広がり、好む人も増えているのではないでしょうか。
松崎は、こうした食材にドイツ修行時代に出会いました。ドイツでは、いろいろな作り方で自然な食材を生かしたパンを焼いている店がたくさんあります。簡単な道のりではなかったようですが、パンの学校にも通い、マイスターの資格も取っており、パンのことについてかなり勉強したようです。
「自分が美味しいと思うパンしか作らない」それが松崎のこだわりです。当たり前のことのようですが、こだわればこだわるほど材料の原価は上がっていきます。そんな値段でも買ってくれる土地、こだわりのパンが好きな土地、松崎にとってのそれが芦屋だったそうです。
そんなこだわりのパン屋に行ってみたくなりませんか?
もし、時間があれば行く前に是非こちらを1度読んでいただきたいです。
松崎が作るパンは、どこにもないちょっと変わったパンでびっくりするので、すこしパンについて理解してから食べた方が美味しさが増すと思います。
タルマーリーをご存知でしょうか。
岡山駅から電車で2時間以上かかる山の中に、週3回は休み毎年1ヶ月の長期休暇をとるパン屋があります。
そんな不思議なパン屋の理念は「利潤」を出さないということ。
なぜそんなパン屋ができたのか、それがこの1冊に書かれています。
- 著者
- 渡邉 格
- 出版日
- 2013-09-25
農業を勉強し、卒業するときには30歳新卒となっていた渡邉格。当然就職先も決まらず、言われるがままに有機農産物の卸売業者へ就職します。そこで目の当たりにしたのが、卸売業者と農業の裏側。突きつけられた現実と、描いていた理想とのギャップに耐えられず、パン屋を目指します。
そのきっかけとなっているのが、祖父の「パンをやりなさい」という夢のお告げと父が教えてくれたマルクスの資本論です。
経済学を触ったことある方には、かなり面白い内容になっていると思います。また、経済学や循環社会、お金の仕組みなど随所に出てくるので、すこし難しい内容が好きな方にもおすすめです。
渡邉が資本論を読んで感じたのは、マルクスのいた150年前のパン屋と現在のパン屋はほとんど変わっていないということ。
労働を商品として売る労働者、安く長く働かせ利潤を追求する資本家、そして労働から得たお金を家賃などで労働者からさらに搾取するブルジョア。会社で働いている方であれば、なんとなくわかる資本主義の構造ではないでしょうか。
マルクスが解き明かした資本主義の構造は、「職」と「食」が安くなるということでした。
こうした資本主義社会に疑問を持った渡邉は、抜けるために「田舎」「発酵」「循環」ということをキーワードにどうやって現在の鳥取の山奥でパン屋をすることになったか、どういった考えでパンを作り地域の中で循環を作っているか、ということを本書で説明しています。
安いもの早いものではなく、「本物」を売る時代になるとも書かれてあり、これから変動の経済で生きていく中で、必要な一つの考えを与えてくれてるかもしれません。
経済学を学んでいない方にもわかりやすい内容になっているので、生き方や経済を考えるときに是非読んでいただきたい1冊です。
61件のパン屋の思いが詰まった1冊です。
普段通っているパン屋が、どんな思い、どんな考えでパンを焼いているか、また焼き始めたか考えたことがあるでしょうか。毎日通る、何気なくあるパン屋にも色々なストーリーが詰まっています。
読んでいるうちに自分の人生と重なる部分もあるかもしれません。
もしかしたら、自分の働き方を考える1冊になるかも。それほど、様々な人生が詰まっています。
- 著者
- 入江葵
- 出版日
- 2015-12-02
掲載されているパン屋のほとんどが、自分で酵母を起こしています。材料も、オーガニックや国産のものを使用したり、自分で粉を挽いたりと、たくさんのこだわりがあふれる本です。
日本のパン屋だけでなく、アメリカやスウェーデンのパン屋さんも掲載されています。外国でも日本でも、それぞれの人がこんな思いでパンを焼いているんだ、と感心するばかりです。
時代に流され、何も考えずに生きていたら考えないようなことを考えさせてくれる人ばかり。すこし変わってるけど、そこがその人の個性や人生の面白さだと思わせてくれます。人が違うからパンという同じものを作っていても、全く違うものができる。それが、ものづくりの面白いところです。
中にはパンを焼きたいから焼いている、というより発酵することに焦点を当てている人もいます。そんな視点でパンをみたことなかった!と新しい発見をくれるでしょう。
とっても個性的な1冊です。ちょっと変わった本が読んでみたい、という方におすすめします!
パン屋の働き方や生き方を考えさせてくれる本を紹介しました。どの方も、自分の感じたことを大切にしていることが感じられます。流れるように日々を過ごすことに、悩んでいる方にも、そうでない方にも1つのヒントとして参考になる本ばかりです。気になる1冊があれば、ぜひ手にとって見てください。