富永京子です。この原稿は2月上旬に書いているのですが、バレンタインデーを控えていて、デパートやスーパーもそれ系の催事で盛り上がっています。お客さんのほとんどが女性の方で、なかなか男性には入りにくい状態だなと思ったり、そもそも入りたいという欲求があまりわかない人が大半なのかなとか、そんなことを考えてしまいました。いずれにせよ、バレンタインデーとホワイトデーに挟まれるこの期間、「女性」や「男性」であることについて、スイーツ片手に思いを巡らせてもいいのかもしれません。こじつけの導入のようですが…。
ジェンダーという概念はそもそもどういったものなのか、というと、本当に辞書的な定義をするならば身体的・生理的な性差である「セックス」となります。対して、生得的なもののように見える性差が実は社会的・文化的につくられているものなのだ、というフェミニズム運動の主張から、社会的・文化的な意味での性である「ジェンダー」概念が生じたと言われています。この定義自体は、本などで読んだことのある方が多いと思われます。
- 著者
- 鳥飼 茜
- 出版日
- 2014-02-21
セックスレスに悩むフツーのOL・藤崎マキが手伝うことになった家業は、実はアダルトグッズの問屋さんだった……という衝撃的な導入から始まる本作。もちろん、設定の奇抜さだけではなく、男と女のセクシュアリティについて考えさせてくれます。
- 著者
- 花津 ハナヨ
- 出版日
- 2010-04-19
前回の記事では「家族」をテーマに『弟の夫』(田亀源五郎)を取り上げましたが、性やパートナーシップも多様です。「LGBT」(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)という言葉は比較的一般的になったように思いますが、その中でも性に対する違和感には色々なものがあるでしょう。身体そのもの(セックス)を変更したいのか、社会的な性役割(ジェンダー)を変えたいのかという問題がありますし、服装やお化粧によって変わりたい人もいれば、公的な書類や手続きの上での性別を変えたい人もいるでしょう。
- 著者
- 志村 貴子
- 出版日
前回紹介した『クッキングパパ』は少し異なりますが、『美味しんぼ』『味いちもんめ』など、青年誌のグルメ漫画というと、どうにも、お金をかけた材料、ときにはマニアックな香辛料などを用いて、職業的に、あるいは余暇を使って長時間、じっくりと作るものが多い印象です。それに対して、『きのう何食べた?』は必ずしもそうではありません。もちろん一日中かけて作る「ごちそう」もありますが、比較的安価な食材で短時間に作れ、分量も細かくない、という点がほかの青年誌グルメ漫画とは少し異なる点です。また、底値の食材を探してスーパーに向かったり、近所の人と多量すぎる食材を分けあったりといった、とてもドラマチックではありえない「料理」をとりまくエピソードも興味深いです。料理という行為がそれ単独であるのではなく、たとえば後片付けや食材の購入といった家事をなす諸活動からできているのだという、当たり前のことを思い起こさせてくれます。
- 著者
- よしなが ふみ
- 出版日
- 2007-11-22
「気持ちいいこと逃すのもったいないじゃん」という信念のもと、さまざまな男性とセックスしてしまう女子高校生・小谷さんと、純情で潔癖な男子高校生・山下くんのラブストーリーです。見た目が素朴で清楚かつ「ビッチ」「ヤリマン」なヒロイン自体は比較的よく見かけますが、小谷さんはとりわけ寂しいわけでも、誰かに依存したいわけでもなければ、不特定多数の人とのセックスを誰に吹聴するでもない点がすこし面白い点です。あまり裕福でない生育環境からか「もったいない精神」が強く、セックスをするのも気持ちよくて、タダでできるから。一方で、彼女に恋する山下くんは、彼女の心も体も独占できないことに悩みます。
- 著者
- 新田 章
- 出版日
- 2013-11-22
今回の5冊、いかがだったでしょうか?ジェンダーやフェミニズムに関する作品批評は、ネットで探すだけでもたくさんあるので、興味を持ったらぜひ色々探してみてください。
マンガ社会学
立命館大学産業社会学部准教授富永京子先生による連載。社会学のさまざまなテーマからマンガを見てみると、どのような読み方ができるのか。知っているマンガも、新しいもののように見えてきます。インタビューも。