漫画の主人公は、どんな作品においても正義感あふれる熱い男なわけではありません。ゲスくて、むしろ悪役の方が似合うだろう、という人物が出てくる漫画も沢山あるのです。今回は、主人公がクズ、だけど話は面白い! そんなおすすめ漫画を紹介します。
まずおすすめしたいのが『軍鶏』。成績優秀で将来を期待されていた主人公の亮が、両親の「まとわりつくような生暖かい愛情」に嫌気がさし2人を刺殺する場面から物語は始まります。
もちろん亮は少年院へと送られるわけですが、華奢でひ弱な身体に加え、院に送られた理由が「親殺し」ということもあって、いじめられてしまいます。世界で生き抜いていくため、亮は体育教官から空手を教わり、屈強な男へと変貌を遂げるのです。また院を出た後も金のため、あるいは暴力への抗いがたい欲求から、亮は格闘の世界へ足を踏み入れていくことになります。
- 著者
- たなか 亜希夫
- 出版日
- 2011-06-23
いきなり主人公が親を殺害するシーンで始まる『軍鶏』ですが、主人公はその後も、とある相手と戦いたいがために、対戦相手の恋人を強姦するなど、悪行を重ねていきます。金や自身の欲望のために暴力を続けていく主人公の非道はとどまることを知りません。
はたして彼は更生することができるのか、また彼が生きることになる社会の歪な部分を描いたこの作品は、単なる格闘技を描いた格闘漫画とは一線を画した読み応えを持ち合わせています。
その分、暴力描写や残酷描写も多いので、苦手な人は要注意です。
「自分の近くにある対象物の一部をキューブ状にする」という超能力を持つ主人公が、その能力を発見した転校生とともに、世の中の悪事(とはいっても、車を運転しながら携帯電話を使用するような、マナーが悪いで済ませられてしまうようなもの)を正すために、世直しと称して超能力を利用した大量虐殺を行っていく漫画です。
- 著者
- 鬼頭 莫宏
- 出版日
- 2011-01-07
主人公がクズすぎ、というタイトルで書いていますが、この作品は主人公よりも、そのパートナーである転校生のクズさが際立ちます。「ルールを守れないヤツや出来損ないは殺してもいい」と公言してしまうような独善的思想を持っている転校生は、主人公の超能力を知ると、それを利用して大量殺人をしないかと持ち掛けるのです。
はじめは渋っていた主人公ですが、気弱で逆らえない性格と、憧れの女子の友人を超能力の誤爆で殺してしまったことから、転校生の「世直し」に手を貸してゆくことになっていきます。
あまりにも幼稚で独りよがりな虐殺の行きつく先に待っているのは、いったいどんな世の中なのでしょうか。
32歳、童貞でニートな主人公は初恋の相手であるアンナと親友が結婚し、さらには子どもまで身ごもっていることを知ることになります。自暴自棄になり、酔った勢いで小学校に侵入する主人公。しかし、警備員から逃れようとしていた矢先、屋上から転落してしまいます。死んだと思った彼が意識を取り戻すと、20年前、つまり自分が小学生の頃に戻っていました。姿は小学生ですが、精神はそのままで……。
自分とアンナとの理想の人生をやり直そうとするも、すでにアンナと親友は両想いで、自分が入り込む余地はないことに気が付いた主人公は、32年生きてきた知識を総動員して、欲望のままに生きていくことを決意していきます。
- 著者
- 永瀬 ようすけ
- 出版日
- 2014-06-10
上記の通りタイムスリップ、過去改変ものとなる作品なのですが、タイトルから想像するような「ヒロインを助けるために主人公が過去へさかのぼって歴史を改変していく」という話ではなく、むしろ「自身の歪んだ欲望のために主人公が自分の手で過去の思い出を汚していく」話になっています。
主人公は徹頭徹尾エゴイストでドクズというどうしようもない人物なため、中盤の主人公が非道の限りを尽くす辺りは非常に胸糞悪くなるのです。だからこそ、この作品の結末は救われない結末にもかかわらず、スカッとした爽快感を多少は感じることができるのでしょう。
元々ウェブ漫画として挙げられた作品で、2017年現在でも一部が「ニコニコ静画」や「comico」で閲覧することができます。
見た目はメガネの似合う男子、遅刻もせずに学校の席は最前列で授業態度も抜群。そんな見るからに優等生な主人公ですが、実際のところは遅刻しそうな時は仮病で休み、席が最前列なのは教師から死角で何をやっていてもばれないから、という真面目の皮を被ったクズな子でした。
マイペースに楽をして生きていきたい主人公は、そんな「まじめ系クズ」な部分をひた隠しにしています。ですが、そんな平穏を何より求める主人公の前に、主人公とは別ベクトルにクズな不良や、とんでもなく真面目な爽やかイケメン、主人公をひたすらに見てくる女子、など個性豊かなメンバーが勢ぞろい。主人公がまじめ系クズなのは隠し通せるのか、果たして主人公の平穏な日常はやってくるのか?展開が気になるギャグ漫画です。
- 著者
- ナンキダイ
- 出版日
- 2015-11-17
もともとネットスラングとして発生した「まじめ系クズ」という言葉ですが、それを漫画化してしまった本作。主人公の清々しいまでのまじめ系クズっぷりもいいのですが、まわりの登場人物もキャラがたっています。
「ボコボコにされたヤツみたいにするぞ」というよくわからない不良の発言をはじめ、登場人物がみんな魅力的ですので、主人公は好きになれなくても誰かお気に入りの登場人物がみつかるのではないでしょうか。もちろん、「クラスにいる真面目なメガネのあいつも裏ではこのクズみたいなこと考えてるのかな」と思いながら一読するのもおすすめです。
映画化もされている人気作です。40歳のうだつの上がらない会社員である大黒シズオはある日、「漫画家になろう」と一念発起し会社を辞めてしまいます。しかし、学生時代の美術の評価は1、これと言って描きたいことがあるわけでもないシズオの漫画は入選することはなく、時間だけが過ぎていきます。
後輩を「金なんか気にすんな」と飯に連れて行って飯代は親友に出してもらうなどのドクズっぷりをいかんなく発揮していくシズオの明日はどっちだ、漫画家としてデビューできるのか……?
- 著者
- 青野 春秋
- 出版日
- 2007-10-30
娘がいるにも関わらずいきなり会社を辞めてしまう、父親の部屋で嘔吐、口から出てくるのは出まかせだらけ、留学に行きたいとバイトをしながら貯金している娘に金を借りるなど、どうしようもない大人の代表でしかない主人公のシズオ。
しかし作中では、親友のとある行動がきっかけとなって、シズオの漫画や生活は大きく変化していくことになります。序盤はどうしようもないおじさんのクズっぷりを見せつけられ、心が苦しくなったり笑ったりで読んでいられるほのぼの漫画なのですが、シズオに変化が見られる辺りは本当に感涙必至の展開です。
主人公のクズさに暖かい眼差しを送りながら、最終巻まで読み切っていただきたい漫画です。「自分のためじゃなくて、人のために頑張らないといけないな」と反面教師のように思わせてくれる、そんな素敵な作品に仕上がっています。
いかがだったでしょうか。主人公がクズな漫画といえば、他にも『カイジ』や『闇金ウシジマくん』など、映像化されるような超人気作が目白押しです。案外そういう漫画も面白いじゃん! ということを少しでもご理解いただけたらと思います。