17歳にしてデビューし、1980年代の少女漫画ブームを牽引してきた作者。芸術に秀で、高い画力を持つだけでなくキャラクターにも魅力があります。とにかく前向きなキャラが多く、ポジティブな気分になれますよ!
青森県出身の漫画家。かのウルトラマンをデザインしたことで有名な造型士の成田亨を従叔父に持ち、芸術に理解のある両親の元で才能を磨きました。1977年、17歳にして『一星へどうぞ』という作品でデビューを果たします。
高校在学中にデビューしたため、学校に通いながら執筆。長い漫画家生活ですが、所属先は白泉社1本で活動しています。理論的に話を作るわけではなく、感覚でぱっとアイデアが浮かぶひらめき型とのこと。日本の伝統芸能である「能学」をテーマにしたものからアメリカを舞台にしたものまで、幅広い世界観で描いています。
そしてなんといっても評価が高いのがその画力!人物の表情だけでなく服装、背景などにもこだわり、クオリティの高い2次元を構築しています。日本画の技術なども取り入れ、その芸術性の高さが伺えます。2017年には『成田美名子アートワークス』が発売され、2018年には銀座で展示会も開かれました。
彼女の作品の人気をさらに後押ししているのが、登場人物のキャラクター。自身の性格からなのか、ひたすらに前向きなキャラが多く登場します。読んでいて元気をもらえる作品ばかりです!多彩な才能を持ち、少女漫画界を引っ張り続けている成田美名子作品の魅力を紹介します。
後にご紹介する『NATURAL』という作品の主人公のライバルかつ友人である榊原西門の兄・榊原憲人を主人公にしたスピンオフ作品です。
『NATURAL』完結後、外伝として2編が描かれましたが、それが人気になり連載となりました。日本の伝統芸能である「能学」を舞台にした物語。能という特殊な世界で生きる人々の生きざまが描かれています。
- 著者
- 成田 美名子
- 出版日
- 2003-07-05
2歳の頃から能学を始め、修行に励む憲人。榊原家は代々神職の家系ですが、憲人の母方が能のシテ方という家系出身。憲人はそんな母方の祖父であり師匠の左右十郎の内弟子として多忙な日々を送っています。
普段は童顔のうえ、メガネをかけており地味目の憲人。外見だけでなく性格もとにかくマジメ!そんな憲人には派手なイケメン弟・西門と、かわいくかつ活発な妹・彩紀がいます。実は西門は幼少期に養子に出されていたのですが、女性問題で家を追い出されて榊原家に戻ってきたのでした。
そんな少し変わった榊原家を中心に、とにかく憲人が能に励むお話。普段は地味でも、ひとたび舞台に立てばその姿は美しく、観客を魅了します。
一編につき1つの能の作品をテーマに物語が進みますが、1つ物語が進むたびに憲人が人間としても能楽師としても成長していくのが魅力。その健気で強いさまは美しく胸が打たれます。物語の中盤では能にしか興味がなかった憲人が恋をしますが、それがまた1つ彼を成長させることに……。
装束や小道具までこと細やかに描かれ、風景や空気感まで伝わってくるようなとにかく美しい絵……見ているだけでも「日本の芸術」が伝わってきます。「和」の空気感が好きな方には特におすすめです!
ペルーで生まれ育った少年・ミゲール。9歳の時、とある事件をきっかけに日本に渡り、日本人家族の養子となりました。時はたって高校に進学したミゲールは体育の授業で華麗なダンクシュートを決め、バスケ部に勧誘されます。
抜群の運動神経を持つミゲールですが、「チームプレイが苦手」だとバスケットボール部への入部を拒否し、弓道部に所属。しかしそれには理由があったのでした。
- 著者
- 成田 美名子
- 出版日
実はミゲールには壮絶な過去が。子供の頃、拳銃でファビアンという少年を撃ってしまったのです。少年は命こそ落とさなかったものの、仕返しなどされないようにと日本に来たのでした。
そんな過去を持つミゲールには当然のごとく心に深い傷が残っています。「怒ると何をするか分からない」と自分に対して不安を持ち続けているのです。
しかしそれこそがミゲールの優しさ。なぜなら家族や友人が狙われるときにしかミゲールは怒らないからです。それを知ったバスケ仲間は話し合い、気遣いあい、ミゲールもバスケ部に入部することに!能力の高い人物が集まったこともあり、強豪校へと成長します。
さらに弓道ではライバルとなる榊原西門とも出会い、バスケも弓道も楽しみながら順調な高校生活を送るミゲール。しかし、あるときから謎の男に命を狙われるようになり……。
部活動をメインにした高校生の青春、ミゲールの過去からくるサスペンス、さらにミゲールの恋についても描かれる盛りだくさんな作品です。
とにかく仲間や家族、全員が優しくて前向き!見返りを求めることなくミゲールを支えようとし、さらにミゲールもそれを汲んで返そうとする、あたたかい世界が描かれます。
舞台はニューヨーク。アニスという少女は、同級生で俳優兼モデルのシヴァが抱える秘密に気付きます。実は彼には双子の弟、サイファがおり、1日おきに学校へ来ていたのです。
友達を騙していると怒り、2人に理由を聞こうとするアニス。しかしサイファは気付かないなら友達なんてその程度、と一笑にふします。事情を知りたいアニスと、知られたくないシヴァ、サイファ。3人はとある勝負をすることになりました。
- 著者
- 成田 美名子
- 出版日
2週間以内にシヴァとサイファを見分けられるようになったら真実を教える、という賭け。できなければ一切詮索しないでくれというものです。2週間同居を続け最終的に見分けがつくようになったアニスでしたが、やはり自分達から望んで話をしてほしいと思いわざと賭けには負けるのでした。
しかしこの賭けがきっかけで、アニスとサイファは恋人に。シヴァも街で出会った女優・ディーナに心惹かれ始めます。お互いが恋愛をしても双子の「秘密」は続いていましたが、シヴァはディーナに全てを打ち明けたいとサイファに相談します。しかしサイファはこれを断り……。
そして直後、シヴァとディーナには悲劇的な別れが……。これをきっかけにシヴァとサイファはついに「2人1役」を解消することになったのです。なぜ2人は家を出て2人で暮らし、入れ替わりの生活をしていたのか。あまりにも重い双子の過去も語られます。
一見双子の強みを生かして生きているかのように見えるシヴァとサイファ。しかしそれは互いへの依存であり、いつ崩れ去るかわからないものでした。しかし実際に崩れてしまったあと、2人それぞれが違う経験を経てそれぞれが「1人の人間」として自立し、物語の最後にはまた再会します。
この物語の特徴は、登場人物が辛いとき、支えてくれるのが友人だということ。明るく楽しく優しいキャラたちが続々登場します!どんな状況でも助け、支えてくれる友情が美しいです。物語の後半はダークな内容が強くなりますが、恋愛、友情があり、キャラクターの葛藤、成長……最後は爽やかな結末を迎えます。
そして成田美名子の画力がこれでもかというほど発揮されている作品の1つ。アメリカが舞台なのに小物や服装、建物までが綿密な取材の上で細やかに描かれ、現実感に溢れています。だからこそ物語にもリアリティを感じるのかもしれません。絵も内容もおすすめの作品です!
『CIPHER』については<漫画『CIPHER』結末までの見所をネタバレ考察!泣ける名作が無料!>で詳しく紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
1980年頃のロサンゼルス。主人公はシャールという美少年とフランスからの留学生・ジェラール。ジェラールはジャーナリスト志望ですがとにかく正義感が強く、ある日学内の不良を告発する記事を書き、その不良に襲われてしまいます。
その場に颯爽と現れ、ジェラールを助けたのがシャール。なんとシャールは石油王の息子!4つ飛び級で進学しているうえに運動神経もよく、武道の心得もありなによりイケメンというスーパーハイスペックです。
- 著者
- 成田 美名子
- 出版日
ジェラールは余計なことをするなとシャールを突き放しますが、襲われたときの怪我が原因でバイトもクビになりアパートも追い出されと散々な目に……。そこにまたシャールが現れ、住み込み運転手にならないかと提案。悩みながらもジェラールはこれを受け入れます。
ここまで見るとシャールは性格のいい青年ですが、彼の出生には秘密がありどこか影があります。その生い立ちからなのか自身の才覚からなのか、周りを冷めた目でしか見れないシャール。しかし真っ直ぐで熱いジェラールと、おなじく住み込みで働く日本人女性の翼などと関わっていくうちにシャールにも変化が……。
キャラクターそれぞれに変わったところがあるといえど、芯はみんなまっすぐで前向き!自身の壁と正面から向き合って、周りの手を借りながら生きていきます。学生時代ならではの多感な時期を個性的なキャラクターがハチャメチャとすごす、エンターテインメント性に溢れた作品になっています。
全8巻刊行されていますが、8巻通じたストーリーであるとともに1巻ずつでくぎりもついており、手に取りやすい作品です。青春時代、仲間とわちゃわちゃ楽しんだ思い出が蘇ってくるような楽しいお話、ぜひ1度読んでみてください!
ストーリーと画力で、まるで映画を見ているかのような気分になる成田美名子作品。一目見ればハマってしまうこと間違いなし!その明るく美しい世界にのめりこんでみませんか?