人外×少女で大人気!2017年秋にアニメ化され、新章もスタートした『魔法使いの嫁』。すんなりと感情移入できる恋愛展開とファンタジー要素が多く詰め込まれた世界観は好奇心を掻き立てられます。今回はそんな本作の様々なシーンをご紹介!最新刊13巻までの全巻のネタバレを含むのでご注意ください。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2014-04-10
人外と人間の恋を描いたファンタジー漫画が、2016年3月にテレビアニメ放送されました。
そもそも「人外」とは何かというと、人と意思疎通ができ人間的な部分は持ち合わせているが、明らかに人間とは異なる要素を持っている人間とは異なるもののことを指します。そのため、人ならざる存在という意味合いを込めて「人外」と表現されています。
人外×少女を取り入れた本作はファンタジーの世界観、恋愛展開の心理描写どちらも丁寧になされた読みごたえのある作品です。
妖精にドラゴン、呪いに魔法などの王道の設定もそれぞれ奥行きを感じさせる描写があり、恋愛展開ではふたりの会話のあたたかさにほっこりしてしまいます。
しかし軽すぎない、むしろダークな雰囲気が漂っているのは夫婦であるふたりの過去に何やら暗いものがあるから。徐々に明かされるその真相を知り、より作品にハマっていってしまいます。
今回はそんな本作の魅力をキャラとストーリー全巻からご紹介!ネタバレを含みますのでご注意ください。
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人ならざる者との交流は、昔話や童話の中で古くから語られてきた物語です。漫画でも人外の存在する作品は多く、ファンタジーからSF、日常系までジャンルは様々。中でもヒロインの可愛さが話題の作品をご紹介します。
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身寄りも、生きる希望も、術も持たない少女、羽鳥チセはイギリスの闇市場で「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」と呼ばれ、希少な商品として出品されていました。
「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」とは女王蜂のような存在。あらゆるものを引きつけ捉えることができてしまうと1巻では説明されています。
オークション会場では100万ポンドから始まり、200、225と値が吊り上げられていく中、いきなり500という数字を申し出た者がいました。
それは大きなヤギのようなツノに大型犬の頭蓋骨のような頭部をした異形の者です。エリアスというその人物は実は魔法使いで、魔法の性質を生まれつき持っている夜の愛し仔・チセを、弟子にするために買い取ったのです。そしてそれだけではなく、彼女にこうも言います。
「僕は 君を僕のお嫁さんにするつもりでもあるんだ」(『魔法使いの嫁』1巻より引用)
そうして異形の者と人間の奇妙なふたり暮らしが始まりました。
異様な見た目で人嫌い、さらには引きこもりの魔法使い、エリアス。彼はその見た目とは裏腹に意外と誠実な面をチセに見せます。彼が初めてその本心を垣間見せるのが2巻でのことです。
魔法使いを嫌う魔術師が引き起こした問題を解決しに行くエリアスとチセ。そこでその魔術師からチセの命が長くないことを知らされるのです。彼女は問題が解決した後、エリアスにそのことについて再度聞き、彼は真相を話します。
夜の愛し仔は無尽蔵に魔力を吸収し生み出すことのできる体質ですが、やがて体がその負荷に耐えきれなくなり、時が来ると全ての身体機能が一気に止まってしまうというのです。短いとは言え、ほぼ無尽蔵の魔力を使えるとあって夜の愛し仔は高値で取引されていたのでした。
そしてそのことを告げた後、エリアスは彼女にこう言い募ります。
「僕は人間でも妖怪や精霊でもない半端者でね
永く永く生きてきてとても沢山の人間を見てきたけれど よくわからないんだ
考えを理解はできる でも共感はできない
君が欲しがるだろうなって言葉をかけて寝床も食事も知識も与えて
気にかけて自分で育てたら
何かがわかるんじゃないかと思った」(魔法使いの嫁1巻より引用)(複数中略あり)
その長い告白を黙って聞くチセに、エリアスはわざと明るい声でこう続けます。
「そうだ!この記憶がいらないなら壊してあげるよ!」(魔法使いの嫁1巻より引用)
「半端者」でありながら、それでも他者を理解したいという孤独感やチセを利用しているという罪悪感。そしてこの話を聞いた記憶を消そうかとチセに提案するエリアスですが、そうしたいのは彼なのではないでしょうか。初めて他者と向き合ったことへの恐れも感じられます。
恐ろしい見た目をしているのにエリアスが愛おしくなってしまう場面です。そしてそんな彼にチセはある言葉をかけるのですが、続きは作品でご確認ください。
このシーンはエリアスが疲れの溜まったチセを抱きかかえて歩いているのですが、どちらが年上なのか分からないような、エリアスの弱さとチセの強さに心を揺さぶられます。
ある辛い過去を抱えながらも周囲への配慮を忘れない、強く優しい少女、チセ。体裁的にはエリアルに買われて救われた形ですが、ストーリーでは彼の心を彼女が何度も救います。彼女が2巻で彼の心に触れ、さらにその秘密と心の深部へ入っていくのが3巻でのことです。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2014-09-10
エリアスを「おちびさん」と呼ぶほど長生きしているカルタフィルス(ヨセフ)という人物によってチセを攻撃され、我を失うエリアス。化け物のような見た目になってカルタフィルスに反撃します。
しかし気を失っていたところから目を覚ましたチセがエリアスにだきついて戦いをやめさせるのです。我に返ったエリアスは抱きつくチセから離れようとします。それを離そうとしないチセ。エリアスは彼女にこう言います。
「…チセ
こノ姿は怖いだロ 戻るかラ離シな」(魔法使いの嫁1巻より引用)
恐ろしい声でそう気遣いながらも、その言葉によって自身が傷ついている様子のエリアス。それに気づいたチセは彼にこう言います。
「…そうですね
家の扉がくぐれなさそうで不便だから
戻ったほうがよさそうです」(魔法使いの嫁1巻より引用)
その何気ない自然さで包んだ優しい言葉で、エリアスは孤独や憎しみから離れ、また日常へと戻っていくことができるのです。直接的に傷に触れることなく彼の心を癒すチセ。彼女の凛とした様子に引き込まれる名シーンです。
魔法使いであり、人外の見た目をしたエリアスとチセの物語。1巻ではチセが徐々に魔法の国の世界を知っていく様子が描かれていきます。
物語の幕開けはあるオークションの会場。そこでは人身売買が行われていました。チセはどうやら今回の競りの目玉商品であったらしく、登場するだけで周囲が「夜の愛し仔(スレイ・ベガ)」だと色めき立ちます。
100からスタートした競りは、225のあとにいきなり500という数字が出て、途端に勝負がつきます。500万ポンドもの大金をだした人こそがエリアスでした。
彼はチセを弟子にするために買ったのだと言い、うつむいたままの彼女の背筋を正し、父が蒸発し、母が自殺したという生い立ちに思い詰める彼女を優しく諭します。
そしてそのまま彼女を異界に連れていくのです。少しの間目をつむっていたあとにチセが見た光景は森の中に佇む1軒の大きな家でした。
拾われた子猫のように身ぐるみを剥がされて風呂に入れられ、あたたかい食事を振舞われるチセ。それまでいた世界の過酷さが嘘のようです。
しかしいきなり異界に連れてこられたチセは知識のない赤ん坊のようなもの。その夜に妖精たちに連れ出され、深い森で妖精の国に来ないかと誘われます。
もといた世界の日本に戻っても何もいいことがないと思い当たり、妖精の甘い言葉に惑わされそうになるチセ。しかし彼女はこう言って誘いを断るのです。
「…今までここにいていいって言われたことが無かったんだ
でも…あのヒトは言ってくれたから
玩具だと思ってても飽きたら捨てられるのでもいいの
一度だけでも…家族だって言ってくれたから」(『魔法使いの嫁』1巻より引用)
そしてそこにエリアスが現れるのです。
「僕の弟子(パピー)はもうきちんと自分の巣を覚えたみたいだね?」(『魔法使いの嫁』1巻より引用)
実は彼はチセが妖精と一緒に家を出た時点で気づいており、いい経験になるからと彼女をそのまま行かせたのでした。
ひと段落して名前を呼ばれ、手を伸ばされて怯えるチセ。反射的に怒られると身構えます。
しかし、その手は優しく彼女の頭をなで、エリアスは自分を頼れと言って彼女を抱きしめます。そのあたたかさにまた嬉しさを感じるチセでしたが、エリアスの体がこわばっているのも感じます。
そしてそのまま抱っこされ、家に帰るチセ。彼女に傷があることに気づいたエリアスは帰ったら手当をしようと言います。未来の奥さんに傷が残ると大変だ、と。
ん?
そうです。実はエリアスはチセを弟子だけではなくお嫁さんにするつもりだったのです。
そこからふたりの不思議な暮らしが始まります。
そのあとには、もうほとんどいないと言われているその他の魔法使いのアンジェリカに会うことから始まり、竜(ドラゴン)の国に連れて行かれ、死をもって森となるドラゴンに出会ったり、猫好きにはたまらない猫の国への訪問など徐々に魔法の世界に足を踏み込んでいきます。
猫の国でとある依頼を受けたエリアスとチセなのですが、そこに怪しい男の影が忍び寄ります……。
1巻ではチセが徐々に魔法の世界を理解していくように、読者も過不足ない分かりやすく楽しめるスピードでこの世界観に慣れていきます。おそるおそるこの世界をのぞいてみれば、気づくとどっぷりハマってしまうこと間違いなしです。
1巻でいきなりチセを襲った男はレンフレッドという魔術師とその仲間でした。魔法使いは人外のものからの力を借りて奇跡を起こすのに対し、魔術師は科学的な見地から結果を引き起こす人々を指します。
出来事をおこすのにも違いはあるものの、考え方にも違いがあるようで、人外のものたちは魔術師たちを嫌っていました。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2015-03-10
しかしその魔術師とその仲間はチセを羽交い締めにしながらも、彼女をかわいそうに、と言います。
夜の愛し仔は無尽蔵に魔力を生み出すことができる代わりに、生きているだけで再現なく過剰に魔力の九州と生産を繰り返し、やがて身体が負荷に耐えきれなくなり、すべての身体機能が一斉に停止するというのです。
そしてそのことを告げずにいたエリアスから逃げようと言ってきます。
しかしチセは自分の命の終わりを聞いた時に笑い、彼らから逃げてエリアスのもとへと戻ります。その目に迷いはありませんでした。
かっこいいですね。実はこのチセの姿こそが彼女の真の在り方であり、それが今後エリアスを救うことになるのです。今はまだエリアスが大人ぶっていますが、今後その化けの皮がはがれていく様子が最高なので、そういう面でもストーリーを見てみてください。
チセが自分の意思でエリアスのもとに戻ったのを見て、レンフレッドは無理に戦う訳ではないよう。彼は完全に悪役というわけではない存在なのです。
しかしエリアスに向かってこう言います。
「…人間にもなれず精霊にも戻れん穢れた存在が
人間を買うなんて愚かな真似が許されるか」(『魔法使いの嫁』2巻より引用)
さまざまなふたつ名で呼ばれるエリアスの存在については今後徐々に明らかになっていくのですが、少しずつゆっくりと明かされるものなので、しっかりと確認しながら物語を読みすすめてみてください。
実は今回レンフレッドがチセを襲ったのにはある少年の存在があるのですが……。
実はこの少年の存在が猫の国に呼ばれた依頼にも関わっています。恋人の病を治すために悪魔に騙された悲しい男の物語は血生臭く、美しいものです。
そのあとは噂を聞きつけた妖精を統べる夫婦に出会ったあとは穏やかな日常パート。エリアスに魔法を教えてもらい、アンジェリカに作ってもらった魔力の生産を抑える指輪をつけます。
しかし魔法使いを管理している(実質的にいざとなったらエリアスたちの方が上かと思われますが)協会から、闇オークションに参加してチセを買ったペナルティとして黒い犬の調査をしにいくことになるふたり。
黒い犬とはこちらから手を出さなければ協会と墓を守る役割を果たす存在のことを指します。その協会に着いたエリアスは「…少し厄介なことになったかもしれないな」とつぶやき……。
ついに本作のラスボス的な存在が登場します。この作品はたいていエリアスがチセを大きな愛と力で守っているので、たいていのことが起こっても奇妙な安心感があるのですが、その存在だけは違います。
彼の初登場となった2巻。その奇妙な恐ろしさを作品でお確かめください。
協会で見つけた黒い犬のユリシィはまだ自分の存在をそういうものだと認識していない、経歴の浅い存在でした。チセは彼の過去の記憶に迷い込みます。
そこでユリシィの「妹」であり、幼くして亡くなったイザベルについて知ることになります。ユリシィは墓に入った彼女がいつか起きると信じ、起きた時にひとりではかわいそうだからここでずっと待つのだと決め、死後もここでイザベルを待ち続けていたようでした。
イザベルに似たチセが「彼」に襲われ、涙を流していたユリシィ。チセは目を覚まし、「…大丈夫 私は起きたでしょ?」と彼をあやします。
しかしチセを傷つけられた怒りにまかせ、エリアスが「彼」に激しい攻撃していました。そしてその存在を「カルタフィルス」と呼びました。
すると彼はその名前で呼ぶなと目を見開き、姿を変えてエリアスに襲いかかろうとするのですが、それをチセが止めて……。
そこに一緒にいたレンフレッドが体の再生を止める銃弾をカルタフィルスに放ち、いったんその場は落ちつくのですが、すぐに彼は目を覚まします。
カルタフィルスはヨセフというふたつ名を持ち、魔術師たちの間では「彷徨えるユダヤ人」と呼ばれている存在。はるか昔に「神の息子」に死ねない呪いをかけられたと言われている男で、目的もはっきりせず、ただひたすら自分の興味だけで動く怪物だということで知られています。
そしてこの協会の墓の死体かれ錬成したというキメラを生み出すのです。その顔はイザベルのものでした……。
カルタフィルスのイザベルや猫の国での所業に怒ったチセは我を忘れて魔力を放出してしまうのですが……。
3巻ではついにルツがチセたち御一行の仲間になります。それが誰かはぜひ作品でお確かめください。この巻では5巻にまた読者の涙腺を壊しにくるリャナン・シーとジョエルが登場します。儚く美しいふたりのストーリーの序章をお楽しみください。
4巻では1巻で竜の国にチセをいたずらに連れてきたリンデルと過去のエリアスの話が明かされます。冬の森の中で出会ったふたり。エリアスは「…おなか すいた…」と言って倒れてしまい、リンデルが彼に食事を与え、師匠ラハブのもとへ導いたのでした。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2015-09-10
そこでラハブはエリアスについて「限りなく精霊や妖精寄りなんだけど でもわずかに『人間』が入ってる」と表します。エリアスは森にくる前はただ歩いたということしか分からず、その前の記憶については「あか」とだけ述べます。
無理に記憶を戻す必要はないと言うラハブ。優しい彼はそのままエリアスの名付け親になりました。
しかしそのまま彼をリンデルに丸投げ。その前に良いこと言うのですが、雑……。そんな荒っぽさに人間味が感じられて魅力的なキャラでもあるんですがね。
そのあとともに行動することになったリンデルとエリアス。そしてある晩、こんなことを言うのです
そしてこの言葉を知ってからさらに彼と深く関わることになるチセ。
もう、この巻は神巻です。
詳しいことはぜひ作品で読んで欲しいので多くは語りませんが、ふたりの歴史をつづる会話がいくつもなされます。ヤマザキコレは本当に状況を適切に表現した会話が上手。
かなり合理的だったり、論理的な言葉遣いなのですが、すべての表現がとても優しいのです。そしてその作者の魅力を最も体現した存在がチセで、エリアスが弱みを見せられるように成長できた理由もうなずけます。
とにかくまずは読んでほしい。神巻の4巻です。
スレイ・ベガという特殊な能力を持っていることから登場時からすでに寿命が残り3年ほどだと言われていたチセ。5巻では彼女が吐血してしまい、刻一刻と命が削られている様子が描かれます。
チセへの思いがどんどん強くなっているエリアスは彼女を放っておける訳もなく、急いで知恵をもらおうと妖精の蟻塚へと向かいます。
そこでチセはある出会いをきっかけに生きたいという気持ちを取り戻します。また、その帰り道で今後の伏線になりそうな「古い神」という存在も登場。本筋に大きく関わってきそうな展開盛りだくさんなのでお見逃しなく!
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2016-03-10
今回はファンの間でも人気のリャナンとジョエルのお話をご紹介。ふたりの淡い恋に終わりが訪れます。
もともとリャナンは好きになった男に文才を与える代わりに血をもらうという吸血鬼。しかし「変な気持ち」を抱いた彼女は彼の血を吸うことなく、ただ近くにいることを選びました。
しかし、まったく影響がないという訳ではないようで、リャナンが近くにいることで刻一刻と命を吸い取られていくジョエル。たまたま一瞬だけ姿の見えた「赤いスグリのような目のひと」、リャナンを死ぬ前にもう一度見たいと願います。
彼が余命1週間ほどだと知ったチセは、何かふたりの力になれないかと考えます。そして過去に知った「妖精の塗り薬」を作ることを提案します。それをジョエルのまぶたに塗れば、リャナンの姿が見えるはずだと。
そもそも妖精は人間に姿を見られることを嫌うため、その薬を人間に使ったことを彼らに知られれば怒りを買うだろうと忠告するエリアス。しかし「チセのわがままは初めてだし」と彼女の言うことを受け入れます。エリアス、優しい……。
そして5日間ほとんど不眠不休で薬を見守るチセ。心配そうに見守るエリアスの横で、ついに完成させます。
そしてリャナンに薬を渡し、決断をゆだねます。
「いいよ 好きにして
私はふたりが話せるようになればって思ってるけど
貴方がしたいようにしていいんだよ」(『魔法使いの嫁』5巻より引用)
このあと、リャナンはその薬をジョエルのまぶたに塗ることにするのですが……。
ふたりの再会の様子は実際に作品でお確かめください。一瞬交わっただけのふたりの人生がジョエルの絶命の間近で再び交わり、互いの気持ちを確かめ合う。その様子は美しく、切ないものです。
そのあとに吸血鬼でありながら、ある決断をしたリャナンの一途な言葉には泣きそうになってしまいます。作品でその儚い別れのシーンをぜひご覧ください。
6巻は作中でクリスマスシーズンということで、チセがエリアスのためにプレゼントを探しにいくこととなります。まぁ魔術師レンフレッドの弟子であるアリスとの待ち合わせでたまたま探すことになるだけなのですが……。
アリスとの待ち合わせを何となく彼に告げない方がいい気がしたチセは、彼が郵便物の受け渡しで他の人の相手をしている間に家をこっそり抜け出します。
しかしそれをエリアスが見逃すはずもなく、過去に魔法使いのアンジェリカにもらった映像だけが見られる装置を使ってチセのあとを追わせます。さすがヤンデレ旦那です。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2016-09-10
その買い物の途中で過去に薬の売買をしていたアリスの昔の馴染みが絡んできます。そこから彼女の過去、レンフレッドとの出会い、彼の顔に傷についてのエピソードが明かされます。
少ししか登場しなかったキャラにもそれぞれの過去があり、それが丁寧に描かれるのが『魔法使いの嫁』の魅力でもありますね。ふたりの馴れ初めに心が温まります。
その翌日、もらったプレゼントのお礼をしにでかけた時、弟を探すステラという少女と出会います。実はそれは喧嘩の拍子に弟のことをいらないといってしまった彼女の言葉が原因なのですが、どんどんふたりの絆は薄くなり、ついにはお互いの名前も呼べなくなってしまいます。
果たして姉弟はどうやってその繋がりを取り戻すのでしょうか。何か大きな魔法の見せ場などがある訳ではありませんが、家族の絆を大切にしたくなるエピソードで、エリアスも彼らのその姿に何か感じるところがあるようです。
そしてエリアスとの契約によって月に1度お菓子をあげる代わりに弟を探すのを手伝ってもらったステラはそれから度々チセたちの家に来るようになります。
初めて出来た友達に嬉しそうな様子のチセ。それに対して不服そうな様子のエリアス。彼がいつもとは異なる姿になって家を出ていくのを見た彼女は、ステラに別れを告げ、その後を追います。
エリアスはチセに見つかると、触手で彼女をがんじがらめにし、抱きしめながらこう言います。
「君たちの声を聴いてたらなんだか無性に家を離れたくて
ステラが早く帰ればいいと思った
一人になりたかったはずなんだけど
…チセが追いかけてくるのがわかったら落ち着いた
でも走るのはやめられなくて
………よくわからない」(魔法使いの嫁7巻より引用)
大きい図体して寂しがりな彼の様子に萌え禿げます。
チセはどうにか彼をなぐさめようとするのですが彼はまったく口をききません。と、ここまでが6巻の内容。このあとの7巻で、さらにエリアスとチセの可愛らしい様子が見られます……。
ストーリー上ではカルタフィルスの過去の秘密が少し明かされたり、闇市場でのせりにかけられるドラゴンを救うが、チセがピンチになってしまったりなど、今回も起伏に富んだストーリーで、ハラハラさせられる内容なのですが、やはり最もお伝えしたいのは恋愛展開の胸キュンシーン。7巻ではチセの毅然とした様子に惚れ惚れしてしまいます。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2017-03-10
チセは自分が母親にしてもらったことを思い出し、彼にこう語りかけます。
「エリアスが感じているのは たぶん
嫉妬…というものだと思います
誰かを…何かをうらやんでも恨んだりしても苦しいままでどうにもならない
それは誰かにぶつけるものじゃないんです…自分の中で折り合いをつけなきゃ
わかりますか?」(魔法使いの嫁7巻より引用)(複数中略あり)
それでも彼女を離さないエリアスに、チセは強硬手段に出て剣を刺すと脅します。そこでようやく彼女を解放するエリアス。謝る彼に、チセは優しくこう言います。
「ほら 帰りましょう?(中略)
今夜は一緒に寝ましょうか 今日はもう遅いですし
ステラから色々なことを教えてもらったので
布団の中で聞いてください」(魔法使いの嫁7巻より引用)
まるで母が子をあやすような会話にほっこりしてしまいます。人の感情というものをチセから教えられるエリアス。どんどん素直になり、読む方もどんどん彼が可愛くて仕方なくなってきます。
前巻7巻でドラゴンを助けたものの、そのヒナが身体中に蔓延させていた負の感情をすべて吸い尽くしてしまったチセ。それは呪いとなって彼女の左腕を変形させてしまいました。そしてその呪いは遅かれ早かれチセの体を壊してしまうというのです。
しかし周囲がショックを受けるなか、本人はいたって冷静でした。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
- 2017-09-08
「私は今までふたつの呪いとここまで一緒に生きてきて…
生きてきてしまって…
ひとつはこの身体で もうひとつは…昔言われた言葉で……
私が生きる限りーー多分ずっと離れることのない呪いです
今更ひとつ増えたとこでどうってことないですよ」
(『魔法使いの嫁』8巻より引用)
そう言って笑うのです。
しかしエリアスはそれを聞いて怒ってしまい、それ以降部屋にこもりっきりになってしまいました。
チセは生い立ちゆえに本当に精神的に強く、エリアスと見比べると特に、生きてきた年月がそのまま人格の成長に繋がる訳では無いのだなぁと実感させられます。もっと頑張れエリアス……笑。
翌日、ひとり家を抜け出し、物思いにふけるチセ。あとから合流した彼女の使い魔・ルツにエリアスにはひとりで家を出てきたこと言ってないよね、と確認します。
しかしそこは精神的には幼くても魔法能力に長けているエリアス。最初からチセを見守って(監視して?)おり、頃合いを見計らって出現します。
そして彼はすねたように、チセはいつも家に帰ろうと手をさしのべてくるけれど、いつでもひとりでどこかに行こうとして、僕を置いていくんだとつぶやきます。やっぱり子供っぽくてもそこが可愛すぎる魅力です。反則。
そんなエリアスを見て、チセは一緒にいただけでお互いがこんなにお互いを思うようになった不思議を微笑みながら話します。彼といたおかげで、自分は生きたいと思うようになったと。
そしてエリアスに解決策を、ずっとそばにいられる方法を一緒に探してくれないかと問うのです。エリアスはこう返します。
「僕は君ほどぱっと走り出せない
でも君と一緒に確かめに行くことはできる
ちゃんと僕を連れていってくれよ」
(『魔法使いの嫁』8巻より引用)
何も言わずにエリアスに抱きつくチセ。
まるで老夫婦のような穏やかな空気、会話。お互いがお互いを大事に思っていることが言葉のすべてから伝わってきて、こんな夫婦になりたいものだなぁと思わされます。ほのぼの。
しかし、子どもっぽすぎる大魔法使いのエリアスさんが、そのまま大人しく平和的な解決方法を受け入れる訳がありません。チセが次の春まで持たないと聞いてさらに焦った彼は、ある強硬手段に出ようとします……。
そしてそのことによってふたりの間にあった根本的な溝がハッキリとしてしまい、チセは彼の手を離すことを選ぶのです。エリアスの行動を考えればさもありなんといえど、衝撃の展開となりました。
9巻はついに今までの謎や伏線が回収され、物語にいったんの結末が訪れます。新章がスタートするとのことで、9巻まではアニメ作品で知られていた内容なので、正真正銘の新エピソードに胸が高鳴りますね!
さて、ここからは9巻の内容をご紹介。8巻でエリアスの幼い考えから、このまま一緒にいることはできないと、ついに彼にそのことを突きつけたチセ。エリアスの目の前でカルタフィルスとともに姿を消します。
エリアスはもちろん必死の形相で彼女を探します。しかしチセから拒否されていることで、ルツすらも彼女の後を追えないという手も足も出ない状況で……。
- 著者
- ヤマザキコレ
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その頃、チセはどこかの建物の中で目を覚ましました。カルタフィルスを見つけた彼女は、自分の腕が欲しいのだろうという本題に入ります。
カルタフィルスは、自分とチセの呪いが同じくらい強いものだと説明し、人体と呪いが融合している彼女の腕をもらうことで、自分の存在の均衡がうまく保てるかもしれないのだと語ります。
そしてその代わりに自分の一部を渡すと言いますが、それには彼と同じような状態になる危険性がありました。
しかしそれを聞いてもチセに拒否権はありません。彼のやろうとしていることも、もう1匹のドラゴンを解放するという言葉も信じられないものの、チセは拒否反応が出るかどうかを確かめるために、目玉を交換させられます。
しかしそこは勇敢なチセ。生きていないとできないことをやるやめなら、と何と麻酔なしで目玉をとり、カルタフィルスに渡すのでした。
そしてチセはそこから過去の自分の記憶。カルタフィルスの過去を知ることとなり……。
ここから、過去のチセに何があったのか、カルタフィルスはなぜこのようになってしまったかがすべて明かされます。ただ恐ろしい存在だったカルタフィルスですが、過去を知ると同情してしまいます。
しかしチセは自分の辛い過去を乗り越えた上で、カルタフィルスの真実を知り、彼の罪を許さないものの、その痛みを受け入れるのでした。
これまでのストーリーがいったん完結するということで、重要な内容てんこ盛りです。チセが生に関して複雑な思いを抱いているのは、家庭環境によるものだったんですね……。
切なくなる展開が多いですが、最後にはいつもどおりのチセとエリアスのラブラブな様子を見ることができます。
しかし一見いつもどおりではあるものの、そこには一歩踏み出してさらに仲を深めたふたりがいます。目に見えない絆で結ばれているのだと感じられ、今まで以上に読者としてはキュンキュンしてしまうシーンです。
次巻10巻は学院編となるよう。ふたりの今後が楽しみですね!
ついに2桁台の巻数となり、物語は新章に突入します。それはチセが学院(カレッジ)の中等部に入学するということ。しかもそれだけに留まらず、何とエリアスまで教師としてそこに入学することになるのです。
そこでは新たなキャラの登場とそれぞれの思いが交錯する新世界が描かれます……。
- 著者
- ヤマザキコレ
- 出版日
カルタフィルスの不死の呪いはあるものの、それも落ち着き、以前の日常を取り戻しつつあったチセ。そこに魔術師の学校であり、互助組織でもあり学院から、スレイベガとしての体の情報などを提供してほしいという申し出があったのです。
もともとチセについては興味があったものの、エリアスの反対と、彼が彼女の延命のために動いているということから口出ししないようにしていた学院でしたが、竜やカルタフィルスとの一件によって、ついに彼女に直接勧誘しに来たという訳です。
他の学生と一緒に学ぶことも可能だという言葉に惹かれたチセは、エリアスと話し合い、入学を決意。もちろん心配しかないエリアスも教師としてついていくことになり……。
10巻ではこれから始まる物語の設定紹介や伏線が張られている印象です。しかし丁寧に作画がなされているのと、エリアスとチセのまっすぐな対話から退屈することはありません。
また、新キャラもそれぞれ個性的で、数多く出てくるとは言えど、その見た目と雰囲気を読めば、なかなか忘れられない人物ばかりです。そこで描かれる様々な方面からの思惑も、今後に繋がるものだと予測され、目が離せません。ぜひ新章の胸高鳴る展開をご覧ください。
新章が始まり、個性的なキャラやチセの新たな学院での生活に目が離せないなか、 11巻では気になる登場人物達の謎や過去などが明らかになってきます。 エリアスとリンデルの先生でもあるラハブが登場する場面もあるため、11巻は注目の回になっています。そこでは何故、チセがエリアスの嫁という立場になったのかも明らかになります!
魔法使い嫁11 (BLADE COMICS)
2019年03月09日
ステラやルツと一緒に外を歩いていたチセは 突然、周囲で霧が発生し呑み込まれてしまいます。 徐々に霧が晴れていくとチセとルツの目の前には海に囲まれた一軒の建物が現れ、 そこにはラハブと名乗る女性がいました。 その人物はチセがリンデルから話を聞いていたエリアス達の師匠ラハブだったのです。 彼女はエリアスとチセの関係性を知りたく呼び出したといいます。
そして夫婦という関係性を知ったラハブはなぜエリアスがチセにお嫁さんになるよう言ったかなど明らかにしていきます。
その昔、ラハブのもとで暮らしていたエリアスは人間というものを知りたがっていました。そんな中エリアスはラハブの行動のほぼすべてを真似ながら生活をしていました。それでも真似はさせられないことがありました。それは笑ったり怒ったりする感情でした。それを教えることができなかったとラハブは語ります。
ラハブは他に家族についてもエリアスに教えます。エリアスが一緒にいたいと思うような相手が見つかった時は男なら夫やお婿さん。女なら妻やお嫁さんと呼んでもいいと言いました。
お嫁さんなるということにこのような経緯があったんですね・・・。
11巻では今まで気になっていたこと、そしてサイモンの過去にも迫っています。
また、より多くの人達に関わることになったチセとエリアス、2人の心はどう変化していくのか今後の展開に目が離せません!
12巻ではアリスとレンフレッドの関係やレンフレッドがヨセフに腕を奪われてしまった時の経緯についてや登場人物の心境の変化、アリスとレンフレッドがどのように師弟関係になったのか注目の回となっています
魔法使い嫁 12 (BLADE COMICS)
2019年09月10日
学院から家に帰宅しようとするチセを待っていたアリスは突然、家に行っていいかと言います。アリスを家に招き入れ共に食事をすると食事の美味しさにアリスは喜びました。そんなアリスに対しエリアスはレンフレッド抜きで何をしに来たのかと尋ねましたが、用があるのはチセということで話しません。
話をするためにチセのベッドに横になった二人、チセはアリスに何があったのかと尋ねました。私じゃ師匠の役になんか立っていなかったというアリス
ここでレンフレッドの腕について語られます。
ある時、レンフレッドの家に予定がない来客が現れました。それはヨセフでした。その人物に見覚えがなかったレンフレッドは誰かの使いかと尋ねましたが、ヨセフは突然キメラを呼び出しアリスに襲い掛かりました。レンフレッドは間一髪のところでアリスを庇いましたが、庇ったときに時に自らの左腕を切り落とされてしまいました。
それを目にしたアリスはナイフを手に取り向かうもまるで歯が立たたず、壁に叩きつけられてしまったアリス。こいつに手は出すなとレンフレッドが言うも、ヨセフに命を握られてしまったレンフレッドはアリスを守るため言いなりになるしかありませんでした。
アリスから語られたレンフレッドが腕をなくした経緯。また、腕を取り戻すことができなかったと悔しがるアリス。この出来事をきっかけに強くなろうとしているアリスや、レンフレッドとアリスの関係がどうなっていくか今後の展開が気になりますね。
最新刊の13巻では12巻に引き続き、学院のキャンプ実習先で起こったことやチセの学友、ルーシーについて描かれています。
たびたび起こる出来事と共に新たにチセの身にも変化が現れます。
また、学院内の別の所では禁書保管室に保存されていた本が無くなる事態も起こってしまうなど……。13巻も次々と展開されていくストーリーに目が離せません!
魔法使い嫁 13 (BLADE COMICS)
2020年03月10日
チセは学院生達と共にキャンプ実習に来ていました。そこでルーシーは海妖馬(ナックラビー)という怪物に遭遇し襲われ、気絶してしまいました。その場に駆けつけたチセはルーシーを抱え逃げます。
共にいたエリアスによるとナックラビーとは人を見たら殺さずにはいられず、毒の霧をはいて畑を荒らすとのこと。久々に学院生たちのような「視える」ものがきたために海から上がってきたそうです。ちなみにナックラビーの弱点は真水とのこと……。
逃げるチセ達のもとに異変に気付いた学院生たちがきました。追ってくるナックラビーに気づいた生徒たちはその場から逃げ出しますが、ナックラビーは毒の霧を吐きだしました。真水が苦手とエリアス聞いていたチセは、ほかの生徒たちに川の向こうに渡るよう言いました。
ナックラビーは聞いていたとおりに真水が苦手らしく苛立ちをみせ、声を荒げます。このあとはどうすればいいのかとエリアスに問うと、学院の教師をしているエリアスは本体を残し、キャンプ地へは別形態できていたため力を使えません。チセもそのことを承知でエリアスに頼らない訓練をする!と決めていたのでエリアスには相談をするだけにしました。
チセが考えたのは、川の先の湖にナックラビーを引き付けて追い払う方法でした。そのためにキャンプ地にきた時に出会った、湖水馬(ケルピー)に頼ることに。
ケルピーに乗ると、俺も行くと学友の1人リアンが言うため一緒に乗り、湖に向かいました。到着したチセは隠れる場所を探すが見つからずそれを見たケルピーは二人を水の中に落とします。
チセたちを追ってきたナックラビーは湖の手前で立ち止まりましたが、ケルピーによって突き落とされます。ナックラビーにとって真水は毒そのもののため、もがき苦しみます。まだ水の中にいたチセはナックラビーに足を捕まれ引きずり込まれてしまいました。殺されそうになるその時、チセは謎の声に吞みこまれ竜の呪いを持つ手でナックラビーを殺してしまいました。
ナックラビーを倒すつもりはなく、その時聞こえた謎の声と自分の行動にチセは戸惑います……。
13巻ではチセの行動や心境に変化も見られ、これからの展開が気になるところですが。チセの実習先にまでついてくるエリアスの心配性なところなどの可愛い一面も垣間見えますのでこれからのエリアスの変化に目が離せません!
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今回は一部のストーリーのみの魅力をお伝えしましたが、本作はダークファンタジー特有の触れがたいけど惹かれてしまう不思議な世界観や、迫力ある戦いのシーンも魅力的。ぜひ作品でその良さを味わってみてください。