ミロコマチコが描くおすすめ絵本5選!動物や自然への愛を作品に。

更新:2021.12.19

枠にとらわれずに自然や動物を自由に描く画家ミロコマチコ。躍動的な絵で表現する世界は、自由でダイナミック。そんな彼女の絵本の魅力を十分に体感できる作品を5冊を選びました。読んだら、自分の中に眠る芸術的なものがきっと目を覚ましますよ。

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ダイナミックな絵が魅力的な画家ミロコマチコ

ミロコマチコは、1981年生まれ、大阪府出身の画家、絵本作家です。京都精華大学で、児童文学を学び、アートスクール大阪)に進学後、絵本の勉強を始めます。

自然や動物を描いた作品が多く、アクリル絵の具を使い、大胆に描く躍動感のある絵が特徴的。絵本という固定観念に囚われず自由な発想で表現した作品は、絵本界にも大きなインパクトを与え、メディアで取り上げられることも多い作家です。

画家としても活動しており、個展を開いても多くのファンが集まる人気画家でもあります。画家としては、絵を描いている姿を、ピアノの生演奏と共に観客に披露するライブペインティングというイベントを行い好評を得ています。子供たち向けにワークショップも開催し、絵本作家としての枠にとらわれない活動が気になる芸術家です。

ダイナミックな絵で描く外枠のない世界観『オオカミがとぶひ』

しっぽの大きなオオカミが赤い舌をベロンと出して、強風に逆らいながら空を飛ぶ姿。この絵本の冒頭、ページいっぱいに広がったダイナミックなオオカミの絵が描かている場面には、こんな文章が書かれています。

「きょうはかぜがつよい。びゅうびゅう びょうびょう ふきぬける。だって オオカミが かけまわっているから」(『オオカミがとぶひ』)

オオカミが走っているから風が強いんだと感じている主人公のぼく。想像力が豊かなぼくは、あらゆる現象と動物を結び付けて考えます。ゴリラが胸を叩くから雷が鳴り、チーターがやってきたから雨が降るという具合です。
 

著者
ミロコマチコ
出版日
2012-08-12

2012年に出版され、日本絵本賞大賞を受賞した『オオカミがとぶひ』は、絵本という枠組みの中に組み込んでしまうのはもったいないほど大きな世界観をもつ作品です。風、雨、夜などの現象を象徴するように描かれた動物たちは、画面をはみ出してもかまわないという潔い覚悟の元で描かれており、その迫力に圧倒されます。

作者ミロコマチコの中にあるものが、絵本のページにバーン!と叩きつけられているような、そんな凄みを感じさせられる絵本です。芸術とはアートとは、与えられた枠の中で表現するものではなく、枠に入らなければはみ出したっていいのだという真理を、目の前にたたきつけられたようにも感じます。

子供たちにも、ダイナミックな絵の迫力を体感してもらいたいですが、悩み多き年頃の10代の少年少女たちにも、ぜひ読んでもらいたい躍動的な意欲作です。

おうちで絵本を読むには

おうちで絵本を読むには

「子育てが大変でなかなか絵本を買いに行く時間もない」「読み聞かせの時間がなかなか取れない」「家で仕事をしている間、1人で絵本を読めるようになってほしい」。絵本をたくさん読んで欲しいとは思いつつ、なかなかそんな環境を整えるのも難しいですよね。

絵本アプリ「みいみ」は、さまざまな絵本を「親の声」や「子どもの声」で吹き替えすることができるアプリ。1ヶ月は無料で使うこともできるので、この機会に試してみてはいかがでしょうか?

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きみに出会えて幸せだったよ!ありがとうてつぞう『てつぞうはね』

「てつぞうはね わたしのねこ しろくてふかふかのねこ。すわるとおにぎりみたい すごくでっかいおにぎり」(『てつぞうはね』より引用)

だれもがおそれる暴れ猫てつぞうは、わたしにだけは甘えてくる。春には桜の花びらを追いかけ、夏には、ひんやりとした洗面台で眠るてつぞう。猫らしく自由気ままに生きたてつぞうは、8年目の冬に天国に行ってしまいます……。

そして、春になるとわたしの家には、2匹の子猫がやってきます。「捨てられた兄弟の猫なんだよ」と、まるでてつぞうに報告しているような文章が、たまらなくせつなく優しいおはなしです。
 

著者
ミロコマチコ
出版日
2013-09-20

ミロコマチコの他の絵本とは少しタイプが違うように感じるのは、実際に起こった出来事を絵本にしているから。実際に飼っていた鉄三という名の猫との生活と別れを描いているのです。鉄三の死後、鉄三のことを忘れられないまま、2匹の捨て猫を飼うことになったミロコマチコが、新たに猫との生活を始めていく再生の物語でもあります。

鉄三の思い出が明白に残っている時期に作った本作。猫の鉄三の描写は生き生きとしており、まるで絵本の中で鉄三が生き続けているようにも感じます。猫を飼ったことのある人なら、涙なしには読めない絵本です。

ペットとは、いつかお別れする日がやってくるもの。つらいペットとの別れを、優しく真摯に描いていて、別れを経験した人ならば、共感せずにいられないでしょう。

『ぼくのふとんはうみでできている』あなたのふとんは?

一日の疲れをとる布団は、誰にとっても安らげる場所であるはず。幸せな場所であるふとんが海でできているとはどういうことだろう?

タイトルのインパクトが、想像力を掻き立てる『ぼくのふとんはうみでできている』。ねこと一緒に布団に入ったぼくのふとんは、どんどんいろいろなもの変化していきます。

海の布団の中を気持ちよく泳いだら、突然猫の布団に変身し、なんだかもちもちフカフカしてきます。その後も、甘いパンの布団や、おおきなぞうさんの布団に変身。最後にまた海の布団に戻り、ぼくが目を開けると……。

著者
ミロコ マチコ
出版日

この絵本を読むと、幼い時の記憶が蘇ってきます。誰でも子供の頃、布団を自分の好きなものに変身させて空想する時間を楽しんでいたはず。雲の中とか、ケーキの中とか、ふかふかの犬の毛の中とか。心地よさそうと感じるものの中に身を預ける喜びを想像するって楽しいですね。

子供が寝る前に読み聞かせをするなら、「今日は何の布団にする?」と質問して、親子で想像の翼を広げてみてください。自分の理想の布団はどんな布団だったかも子供に伝えてみると、親子の絆が深まる大切な時間を過ごせると思います。

眠る前の時間というのは、良い眠りを得るためには大切な時間。自分の夢見る理想的な布団は何かを考えているうちに、安心して眠りについてしまうかもしれません。
 

ミロコマチコの絵でさまざまなうそを表現する『うそ』

シンガーソングライターでもある作者中川ひろたかの初めての哲学シリーズの中の一冊。ミロコマチコは絵を担当。絵本『うそ』では、嘘について考えていきます。

友だちのあっちゃんがついた嘘は「家のおとうさんは総理大臣なんだぜ」。俳優がテレビで死んだふりをするのも嘘。レストランの店先のスパゲッティも嘘もの。お弁当の緑の葉っぱも嘘。

おかあさんのまずいオムライスを「おいしい」という嘘。嘘にもいろいろな種類があることを、ビジュアル化して確認できるのが面白い絵本です。
 

著者
中川 ひろたか
出版日
2014-06-25

ミロコマチコのダイナミックな絵で描かれた、たくさんの嘘がおもしろい絵本。ユニークな温かい絵のおかげで、押しつけがましい感じがしないのが心地よく感じます。

人を騙す嘘、自分を良く見せようとつく嘘、相手のことを労わってつく嘘。嘘にもいろんな種類があり、ついてもいい嘘とはどんなことなのか?子供たちに直接問いかける実験的な絵本とも言えます。

子供たちは大人から「嘘を言ってはいけない。」と言われながらも、大きくなるにつれ、ついてもいい嘘もあると知っていきます。こういう矛盾を理解するのは、子供にとっては簡単ではありません。嘘の意味について理解していく手助けになるような作品です。

土一粒一粒の気持ちを捉えた作者の鋭い観察眼『つちたち』

土をじっくり見つめたことがありますか?土をよくよく見ると、形の違う一粒一粒が、集まって土になっています。

「くろいの ちゃいろいの きんいろの みんなつちたち」(『つちたち』から引用)。

土たちから見た視点では、地面の中の植物の根っこはひんやりとして気持ちよく、みみずが動くと土たちはくすぐったくなってしまいます。

土の気持ちを考えるという作者ミロコマチコならではの自然に対する視点がおもしろい絵本です。迫力ある恐竜たちにも負けない存在感をもつ一粒一粒の土たち。細かく描かれた表情が愛らしい土たちを見ていると、愛おしさまで感じてきます。
 

著者
ミロコ マチコ
出版日
2015-09-08

オーストラリアのエアーズロック観光から帰国したときに履いていた靴の底に、赤い土がついていたことで、土に関心を持ったというミロコマチコ。土に興味を持ち、観察を続けたことにより完成したのが、絵本『つちたち』です。

土を観察し、絵本作家として土を表現したミロコマチコですが、観察するということは、芸術の世界だけでなく、医療、科学、商業、農業などさまざまな分野の発展には欠かせない基本的な営みです。物事を突き詰めて観察することの楽しさ、大切さを教えてくれる魅力的な作品でもあります。

なによりも、ミロコマチコが、楽しんで絵を描いているのがページをめくるたびに伝わってきます。絵を描くことの喜びを楽しい絵で体感できるのがうれしい。自由に描いたダイナミックな絵を見るだけでも価値がある絵本です。

ダイナミックで自由な発想で絵本を描き続けるミロコマチコ。紙の外まではみ出して描いたっていいのだという芸術の本質を教えてくれる作品ばかり。絵本を開いて、自由な発想で描かれた絵の迫力に圧倒されてみてください。

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