あさりよしとお作品おすすめ6選!毒があるのに愛おしい!?

更新:2017.5.4

かわいい絵柄に、スパイスの強い毒の効いた漫画を読みたい方に、あさりよしとお作品をおすすめします。毒といってもおぞましいものではなく、ギャグとして成立していてどこか愛おしい不思議な作風。 そんなあさりワールド、覗いてみませんか?

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漫画家あさりよしとお

あさりよしとおは1962年生まれ、北海道出身の漫画家です。高校在学中に描いた『木星ピケットライン』で漫画家として商業誌デビュー。この時、投稿前に友人に見てもらったことで、作品のいい点や悪い点が分かったとのこと。

作風としては、ロリコン風とも呼ばれるオタク的な印象の絵柄と豊富な知識、そして良くも悪くも容赦のない展開が織りなすシュールな物がほとんど。「完結しない」と言われることも多いですが、絵柄や内容が癖になるなど、コアなファンも多いです。

漫画家としてだけでなく、ゲームなどのデザイナーとしても知られています。中でも有名なのが、『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒のデザイン。サキエル、シャムシエル、ゼルエルのデザインを担当し、コミカライズ版の巻末に自身のデザインした使徒が登場する四コマ漫画を載せています。

あさりよしとお作品の入門書。大人も笑えてためになる『まんがサイエンス』

学研の雑誌『5年の科学』『6年の科学』で連載されていた作品です。日常の些細な疑問から、宇宙開発に至るまで、様々なスケールの科学の疑問を網羅しています。

読者や4人の小学生に科学の魅力を教えてくれるのは、奇妙奇天烈な「専門家」(頭部がテーマで首から下が人間というケースがほとんど)たち。中には神や妖精を自称し、科学漫画だとツッコミを入れられる者もいます。

分かりやすい解説と見やすい絵柄で、ぐいぐい読者を惹き込む力を持った作品です。

著者
あさり よしとお
出版日

あさり作品としては比較的毒が抑えられていますが、「大きな友達」も数多く抱えるのは、そこにただの学習漫画の枠を超えた魅力があるからです。

まず、4人の小学生。特にツインテールの少女あやめちゃんはターゲットの小学生だけでなく、大人のファンも多いキャラクター。なぜなら、比較的おとなしめのあさり作品『まんがサイエンス』において、毒の部分を担うのは、彼女だから。コミックス2巻から登場しますが、実験台として真空に放り込まれたり、氷漬けにされたり、マッハ3の飛行機に乗せられたりと、かわいい顔をして悲惨な目に遭っています。それでもめげずにボケ倒し、言いたいことを言うキャラクターなんです。

専門家たちも微かな毒を抱えています。小学生向けにかわいく描かれているものの、よく見ると目が怖かったり、遠慮なくグロテスクな面を見せたりしてきます。先に挙げたあやめちゃんを実験台にするのも毒の一つ。

基本的に子供向けなので毒は比較的控えめで、内容も分かりやすいのが最大の魅力と言えます。まさに、入門書の名にふさわしい漫画です。

昭和とSF、毒と笑いと切なさ溢れる『宇宙家族カールビンソン』

「プチ・アップルパイ」の元祖版、「少年キャプテン版」、「月刊アフタヌーン版」の三種が存在。中でも「少年キャプテン版」が最も掲載が長く(コミックス全13巻)、有名でもあります。

地球人と思われる少女コロナと、「両親」をはじめとする変わった家族、近隣住民が地球の風習にのっとり生活する様が牧歌的ながらもシビアな毒っ気を持って描かれるのです。「少年キャプテン版」から登場する惑星アニカの原住民は、昭和の特撮などで知られる映像作家がモデルになっており、「分かる人には分かる」ネタや昭和情緒が漂うネタも満載。

著者
あさり よしとお
出版日

この作品の魅力は毒っ気とかわいさに代表される表裏一体、もしくは対になる要素の数々です。舞台はアニカという惑星。つまり、ジャンルで言えばSF。しかし、コロナ一家の生活は昭和の日本風で、家の風呂は薪で沸かします。コロナ自身は、未開の惑星で宇宙人に囲まれて駄菓子屋に通い、異形の現住生物と遊んだり、学校に通ったりするのです。

コロナがいつか母星に帰ることを想定し、なるべく母星の習慣に近い生活を送らせるわけです。何分未知の惑星の文化なので、再現は難しく、妙な方向に転がることが大部分。それなのに味わい深さがあります。

そんなこの作品の最大級の毒が、「いつかコロナとの別れが来るかもしれない」ということ。笑えるタイプではなく、胸にずしりと来る毒、現実です。おとうさんの過去、ライカの葛藤も含め、所々にシリアスな面が散りばめられています。

少年たちの夢『なつのロケット』の持つ毒は?

ジャンルで言えば冒険もの。理科の授業は実験重視、小学生相手に爆薬の作り方を教えるなど、型破りな藤根先生と、彼女を尊敬する三人の小学生。

先生が上司や親によく思われていないことを知っており、辞めさせない方法を考えます。打開策として浮かんだのは、理科の授業で作ったペットボトル式ロケット。「本式のロケットを作って飛ばせば、先生は見直されて学校に残れる」と踏んだ主人公、北山泰斗ですが、何かと謎の多い転校生三浦の妨害に合います。

しかし、彼は彼でロケットを作っており、北山と友人二人を仲間に引き入れるのでした。「時間がない」と意味深長な言葉を口にしながら。

著者
あさりよしとお
出版日
2015-12-03

あさりよしとおのロケット好きをいかんなく発揮した作品です。冒険ものではありますが、どこかへ行くというのではなく小学生数名が本格的なロケットを作るという無謀さが「夏」という季節にあっているようにも思われます。ほんの100ページ余りですが、ロケットに関する知識だけでも中身の濃さ、読み応え十分。

ロケットづくりだけでなく、成長や譲れないもの、各人の性格などを、ほんのわずかな描写だけで表現しているのも唸らせる物があります。どこか爽やかだけど、爽快というほどでもない所もあり、夏という季節の持つじりじりとした焦燥感を体感できるかもしれません。

とりたてて毒っ気らしい毒はないように思われますが、小学生であっても受け入れなくてはならない現実(先生の辞職や、明言されていないものの三浦の病気など)は、ある意味で毒と言えるでしょう。

シリアスな大ボケヒーロー『ワッハマン』

数万年の時を生きる男を抹殺すべく、古代アトランティスで骸骨顔のヒーローが作られました。傷を負わず、決して死なないオリハルコン製の体と無敵の戦闘力を持ちますが、普段は風来坊的な生活を送りながら草野球やラーメン屋の手伝いなどを行うなど、中身はオトボケ気味。ついでに言えば、大食らい。

それでも危険な存在として自衛隊、CIA、果ては本来の大敵、通称人類の敵(またはレミィのパパ)まで彼を狙うのです。捕獲や暗殺に失敗する一話完結のギャグコメディは序盤で終了し、物語はシリアス味を帯びていきます。ワッハマンが、人類の敵と対峙する時まで。

著者
あさり よしとお
出版日

コメディタッチの初期、物語の核心が垣間見える中期、チラ見程度ながら謎が明らかになる終盤と、どれをとっても違った面白さがあります。毒っ気という点では初期の方が強かったかもしれませんが、ギャグで緩和されていました。

この作品の最大の毒は「死」。一万年間眠っていたワッハマンは死なない、いや死ねない体を持ち、燃え盛るマンションにピザの宅配をしたり、海底でセンジュナマコをとったり、深水艇を泥から引き上げたりも可能。地雷原では脚探りで地雷を前もって爆発させるという無茶な行動だってとれてしまいます。

ワッハマンには決して訪れない死がどういうものなのか、如実に語っている良作と言えます。ちなみに、ワッハマンは本来食事も呼吸もいらない体。それでも食事をし、奢られれば食べきれないほどの量を注文します。そこが切なくも愛おしい所なんです。

あさり風天使と悪魔バトル『るくるく』

「地獄はもう人でいっぱい」。そう語り、主人公鈴木六文の家で家事をこなするくこと瑠玖羽(るくは)。その正体は地獄を牛耳る地獄の姫でした。

るくたちは部下の悪魔たち共々地獄に堕ちる人を減らすかのように、ボランティアや人助けに精を出します。天使や六文を「おもちゃ」と称する少女、熱心なキリスト教徒らの妨害に遭いながら。

これでもかのあさり節が全快の作品。下ネタ、ある種の薬物ネタをはじめ、とんでもないギャグがてんこ盛りです。るく自身も一見すると健気な印象の美少女ですが、怒ると部下たちをモーニングスターという武器で叩きのめしてお仕置きします。

著者
あさり よしとお
出版日
2003-01-21

天使、悪魔そして神仏と宗教を扱っている時点で「やばいんじゃないのか」という気すら抱かせますが、それ以上に描写が容赦ないです。

一話目冒頭から美少女(小学生くらい)が朝食を作ってくれている美味しいシチュエーションですが、父親が殺されて一室まるごと血まみれ状態、カカシのような上級悪魔ブブに心を読まれるといったシュールかつホラーな展開(父は猫として復活しました)。

劇中の悪魔は人間の精神に介入することができ、「文化祭の出し物」と称して、特定の場所に入った人間に自分の本性を見せると言った所業を平気で行います。「悪魔だから」と悪びれもせず。

父を殺したのが正義を連呼する天使である点、殺された理由が「七つの大罪を全部やらかした(競馬に負けて怒ったなどのしょうもないレベル)」という点、ブブ達悪魔がボランティアだけでなくアルバイトをして六文の生活を支える点など、宗教観に揺らぎが生じます。

色々と考えさせられますし、笑ってしまう部分も多々あるのです。

業界に噛みつく最高級の毒と膿出し!『重箱の隅』

アニメ、ゲーム、メディア業界について語ったエッセイ的な物。ぐっちゃん、びったん、ぼったんという三人娘と共に各業界の現状を語り、容赦なく噛みつきます。皮肉というよりも真実そのままを赤裸々に語り、分析。

キャラクターと対話する形で、時にはキャラクター自身がその業界の人間になりきる形で、傍目には腐敗したともいえる各業界を暴き出すのです。

アニメ業界を例にとっても、専門学校の卒業生に作画や声優を任せ、作品は人気のある漫画や小説から選べばいいとの考えが横行していることを、キャラクター同士の会話で表現。

最終的にあさりよしとおは全ての業界が似た形で「腐っている」とし、その理由を、自分も含めた大衆が日本人的だから、と結論づけています。

著者
あさり よしとお
出版日
2010-04-22

これぞ最高級の毒。そして膿出し。三頭身ほどのかわいらしい女の子のキャラクターを業界人物に置き換えた「アニメ業界編」は、専門学校の卒業生をスタッフとして使う側の意見がそれなりに筋が通っており、必見です。

あさりよしとおはかつて『アニメージュ』というアニメ情報誌にて、OVAの辛口評論を行っていました。その批評、持論、豊富な知識と『まんがサイエンス』で培った分かりやすい批評やたとえがいかにもあさりよしとおといった感じで、ファンには納得の一作と言えるでしょう。

あさり作品の中には、「よくOKが出たな」と思うような、ある意味実験的な物も多くあります。「毒入り」という短編集の中にも、パロディという形で文字通り毒が満ち満ちています。

しかし、不快な気持ちになる物ではなく、『なつのロケット』のようなシリアスストーリーがあるのも事実です。あさりよしとおの作品が不快な毒だけの物でないのは、かわいい絵柄が中和剤になっているだけでなく、どこかに優しさや愛を感じるからかもしれません。

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